もしフルトヴェングラーがアマオケを振ったら音は変わる? 横浜市立大学管弦楽団第44回定期演奏会   

2013年12月27日 @大田区民ホール アプリコ大ホール

シュトラウスII:「こうもり」序曲
ドヴォルジャーク:「スラブ舞曲集」第1集より第1番、第5番、第2集より第2番、第7番
エルガー:交響曲第1番

沖澤のどか、山田和樹/横浜市立大学管弦楽団


今年の聴き納めです。山田和樹さんが聴きたくて、蒲田までのこのこやって来ました。蒲田が東京だと知って軽くショックを受けてます(自分が無知だったことに)。蒲田の道は入り組んでて、駅から区民ホールまで来る間にしっかり迷ってしまいました(そして帰り道でもまた迷う)。
オーケストラは、横浜市立大学。プログラムの前半を沖澤のどかさんが振って、後半を山田さんが振るようです。オーケストラの皆さんは胸にコサージュ(男性のはブートニエールというんですね)を付けて少し華やか。いつもしているのかしら。それとも特別な何か?

沖澤さんは小柄でかわいらしい感じの方。黒のパンツスーツが似合ってました。指揮は正直、まだまだかな。自分の出したい音と指揮が合っていないように感じました。オーケストラをきちんと練習している様子なので、音楽は彼女のやりたい音楽になってるんですけど、指揮の動きと違う感じ。でも、彼女は音大の大学院生(だと思う。もしかしてネットにあるプロフィールが古くてもう卒業しているのかも知れないけど)、20代半ば。これからの方です。音の動かし方とか音楽の作り方にステキなものが聞こえたので、これから経験をどんどん積めばきっと伸びていくと思える伸びしろのある方だと思いました。
それにしても横浜市大のオーケストラ、侮れない。山田さんをミュージック・アドヴァイザーにして、若い指揮者を指揮台に立たせてる。こういうことこそプロのオーケストラにやってもらいたいんだけど、日本のプロのオーケストラってなんだかとほほなのよね。

エルガーの交響曲は、一筋縄ではいかない曲だと思います。ちょっと分かりづらいし、演奏によっては何をやってるのか分からなくなってしまいそうな危険を孕んでいる。エルガーは我らがロンドンの作曲家だったので、ロンドンにいたとき、ロンドン・プライドに溢れたこの曲の名演を何度か聴いています。さすがにマッケラスさんとフィルハーモニアのとかパッパーノさんとロンドン・シンフォニーのとかとは思い出してはいけないんだろうなって思ってました。
ところが音楽が始まってみるとびっくり。なにこれ?次元が変わってる。なんて正々堂々とした演奏なんだろう。そしてなんて熱のこもった演奏なんだろう。オーケストラの音がさっきまでとは変わってる。もちろん、オーケストラの音は一流のオーケストラには決して及ばない。技術的にも音量的にも足りないところだらけ。でも、ロンドン・シンフォニーのはいい演奏だなぁと距離を置いて聴いていたのに、この演奏は、まるで自分が音楽の中に取り込まれたように感じる。多分音楽を聴いているのではなくて一緒に音楽してる。山田さんの指揮は、極端な身振りじゃないのにもう音楽の隅々まで彼の音が聞こえるように表現しつくしていて彼自身が音楽になってる。なんだかここ最近聴いた指揮者と比べて圧倒的なレヴェルの違いを感じました。世界でもトップ・レヴェルにあると思う。山田さんはオーケストラを威圧するわけでもなく、ぐいぐいと引っ張るのでもなく、ふんわりと魔法をかけて望む音を引き出すみたい。オーケストラにこんな魔法をかけられる指揮者って、アバドさんとかラトルさんとか多分ドゥダメルさんとかそれくらいしか思い浮かばない(もちろん、他にもいろんな方法でオーケストラから素晴らし音を引き出す指揮者はいるのですが)。
山田さんのエルガーは本当にステキで涙がはらはら。始まりのロンドン・プライドの行進曲から、この主題が何度も形を変えて(引きちぎられて)現れる、特に第3楽章の、主題が回帰しそうで、でも、姿を見せない、そんなそこにあるのに手が届かない憧れを湧き起こさせる表現には、こんなの卑怯だよ、ロンドンでも聴けなかったよ、と思って体がじんと熱くなる。そして、最後に堂々と行進曲で還ってきたときのティンパニ(大太鼓?)の強力なクレッシェンドは祝砲みたい。「1812年」みたく本物の大砲を撃ってもいいねって思った。こんなの初めて。エルガーの交響曲の最良の演奏ではないかしら。山田さんには、またぜひロンドンに来て、びしっとエルガーでロンドンっ子の魂を射貫いて欲しい。本場より本物のエルガー。最高。前に友達と、フルトヴェングラーがアマチュアのオーケストラを振ったら音が変わるか、凄い演奏になるのかって話したことあったけど、答えはイエス。音楽を愛して真剣に取り組むオーケストラならば、人の心を動かす演奏をすることができることを今日、山田さんと横浜市大のオーケストラが証明してくれました。

熱演にうるうるだったのに、アンコールは、意表を突いて、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「松林の踊り」。ライト版のバレエでは、くるみ割り人形の魔法が解けてハンス・ペーターになるところ。クララとの感動的なパ・ド・ドゥ。ただでさえバレエを思い出して涙なしには聴けないのに、山田さんはこの音楽をとてもゆっくりと雄大に演奏させたの。凄い。バレエで踊るテンポではないけれども、反対にこの音楽に合わせてバレエを振り付けたらどんなにか素晴らしいものになるだろうって思った。そして山田さんは途中で指揮台を降りて、指揮台のまわりの第1プルトの譜面を第1ヴァイオリンから順番に閉じていって、楽譜を見るより音楽を心から弾くようにメッセージを学生たちに促してる姿もじーんときました。やばいよやばいよ。演奏後の山田さんやオーケストラの人たちのステキな笑顔、そして涙。まわりの人と握手したりする姿にも本物の感動があってわたしまでじーんときちゃった。1年の最後の音楽会をこんなステキに終えることができて、幸せ者の極みです。
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by zerbinetta | 2013-12-27 00:07 | アマチュア | Comments(0)

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