人気ブログランキング | 話題のタグを見る

もっと上演されて欲しい!素晴らしい台本のオペラですから ENO マルティヌー「ジュリエッタ」   

2.10.2012 @collisium

martinů: julietta

richard jones (dir)
peter hoare (michael lepic), julia sporsén (julietta)
jeffrey lloid-roberts (clerk in the bureau of dream), etc.

edward gardner / eno orchestra


ずうっと前に、フルシャさんとBBCシンフォニーがコンサート形式で演奏して、それ以来、観たいと思っていたマルティヌーのオペラ「ジュリエッタまたは夢への鍵」。julietteのハズが何故かjulietta。どうして?って思ったら、英語だからだって(ENOの人が答えてくださいました)。そうでした。イングリッシュ・ナショナル・オペラは英語上演なのでした。

マルティヌーのオペラ「ジュリエッタ」は、幻想的でシュールな心理劇、サイコドラマをカラフルなオーケストレイションの音楽で包んだ感じ。今のわたしたちにも直接頭に響いてくる、安部公房や村上春樹さんのシュール・リアリズムの小説を読むような味わい。というのが、前回、コンサートでの演奏を聴いた感想でした。隠れ里のような森の中の不思議な夢と現実のグラディエイション。

オペラの舞台で観ても、同じような感じだけど、舞台から来る視覚的な効果が、わたしの脳内の舞台のイメジとずれるところがあって、より世界が歪んで見えてきた感じです。でも、舞台のお話をする前に演奏から。
ガードナーさんのENOのオーケストラは、色彩的というより、モノトーンな感じがしました。舞台がわりとモノトーンの白黒世界でまとめられていたからか、いいえ、むしろ、チェコの古い森世界の景色を取り去って、現代的なビビッドな白黒感(ちょっと矛盾する言葉遣いだけど、シャープで輪郭のはっきりしたモノトーンな音色感、鋭利な銘刀の表面に出る文様のような)でまとめ上げた結果でしょうか。艶めかしさが消えて無機的な冷たさです。だから、マルティヌーに特徴的なストラヴィンスキーやドビュッシーなどを思い出させるカラフルな色彩の表出が後退して、そこはわたしの好みとは違うのだけど、舞台の今日の雰囲気にはすごく合ってました。歌手もスターはいないけど、粒ぞろいで、聴いていて楽しめました。イタリア・オペラみたいな歌手のアリアに重点を置くタイプではなく、物語の意味が大事なオペラなので、誰も突出せずに全員が同じレヴェルで歌えてる方が好ましいですね。

さて、舞台は、現代に翻案されていて、でも、現代的な台本なのでそれは全く問題ないのだけど、出かけた先の夢の町が、町で現実的だったのが、わたしの勝手なイメジと違っていました。わたしはどちらかというと、もっと曖昧な森のイメジだったのです。わたし的には、夢がもう少し温々として甘美な幸せに包まれる感じが、そしてそれはきっと無機質な建物ではなくて、柔らかな命のある森の方が好ましいと思っていたのだけど、今日の舞台は、違う世界だけどパラレルワールドのようなやっぱりこちらも現実、のような感じで、それが不条理を引き立たせていたのが、最近、ちょっと疲れてるわたしにはきつく感じられたのでした。でも、こんなステキなオペラを観られて大満足です。残念ながらENOの席はがらがらだったけど、この知られざるオペラがもっともっと上演されるといいな、と思います。本当にステキな台本(まず、台本を賞賛したい)、ステキな音楽のオペラですから。そもそも、マルティヌーってステキな作曲家ですよ〜。

by zerbinetta | 2012-10-02 22:36 | オペラ

<< BBC交響楽団やっと開幕 パパ... 鐘かね〜、ロシアの鐘が鳴り渡る... >>