アジアからのコスモポリタン オーケストラ・ニッポニカ第25回演奏会   

2014年5月11日 @紀尾井ホール

今井重幸:ゴジラのモティーフによる変容「ゴジラのフラメンコ」
チェレプニン:交響曲第1番
池野成:ラプソディア・コンチェルタンテ
伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ

高木和弘(ヴァイオリン)
阿部加奈子/オーケストラ・ニッポニカ


ニッポニカ・ニッポンって朱鷺の学名です。今日聴きに行ったオーケストラ、朱鷺にちなんでニッポニカ・ニッポンって名前を付けたと思っていたら、ニッポニカだけだった。。。ニッポニカは、その名前から察することができるように、日本の作曲家の作品を主に演奏している(専門ではありません)オーケストラです。プロのオーケストラかなって思っていたらアマチュアだったのでびっくり。そして、聴いてみたら、えーーっ?!プロじゃないのーー!ってまたびっくり。今まで聴いたアマチュア・オーケストラの中でずば抜けて上手かったというか、プロでしょ。

プログラムの最初は、伊福部のお弟子さんで、今年亡くなられた今井を追悼しての、彼の作品。プログラムを決めてから彼が亡くなったので、急遽、演奏されることになったようです。今日が初演。師匠の「ゴジラ」の音楽のテーマを自由に、とはいえきちんと聞き取れる形に、用いて作られた小品。聴きやすい曲なんだけど、プログラムによると精緻に構成された複雑な音楽とあるから、きっと難しいスコアをさらりと聞こえるように音にした阿部さんとオーケストラを褒めるべきでしょう。それにしても木管楽器とかのソロも上手かったし凄いな。

チェレプニンは、わたし、初めて名前を聞くのだけど、ストラヴィンスキーのひと世代あとのロシア生まれ、フランスを経て、USへ移った(最後はパリで亡くなってる)作曲家。お父さんがバレエ・リュスの指揮者だったり、息子さんにシンセサイザーの開発者がいる音楽一家。そして、伊福部が唯一師と仰ぐ作曲家。と、ウィキに書いてあったことはこれくらいにして、現代作曲家?、どんな音楽なんだろうと、想像の翼を広げてみたのですが、ホ長調と調性が付いてたから古典的な音楽かな?と思ったり、プログラムには、パリでこの曲が初演されたとき(ちなみに日本での初演は今日)、理解できなかった聴衆がロシアに帰れ、と批判したことから、ムズカシイ音楽かな?と思ったり。ふたを開けてみたら、そんなにヘンな音楽じゃないんだけど。。。細かい音符が続く、ルーセルみたいな感じ(ルーセルよく知らないけど)。第1楽章の最後にちょっと、な〜んちゃってみたいな終わり方をしてたり、そして、2楽章は史上初、打楽器だけの楽章。音程を伴わない打楽器による音楽だけど、すでにいろんな音楽を知ってしまってるわたしたち的にはそんなに違和感ないよね。ところで、今日の衣装、女性の皆さんはわりと自由で、上は淡い青や緑のブラウスを着ているのだけど、打楽器セクションは、パート・リーダーのかけ声ひとつ「今日はわしらの見せ場があるから、黒で統一!」と言われたか知らないけど、黒で決めていました。音楽もモノクローム。
正直言って1927年の初演の時点でパリの聴衆を怒らせた音楽には聞こえなかった(彼らはすでに「春の祭典」を聴いている)けど、(今の耳には)耳なじみがいいけど、実はフクザツなのかな。阿部さんは、結構大変そうに振っていました。今日の音楽の中で一番、阿部さんとオーケストラから遠い音楽だと感じました。

池野の「ラプソディア・コンチェルタンテ」はヴァイオリン協奏曲。今日が舞台での初演(前のは放送初演)。これは文句なしに素晴らしい曲。高木さんの渾身のソロといい、演奏も素晴らしかったです。師である伊福部の流れを汲んだ民俗的な作風でありながら、もう少し現代的な手法の中にも鋲を差し込んだ感じで、アジア的ながらもむしろ普遍的。アジアンな音階の旋律をただオーケストラに弾かせただけの音楽ではない、きちんと異化された労作。バルトークみたいと言ったら言い過ぎでしょうか?

最後の伊福部唯一の交響曲(最近もうひとつ出てきたんでしたっけ?)は、伊福部昭の面目躍如といった感じの充実した音楽でした。土俗的というか、民族的っぽいけど、汎アジアなむしろコスモポリタンな感じがして、空想上のわたしたちの根っこを見るような、突拍子もないけど、水木しげるさんが描くパプア・ニューギニアのお面みたいなイメジが膨らんだり、とにかくエネルギッシュで祭礼的。最後は、リゲティの「ルーマニア協奏曲」みたいになって日本人の起源を人類誕生の一点まで遡っていく感じ。戦後の作品だから、語法としては、古いと言われればそれまでだけど、今まで聴いたことのないユニークさがあって、日本の西洋音楽史(西洋の区分は変だけど、西洋の楽器を使った音楽、世界中で演奏されているスタイルの音楽という意味で)の中で欠けているものを、それは単にわたしが知らなかっただけなのかも知れないけど、聴いたような気がしました。武満だけが日本の作曲家じゃないよ。こういう音楽をこそ海外で演奏されるべきと思いました。っていうかわたしこそこういう音楽を知らずにいてもったいなかった。不勉強を反省。
池野の作品といい、伊福部のといい、聞いてると血が騒ぐんですね。でもアジアンな作品と言っても、日本人の血が騒いでるというより、もっと原初的なヒトの感覚。多分、この感覚は西洋の人も共感できると思うんです。だからこそ、日本の音楽として、コダーイやバルトークの作品が世界中で演奏されているように、外国でも普通に演奏されて欲しいんです。今日の指揮者の阿部さんは、フランスを拠点に活躍している方で、日本の作品はあまり振ったことがなく戸惑うこともあったとおっしゃっていたと思うのですが、演奏を聴くとさすが現代音楽のプロフェッショナル。新しい音楽の演奏に演奏家として作曲者のために真摯に取り組むとおっしゃっているとおり、複雑なスコアを音にするだけではなく、曲そのもののエネルギーを解き放っていたし、同じ言葉を話す人どおしの音楽をわたしは感じることができました。阿部さんには、ぜひ、彼女のオーケストラのプログラムにときどき日本人の作品を載せて欲しいってお願いしたいです。
アンコールには、「シンフォニア・タプカーラ」の最後の部分(「ルーマニア協奏曲」っぽくなったところから)をもう一度。

プログラム冊子の曲目解説もものすごく丁寧で情報が多く、これだけでも手元に置いておく価値のあるものでした。音楽会のプログラムを集めれば、日本の現代音楽のまとまったとても分かりやすい資料になることでしょう。
オーケストラ・ニッポニカも芥川也寸志が関わったオーケストラなんですね。新交響楽団とは兄弟みたいな(?)関係?多分、新しい日本の音楽を演奏させたらプロにも負けない日本のトップ・オーケストラでしょう。音楽会のプログラムのユニークさといい、絶対に聴かねばならないオーケストラですね。


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オーケストラ・ニッポニカの次の音楽会は、第26回演奏会が11月9日、紀尾井ホールです。安部幸明の作品集。指揮はなんとBCJの鈴木秀美さんです。チェロつながり?
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by zerbinetta | 2014-05-11 00:22 | アマチュア | Comments(0)

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