プロの演奏家の実力 江戸川フィル第15回スプリングコンサート   

2014年4月20日 @江戸川区総合文化センター

ワーグナー:「ローエングリン」第3幕への前奏曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

中村ゆか里(ヴァイオリン)
スティーブン・シャレット/江戸川フィルハーモニーオーケストラ


江戸川区がどこにあるのかいまいちよく分かっていません。江東区や墨田区、葛飾区との位置関係もよく分からないし、そもそも江戸川というのがどこにあるのかも知らないんです(それを言うなら荒川やなか川、大川に隅田川も曖昧)。江戸川フィルって前にも聴いたよねって思ったら、それ江東シティオーケストラだったし。今回、江戸川フィルに弾かれたのはこのオーケストラ、若手の音楽家を支援していて、江戸川区の新人演奏会オーディションの成績優秀者との競演を毎年行ってるの。それがスプリングコンサート(来年からは春の定期演奏会と名前を変えるそうです)。今日は去年のオーディションで1位グランプリを取ったヴァイオリンの中村ゆか里さんがゲスト。そして、指揮者が外国人さんなのもアマチュアでは珍しい。

商店街を抜けて、木々の茂った大きな神社があって、小さな小川のある江戸川区総合文化センターは、会場に入る前から特別な気分にさせてくれるところなんですね。

オーケストラのメンバーがステージに揃って、コンサートマスターの人が出てきて音合わせをするかと思った瞬間、いきなり音楽が。不意を突かれた!江戸川区の歌みたい。それが終わって、音合わせ。

満を持して現れた指揮者は、ひょろりと背が高く襟のない(確か。記憶違いでないといいけど)黒の衣装で、指揮者というより風貌というか雰囲気が、若いけど何かを諦観した修行僧みたい。この人指揮できるのかしら、と思っちゃったことは秘密にしておこう(ってブログに書いてどうするの?)。でも、指揮姿はとっても様になっててかっこいい。背が高くて手足が長い感じなのが、Uチューブで観たフルトヴェングラーの指揮姿に似てるって思いました。静かに始まるかと思ったら、いきなり賑やかで、あっ第1幕じゃなくて第3幕だ、と思った「ローエングリン」の前奏曲、つかみOKな感じです。

2曲目が、中村さんのソロでチャイコン。って言ったらピアノの方だっけ?チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン協奏曲のCDといったら真っ先にこのチャイコフスキーのだと思うんだけど、生で聴くのはとっても久しぶり。
ヴァイオリンの中村さんは、フランスに留学された経験を持つ若手。妹の里奈さんと姉妹でデュエットを組んだり、のだめの映画で清良の吹き替えをしたり、NPOの活動でボランティアをしたり地道に活動されています。
彼女のヴァイオリンは、ヴィルトゥオーゾ協奏曲を前にしてひるむことなく技術的には安定しているのだけれども(第1楽章の後ろの方でちょっと表現に危ういところがあってこのままずるずる引き摺っちゃうのかなってドキドキしたら持ち直しました。すごい)、響かせ方がソリストという感じではありませんでした。ホール全体を響かせるところまで行かず、音は楽器から聞こえてくる感じ。例えば、ミドリさんは耳を澄まさないと聞こえないくらいの最弱音でもホールを響かせて天井から音が降りてくる弾き方をするけど、中村さんはホールを楽器にするところまではいってませんでした。女王様のお通りよ的な自己主張もあまりなく、オーケストラに混じって弾いている感じは、この人は、大きなホールでソロで弾くよりも、ソロで弾くのなら小さなホール、それよりもアンサンブルで彼女の良さを発揮できるんではないかと思いました。音楽自体は誠実でどちらかというと合わせるタイプ、みんなで音楽を作ろうというタイプではないかと思います。彼女と一緒に弾く人は弾きやすいんじゃないかと思いました。

休憩の後は「田園」。ベートーヴェンの交響曲で最近一番好きです。演奏の前に、指揮者のスティーブン・シャレットさん(名前はstephenと綴るのでスティーヴンかなと思ったけど、本人がブンと書いてるのでそれに従います)、がマイクを持って曲の解説を各楽章のポイントをオーケストラの演奏を交えながらされました。日本語で!確かにどことなく日本人顔だけど、シアトル生まれの彼は、大学院からは日本で勉強しているみたいだけど、日本との接点ってどのくらいあるのかしら。完璧な日本語だし、ブログも日本語で書いてる。その彼に見とれてるわたし。なんか指揮姿が美しいのよね〜。腕の振り方とか。
「田園」は、来たときの外の小川を思い出しちゃった。とても良くまとまっていて良い演奏。うっかりとてきてきと涙こぼしちゃった。「田園」って大好きだからよくそうなるのだけど、今日のシャレットさんと江戸川フィルの演奏は、作曲家がこの曲に込めた気持ちを素直に表している演奏でわたしの琴線に触れちゃった。江戸川フィルはシャレットさんを一昨年くらいから常任指揮者に迎入れてるのだけど、これは良い選択をしたなって思える。まだまだ駆け出しの指揮者さんだけど、ちょっと気にしてこれから見つめていきたいです。
この「田園」には、さっきソロを弾いた中村さんが、第1ヴァイオリンの2列目で弾いていました。指揮者の他は彼女のことばかり観ていたのですけど、さすがプロ。今日のオーケストラの中で彼女が一番指揮を見ていました。ほとんどと言っていいくらいいつも指揮を見ていましたからね。やっぱり思った通り。中村さんはアンサンブルで生きるタイプじゃないかしら。オーケストラの人、中村さんが弾くのを見て何か感じらたらいいな。わたしは彼女の音楽に対する姿勢が感じ取られて嬉しかったです。

小さな小川の縁を歩きながらさっきの「田園」のステキな気分を反芻。でも嵐は来ませんように。
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by zerbinetta | 2014-04-20 10:43 | アマチュア | Comments(0)

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