ショスタコーヴィチ交響曲第16番!! スクロヴァチェフスキ、ロンドン・フィル   

26.10.2012 @royal festival hall

brahms: piano concerto no. 1
bruckner/skowaczewski: adagio from string quintet
shostakovich: symphony no. 1

garrick ohlsson (pf)
stanisław skowaczewski: / lpo


うっかり舌をかんでしまいそうなお名前の元気老人、スクロヴァチェフスキさんとロンドン・フィルの音楽会。10年くらい前に聴いたときにすでにおじいさんだったけど、今日もおじいさんでした。90歳?でも、さすがに指揮台からぴょこんと飛び降りて喝采を受けるのはないけど、矍鑠としていて、指揮台に安全バーもなし。もちろん立って指揮ですよ〜。お元気〜。

音楽会はいきなりブラームスの大作交響曲のようなピアノ協奏曲第1番。ピアノはギャリック・オールソンさん。わたし的にはオールソンさんといったら、ブゾーニのピアノ協奏曲のCDで弾いてる人、なんだけど。聴くのはUSで以来だからずいぶん久しぶり。アメリカを拠点に活躍してる人は、ヨーロッパに時々しか来ないし、反対もまたしかり。大陸の人でイギリスに滅多に来ない人もいるしね。

ぎゅーんと凝縮したエネルギーで始まる音楽は、作曲者の年齢に似合わない枯れた色合いがあるのだけど、でも若いエネルギーに溢れていて、御年90歳のスクロヴァチェフスキさんは、歳に似合わないフレッシュなエネルギーが音楽から立ち上ってきて、勢いのあるバネが弾けるような始まり。オーケストラの重心がちょっと高いのが玉に瑕だけど、グレイ・スケールの渋い色彩はブラームスのもの。オールソンさんのピアノは、体育会系の重いヴィルトゥオーゾという印象だったけど(だってブゾーニの協奏曲)、派手ではないけど安定した音楽がステキでした。どっしりと落ち着いた感じが良い感じ。第2楽章が特にステキでした。でも、なんだかこのお二人の音楽、時間を超越しているようで、決して激遅の演奏ではないけど、時間(長さ)の感覚が薄くなっていく感じ。

次のブルックナーのアダージョでは、ますます時間が歪んでいつ果てるともしれない音楽。わたしはこの曲の原曲、弦楽5重奏曲を知らないけど(と偉そうに言いつつCDを持ってたり)、弦楽オーケストラで奏でられる悠久の時間。指揮のスクロヴァチェフスキさん自身の編曲なので、細部まで自分のものとしてご存知なのでしょう、音楽と一体になった、でも、没入系ではなくてどこか客観視して透徹な目で楽譜を体現しているような演奏でした。交響曲のアダージョのように重たい感じはなくて、透き通ったブルックナー、幽けき豊穣という正反対の意味の言葉を重ねたような音楽でした。

どういうわけかお終いに持ってこられたタコの交響曲第1番。わたし的にはこの曲が、発表当時、現代のモーツァルトと評されたように、若い溌剌として、諧謔的でもあり、軽いノリの音楽と思ってました。だから、音楽会の最初に来る音楽かなーーって感じで、最後をこの曲で締めるのはちょっと違うなーって。そんなふうに思ったのです。
ところが聴いてみるとこれが、あれれ、確かに聞こえてくる音楽はわたしの知ってる交響曲第1番の曲なんですけど、でも、聴いたことのない音楽のように聞こえて。諧謔味が若い素直なそれじゃなくて、老獪な、そうそう、交響曲第15番の第1楽章のような、何もかも知った後のような老獪な諧謔。レントとか全体に時間軸が引き延ばされたような重さ、でも決して遅いテンポのだるい演奏とは違う、不思議な感覚は、交響曲第15番に近い、というか、これ、交響曲第16番?彼(か)の曲の次に来るような音楽。交響曲第1番を聴いていながら、最晩年の幻の傑作、第16番を聴いた感じ。

今日の音楽会は曲目からして早めに終わるだろうと予想して、風邪引きのわたしにはいいかなと思っていたのに、終わってみたら10時近く。決してゆっくりした演奏ではなかったと思うんだけど、わたしの時間どこに行ってしまったのだろう?不思議な音楽会でした。終わってからスクロヴァチェフスキさんのサイン会もあったようで、なんだかとことんお元気なおじいさんだな。末永く指揮者界の長老としてステキな音楽を聴かせて欲しいです。
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by zerbinetta | 2012-10-26 00:09 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

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