大人の、ブルックナー抜きのブルックナー8  ドホナーニ/フィルハーモニア   

18.10.2012 @royal festival hall

mozart: piano concerto no. 27
bruckner: symphony no. 8

martin helmchen (pf)
christoph von dohonányi / po


風邪が、、、抜けん。ごほごほと咳が止まらないまま音楽会へ。今日は咳との闘いだわ。ブルックナー長いし。
まずは、お久しぶり!ヘルムヒェンさんのモーツァルトの変ロ長調のピアノ協奏曲第27番。極限までにシンプルで透明、命を育む水のような音楽。それもとびきりの銘水。
30歳(もしかして31歳?)のヘルムヒェンさんは、数年前に観たときより大人になって、落ち着いた物腰の柔らかな雰囲気の中に風格のようなものが芽生えてきてステキ。ヘルムヒェンさんのピアノは、がんがん叩く系ではなくて、風貌から予想されるように、とっても軽やかに転がるビー玉。もうそれがモーツァルトにピッタリで、余計な装飾のない音楽が、純化した魂をひゅるんと空に解き放ってくれる感じ。音遊びがとっても愉しくって、モーツァルトはもう人の肉体を捨てて、音の世界で子供のように遊んでいるみたい。シンプルで混ざり気のなさが反対に人の感情の全てを含んだ美しさになって聞こえてくる。ドホナーニさんのオーケストラもそんなピアノの音遊びの庭を作るように背景となって蒸溜された音楽の世界を作ってる。心が洗われるようなモーツァルト。良かったぁ。

後半のブルックナー交響曲第8番。この曲は、ネゼ=セガンさんとロンドンフィルとの演奏をここで聴いて、それが圧倒的に心に残っているんだけど、実はわたし、ドホナーニさんの演奏はちっとも期待していませんでした。ドホナーニさんとフィルハーモニアのブルックナーは、ずいぶん前に交響曲第4番を聴いたことがあって、あまりに無機質な演奏に混乱したからなんです。

では、今日はどうだったでしょう。
懐疑的な気持ちで聴き始めたのに、おややと思ううちにずんずん引き込まれてしまいました。まず、オーケストラがめちゃめちゃ上手い。これがいつものフィルハーモニアかと思うような上手さ。いつものように透明だけれども、柔らかく暖かみを持ったクリーミーな音。極上の生クリームをきめ細かく泡立てたような。金管楽器の明るく、突き抜けたような爽やかな音がステキです。前回のフィルハーモニアが、勢いに任せた荒さがあったのにそれは全て影を潜めて、絹のような肌触りの、成熟した大人の音楽。これだけの音を引き出せるドホナーニさんのなんて凄いこと。今までもドホナーニさんとフィルハーモニアの演奏は聴いてきたけど、今日がずば抜けて最良。どうしちゃったんでしょう。神がかってた。

音楽は、いわゆるブルックナー的というのを完全に廃したステキな演奏。流麗で冷めていて、柔らかな液体がすーっと流れていくよう。ブルックナーみたいな構造のぎこちなさがなくて、シームレスに音楽が流れて、ブロックのまとまりが消えて、一筆ですらっと書いた草書のよう。
流れるような音楽は、でも都会的で人工的というのともちょっと違う、優しさ、温かさもあって、以前第4番で感じたような荒涼とした無機質感がないのは、この曲が第4番のような自然を強く感じさせる曲ではないから、という理由だけではなく、もっと本質的なのは、ドホナーニさんの演奏がこの音楽に合っているからではないかと思うのです。テンポは、第2楽章のスケルツォが速めだったことを除けば、ゆっくりしていて、アダージョはじっくりと時間をかけた、でも全然腹にもたれないすっきりした演奏でした。
多分、こんなするすると流れる演奏をブルヲタの皆さんは認めないんだろうな。ブルヲタの彼とデエトして、うっとりと聴いてたわたしは、これは正しいブルックナーじゃないとか、ブルックナーは女には分からない、とか言われて(経験あり)、喧嘩して別れるんだろうな。踏み絵のようなブルックナー。こんな演奏を肯定できる柔らかなブルヲタさんなら仲良くした〜い♡
[PR]

by zerbinetta | 2012-10-18 22:52 | フィルハーモニア | Comments(0)

<< 日本の皆さんどうでしたか? ヤ... 王子さま♡♡ マルケス、マクレ... >>