そんな馬鹿な!喜。史上最強の幻想交響曲体験! 東京大学フィロムジカ交響楽団第39回定期演奏会   

2013年12月8日 @文京シビックホール

ドビュッシー:民謡の主題によるスコットランド風行進曲
ビゼー:「カルメン」第1組曲、第2組曲から
ベルリオーズ:幻想交響曲

小笠原吉秀/東京大学フィロムジカ交響楽団


東大のフィロムジカ交響楽団、2回目デース。夏に聴いたときの未熟ながら魅力的なマーラーの交響曲の演奏に好印象を持っていたので楽しみにしていました。そうそう、このオーケストラのユニークなところは、音楽会の写真を撮ることを禁止してないことですね。この間はヴィデオ撮影している人がいました。

始まりはドビュッシーの全く聴いたことのない曲。寝耳に水?ピアノのための連弾曲を自身でオーケストラに編曲したもの
だそうです。初めて聴く曲なので、雰囲気を楽しんだに過ぎないんですが、ドビュッシーの淡いグラディエイションが良く表現されていたと思います。強奏でも決して音が割れなくて、どこか薄甘い感じ。でも、そこが同時に物足りなさも感じたんです。ドビュッシーの淡さって甘さ控えめの日本のケーキの棘のない味ではなくて、ここの楽器がもっと際だってるんだけど、その微妙な配置が生み出す中間色だと思うんですね。スーラの点描がみたいな、個々の素材の味は際立ってるけど全体としてまあるくまとまってるフランスのケーキみたいな。

次の「カルメン」の組曲からの数曲は、残念ながら物足りませんでした。お行儀が良すぎ。カルメンって場末のそしてダメダメな人間たちの物語。あばずれで男を手玉に取るカルメン、ダメ男の典型ドン・ホセ、脳みそ空っぽのかっこつけ野郎エスカミーリョ(酷い書きよう)。でも、底辺に生きる人間たちの真実の物語。一見派手やかな音楽の中にもそれはあると思うんですよね。小笠原さんと東大フィロムジカの演奏は、さっぱりしすぎて、カルメンは図書委員の女の子のようだし、エスカミーリョにも出てくるだけでぎらぎら暑いオーラが感じられなかった。オーケストラによる組曲でも、オペラではないしストーリーもないけど、カルメンはカルメンの音が聴きたかったです。どん底から放たれてくるぎらぎらとした生命力。
そうそう、全然関係ないというかクラヲタ的隅重(重箱の隅)だけど、チェロのピチカートが続くところ、人差し指で弾く人がいたり、中指だったり、親指だったりいろんな人がいるんだなって思いました。

そんなこんなで、ちょっと物足りなさを感じながら後半。幻想交響曲ってはちゃめちゃな音楽だから、お行儀よく演奏されてたら、例えそれが上手くても面白くないなぁって。なんて、したり顔で腕組みをしながら(脳内イメジ)聴き始めましたよ。最初はなんかやっぱりと思ってみたり、ブログにもそんなこと書くのかなぁって思って聴いていると、あれれ、なんだか違う。そんな感じが気のせいではなく確かにしたんです。
小笠原さんとオーケストラの関係はとても良いように思えました。長く関係を続けてこられて、今年から常任指揮者になられてのも納得です。オーケストラの指揮者に対する吸い付きは、毛穴吸引をきゅぱきゅぱするみたいに気持ちがいい。小笠原さんもこのオーケストラのことがとてもよく分かっているみたいで、オーケストラから最良のものを引き出しているみたい。アマチュアの中でものすごく上手いっていうわけではないけど、ときどき信じられないような本物の音も聞こえるから不思議。ホルンのアンサンブルとかヴィオラのトレモロには、一流のオーケストラのような音が聞こえてびっくり。学生時代って時間を忘れて一番好きなことに没頭できるときなのかも知れませんね。わたしももう一度学生になって、そしたらオーケストラで弾きたい。東大にはもう入れないだろうなぁ〜、受験勉強する根性もないしな〜なんて余計な妄想をしてしまいました。
第2楽章は、コルネットが入ったんだけど、控え目で、わたし的には、もっと前面に出してケバケバした感じが良かったな。第3楽章のイングリッシュ・ホルンとオーボエの対話は、ステージとステージ裏で。そして、お終いの方で回帰するところでは、対話の相手がいなくなって雷が鳴るんですね。今まで何となく聴いていて対話を意識していませんでした。心象風景をしっかり浮き上がらせてくれたのはステキ。そして、ティンパニを結構大きく叩かせていたのはわたし好み。そう音楽が大きく変わったのはこのあたりから。わたしは、この音楽って阿片を飲んでラリった作曲家のはちゃめちゃな音楽だと思っていたんですが、プログラムの解説によると作曲家の最初のプログラムでは、阿片でラリるのは4楽章からとのこと。そういう風に演奏したんですね。
ティンパニが結構、勇気を持って大胆に叩いていたんです。音楽をリードするまでには至っていたなかったんだけど、ばしばしと叩いていたのは好き。オーケストラも俄然熱を帯びてきて、第5楽章ははちゃめちゃ度が増している。こうじゃなきゃ。熱くなった若者、学生っていい。一所懸命な音楽の情熱が真っ直ぐに伝わってきて(結構みんな涼しい顔で弾いているんですが。ツンデレというか、もう少し殻を破って素直な感情を顔にも表すともっといいのにな)、こちらも熱くなる。鐘(ベル?)はステージ裏で叩いてて、袖で熱く指揮をする第2指揮者も見えて(前の方に座っていたので)、全体が熱を帯びて、お終いの方の弦楽器の旋律が重なっていくところのびっくりするような音色の効果(多分、技術不足が反対に奇跡的に素晴らしい音色の効果を生み出したんだと思う)、そのあとのコルレーニョも、コーダの追い込みも阿片で狂ったようで、わたしも思わずラリってしまう。びっくりするような素晴らしい幻想。興奮して今まで聴いた一番の幻想だと思いました。冷静に思い出してみると、わたし、この曲を聴くたびにいつもすごく熱くなっていたんですね。サロネンさんもラングレさんもMTTさんも素晴らしかったの思い出したし。でも、今日の演奏も、それらの上に忘れられない演奏になりました。

アンコールは、「アルルの女」から「ファランドール」。幻想の勢いをそのままに元気があって良かったです。幻想の興奮冷めやらない熱い日曜日になりました。

ついしん:
ここで約20分間の休憩をいたします、とアナウンスがあったときぷっと吹き出してしまいました。約って。そりゃきっちり20分ってことはないけど。
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by zerbinetta | 2013-12-08 00:13 | アマチュア | Comments(0)

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