一流のソリストとの共演はアマオケにとって宝 藤田有希、石毛保彦/オーケストラルゼル   

2013年7月15日 @杉並公会堂

ボロディン:「イーゴリ公」序曲
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

藤田有希(ヴァイオリン)
石毛保彦/オーケストラ・ルゼル


生まれて初めての杉並公会堂です。わたしのイメジでは老舗のホール。何しろカタカナのこじゃれた名前じゃなくて公会堂だもの。昭和の香りがするよね。と思ってきてみたら、ガラス窓を大きく採り入れた明るくて新しいきれいなホールでした。最近立て直したのね、ホワイエが狭いのが玉に瑕。

オーケストラ・ルゼルは東京電機大学のオーケストラの卒業生を中心にして作られたオーケストラだそうです。20代中心かしら。コンサートマスターの人がちょっとナルシスト入ってるぅ、なんて可笑しかったりして。

「イーゴリ公」の序曲はほんとはボロディンの作ではないんですね。そんなこともこの間のロシア専門オケの音楽会で知って、ふむふむ、普通はこだわらないんだな、とかちょっぴり知ったかぶりしてみたり。なかなか勢いのある演奏でした。指揮者の石毛さんは、お医者さんを止めて(多分)、指揮者の道に入られた方なんですね。歳は取っている(いやそれほどでもない?)けど指揮者としてはまだ若手(?)。流れるような指揮でかっこいい。指揮者に憧れて指揮者になったというのがよく分かる感じです。きっと指揮者を目指す前はお仕事の休みに家でCDを聴きながら菜箸でたくさん指揮してきたのでしょう(と、失礼ながら勝手な妄想)。でも、そんな流麗な指揮ぶりだから、歌わせるのがとっても上手い。よく歌う「イーゴリ公」でした。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲、アマチュア・オーケストラで聴くのは実は2回目。前は、ロンドンの高校生(プロを目指したり目指さなかったり)がセーゲルスタムさんの下、フィンランド(US生まれ)の若手ヴァイオリン奏者エリナ・ヴァハラさんの演奏でした。そのときの演奏はとても良かったけど、今日はどうでしょう。なんてもったいつけないで言うと、凄く良かった。ソロを弾いた有希さんの音楽に聴き惚れていました。
有希さんは現在、フィンランドのシベリウス音楽院に留学中のヴァイオリニストなんですね。一時帰国中。明るいピンクの(うろ覚え)裾の大きく広がった(Aライン?)のドレスで(最近ヴァイオリニストではあまり見ないからびっくりした!)、かわいらしい感じの方。24歳くらいなんですね。オーケストラのメンバーと約同年代。
さわさわと静かにオーケストラが始まると、アマチュアの弱さ、弱音は力がなくて掠れてしまうのだけど、すうっとソロが入ってくると、とたんにオーケストラが締まったの。ソリストが音でオーケストラをリードしていく。というかオーケストラがソリストの音に感化されてる。プロのオーケストラでもこういうの聴いてきたし、ヒラリー(・ハーンさん)なんて、コンサートマスターよりもコンサートマスターらしい感じだけど、素直なアマチュア・オーケストラにはより効果的。考えてみれば、指揮者はどんなにひっくり返っても欲しい音は出せないけど(余計な音を出してうるさい指揮者はいるけど)、ソリストは自分の欲しい音を自分で示すことができるもんね。しかもヴァイオリンはピアノと違ってオーケストラの中の中心の楽器だし。完全に有希さんの音楽。わたしは有希さんの音だけを耳で追っていればいい。
有希さんのシベリウスは、清楚で澄み切っていて、わたしたちが考えるシベリウスそのもの。彼女が今住んでいる、シベリウスの国の景色を見せてくれるよう。シベリウスの音楽って懐が深くて、例えば、ニッキー(ベネデッティさん)のようなふくよかで自由な音楽も印象的だったし、リサ(バティアシュビリさん)の見せてくれた風景もステキだった。彼女たちに比べれば、有希さんの演奏はものすごく自然。この間、千々岩さんが聴かせてくれた、考えられ、練られた音楽でもなく、すっと素直。意地悪で言えば個性があまりない、のだけれども、そうではなくて、シベリウスが呼吸していたのと同じ空気を感じる音楽なんです。それは、同じ空気を吸っている有希さんだからこその音楽。頭の中で考えて真似できることではないのだと思う。有希さんは、果敢に、楽譜に書いてある音符を全部丁寧に弾こうとしてたし、ほとんどミスもなく弾ききっていました。わたしは、彼女のヴァイオリン好きだなぁ。もし将来日本に帰ってくる選択肢を取るなら、伝統的にシベリウスのオーケストラの日フィルなんかのコンサートマスターになって欲しいです。
石毛さんもオーケストラもただ手をこまねいていたわけではありませんよ。来るところはがーっときたし、来すぎちゃったところは石毛さんがしっかりコントロールして抑えてました。ほんとに素晴らしいシベリウスでした♡

休憩のあとは「田園」。最近、ベートーヴェンの交響曲の中で偏愛してます。コンサートマスターは、ナル君から変わって女の人。でも、このベートーヴェンらしからぬ繊細でかわいらしい音楽は、アマチュア・オーケストラにはちょっと荷が重かったかな。弱音で美しい豊かな音を弾かなければならないのに、それが難しいんだもの。小さな音を強い豊かな響きで弾くのってなんて難しいんだろう。アマチュア・オーケストラではそれが、プロのオーケストラのようにはできないし、ベルリン・フィルが聴かせてくれるピアニッシモの美しさは残念ながらまだ、日本のオーケストラには弾けない。そんな感じで、昔のSPレコードの乾いた音のような(そこのあなた。わたしの歳を想像したね。もちろん、生でSPレコードを聴いたことはないのよ。ラジオとか復刻のCDとかですよ)、オーケストラの音では、「田園」の魅力は半減。石毛さんの速めのテンポの相まって、「田舎に着いた楽しい気分」はそこに義両親が待ってるような胃の中に何かを入れられた感じ(義両親と上手く行かない人多いんでしょう?わたしは、義両親さん大好きですよ)。小川も流れがちょっと枯れかけてるみたいな。大きな音になると良くなるんですけどね。

アンコールは、シベリウスの多分「アンダンテ・フェスティーヴォ」(ティンパニ入り)。ソリッドな弦楽合奏は、とても良かったし、このオーケストラはこういう力の強い音楽の方が向いていそう。
今日はシベリウスを楽しんだ、という記憶を大切なフォルダーにしまっておこう。
[PR]

by zerbinetta | 2013-07-15 00:10 | アマチュア | Comments(0)

<< 海外のオーケストラで活躍する日... 白と黒、純な愛 ロイヤル・バレ... >>