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何を聴かせたかったんだろう? 佐村河内守、ピアノソナタ第2番発表会   

2013年6月13日 @ヤマハホール

佐村河内守:ピアノ・ソナタ第2番(抜粋)

ソン・ヨルム(ピアノ)


ひょんなことから、佐村河内さんのピアノ・ソナタ第2番の完成発表会にご招待されて(間違った敬語)聴いてきました。この間、佐村河内さんのことについて調べていたら、日本コロムビアのサイトに告知があって申し込んでみたの、ファンでもないのに。これが、不思議な申し込みだったんだけど、名前とか、このことをどこで知りましたか?とかのアンケートがあって、最後に、これから日本コロムビアからのお知らせを送付して良いですか?はい、いいえ、すでに会員です、の選択肢があって、はいと答えた人はメイル・アドレスを記入して下さい、ということで、そんなお知らせはいらないから、いいえで、送信。するってえと旦那、相手に送信されるわたしの個人情報は名前だけ。えええっ?どうやって当選のお知らせメイルくれるの??送ってしまった以上は後の祭りなので、もう1回、いいえのままメイル・アドレスを入れて送信しました。気づかなかった人は落選したと思ってるんだろうな〜(当選者だけに連絡だったので)。

ヤマハホールは初めて行きます。ヤマハ自体にはちょくちょく来たことがあるのですが。メイルのコピーを見せて席票をもらうと前の方の結構良い席でした。ラッキー。お披露目会ですからたくさんのプレスの方々が招待されていて、あとは音楽ファンの方々でしょうか。前半は、日本コロムビアの方から、交響曲第1番が録音、発売された経緯についてのお話と佐村河内さんから、ピアノ・ソナタ第2番についての簡単な説明がありました。詳しいことはきっと正式に発表されると思うので、大ざっぱにかいつまむと、この曲は、以前書かれた「レクイエム」を拡大して作られた36分ばかりかかる作品だそうです。「レクイエム」は震災のとき出会った少女に書かれた、個人的な思いの詰まった曲だけど、実際に被災地に足を運んで彼が感じた思いを込めた、個人ではなく被災した人々のために書かれたとおっしゃっていました。そして演奏には超絶技巧のいる大変な作品なんだと。
演奏者として、ソン・ヨルムさん(一昨年のチャイコフスキー・コンクールで2位を取った韓国出身のピアニスト。そのときの優勝者は圧倒的な才能を見せつけたダニール・トリフォノフさん♡)を選んだのは彼女の圧倒的なテクニックと人間性に惚れ込んだからだそう。この短いお話の中で、そして演奏の後でも、超絶技巧ということについて強調されてたのにちょっと不安というか違和感を感じました。

そして、なんと!今日ここで弾かれるのは、ソナタの第1楽章ではなく、佐村河内さんが曲を10分くらいにまとめたものだというのを聞いて絶句。オペラの抜粋ならまだ分かる。それでも、それぞれのアリアとかはあまりカットしないと思うけど。交響曲だとかソナタのような論理的な形式が大切な作品を、それぞれの楽章からかいつまんでつなげる(といってもこの曲がいくつの楽章からできているのかは分かりません。リストのように単一楽章かも知れません)って。。。そこから何を聞き取れっていうの?例えば、シューベルトのD960のソナタをかいつまんで10分ほどにまとめられたものを聴かされて何が分かるというのでしょう。美しい旋律、だけだとしたらこの曲の本質は何も伝わっていないことになりますよね。

正直、聴いた音楽のかけらだから、わたしはこの曲がどんな曲なのかはちっとも分かりません。響きはバッハに似たところがあったり(多分オリジナルの「レクイエム」の部分)、一瞬チャイコフスキーの響きが聞こえたりしたけど、全体的にはリストのロ短調のソナタのような曲なのかな。佐村河内さんがおっしゃってた超絶技巧という部分は、フォルテッシモで激しい感情を露出した部分かしら。
佐村河内さんは、感情をそのまま音に出す作品を作っているのでしょうか。それはとても分かりやすい。でも、底が浅くないでしょうか。「本当の悲しみは、頬笑みながら涙を流すことだよ」誰の言葉かは忘れたけど、本当の悲しみの前でわたしたちは泣き叫ぶことができるでしょうか。泣き叫ぶことで悲しみを伝えることができるでしょうか。泣き叫ぶことでカタルシスを得ることはできるかもしれませんが。狂ったようにピアノを叩きまくる叫びは何を伝えようとしているのでしょう。全体が見えていないので、素っ頓狂な感想に過ぎないのだけど。

やっぱり気になったのは、佐村河内さんが何度もおっしゃっていた超絶技巧です。ヨルムさんも、昨日彼の前で弾いたときよりもっと凄いよ、と速く弾いたみたいだけど、そんな、アンコールで弾くヴォロドス編の「トルコ行進曲」じゃあるまいし。リストのソナタを速弾きするのが良い演奏、という考え方なのかな。極限で弾くことで表現できる音楽?? 

ピアノのヨルムさんは、この短いショウピースからは何も感じませんでした。ミス・タッチなしで完璧に弾いて上手い人だとは思うけど今の若い人、みんな上手いし。表情を見てるとのめり込み系かな。銀のハイヒールがステキでした。演奏後お話があって、ステキな「レクイエム」がトランスフォームして複雑になった、というようなことをおっしゃっていましたが、ジョークとも穿った見方をすれば皮肉かなとも思ってしまったり。心が曲がっていてごめんなさい。

最後に違和感を覚えたことをひとつ書きます。それは、コロムビアの方が佐村河内さんのことを敬称なしで呼んでいたこと。反対に、佐村河内さんもコロムビアの方を敬称なしで呼び捨てでした。お互いに身内?コロムビアにとって佐村河内さんは売り物を作る社員?芸術家って、売る人からは独立していないの?わたしが、レコード会社の事情について無知なだけかも知れませんが。音楽を売る現場を見た気がします。

今日は何しに行ったんだろう?後味の悪い思いです。もちろん、プレス発表ってこういうものなのかも知れません。わたしがそれを知らなかっただけ。そんなことで取り乱すくらい、わたしはまだまだnaïve(本来の意味はネガティヴな言葉です)なのですね。

by zerbinetta | 2013-06-13 23:08 | 室内楽・リサイタル

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