予想外の裏切り 米沢唯 新国バレエ「パゴダの王子」   

2014年6月14日 @新国立劇場

パゴダの王子

ベンジャミン・ブリテン(音楽)
デヴィッド・ビントレー(振付)
レイ・スミス(衣装・装置)

米沢唯(さくら姫)、菅野英男(王子)
本島美和(皇后エピーヌ)、マイレン・トレウバエフ(皇帝)
福田圭吾(北の王)、輪島拓也(東の王)
小口邦明(西の王)、宝満直也(南の王)
高橋一輝(道化)、他
新国立劇場バレエ団

ポール・マーフィー/東京フィルハーモニー交響楽団


これが本命です!「パゴダの王子」、唯さんのさくら姫。お腹痛いのもちゃっかり治って、元気に観ました。今日はちょっぴり奮発して、ステージ近めのサイド。好きな席だと思いつつ、何だか中途半端な奮発が情けない。。。

さて、この舞台。指揮者やオーケストラが出てくる前に始まるのです。下りている幕前で、道化がひとり芝居。これが面白くって。昼と夜の部では、違う人なんだけど、それぞれ自由にお客さんを楽しませます。今日は、ワールドカップで日本が負けたので、新聞の号外を持って悲しんだり憤ったり、ステージから客席の写真を撮ったりして、でも「会場内での撮影は固く禁止されています」のいつものアナウンスが入るとしまったと反省したり、この部分は夜の高橋さんの勝ちだな(って勝ち負け??)。

やっぱり音楽。やっぱり(やっぱり重ね)この音楽ステキだと思うんです。どうしてかって。だって、音楽が物語をがんじがらめに縛らないでいろんな想像力を掻き立てるので、振付に大きな可能性があるんですもの。実際、マクミランとビントレーさんの物語は違うし。そしてわたしもいろんなことを想像しながら観てました。できもしないのに最近、自分だったらこういう風にしたいなぁなんて妄想するのが好き。いつも言うように、新国立劇場のバレエの演奏、とってもいいので。

物語。昼間に気づかなかったところにいろいろ気づいて目から鱗。昼間のわたしは何を見ていたのでしょう。わたしの目は節穴?やっぱり、まだわたしには、バレエを1回観て理解する力はないんだな。ほんと恥ずかしい。もう初心者と逃げることはできないくらいの回数は観てるのに結局、観る目は変わらず永遠の初心者以下。
このバレエ、現代版「眠りの森の美女」なんですね。4人の王(子)の求婚とか、最後の大団円とか構成の仕方とか、呪いをかけられるのが王女ではなくて王子なんだけど、あっ!これ、「眠り」って気づいたときは、えっへんと鼻の穴を膨らませちゃいましたよ。自慢しようと思ったら、プログラムにすでに書いてあった。なぁんだ、みんな知っていたんだ。そういう見方で見ると、呪いにかけられた王子を救うのが、単純な王女のキス(マクミラン版)ではなくて、ビントレー版では、真実を知ったさくら姫と呪いをかけた継母との対峙というのは意味深い大きな変更。わたしは、真実を知って愛する兄を救う象徴的なキスでもいいかなと思いました(ついでにわたしの妄想は、この兄妹が兄妹を超えた愛に目覚め、兄にして夫、妹にして妻のワグナー世界に溺れていく、、、話が違いますね)。
でも急に霧が晴れるように一番うろこが落ちたのが、前史の部分。お昼に観たときは、プロローグの描き方が弱くて物語の筋道がよく分からないなんて文句を言ってたんだけど、全くお恥ずかしい、海の底で記憶の底の子供の頃の出来事を見せていてここで物語がぱっと晴れるて転換点。だからこそのプロローグでの暗示、物語が立体的に解き明かされる考えられた構成になってるんだけど、観ているわたしたちと同時に子供の記憶を失っていたさくら姫の記憶も晴れるという共体験。ビントレーさんの語り口の上手さに脱帽です。それに、ここで子供(のダンサー)を出したところが秀逸。(昼間は何で子供に気がつかなかったんだろう?見切れる席で観てたので目に入らなかった??)
もちろん、物語を伝えるダンサーの力、唯さんの物語力も大きいのかも知れません。

その唯さん。今回の「パゴダ」の公演で一番楽しみにしていたダンサーです。わたし唯さん推しなので。わたしの贔屓目を差し引いても、切れのある唯さんの踊りはさすがでした。プリンシパルの貫禄みたいなのも感じられたし、ひとつひとつの動作がぴたりとはまって美しいんですね。ただ、不意を突かれてドキリとしたんだけど、裏切られた。。。最初の方のシーンで、どこだったかな、エピーヌを見るところで、目が一瞬何かを企んでいるような表情をしたのをわたしは見逃さなかった。唯さんが踊った他の演目でも感じたんだけど(「ドン・キホーテ」での踊り子とかオディールとか)、彼女には本質的にファム・ファタールなところがあるんじゃないかしら。ただ、この役では、さくら姫が継母エピーヌに対して腹に一物あるんじゃないかと勘ぐらせてしまうので、わざとその表情(もしくは唯さんの自然な表情)をしたのかもしれないけど、わたし的には違うなって思いました。一瞬の出来事なんですけどね。唯さんには本格のファム・ファタールなマノンとかカルメンとか踊って欲しいなぁ。

唯さんとペアを組んだ王子の菅野さんも、にゅろにゅろのサラマンダー(トカゲではなくサンショウウオですのよん。伝説の火喰いトカゲのことを言うんだとしても、これもいわゆるトカゲではなくてサンショウウオ。両生類です)だけでなく、普通(?)の踊り(ビントレーさんの振付はモダンな部分もあるけど、古典をリスペクトしたものです)もとってもいいし、唯さんとのパートナーリングもしっかりしていました。おふたりともフレッシュ・プリンシパルだけど、流石と思わせるものは持っているのね。流石。

エピーヌの美和さんは、彼女がきりっとした顔立ちの美人さんなのでとってもメイクが似合ってました。なので表情は好き。ただ、踊りは昼間観た長田さんのと随分印象が違って、ソフトというかもっと鋭さが欲しいと思いました。長田さんの方は、主役が若手だったこともあるかもしれないけど、舞台の中で圧倒的な印象を与えていましたから。

予想どおり、1回目より、2回目の方が理解も深まってまるで違うものを観ているように楽しめました。やっぱりバレエは何回も観なくちゃです(自己正当化w)。
「パゴダ」好き〜〜。空席があるのがもったいないよぉ。もっとみんな観なきゃ。
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by zerbinetta | 2014-06-14 23:37 | バレエ | Comments(0)

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