熱血完全燃焼 千々岩英一、宮本文昭、東京シティフィル シベリウス、ショスタコーヴィチ   

2013年3月16日 @東京オペラシティ コンサートホール

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

千々岩英一(ヴァイオリン)
宮本文昭/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


この間、聴きに行って好感触だったシティ・フィル。今年度のテーマが完全燃焼だそうで音楽監督は宮本文昭さん。わたしにとって宮本さんは違いの分かる男の人でも、指揮者でもなく、オーボエストなんですが、いつの間にかに指揮者になられたのですね。基本的にわたしは、餅は餅屋な人なので、オーボエでの演奏活動は止めたとはいえ、指揮者としては未知数の宮本さんはちょっと怖いもの聴きたさ。でも、当日券だったら1000円という魅力に抗えず、タコだし〜(嘘です。タコがあるの会場に来てから知りました)、でも、もっと大きな理由は、ツイッターでフォローしているパリ管弦楽団の副コンサートマスターの千々岩さんがシベリウスの協奏曲を弾くからなんです。ちょっぴりお知り合いになった人の音楽会、ドキドキしながら聴いてみたいじゃないですか。

でもね、同時に、こんなブログを書いてる身としては、SNS上とはいえ知り合いのことをちゃんと批評して書けるのかという心配もいっぱい。書かなきゃいいんだけど、一応聴きに行った音楽会は良くても悪くても全部書いてるし〜、おべっか使うと言葉に力なくなっちゃうし。はい。アホですね、わたし。聴く前から心配してるなんて。

そうアホな心配は音楽が始まるとすぐ、晴れ渡るように霧散しました。千々岩さんの音とってもきれい。一流のオーケストラってソリスト並みのコンサート・マスターを持ってること知ってるけど(ニューヨーク・フィルのもそうだし、突然キャンセルしたソリストの替わりにシベリウスを弾いたロンドン・シンフォニーのシモヴィックさんも凄かった)、パリ管の千々岩さんも確実にそのひとり、ということが分かりました。はっきりとした遅めのテンポで丁寧に弾いていきます。ひとつの音もないがしろにしない。つーんと冷たい音色ではなくて、室温でいただく、きりっとしたおいしい純米酒のような音色。または、室温で飲むペリエのような爽やかさ。オーケストラのバックも雄大に音楽をつけていきます(第1楽章はヴァイオリンに覆い被さって凌駕する部分があっても良かったと思いましたが)。ソロとオーケストラのバランスのとれた演奏です。
第2楽章に入ってあれれ。さっきまで好調だったオーケストラがどうしちゃったのって感じ。叙情的な楽章は,もうちょっと粘ってもとも思いましたが、歌いすぎない、でも陰のような情念をたたえてる音楽は、暗くて重みのある音楽。後半はオーケストラも持ち直して、ヴァイオリンとオーケストラが反対向きに音楽を壊すさまがスリリングでした。反対のベクトルで引き合ってる。
今日の演奏で一番性格がはっきりしていたのが第3楽章です。千々岩さんは、しっかりとアクセントを強調して、土の香りの強くするのほんずな踊りの音楽を弾いていきます。春の祭典のような、あそこまで吹っ切れて土俗的な踊りを踊るのが新鮮でした。主張がはっきりとして,千々岩さんはこれがやりたかったんだなって思いました。交響曲第2番の叙情性から第4番の闇に落ち込むところの暗いシベリウス。キーワードは大地とか土かな。
千々岩さんのアンコールは、細川俊夫さんの無伴奏ヴァイオリンのためのエレジー。これが、シベリウスのポスト・スクリプトのように聞こえてとっても良かったの。これを聴けただけでも今日の音楽会に来た価値ある。空気が一点に吸い込まれる,心臓をきゅうっと掴まれるような時でした。ブラヴォー。

タコの交響曲第5番は、初っぱなからど真ん中。力強く気合いの入った音で気持ちいい。鋭い刀で切ったような冷たさはないけど、がつんとくる感じは捨てがたい。オーケストラのテーマの完全燃焼という言葉に納得。宮本さんの音楽は、奇をてらわず、堂々としていて,熱い。大ぶりな身振りと,大音量の唸りで(これはもちょっと控えた方が良いかと)、オーケストラをぐいぐい引っ張っていきます。まるで、高校生と熱血教師。わたしが高校生だったら,こう演奏したいなって演奏。青春青春。だからストレイトで、ショスタコーヴィチがちりばめたたくさんの斜に構えた皮肉や諧謔は薄まってる,というか聞こえない。だから第2楽章は、まともすぎてかえってつまらなくなっちゃったけど、全体的にはぐっとくる演奏。わたしだって熱い青春時代はあったのだ。というか、今でもまだ熱いんじゃないかと思わせてくれるような音楽でした。最初っからゆっくり目のテンポ設定だったのだけど、第4楽章が特にゆっくりで,いつアチェレランドするのかってドキドキワクワクしながら待ってたら、(ちょっぴり速くはなったけど)最後までじっくり。焦らされ焦らされ心を押し上げてくるのだけど、それは、お終いの方のホルンと弦楽合奏の静かな部分が終わって、小太鼓に乗って木管楽器が主題を再現させるところで頂点に。と思ったら、最後の最後、やってくれました。象の歩み。こんなテンポで!なんだか不思議な感じ。勝利でもない、悲劇でもない、物語性も感じない。だからいい。
実は、宮本さんが何を考えてこういう演奏にしたのかは,つかみ損ねてるのだけど、自分が若返ったような気がして、超アンチ・エイジングな演奏、アンチ・エイジング美容液ぱしゃぱしゃするより、わたしにはこっちの方がよっぽどいいなぁ。

シティ・フィル、弱音をもうちょっとってところもあったけど、宮本さんとどんな音楽を作っていくのか,もっと聴いてみたくなりました。
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by zerbinetta | 2013-03-16 22:04 | 日本のオーケストラ | Comments(2)

Commented by かんとく at 2013-04-04 23:39 x
つるびねったさん、こんにちは。TBありがとうございました。宮本さんとシティ・フィル、とっても熱かったですね。私もちょっと追いかけたいと思ってます。
Commented by zerbinetta at 2013-04-05 22:53
トラックバックやり逃げでごめんなさい。
ほんと熱い炎を放っていましたね〜。あそこまで素直でまっすぐな演奏もあまりないのではないでしょうか。シティ・フィルはわたしも好印象です。

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