キュートなおでこにキュン♡ 青木涼子 NohxContemporary Music   

2013年8月22日 @高輪区民センター・区民ホール

湯浅讓二:舞働 II
フェデリコ・ガルデッラ:voice of wind
馬場法子:共命之鳥
ヴァレリオ・サニカンドロ:trois chants non
小出雅子:恋の回旋曲

青木涼子(能謡、能舞)
斉藤和志(フルート)、倉田瑞樹(打楽器)


能のことが、部活のセンパイを心の奥で片想いする中学生のように、憧れです。能はお能と柔らかく言うより、能とキッパリ言い切る方が、凜としていてわたしの感覚に近い。気高くてかっこよくてドキドキと憧れる。能面を付けた幽玄の彼の世の男に身を任せて、彼岸の世界に連れて行かれたい、なんて妄想が膨らむ。能のことちっとも知らないんですけどね。
能を聴いていたのは、10代から20代に日曜日の朝に目覚まし代わりにタイマーを仕掛けておいたラジオから聞こえてくる「能楽鑑賞」。もちろん、ぼんやりと布団の中で聞き流していただけ。
それでも強く惹かれるのです。

能をほぼ初めて観たのが恥ずかしい話、去年ロンドンで。ブリテンのオペラ「カーリュー・リヴァー」の原作、「隅田川」を教会でオペラと一緒に。せっかく日本にいるのだから、能を観たい。でも、ちょっぴり(?)ねじくれてるわたしは、伝統的な能でなくて、得意分野(?)の西洋芸術音楽との接点に目が行ってしまう。去年観た中嶋彰子さんのプロジェクト、夢幻能「月に憑かれたピエロ」がうんと良かったので、青木涼子さんの企画を何かの折に見つけたとき、街でばったり憧れのセンパイに会ったときのようにドキドキして嬉しくなってすぐチケット取ったのでした。と同時に、3月にも公演があったのを知らずに見逃してしまったのをオニヤンマを見逃してしまった少年のように悔やんだのです。

もちろん能のことをちっとも知らないわたしは、青木さんが何者かは全く知りません。チラシを見ると若いステキな女性。能楽者というと観世なんとかさんとか金春なんとかさんとかのおじいさんを想像しちゃうんだけど、能って女性もできるんですね!

能と現代音楽の共演というと、能ではない音楽の人(聴くだけだけど)のわたしが思い浮かべるのは、現代の音楽に合わせて(西洋音楽の語法で書かれた音楽に)能舞を創作するということをまず考えるのだけど(「月に憑かれたピエロ」がまさにそうでした)、青木さんの目指す方向は、新しい能謡を創作するということ。能謡を毎週聴いていたくせに(ってか、布団でまどろんでただけ)能謡をちっとも知らないわたしには、もはやちんぷんかんぷん。最初に結論書くけど、今日はとっても興味深いステキな公演だったし、演奏された作品はどれも違った素晴らしさがあったのだけど、わたしの中に、能謡を知らないという、基準点欠如の深刻な問題があったので、どこがどう新しいのかよく分からなかったのデス。裏を返せば、能と現代音楽ってあまりにもぴったり合いすぎ。分け難すぎ。というわけで、わたしのわがままは、ひとつだけ古典的な能謡があれば良かったと思いました。そうすれば、能謡を知らない人でも斬新さがもっと感じられると思ったんです。

最初の湯浅さんの曲は、アルト・フルートのソロと舞。この作品だけ、少し毛色が変わっていました。これだけ、能と現代音楽のコラボレイションの初期の(そしてその伝統はいったん途絶えるそうですが)作品なんですね。フルートのパートは完全に日本の音楽を模していると感じたんだけど、もともと能管のために書かれた作品(フルートでの演奏もOK)だったので納得です。それにしても能の舞ってステキ。感情表現を切り詰めるだけ切り詰めて、それでいて伝わってくる気持ちのエネルギーはすごくある。バレエとは全く異なる踊りだけど、どちらも愛せる、わたし。

2曲目から、青木さんの3年間のプロジェクトで作られた作品たち。2つが外国の作曲家の作品(どちらもイタリア人)、2つが日本人(どちらも女性)。大ざっぱに感じたのは、外国人の作品が(日本の)能に向かって行くのに対して、日本人の作品は能に背を向けて遠ざかっていこうという方向性が感じられました。いくら最近の日本人が日本の古典芸能を知らないとはいえ(ということを作曲者の小出さんもおっしゃっていました)、(日本語の)言葉とか深く染みついているものがあると思うのです。だから新作を作るということは必然的にまずは、離れていこうという方を向くのではないかしらと思いました。外国人は能の方を向かないと書けないというのもさもありなんです。それと、偶然、外国人の作品の伴奏がフルート、日本人のが打楽器というのも面白かったです。日本人の曲がミュジック・コンクレートの手法をより強く使っていたのも興味深い点でした(全部で4曲しか聴いてないので偶然かも知れませんけど)。

ガルデッラさんの作品は、そのまま普通の能の音楽と言っても違和感ないくらいはまっていました。バス・フルートの特殊奏法はあるけど、あらぬ方に飛んで行っちゃってる感じではなかったです。

馬場さんは、彼女がパリに留学している頃、ウェブ・サイト(ウェブ日記(まだブログがなかった時代))にコメント書いたことがあるような。ステキなサイトだったように覚えています。そんなこんなで一方的に懐かしい。謡を挟んで左右に分かれた打楽器群がホースとかペットボトルとかいろんな(打)楽器を奏するのですが、郭公とか鳥の声を模すんですね。謡は、ささやきとか無音とか扇を使ったり、今日演奏された中で一番とんがった謡の作品でした。謡の新しい表現力を感じさせてくれました。

休憩を挟んで、サニカンドロさんの曲。2011年に日本初演されるハズだったけど、震災で延期になって今日が日本初演です(初演はすでになされているようです)。作曲中のオペラの一部となるそうで、完成度の高いまとまりのある作品でした。ものすごく能の音楽を勉強して自分のものとしている感じでした。

最後は、小出さんの新作(初演)。山手線の駅名を詞に織り込んだ、丸の内OLの恋の物語。コミカルな詞、電車や駅を音にした打楽器の扱いが、わりとオーソドックスな能謡の声と不思議な融合具合で、歌のリズムが現代的で面白かったです。

今日の中では、サニカンドロさんの曲が一番印象に残りました。面白かったのは馬場さんの。でも、いろんな可能性を聴けてとても面白かったです。能の世界が分からないので、これらの音楽が、どんな風に発展していくのか予想もつかないのだけど、新しいものがたくさん生まれてそれが新しい伝統を作っていくといいな。伝統を守るって、同じことを繰り返し繰り返し倦まずやることとは違うから。時を経て同じことなんてないんだから。

こういうの、また観たいです。能謡もいつか音楽会で聴かれるようになるのかな。青木さんのこれからの活躍にも注目です。きれいなおでこにキュンとしてるわたしです。おでこの広さで勝手に親近感をいだいてたりして
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by zerbinetta | 2013-08-22 00:19 | 舞台 | Comments(0)

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