帰るべきところから聞こえてくる聖歌 インキネン、日フィル シベリウス3、6、7   

2013年4月26日 @サントリーホール

シベリウス:交響曲第3番、6番、7番

ピエタリ・インキネン/日本フィルハーモニー管弦楽団


日本ってイギリスと並んで、本国以外ではシベリウスがとても愛されている国。だから、シベリウスの作品がたくさん演奏されるんですね。ロンドンではわたしがいた4年間の間に,交響曲の全曲サイクルが2回、それに他にも単発で演奏されてます。一番演奏機会の少ない交響曲第4番でも2回聴きました。こんなことはUSではなかったし(7年間で交響曲が多分3回だけ。クレルヴォと第1番と7番。しかも全部外国のオーケストラ)、ヨーロッパ大陸でもないでしょう。シベリウス好きには日本やイギリス、もちろんきっとフィンランドも、はたまりませんね。わたしもシベリウス好きなので、若いフィンランドの指揮者、インキネンさんが日フィルを振る,シベリウス・サイクルは楽しみにしてました。といいつつ、聴きに行ったのは大好きな3曲をまとめてやる今日の音楽会だけなんですが。それにしてもわたしの好きな曲を3曲集めてというのはなんて嬉しい!プログラムなんでしょう。教会交響曲3曲ですね♡

サントリーホールはとっても久しぶり。外国に出る前だから、もう15年以上も昔、何回か聴きに来たことがあります。すっかりどんなところか忘れてた。サントリーホールってちょっと使い手が悪そう。だって、開演の30分くらい前までホールには入れないんですもの。というのはまあ普通なんだけど、ホールの外は外。アークヒルズのコンプレックスではあるけれども、ホールと同じ建物続きで,お茶したり休憩できるロビーが欲しいよね。せめてホールのエリアとして屋根付きの雨風をしのげるところが欲しいです。中の客席はこぢんまりとしていて、ステージが意外と広いと思いました。居心地はいいです。

日フィルは初めて。どんな演奏になるんでしょう。開演前のステージでは、数人の人が音出ししていました。そのままオーケストラは三々五々ステージに集うのかなと思ったら,いったん全員引っ込んでからわらわらと出てきました。こういうスタイル日本では多い?

インキネンさん、イケメンじゃん♡33歳くらい。
交響曲第3番は、でも、しかし、始まりの速い刻みの音がぴったり合わなくて、あれよあれよといううちに焦点が合わないまま進んでいきました。ゆっくり目のテンポでの演奏ではあるんですけど、この曲、軽快なリズムの音楽であるから、リズムが合わないとのれないです。わざとそうしてるのかしら。でも、それは音楽の中にあるものとは違う。あとで気づくんだけど,インキネンさんって横の線で歌うのはとってもいいんだけど、縦の線を刻むのは苦手な感じ。オーケストラがそこを汲み取ってしっかり合わせられればいいんでしょうけど、日フィルにはそこまでの力がないのかな。ずうっとちぐはぐなまま。それに、奏者ひとりひとりがこの曲を知らないで弾いてる感じでした。ばらばらでまとまりがないもの。特に内声の人やホルンとか和音を作る人はよく分からないで弾いて(吹いて)いるみたい。そして残念なことは、ティンパニのリズム感のなさ。ティンパニがぐいっとオーケストラを引っ張らなきゃいけないのに、オーケストラのあとから付いていくという感じ。マレットの選択にももう少し工夫が欲しいです。ホールは良い音のホールだと思うのだけど、ホールの音を生かす工夫をオーケストラがしていないのもがっかりでした。教会のコラールみたいに音が響くように作られてる曲だと思うのだけど、ホールの残響を利用した音のまとめ方ができていない感じでした。第2楽章はわたしにとって,絶対泣く音楽なんだけど、ちょっと遠くに置き去られたみたいにぼーっと立っているしかありませんでした。

と、前半は、珍しく強い言葉で不満を書いてしまいました。
そんなもやもや感の中後半。

第6交響曲は,一番大好きな曲。インキネンさんのテンポはここでもゆっくり目で,あっ!カラヤンのみたい(真ん中のクライマックスでの木管楽器の速い音符の吹かせ方も)って思って嬉しくなっちゃった。カラヤンの演奏が好きなの。インキネンさんの横の線を大切にした音楽の作り方はここではとっても上手くいっててオーケストラも見違えるようになって、これはとってもステキなシベリウスでした(第3楽章はリズムが停滞してたけどね)。インキネンさんの演奏は、シベリウスの中に熱くのめり込むものではなく、少し距離を置いて突き放している感じ。なので、より客観的な音楽になっていたと思います。外国のオーケストラでの演奏なのでそういう方向が生きているんじゃないかしら。暖かな人肌のぬくもりをもった音楽。とても大きな音楽作りだけど,雄大にはならずに自分にとって居心地の良い空間のサイズ。北欧の森も湖も空もイメジできなかったけど、それは当たり前。行ったことのない空気を吸ったことのないわたしにとってそれは作り物のイメジだもの。むしろ、シベリウスの音楽からわたしの裡にある自然の景色を、それは北海道の山だったり、クロアチアの湖だったり、オーストリアの丘に立つ小さな教会だったり、今日見た青い空だったり、岩手の峠の上で見た銀河だったり、本物の風景を音の中に感じさせてくれました。

内省的なエピローグで音楽を閉じると、すぐ続けて、第7交響曲の緩やかな音階。ゆっくりだけど後打ちのコントラバスを粘ることなく弾かせて、すうっと上がっていく。第6交響曲の後にすぐ続けて第7を演奏するということはアナウンスされていたので知っていたけど、こんなに違和感なくぴったりとつながるとは思っていませんでした。ひとつの独立した、それも最高に深く密度の濃い音楽なのに、境目が溶けてひとつの作品になる。こういうスタイルは初めて(第6番と7番が続けて演奏されたことはあったけど,その間に指揮者はいったん引っ込んだ)。でも、これは間違いなく成功していたな。音楽は内面でつながっていたし、そのつながりの中で演奏されることによって,ふたつの曲の新しい一面を見ることができたように思えます。
それにしても,あの、トロンボーンの聖歌が出てくるところは,何度聴いても感動する。理想の故郷に帰ってきた思い。奇跡のような音楽。あまりに壮大だけど,それは大きく広がるのではなくて,中へ中へと深く入っていく。わたしの中の小宇宙。シベリウスは最後何を見てしまったんだろう。もうこれ以上音楽が書けなくなるほどに。

日フィルの木管楽器は、あまり弱音を聞かせてくれなかったけどとてもきれいでした。シベリウスのこの3つの交響曲には,木管楽器が大事だもの。最後のふたつの交響曲の説得力は、この木管楽器の賜物。オーケストラ全体としては、音のしまい方やホールの響かせ方(特に今日の3つの交響曲は教会的な音の響きがあるのでそれがとっても重要)、ピアニッシモの響きに欠けはあったけど、それよりも後半のふたつは音楽の素晴らしさが雑念なく浮き上がってくる素晴らしい演奏でした。これからもインキネンさんとステキな音楽を作っていって欲しいです。インキネンさん、首席客演じゃなくて首席指揮者か音楽監督として迎えてインキネンさん色にしちゃえばいいのに。
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by zerbinetta | 2013-04-26 14:36 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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