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ついに日本で初バレエ ビントレー版シルヴィア 新国立劇場バレエ団   

11月2日 @新国立劇場

シルヴィア

デヴィッド・ビントレー(振り付け)
レオ・ドリーブ(音楽)

佐久間奈緒(家庭教師/シルヴィア)、ツァオ・チー(召使い/アミンタ)
本島美和(伯爵夫人/ダイアナ)、厚地康雄(伯爵/オライオン)
福田圭吾(庭師/エロス)、他

ポール・マーフィー/東京フィルハーモニー交響楽団


ロンドンでの最後の数週間。咳と微熱に悩まされ続けて、黒スグリ味の風邪薬(イギリスやUSの風邪薬って、果物味の粉をお湯で溶いて飲むのが一般的なんです。子供みたい?)でごまかしてたんだけど、日本に帰ってきて医者に行ったら(イギリスはGPはただなんだけど、予約はいるしめんどくさいの。薬代はかかるので風邪くらいだったら、実は日本の方が安かったり)、見事、マイコプラズマにかかっていました。マイコかぁ。長引くな、これ。

で、ゴホゴホいいながら、初新国、日本バレエ・デビュウです。新国立劇場、わたしが日本に住んでいたときにはまだできていなかったんですね。そしてバレエにはまったのも日本を出てからなので、日本のバレエは観たことがなかったんです。もう楽しみで楽しみで。この間、バーミンガムで観た、ナオさんとチーさんが客演で踊るので(現在の新国立劇場バレエ団の芸術監督は、言わずと知れた、バーミンガム・ロイヤル・バレエの監督でもある、そして、今日のシルヴィアを振り付けなさってるビントレーさんなのです)、ナオチー見たさ。ほんとはゲストじゃなくて、新国のダンサーを観るべき何でしょうけど、それは少しずつ観ていくことにして、今日はナオチー。そして新国立劇場の偵察。

初めて来る新国立劇場は、空間が広く取ってあるとてもステキなエントランスに内装もシンプルで居心地の良いところでした。意外にこぢんまりとしていて、席もどこでも良く見えそうな感じ(もう少し探検してみる必要がありますが)。席もゆったりしているふう(メトもロイヤル・オペラも結構きつきつです)。男性の方も普通に来ていて(日本では男性はあまりバレエを観に行かないと聞いたことがありました)、いい感じ。

で、バレエの方はと言うと、初めて観る日本のバレエ団、すっごく良いじゃないですが!下手ではないだろうなとは思っていたけど、こんなに素晴らしいとは思っていませんでした。だって、西欧の芸術だし、東洋人が踊ることに多少違和感を感じるかもって思ったから。もちろん、日本人のトップダンサーたちが海外のバレエ団で活躍しているのは見ているし(ナオさんも!)、見劣りしないのは知っているけど、ほぼ全員が日本人で、日本で踊ってきた人たちの舞台というのは、言うならば、全員外国人が演じる歌舞伎とか、ハリウッド映画の日本とか、インサイドアウトのカルフォルニアロールとか(なんのこっちゃ)、そういう微妙なずれがあるんじゃないかしら、なんて考えてもいたの。愚かだったわたし。馬鹿、だった。今日の舞台を観て、わたしの偏見に曇った目が晴れた。本当にステキ。コールドからトップまで全員が。世界中どこに出しても胸を張れるレヴェルのバレエ団。

もちろん、お目当ての主演のお二人、ナオさんとチーさんはステキでした。このおふたりのあうんの呼吸というか、ひとつの世界の中にいるふたりというか、白鳥の湖で観たときの感動がよみがえってきて、うわ〜〜〜っと叫びたいほど嬉しくなりました。また会えたね。日本で。このおふたりはほんとに素晴らしい。ひとりひとりで踊っているときもすっごいステキなんですけど、おふたりがそろったときの精神的なシンクロ率が半端じゃないの。表現力の細やかさ。おふたりとも華奢で、欧米系のダンサーに見られるパワフルな勢いみたいなものは感じられないけれど、その弱点(?)を100倍返しで長所にして、繊細な表現力で勝負。こういう同質のトップ・パートナーって他にいないので、これはもう、ひとつの理想的なペアよね。

そのおふたりの他、オライオンの厚地さんやエロスの福田さんも良かったけど(エロスの衣装はも少し少なめが希望)、目を引いたのは本島さんのダイアナ。迫力に似た存在感があって、舞台を引き締めていました。
それにしても皆さん、芸達者というか、演劇的な表現もとても上手い。もしかしたらバーミンガムより上かも(バーミンガムは時折、一歩引いちゃう部分が見られたんです。本家ロイヤルは一歩も二歩もやりすぎちゃうんですけど)。ビントレーさん絶対、このバレエ団好きだし誇りに思ってると思う。わたしも勝手ながら同国人として鼻が高い。

シルヴィアはロイヤル・バレエでも観たことがあります。アシュトンの振り付け。今日のはそれとは違う、ビントレーさんの振り付けです。これがとっても良かった。アシュトン版は、原作に忠実なのに対して、ビントレー版は、現実と夢の世界を行き来してその物語の想像力がとってもたくましいんです。もしかしたらアシュトン版の神話をなぞった物語は、今の人には少し退屈な面もあるかもだけど(衣装の布が少なめなので嬉しいんですけど(特にエロス))、ビントレー版は現実の世界から神話の世界に一緒に入るようで、本を開くようにすうっと物語の世界に入って行けます。それに、エンターテイメント性も高くて、楽しい。義足の海賊の踊りなんてよくあんなこと考えたな、って感じ。

そして、オーケストラもとってもきちんと演奏していました。ロイヤル・バレエではダンサーさんたちがあんなにステキに最高のものを見せてくれているのに、オーケストラは。。。(以下自粛)東京フィルハーモニーはきっちりと音楽家の仕事をしていました。音楽からバレエに入ったわたしにとって音楽はとっても大事。いつでもちゃんとした演奏が聴けるとしたら(多分今日がたまたま良かったというのではないよね?ロイヤルの経験から疑心暗鬼のわたしです)、バレエを観る喜びが倍増するではないですか。素晴らしいオーケストラにも拍手。

というわけで、大満足の新国立劇場バレエ団。通いたいなぁと思うものの若干の問題が。わたしが、バレエにのめり込むようになったのは、舞台のそばで、ダンサーさんたちの息を感じながら見始めたから。本当に好きな人は、舞台の全体を見渡せるある程度離れたところから観るのでしょうけど(ロイヤル・オペラ・ハウスでもバレエの一番良い席は2階席(確かにとても観やすいです))、わたしはかぶりつきとか、そこは高いので、舞台が見切れるけどダンサーに手が届きそうな舞台の脇の安い席が好きだったのです。そういう席が新国立劇場にはないんですね。舞台に近い席は正面でとても高いし、安い席は上の方だけ。見切れるのは全然かまわないから袖に安い席作って欲しかったなぁ。それと立ち見。みんなが良く見えるようにって基準で設計されてるのかなぁ。とりあえず入るだけたくさん席作っちゃって、条件の悪い席のチケット代を廉価で売り出すようにしてくれれば良かったのに(ってわたし、基準の意見でした)。写真が撮れないのもちょっと残念。

by zerbinetta | 2012-11-02 11:56 | バレエ

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