モーツァルト聴いても頭良くならないよ 飯守、東京シティ・フィル ブルックナー5   

2013年4月19日 @東京オペラシティ コンサート・ホール

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
ブルックナー:交響曲第5番

菊池洋子(ピアノ)
飯守泰次郎/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

最近、このブログ、音楽会日記+αなのにαの部分ばっかりでちょっと肩身が狭くなっちゃってるんだけど、今日は久しぶりに音楽会。シティ・フィルのブルックナーを聴きに出かけてきました。ブルヲタじゃないのに。しかも交響曲第5番、あまり好きではないのに。なんてことでしょう。
ブルックナー1曲だけだと思ってたら、モーツァルトのピアノ協奏曲も演奏されるのでした。

音楽会が始まる前に,指揮者の飯守さんがピアノ演奏を交えてブルックナーの交響曲第5番の解説をして下さいました。モーツァルトのレクイエムとの類似性のお話は面白かったです。でも、曲の解説は、なんだか自分の世界に入ってるみたいで、順を追って主題をピアノで聴かせてくれるだけでちょっとつまらなかったし、プレゼンテイションの仕方にひと工夫必要だなって思いました。この音楽がお好きなのは分かりましたが、没入型の演奏になるのかなぁちょっと心配。

モーツァルト。菊池さんの白と黒の艶やかなコントラストのドレスは好き。落ち着いてるけど華やかな感じで、ハ長調の音楽の祝祭的な雰囲気に合いそう。菊池さんと飯守さんのモーツァルトの協奏曲第21番は、この超有名な音楽(第2楽章の甘美な音楽がよく大学生協の食堂でかかってました)をとってもロマンティックに演奏しました。プロフィールによると菊池さんはフォルテピアノも弾くそうだけど、現代ピアノと弾き分けてるのかな、完全に現代サイドの演奏でした。
わたしはロマンティックなモーツァルトは嫌いではないのだけど(ピリオド楽器でのピアノ協奏曲はほとんど聴いたことないし)、今日の演奏はわたしの好みとは全然違ってました。まず、ピアノの音色がなんだか平板でだめ。それに左手と右手がちぐはぐな気もして、リズムが先走っちゃうところもあったように感じました。それに不用意に音が濁ってしまうのも気になりました。第2楽章は、ロマンティックすぎて、なんだかイージー・リスニングみたいな音楽。モーツァルトってこんなだったっけ?モーツァルトは胎教に良いとか、頭が良くなるとか、なんだかそんな、モーツァルトの音の表面の膜を体現したみたいで、モーツァルトってそんな簡単じゃない、もっと真実に近い、心に強い作用をしてしまう音楽なのにって思った。モーツァルトのピアノ協奏曲は、今まで聴いてきたのがピレシュさんだったり光子さんだったりルプーさんだったりするので、わたしの耳が贅沢になりすぎてるのかも知れません。この曲もエマールさんの神がかった演奏で聴いているし。菊池さんって,モーツァルト音楽コンクールで優勝しているのですね。わたしには、あまり合わないモーツァルトだったけど、本当は良い演奏だったのかなぁ。まっいいや、わたしの気持ちはわたしのものだから。オーケストラも残念ながら、貧弱で,特に弱音での弦楽器の艶のなさが気になりました。マーラーとかタコとかそういうアクロバティックな技術が必要な音楽なら誤魔化しがきくけど、モーツァルトのようなシンプルな音楽はオーケストラの本質的な力が直接に出てしまいますね。モーツァルトとハイドンは下手なオーケストラでは聴きたくない。
菊池さんがアンコールに弾いたクルタークとバッハのカンタータ147番をつなげて。これは始まりがとっても良かったので,彼女は、こういう音楽の方が合ってるのかなっても思いました。

飯守さんのブルックナーの交響曲第5番は、熱演でした。基本のテンポが遅くて,緩急を大きく付けた演奏。第1楽章は、第1主題のテンポをブロックごとにいくつか異なるで振り分けていて,これはちょっとやり過ぎ、基調の速めのテンポでいいのにな、そうすれば第2主題の遅いテンポと対比がより付くのにって思ってしまいました。第1主題のテンポが動くのでちょっとこんがらがっちゃった。でも、中声部の弦楽器が歌うところとか、トレモロがとっても印象的に聞こえました。このトレモロ、もっと聴きたいと思ったんですが,出てくるの第1楽章だけなんですね。残念。
第2楽章はめちゃくちゃゆっくり。弦楽合奏の音が厚く流れていて、それにのる金管楽器や木管楽器も一体となってまとまりのある音楽を作っていました。お終いは振りを間違えたんじゃないかと思うほどのゆっくりテンポで、神秘的な天上の体験には至らなかったけど、充実した音楽でした。このテンポで弾ききったオーケストラもよく付いていったって感心しました。緊張が途切れることありませんでしたしね。
続く第3楽章は,速めのテンポで勢いよく攻めます。ただ音楽がくどいですよね〜。主部だけでトリオを含んでるような感じで、いつまでたっても終わりませんもの。終わったと思ったらほんとのトリオだし。
最後の楽章は、第1楽章みたいにカラフルなテンポ設定で幻惑させるのかなぁと思ったら、そうでもなくて良かった。基本的に第1主題は速め、第2主題とコラールは遅めで、ふたつの主題が重なるところは秘かにアチェレランドして多少テンポを戻していました。途中、指揮者が大きくうなり声を上げて指揮してるなぁと思ってたら、金管楽器のコラールが入るところでトロンボーンがひとりぽつんと先に出ちゃってドキリとしたけど、あれは指揮者が妙な間を開けようとしたからかな。でも、大きなミスはそれくらいで音楽を傷つけるほどではありませんでした。一番音楽を傷つけていたのは,客席で始終がさごと音を立てていたおじいさんでしょう。
飯守さんの指揮は,各主題をブロックごとに丁寧に描き分ける(主にテンポ設定を通して)もので、見通しのはっきりしたブルックナーでした。宗教とか精神性とか四の五の言わずに(指揮者の意図したことではないかも知れませんが)、音たちの洪水を楽しませてくれるものでした。ずいぶんと長大な(演奏時間90分くらい?)演奏で、あれこんな音あったのかってブルックナー自身がカットした楽譜をゴミ箱からかき集めてつなげちゃったのかしら、なんて思いました。もちろんそんなことはなくて、何となく音楽が迷子になっていただけですけど。
オーケストラは、ホルンがんばれ、とかテンポ感ずれてるよ、とかホールを味方に付けろ、っても思ったけど,最後まで息を切らさないスタミナには拍手です。もちろん、ホールの響きがいいので、オーケストラがもう少し上手くて,残響をきれいに残す音のしまい方ができれば、とは思いました。ウィーン・フィルとかはやっぱり上手くて、響きのないロイヤル・フェスティヴァル・ホールにお客さんで来るときでも,最後ふわんと響くブルックナーを演奏できますしね。シティ・フィルもせっかくこのホールを本拠地にしてるので、ホールの響きを味方に付ける演奏をすれば,とっても良くなるに違いないと思います。大事なことだから2度言います。ホルンがんばれ〜〜。

この曲に関しては、桁外れな次元の違う演奏を聴いたことがあります。でも、今日の飯守さんとシティ・フィルの演奏もとても心に残る演奏でした。
カーテンコールのとき、飯守さんが小さな花束を持って出てこられたので、あれ、花束もらう方なのに袖でもらっちゃったのかな,と思ったら、すたすたと歩いて行って、今月で退団されるオーボエの市川さんに花束を渡されました。最後の定期演奏会、きっと充実したものになったんじゃないかしら。最後にふさわしい音楽と演奏だったもの。
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by zerbinetta | 2013-04-19 15:46 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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