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ヘンなチラシに負けたw 荒川区民交響楽団第20回定期演奏会   

2014年1月26日 @サンパール荒川大ホール

ムソルグスキー/リムスキー=コルサコフ:交響詩「禿げ山の一夜」
チャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

高橋敦/荒川区民交響楽団


いや〜〜、とある音楽会でもらったチラシの束に挟まっていた1枚の異彩を放つチラシ。前面(多分ね)にピンク地に白抜きでARK20とかなんとか。荒川区民交響楽団の(20周年の)ロゴみたいだけど、初めて見るものには何のことか分からない、目を引くけれども全くの情報レス。これはチラシの体を為していないんではないだろうか、プレゼンテイションとしてはサイアク。裏(?)は普通の案内になってるんだけど、英語(?)併記というか、ローマ字併記で、ほら、地下鉄の駅名がローマ字で kokkaigijidomae と書いてあるような、shiki とか、外国人分かんないよ、みたいな。shiki とか kangengaku は、日本人的にも conductor と orchestra の方が分かりやすいでしょ。そして、ドルやユーロでも支払いOKというのが、日本語っぽい英語(文法的には正しい)で書いてあって、ドルで払う人いるのかよって思ったら、会場で外国のお金でチケット買ってる人(多分日本人)いてびっくり。そして、オーケストラのウェブ・サイトもぶっ飛んでる感じ。小ネタもあったり(トップペイジの作曲家の写真にマウスオンしてみて)、とっても楽しそう。チラシとしてはサイアクと思ってたのに、実はサイキョウだったシンボウにダツボウ。まんまとヘンなチラシに引っかかって面白いもの見たさ(?)に聴きに行ってしまいました。町屋の下町の道をくねくね歩きながら。雹に降られて。

サンパール荒川は、下町らしい、垢抜けない感じの、町の会館みたいな(いいえ、確かに荒川区民会館っていうんだよ)建物。大田区のアプリコや文京区の文京シビックホールなどの新しくてこぎれいで音響も良さげ、というクラシック音楽のコンサート・ホール然していない多目的の地域密着型ホール。お客さんもいつにもまして(もともとアマチュアの音楽会はそうなんですが)近所のおじいさんおばあさん、おじさんおばさん、生徒さんみたいな方ばっかりで、なんか、縁側でおばあちゃんと茶飲み話をするみたいでほっくりする。わたしこういう雰囲気好き。

荒川区民交響楽団は、、、まず見た目、年齢の幅が凄い!子供からお年寄り(という程でもないか)まで。そして髪型のヴァリエイションw男性は黒のジャケットに白シャツ、黒蝶ネクタイだけど、打楽器の兄ちゃんにひとりジャケットの下は黒のTシャツという人がいたり(ポップスで叩く人みたい)。トランペットの人は譜面台越しに目から上しか見えないけど安倍総理に似てる感じだし(わたし目が悪いんです)、団長さんのてっぺんをちょっと立てた髪型はみんなの党の渡辺さんに似てるし。そして何と言っても、にじみ出る楽しそう感。演奏が始まる前に袖から、団長さんが出てきて、震災で被災した姉妹都市への義援金のことや20周年記念クリア・ファイル、くじ引きのことなど団長さんの性格なのかおもしろ可笑しく話されたんだけど、言葉を間違えると、客席からもステージからも声が飛ぶ。

そんな、下町情緒たっぷり(?)の音楽会。指揮者はプチ茶髪の高橋さん。この人がまた、よくぞこの人をこのオーケストラにというか、相思相愛というか、同じニオイのする人というか、指揮台で踊ったり跳ねたり、お尻振り振りしたり、駆けたり、楽し〜。我が愛するクリビー(クリスチャン・ヤルヴィさん)みたい。音楽も楽しく分かりやすく、大きな緩急や、表情付け、音量の変化や大見得を仕掛けてきて、変態系指揮者だと思うんだけど、わたし的にはツボ。だって今日の曲目なんかは、しかつめらしく高尚なクラシック音楽じゃなくて(でも、そんな音楽ばかりがクラシック音楽と思われてたら嫌。というかそれ、音楽の楽しみ方じゃない)、絵巻物のようなドラマティックな作品だからこれでいいのだ。特に全休止の取り方がユニークで、そこで完全に音楽を断ち切るのね。そこからリスタート、させる全休符。シェエラザードの最終楽章の全休符はいったん音楽が終わった(音がなくなっただけじゃなくて)と勘違いさせるくらい。そして、彼「here we go!」って小声で叫んだんだ。絶対。わたしには聞こえたもん。

オーケストラは決してとても上手とは言えないけど、楽しく音楽を聴くのには十分以上。チャイコフスキーでは繊細さ不足が少し疵になったけど、シュエラザードはすごく良い演奏でした。。そんなことより、音楽を楽しむ雰囲気がオーケストラに、そして指揮者や、オーケストラの音を受けたお客さんに溢れていて、これは何物にも代え難いヨロコビ。

「禿げ山の一夜」は、オリジナル版ばかり聴いてきたので、リムスキー=コルサコフ版はかえって新鮮。へ〜、こんな曲だったんだ〜って反対に思いました。始まりのゆっくりテンポといい、悪魔っぽいどろどろした感じが面白かったです。高橋さんの指揮は、見ているだけで何をしたいのか分かるので楽しい。
「ロミオとジュリエット」は、これはわりと普通の演奏だったかな。チャイコフスキーの音楽が西欧的に垢抜けているので、おもしろさを出しにくかったのかも知れません。高橋さんが自分の音楽を思う存分出せるプロのオーケストラで聴けたらどうなるのでしょう。といいつつ、彼はアマチュア・オーケストラで彼の良さが最も良く発揮できる指揮者かも知れませんね。

休憩のあとの「シュエラザード」は、正直、このオーケストラには難しいんじゃないかと思っていました。ところがどっこい。ごめんなさいです。これがとても良かった。まず、コンサートマスターの人がえええっと思ったくらいにすごく上手い。プロのオーケストラで弾いていてもいいくらい。あとで調べたら、この方、ヴァイオリン教室の先生なんですね。グラマラスではないけど透明できれいな音でした。さらっと弾いているように見えたのは経験豊かなのかな。各パートのソロもなかなか上手くて予想外で嬉しい驚き。高橋さんの音楽作りもこの曲にぴたりとはまってやっぱり楽しいという言葉がぴったり。ぐいぐいオーケストラを引っ張ったり、煽ったりするのではなく、特にソロ・パートに極端な表現を自発的に自然に促しているのがとってもステキで、こうやったらもっと楽しいよ、っていうアイディアに満ちていて仲間のオーケストラがよしっと応えている感じが、和気藹々と音楽を楽しんでる感じでいいんです。音楽の分かりやすい聞かせ方のツボを心得てる。そう言うと、音楽が浅いとか言われそうだけど、わたしはそんなことないと思うのよね。この町のこのホールのこのお客さんとこのオーケストラで奏でられるべき音楽ってこういう音楽が一番ふさわしいと思うもの。音楽の形ってひとつじゃない。

それにしても荒川って侮れないわ。下町のごちゃごちゃした庶民的なイメジしか持ってなかったけど、でもそれはそのままで、地元に根付いてる市民オケがあったり(あとで調べたら、多くの区で区民オケはあるみたいだけど)、市民オペラがあったり(これもいくつかの区であるみたい)、荒川バイロイトなんていうのもあったり、クラシック音楽がヨーロッパの小さな町みたいにある。たまには、国内や外国から来る超一流の音楽家やオペラを観るのもいいけど、生活の中に気の置けない音楽があるのってうんとステキ。わたしは荒川区民ではないけれども多少は荒川区と関係があった親しみを持って、荒川の音楽を見ていきたいな。

by zerbinetta | 2014-01-26 13:21 | アマチュア

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