手作りの温かみ BCJのブランデンブルク協奏曲 @調布音楽祭   

2014年7月6日 @フェスティバルホール

バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全6曲)

鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン


日本で一番のオーケストラは?と聞かれたら、迷いなく脊髄反射で、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)と答えるでしょう。合唱団と古楽オーケストラなのでちょっとずるいかもしれないけど、でも、わたしたちの宝物だと思うし、世界中に胸を張って誇りたい。わたしたちにはBCJがあると。
そのBCJが今回は器楽だけの音楽会。バッハのブランデンブルク協奏曲全曲です。これは聴かずにはいられないでしょう。しかも、調布音楽祭の公演なので安い!嬉しいことばかりです。
ブランデンブルク協奏曲を聴くのは、でも、たったの2回目。前のは、ヒラリーとかチョーリャン・リンさんとか、フルートのパユさんとかソリストたちが集まって仲間内で楽しく音楽をする寛いだ感じのステキな音楽会。現代楽器です。そして今日は、ピリオド楽器。わたしは、バッハなら絶対、古楽器でしょうなんて最近思ってるので(わたしの持ってるCDも古楽器での演奏)、これは嬉しい(しかも我らがBCJだし)。でも、聴き終えてみると、頭で考えていたのと聴いたものでは全然違う!!想像を超える素晴らしさ!

調布に行くのは初めて。駅前をふらふら降りて、会場の調布グリーンホール(フェスティバルホール)は、ロータリーを越えたすぐ。郊外に来た感じ。調布音楽祭は、去年から始まった音楽祭。今年は2回目。調布市在住の鈴木優人さんが総合プロデューサーを務めていらっしゃいます。BCJは、決して調布の団体ではないのだけれど、主催の優人さん(鈴木さんが多いので名前で)やメンバーの何人かが住んでらっしゃるという地の利を生かして、BCJを中心にした一本筋の通った音楽祭になってます。決して古楽に特化された音楽祭ではないのだけど(地元の音楽大学のオーケストラの公演もあります)、小さな町の(バロック音楽を中心にした)音楽祭は、ボーヌ・バロック音楽祭や栃木蔵の街音楽祭(これはもうなくなったのかな?)を思い出させます。

会場に行ってみて分かったのですが、小さな音楽祭です。街のお祭りの雰囲気があって、手作り感満載なのが好印象。プロデューサーの優人さんが手ずから音楽祭のTシャツを売っていました。気の置けないゆるやかな感じがステキで、瞬時に好きになりました。わたしが調布の人だったら、もう絶対毎日通うのに。東京を挟んで反対側から来るので、それは厳しい。でも、今回、この音楽祭を知った僥倖を胸に、来年はたくさん参加しよう。したい、と思わせる音楽祭です。

さて、ブランデンブルク協奏曲は、逆順、第6番から順番に演奏されました。雅明さんのお話では、編成の地味な方から、派手やかな方になって良いとのこと。確かにね〜。
目から大きな鱗のようなものがどさどさ落ちた。古楽を聴くのは初めてではないけど、こんなにクリーミーに混じり合う音がするなんて。古楽器の音色って輪郭のはっきりした尖った感じのツンとした音だと思っていたのに、お互いにデレっと混ざり合い溶け合うなんて。いいえ、やっぱり、ヴィブラート控え目の、現代楽器に比べたら乾いた響きなのだけど、それぞれの楽器の音がそれぞれの音を保ちながら同時に複雑に絡み合ってひとつの大きな響きを作るんです。普段合唱の中で弾いてるから、声を中心にして音を溶け合わせる耳に長けているのかしら。これは。。。絶句。
現代楽器は機能性を進化させて、均質で艶やかで大きな音を作り出すけど、失ったもののなんて大きなことか。もちろん、古楽器が良くて現代楽器がダメという単純なものじゃないし、ロマン派以降の音楽は現代楽器の発達無しに生まれなかったんだけど、わたしたちって、現代楽器と古楽器を共に楽しめるなんてステキな時代に生きているんだろうっていう幸せ。いえ、楽器のせいよりも演奏者の素晴らしさを褒めるべきですね。もの凄い高みで、隙がなく完璧な音楽を奏でているのに、でも同時にそこにいることでふっと笑みが出るような寛いだ雰囲気があって、楽しそうで、ここにいることが嬉しくてたまらなくなる気持ちにさせられる、ほんと、この手作りの音楽会にぴったりの演奏なのです。ひとりひとりの奏者が楽しんで音楽しているだけじゃなく、一緒にいるわたしたちまでが楽しんで音楽してる空間。やっぱり音楽って聴くんじゃなくて全身で体感するんだ。

第3番は、3というのが強調されているそうで、2楽章しかないんだけど(第2楽章は1小節の終止形しか書かれていないそう)、そんなはずはない、とのことで第2楽章に、バッハの3にちなんだ作品、3台のチェンバロのための協奏曲のアダージョの第2楽章を編曲して挿入。お得な気分。
そして圧巻は、トランペットにギィ・フェルベさんを迎えての第2番。超高音を要する超難曲。バッハの同僚のトランペット奏者ゴットフリート・ライヒャは、高い音を吹いた翌日に心臓麻痺で亡くなったとの逸話まで。肖像画に描かれたライヒャが持っている楽器はポスト・ホルンのようにくるくる巻いた楽器だけど(当時、王の儀式用の楽器だったトランペットをホルンのようにくるくる巻いて誤魔化して普通に使えるようにしたとか)、今日はそれに音階が取れるような孔のあいた楽器。バッハの時代のトランペットを観るのも初めてだったけど、演奏が凄かった。フェルベさんはいとも楽々と(そう聞こえる)、吹きこなしていて鳥肌もの。高い音が柔らかくてちっとも耳にツンとこなくて、オーケストラととろけ合う。高音のトランペットがオーケストラの中で鳴ってるなんて!神業。

最後は第1番の賑やかな音楽で終わって、でも、これ、素朴な感じではなくて(わたしの持ってるCDのは素朴なの〜)、お祭りの雰囲気に合った、楽しい踊り。体が自然に動いちゃうみたいな。雅明さんはクラシックは嫌い、と挑発的なことをおっしゃっていましたが(調布音楽祭の総合プログラム)、ほんと、彼らのバッハはクラシックじゃなくて、今生まれてきたもぎたての音楽。わたしはバッハ苦手のつもりだけど、そんなこと言ってられない体が反応してしまう音楽。ほんと、素晴らしかった。うんと幸せな気持ちで調布をあとにしました。また来年!
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by zerbinetta | 2014-07-06 01:08 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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