わたしが指揮されちゃった 小笠原吉秀/東京大学フィロムジカ交響楽団、マーラー5   

2013年6月23日 @文京シビックホール 大ホール

シュトラウスII:「こうもり」序曲
フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」
マーラー:交響曲第5番

小笠原吉秀/東京大学フィロムジカ交響楽団


東京のクラヲタさんたちは、多くがハーディングさんと新日フィルのマーラーを聴きに行ってるさなか(えっ?)、わたしは文京シビックホールというところに別のマーラーを聴きに行ってきました。東京大学フィロムジカ交響楽団の音楽会。大学のオーケストラはずいぶんと久しぶり。東京大学はわたしのなんちゃって母校なのに、こんなカタカナのオーケストラあったっけ?って見たら、新しめのオーケストラだったんですね(わたしのいた頃にはできてたようだけど)。今はいくつか学内オーケストラあるみたいだし。それにしても、大学オケって若いなぁ。4分の1くらいはこの間まで高校生だったんだもんね。この際若いエキスをタップリ吸わなきゃ。
ずいぶんと人数の大きいオーケストラ。プログラムによると160人くらい?アマチュアゆえの音量のなさを人数でカヴァー?シモンボリバルとかGBナショナル・ユースもそんな感じだったな。でも、音楽の仲間がたくさんいるのはいいよね。

文京シビックホールには初めて来ました。お客さんがずいぶん並んでいたのにびっくり(ただだから?)。ホールはほぼ満員。いつの間にかできてたんですね、こんなきれいなホール。1階は傾斜がゆるくて少し見づらいかもとも思ったけど、ここも明るくて良いホールだなぁ。東京には良いホールがいっぱい。ただ舞台が箱状になってるので、音が舞台にこもってから聞こえてくるみたい。上手なオーケストラだと上手く音を飛ばしてくるのかな。

「こうもり」はなかなか楽しい演奏。すらっとして田舎くさいウィーン訛りがなくて、ラ・ヴァルスのようなワルツ。わざわざへたくそな東京人の大阪弁みたいにぎこちない方言でやるより、そういうのはウィーンの人たちに任せて、スマートにやっちゃうのもいい。演奏は正直とても上手いとは言えないけど、みんなができる精一杯のことをやっていて、弦楽器の後ろの方でムニャムニャと適当にごまかしたり落ちたりする人もいなくて、好感度大。指揮者の小笠原さんは、とても良くオーケストラをコントロールしていて学生と共に音楽を上手に作っていました。大変なことはやらせないけど、音楽のポイントは掴んで自分の音楽を出していたと思います。

「ペレアスとメリザンド」は、小編成で。こうなるとオーケストラの実力が出ちゃうのね。最初のノンヴィブラートの音は、あら、大丈夫かしらと思いました。でも、音楽が動いてきてヴィブラートもかけるようになるといいかな、と。こういう音楽の方が個人の力量がもろに出ちゃうし、実は、この曲、あまりこのオーケストラに向いてないんじゃないかと思いました。

さて、マーラーです。マーラーは、勢いでなんとかなりそうって思っていたのですが。。。始まりのトランペットのソロを聴いて難しいかなぁ、と。ちゃんと吹ける人だと思うんですけど、緊張や音色に注意して丁寧に行こうとするあまり、萎縮しちゃったかな。まあプロでも緊張するでしょうし、聴いてるわたしも緊張するんですけど、すかんと行った方が良かったかもね。第1楽章、第2楽章は速めのテンポでスマートに進みます。オーケストラが、レガートでたっぷり歌うというのには力不足だったので、このスタイルは上手くいってたと思います。
小笠原さんは、エキセントリックなことはしないけど、とても細やかにフレーズを作って、アクセントをしっかり付けたり、並走する旋律群を上手く絡めたり、音楽と一体となって分かりやすい身振りでオーケストラを導いていきます。こんな風に全霊を込めて指揮されたら、オーケストラはついて行っちゃいますね〜。ステキ。小笠原さんとフィロムジカ交響楽団は長く関係を続けている(今年5年目)ので、指揮者とオーケストラの間に良い信頼関係があるのですね。オーケストラの実力は、例えば、トランペットがオーケストラの全奏にかき消されてメロディが消えちゃったり、チェロとかももう少し音量が欲しいところで来なかったり、ピアニッシモが甘かったり、確かに聞こえてくる音は、プロのオーケストラで聴かれるような音ではありません。でも、オーケストラの真剣さや音楽感の統一度、指揮者の指揮ぶりから、彼らが演奏しようとしている音楽が頭の中にしっかり聞こえてきて良かったのです。小笠原さんの指揮で、わたしの中で彼らの音楽が鳴っていた。トロンボーンとティンパニを筆頭に打楽器は上手かったですよ。ティンパニの音楽を引っ張る叩き方かっこよかったし。マレットを表情に合わせて変える工夫をすればもっともっと良くなるでしょう。

正直、聴く前と聴き始めは、このオーケストラにマーラーは難しいんじゃないかなって思いました。このオーケストラがマーラーを採り上げるのは初めてみたいだし、それなら交響曲なら第1番が先じゃないかしらって。それに、新入生が入ってすぐの夏の音楽会じゃなくて、オーケストラの音ができる冬の音楽会でじっくり採り上げた方がいいのかなって。オーケストラのみんなが議論して第5をやろうって指揮者に報告したとき、えええっ!ってびっくりしたんじゃないかしら(内心無理だろーっ、どうしようって)。でも、出された結果はとてもステキでした。第3楽章のスケルツォがよく作り込まれてとても良かったです。そして、第4楽章の清楚な美しさ。このふたつが一番の収穫です。小笠原さんは、音楽をただ進めるだけじゃなく、しっかり自分の音楽を作っていたこともステキでした♡

マーラーはこの演奏を聴いたらどう思ったでしょう。下手くそって思うのかな。それとも、演奏は下手だけど、彼の音楽を愛してできるだけのことをしようと全霊で挑んでくるのを良しとするか。マーラーの当時は、マーラーが指揮していたオーケストラはこのオーケストラより上手いでしょう(プロだし)。でも、彼の反対者がオーケストラの中にもたくさんいて、嫌がらせをしたり、まさに前衛と言える彼の音楽への無理解を考えると、アマチュア好きのマーラーのこと、今日の学生オーケストラの、彼の音楽を理解し、必死に表現しようとする意欲を取ったんじゃないかなって勝手に思います。少なくともわたしにはマーラーの音楽が聞こえました。

と、マーラーを褒めた舌の根が乾かぬうちに、一番良かったのはアンコールの「雷鳴と稲妻」。指揮者もオーケストラものびの〜び弾いてましたね。絶対こういう曲、向いてる。このコンビでニュウ・イヤー・コンサートみたいなのも聴いてみたいなぁ。
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by zerbinetta | 2013-06-23 23:13 | アマチュア | Comments(3)

Commented by cyclisttak at 2013-06-25 10:47 x
ツェルビネッタさん。毎日いろいろな演奏会に参加されてうらやましい限り。私は定年間近のサラリーマンでもうちょっとでそういう身分になれそうです。私も時々アマチュアのオーケストラを聴きに行きますが、下手は下手なりにみんながんばってるなあと感心し、こっちも一生懸命に聴きます。マーラーの5番は出だしのトランペットが命だから、聴いている方が「うまくいくかな~」と思ってかなり緊張しますね。
Commented by zerbinetta at 2013-07-04 21:11
毎日ではないですよ〜〜。主に週末です。
ロンドンではむちゃくちゃ聴きましたが、あの生活を続けたら大変だと思います。わたしも楽隠居して音楽会ばかり聴きに行きたい〜。
アマチュアの音楽会、侮れません。それぞれ楽しみ方がありますね。
Commented by cyclisttak at 2013-07-05 15:44 x
ツェルビネッタさん。本当は毎日じゃないの?ロンドンで無茶苦茶か。最高でしょうね。音楽とビールはやっぱり生ですね。

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