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やっぱりゴジラ 新交響楽団第224回演奏会   

2014年1月19日 @東京芸術劇場

黛敏郎:ルンバ・ラプソディー
芥川也寸志:エローラ交響曲
松村禎三:ゲッセマネの夜に
伊福部昭:オーケストラとマリムバのための「ラウダ・コンチェルタータ」

安倍圭子(マリンバ)
湯浅卓雄/新交響楽団


首都圏のアマチュア・オーケストラの中で一番上手いと噂されている新交響楽団の演奏、やっと聴きました。噂に違わず実力のあるオーケストラ。ヘタなプロよりよっぽど上手い。安心して音楽に集中できます。このオーケストラはアマチュアではなくプロのオーケストラを聴く心構えで聴きに行くのが良さそうです。

今日のプログラムは、伊福部昭の生誕100年を記念しての和風のプログラム。という新交響楽団らしいプログラム(日本人の作品を積極的に採り上げているオーケストラだそうです)。残念ながらひとつも聴いたことがなかったけど、初めての作品たちに出会えて嬉しい。黛敏郎、芥川也寸志、松村禎三はいずれも伊福部の弟子。そして、芥川は新交響楽団の創設者。血が濃いでしょ。

黛の「ルンバ・ラプソディー」は、黛の死後初演された(初演の指揮者は、今日もタクトをとる湯浅さん)、彼の若いとき(19歳!)の作品。楽譜を師の伊福部に預けたままになっていて幻となっていた作品(初演を託された伊福部が奔走するも上手くいかず、黛に楽譜を返すことを申し出たものの黛の強い希望で師の元に置かれたままになっていた)。
黛敏郎、天才〜いっ。もろにフランスの音で書かれてるんですけど、弱冠19才でこれを為すとは。凄すぎ。最後の2回のエスプリも効いてて、お洒落。演奏もとっても繊細で、ルンバなのでもう少しはっちゃけてもいいかなとも思ったけど、つかみは好印象。単に演奏しているというのではなく、曲の良さが良く分かったもの。

2つめは芥川のエローラ交響曲。名前だけ聞いたことあって、音楽は聴いたことがなかったので聴きたかったのです。芥川に関してはオステナートの人というくらいしか認識がなくて、あと、黛らと共に3人の会、芥川龍之介は彼のお父さんなのかな?芥川の作品自体、初めて聴くので、漠然と音を聴いたイメジしか書けないのだけど、明確なメロディはないけれども、とりつく島のない無調ではない(中心になる音は決まってるし調性的な部分もある)ので聴きやすいです。リズムノリノリだし。あとで作曲者自身が作品を解説したプログラム・ノートを読んで分かったんだけど、この曲、速いのと遅いのの短い20の部分からなっていて、部分部分はいくつかの例外を除いて、省いたり、繰り返したり、好きな順番で演奏して良いのですね。指揮者が違えば(同じ指揮者でも日が違えば)今日と同じ曲にはならないみたいです。でもちゃんとつながって聞こえるのは音楽を支配している音が統一して書かれてるからかしら。エローラの石窟での衝撃をもとに、音楽を考察、「まず一番大きなワクを設定し、だんだんとその中に小さなワクを作っていくような、合理主義的な思考を超える」ことを目指して作曲されたそうです。作曲者自身が言われたように、その試みは「外見的には、ほとんど今迄の形式を破ることが出来なかった」のかどうか、わたしには1回聴いただけで判断できないのだけれども(確かに全体は決まってないので、いろんなパターンの演奏があるけれども1回1回の演奏は決定されたものだから、それが形式の新しさを体現できるのか分からない)、プログラムを読んで考えさせられました。もしかしたら、先にプログラムを読んで聴いたらもう少し違って聴けたかも。音楽も小さなつぶつぶの世界と一緒で、ひとつひとつの量子の振る舞いは確定していない(できない)けれども、その足し算の全体はきちんと確定しているってことかな。個別の量子を見るような音楽は書けないかしら。あっ楽譜に書かれちゃうと、観察された量子のように確定しちゃうか。

休憩のあとの松村の「ゲッセマネの夜に」は、無調と調のある音楽をゆらゆらと静かにたゆたう感じ。今日、演奏された曲の中ではこの曲が一番好きでした。オーケストラの性格とも合ってるように思えました。弱音でも繊細で芯のある音が出せるのが、スーパー・アマチュアと言われる所以ですね。今日の音楽会では、指揮者の好みかも知れないけれども、丁寧な音楽作りで、勢いで弾かせちゃうというところが全然なくて、音楽的にとっても正しい演奏なんだけれども、それ故(かな?)他の曲では少し物足りなさを覚えたんです。オステナートで攻めて来るとこなんかはもっと力尽くで攻めて〜〜なんて。反面、この曲では、曖昧さの中にある微妙な美しさが表に出たと思います。ただ、物足りなく思えたのは、わたしが座ったのが3階の後ろの方だったからかもしれません。一流のオーケストラでもないとここまで音をしっかり飛ばすのは難しいようにも思えるし。

最後の伊福部の「ラウダ・コンチェルタータ」はもちろんマリンバ協奏曲。でも伊福部の表記はマリムバ。独奏は安倍圭子さん。わたしでもなぜか名前を聞いたことのある有名な方?マリンバのソロのための協奏曲は、潔いというか、案外珍しいかも。マリンバを含む打楽器協奏曲の新作ばかり耳にするので。
音楽は、う〜む、わたしにはいまいち単調かなぁ。わたしは、伊福部の熱狂的なファンにはなれそうにないかも。オーケストラの太鼓と競奏(強奏?)しながらがんがんと叩きまくる体育会系の第3楽章は、快哉を叫ぶかな。伊福部の音楽って、良い意味で素人っぽい感じがして(多分、普段聴き慣れてる西欧クラシック音楽の論理から少し離れたところにある、でも、完全に別物ではないという立ち位置から?)、だったら、演奏もある意味素人っぽい方がいいんじゃないかと思いました。伊福部知らずのわたしが言うからとんちんかんかも知れないけど。

安倍さんのアンコールは、ドナドナ。最初何の曲か分からなくて、闇の中からメロディが浮き上がってきたときあっ、これだと。わたしが失敗したときのテーマ曲w(やけくそに元気に口ずさんで)。それにしても、マリンバからこんなオルガン的な響きが作れるなんて。マリンバが打楽器じゃないみたい。伊福部の音楽が徹底的に打楽器だったので好対照。

そして、最後に、真打ち、ゴジラ。伊福部ったらやっぱりこれよね。シンフォニック・ファンタジーの第1番。わたしはゴジラよりおっきなカメ派なんですけど、最初のゴジラだけはすごくいい映画だと思う。伊福部の音楽はゴジラと切っても切れないし、伊福部と言えばゴジラゴジラと言えば伊福部(わたしの中で)。これももうちょっと爆演だったら良かったのにな。怪獣は暴れ破壊するものだもの。

と、言いつつ、ほくほく。このオーケストラ、アマチュア・オーケストラのひとつの到達点として、もっと聴いていこうと思いました。オーソドックスなプログラムも聴きたいし、日本人作曲家と縁が深いのもいいですね。

by zerbinetta | 2014-01-19 20:56 | アマチュア

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