英雄過ぎ 山田和樹、読売日本交響楽団   

2014年2月27日 @東京藝術劇場

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

山田和樹/読売日本交響楽団


山田和樹さんは、わたしじゃなくても大注目の指揮者です。BBCシンフォニーを振ったロンドン・デビュウもすごく良かったし、この間の横浜市立大学管弦楽団を振ったときも神がかって良かった。ので、なるべく聞いておきたい。若い(と言ってもハーディングさん世代)彼がこれからどんな風に変わっていくのか聴き続ける楽しみもありますものね。

今日は彼が正指揮者(正指揮者って何よ?)となった日本フィルハーモニーではなくて、読響。で何と、英雄プログラム。ベートーヴェンの交響曲とシュトラウスの交響詩。どちらも重量級のメイン曲なので、どっちがあと?って訝しんだら「英雄の生涯」があとでした。オーケストラの大きさで選んだのね。それにしても、英雄をふたつ並べるとは。。。聴く方も大変。

まずは、ベートーヴェン。山田さんのことだから(根拠なし)、若々しく快速テンポで来るのだろうと思っていたら、なんと!遅いテンポ。昔のいろんな指揮者の演奏に比べてもとても遅い部類。予想が外れたという以上にびっくりした。だって、最近の傾向は、古楽器演奏の影響を受けて(ユロフスキさんとかサロネンさんとか、現代オーケストラでも一部金管楽器とかティンパニにピリオド楽器を使う指揮者もいるくらいだし)快速テンポを採る人が多いのに、完全に逆行。でも、往年の巨匠的(ロマン派風の)演奏家というとそうではないのですね。ゆっくりの演奏なのに重くなく、というかオーケストラの音色も明るくて、粘度も低くゆらゆらと流れていく感じ。突っかかるところや荒ぶるところがなくて、歌うような滑らかな演奏をゆっくりとしたみたいな。ゆっくりでありながら往年の演奏とは一線を画すような不思議な音楽。ただ、音楽のつなぎ目に彼独特の工夫をしているのだけれども、どこかまだ焦点がぼけているというか、山田さんの目指すベートーヴェン像が彼の中でも像を上手く結び切れていないもどかしさが感じられました。弦楽器が第1ヴァイオリンが14人か16人いるような大きな編成なのに、管楽器は倍管しておらず、少しバランスが悪い(金管楽器が消えるところがありました)のも演奏がぼやけて聞こえた理由かも知れません(これはわたしが座っていた席(上の方)のせいなのかも知れませんが)。ベートーヴェンの音楽は、ティンパニの(粗暴さ!)が特徴だと思うけど、読響の人はばんばん叩いてたけど、音楽をリードするまでには至っていませんでした。ティンパニにはやっぱりオーケストラの中心でいて欲しい(打楽器フェチ)。
第2楽章は輪をかけてゆっくりで、でも沈痛な音楽ではなくあくまで澄やか。この曲を初めて長いなぁと感じてしまいました。ブルックナーみたい?いえいえ、シューベルトかな、というよりはっきりと直裁的に感じたのはグリーグの「ソルヴェイグの歌」みたいって思いました。ずいぶんベートーヴェンからは離れている音楽ですけど。山田さんは、ベートーヴェン像を彼なりの方法で壊そうと考えたのかな。でもその試みは今回、先にも書いたように失敗している(ぼやけてる)と感じました。わたし的には少しがっかり。でも、これからに期待することには変わりありません。

後半は、シュトラウスの「英雄の生涯」。同じ変ホ長調。これもまた大きな演奏。閉じてない外に開いた演奏でした。最初は、何か中心に向かっていないので戸惑いました。わたしの印象に残っていた「英雄の生涯」が鬼軍曹ジンマンさんのコンパクトでうんとかっこいい演奏だったので尚更そう感じたのに違いありません。でも、音楽が世界にあふれ出ていくさまを感じたとき、この演奏は、とっても好感度を増しました。大らかで雄大。山田さんは、自然体の力みのない音で音楽を解放していきます。音たちが何と心地よさそうに飛び跳ねていること。
オーケストラは大太鼓とかばんばんと叩いて(だから打楽器フェチ)とっても健闘していました。強靱な弦楽セクションもステキ。玉に瑕は、ホルンと弦楽器が溶け合わなかったり、木管楽器にシュトラウスの音楽にちょっと慣れていないところが感じられことかな。ヴァイオリンのソロを弾いたコンサートマスターの日下紗矢子の英雄の伴侶もすごかった。イメジ的にはエスニックな美人(インド系?)。柔な色気などなくて(でも強い目の色気)、女性の強さを感じさせました。音楽もびしびし攻めてきます。これは英雄も尻に敷かれるわ。

前半はあれだったけど、後半は良かったので、良し。山田さんは、まだまだ追っかけていかなくちゃね。と言うかこの人、もっと国外に出て行って欲しいです。スイス・ロマンド乗っ取っちゃえっw
[PR]

by zerbinetta | 2014-02-27 23:38 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

<< わたしの名前はつるびねった 「... 夢落ち? 長田佳世、奥村康祐 ... >>