習ったことは全部忘れろ!まずはそれからだ メルクル、PMFオーケストラ マーラー5   

2013年7月31日 @サントリーホール

武満:ア・ストリング・アラウンド・オータム
マーラー:交響曲第5番

ダニエル・フォスター(ヴィオラ)
準・メルクル/PMFオーケストラ


PMFオーケストラの音楽会が東京であると知って、慌ててチケット取ったんだけど、意外や意外(わたし的には)、チケット、最安値の席を含めて結構残ってた。PMFって東京では人気ないのかしら。日本最強のアマチュア・オーケストラだと思うんだけど。
東京では2回公演があって、わたしが取ったのは、有名なソリストが来る高い方ではなく、迷わず、2日目、PMFオーケストラの音楽会の最終回。だって、ソリストにヴィオラのフォスターさん♡わたしが、ナショナル・シンフォニーの定期会員だった頃から、ヴィオラのトップを弾いていた人。懐かしすぎる。ナショナル・シンフォニーではお父様の隣(お父様も元ヴィオラのトップ)で弾いてたんですね。それを見るのがいつもなんだかほほえましくて。彼はヴィオラの講師としてここ最近ずっとPMFに参加しているんですね。

会場について、あれ?お客さんが少ない。ううむ。今まで行った東京の音楽会ってどれも人、入ってたんだけどなぁ。もったいない。

1曲目は、フォスターさんのソロで、武満の「ア・ストリング・アラウンド・オータム」。小さなオーケストラの曲かなと思ってたら大編成。そして、わたしが知ってる(といっても大して知らない)武満の音楽とはちょっと違ってた。調性的で分かりやすい。そしてひたすら美しい。抽象的なドビュッシーというか、脱力弱めのシルヴェストロフ風というか、中心になるぱらぱらと上昇する音列主題がシュトラウスの「ドン・キホーテ」っぽい。あとで調べたら、後年の武満は作風を調性的なものに変えていったのね。角が取れすぎてる感じもしたけど、武満の作品はもっとちゃんと聴いてみたいと思いました。実はわたし、武満をあまりいいとは評価してこなかったので。
ヴァイオリンではないヴィオラのソロが、オーケストラの中に溶け込む感じで、人肌のでもチェロのようには歌いすぎない感じがとっても合っていました。多彩な音色を要求されるので難しそうな曲でした。フォスターさんのソロは、オーケストラの後ろの方で聴いてたせいもあったと思うけど、前に出ずに静かに佇む感じで良かったです。彼を見るのは、USでの最後の音楽会以来なのでかれこれ8年ぶりくらい(?)。でもちっとも変わってなかったよ。オーケストラの方は、上手いんだけど、まだ熟成が足りないというか、オーケストラの音がひとつにまとまっていない感じでした。長い間、一緒に演奏をしてきたひとつの丸くブレンドされた音になるのには、長時間の熟成が必要なんですね。もちろん、百戦錬磨のプロのオーケストラ奏者や室内楽の奏者は、短期間でも全体を感じ取って音楽を作り上げることができるのでしょうが、そこまでは、経験の少ない若い人たちには難しいのかも知れません。ここのレヴェルが高いので、こちらの要求も高くなっちゃいます。

休憩のあとは、マーラーの交響曲第5番。今年は東大のオーケストラに続いて聴くの2回目。今やマーラーの音楽の中で一番多く演奏される曲ですね。
PMFオーケストラについて言いたいことの全ては、始まりのトランペットのソロに含まれてました。死刑宣告をされる被告人のように逃げ場のない緊張。これからの音楽の全てがここに集中する。PMFオーケストラのトランペットの人はとても丁寧に吹いていたんだけど、楽譜に丁寧すぎたんです。細かな音量の調整や音符の速さ。とってもよく分かるくらいに丁寧で、とってもたくさん練習したんでしょう。きっと、PMFの期間にいろんなことをたくさん習ったに違いない。習ったとおり、指揮者に要求されたとおり、楽譜に書いてあるとおり、しっかりと吹いた感じ。なんだけど、それが分かっちゃったのが難点。音符と音符の間の休符で音が消えてしまうと同時に音楽もちぎれてしまっていたように聞こえました。習ったことも、技術的なことも全部忘れて(それは身体に染みこませて)、音楽に没入して欲しかったです。そんな感情を引き摺りながら聴き始めたので、第1楽章の葬送行進曲は、表面的に引き摺っているように感じてしまいました。若い人たちではどろどろした感情は無理なのかなぁって。それならドゥダメルさんが9番の交響曲で聴かせてくれたように、敢えてさらりと演っても良かったかもなんて。
メルクルさんの演奏は、主役となる各パートを、弦楽セクションでは第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラときちんと分けて聴かせる感じです。第1ヴァイオリンに歌が少し欠けていたけど、チェロはとっても良かったです。目覚ましかったのは、最初の中間部。かなり速いテンポでぐいぐい引っ張っていきます。あとで分かったのだけど、この曲にある速い部分(第2楽章とか第3楽章の部分、フィナーレ)を基準にここから音楽を組み立てているのですね。第1楽章ではのれなかったけど、第2楽章からは、だんだんと良くなっていくのが分かりました。情念はあまりないけど、楽譜に忠実に襟を正した感じのマーラー。非常に細かなところまで丁寧に作り込んでいます。理知的で細部まで分かりやすいの。その分、不条理なわからなさが消えてましたけど、それは両立し難いことだから。もうひとつ、メルクルさんは場面転換の巧みさ、大胆なゲネラル・パウゼに息を飲みました。
3楽章のホルンのソロは、とても上手かった。そして、弦楽器の人たちが、後ろの人までおまえらみんなコンマスか、というように弾いていて、前に前に出る感じが若者らしくて好感度大。そういうのがはまったとき、例えば、アダージエットの中間の部分とか、フィナーレのフーガの部分とか、涙が出そうになるくらいステキな瞬間がいくつも現れて、最後、ファンファーレ来るな!終わらせないで、なんて思いながら聴いていました。この曲は本当に素晴らしい演奏を幾度も聴いているけど、今日のフレッシュな演奏も、いい、と思わせてくれました。メルクルさんかっこいいし。観に来て、じゃなかった聴きに来てほんとに良かった。

アンコールには、PMFオーケストラのテーマ曲(あらなんて言ったんだっけ?メルクルさん向こう側を向いて話したのでよく聞き取れませんでしたが)、ホルストのジュピター。トランペットのファンファーレがちょっとへろへろでメルクルさん苦笑いでしたが、むふふ、ちょっぴりロンドンに浸かっていたわたしには嬉しい。びっくりした仕掛けが施されていて、最初の部分が終わると3拍子の部分を飛ばして、すぐ中間部の有名なメロディ。さらに、トムトムが加わってロック調にも。お終いは、すぐコーダにつながって、ただ、原曲とは調が変わっちゃってるのでこれだけは違和感があっていただけなかった。ああいいな、音楽。

今日演奏した若者たちは、これからプロの音楽家として、どこかのオーケストラや室内楽団、あるいはソリストとして活躍していくのでしょう。日本で経験した1ヶ月が、その礎として豊かなものでありますように。世界に羽ばたいていって欲しいです。PMFが世界中の音楽家をつなぐひとつの紐であることを願ってます。今日の武満の曲に引っかけて、ア・ストリング・アラウンド・ザ・ワールドですねっ。
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by zerbinetta | 2013-07-31 22:29 | アマチュア | Comments(0)

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