ぐいぐい引っ張る辣腕 アン/読響 オール・チャイコフスキー   

2014年7月29日 @ミューザ川崎

チャイコフスキー:「眠りの森の美女」からワルツ、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第6番

松山冴花(ヴァイオリン)
ダレル・アン/読売日本交響楽団


今年のフェスタサマーミューザ、わたしのクライマックスがこれです。指揮者のダレル・アンさん。2007年のブザンソン国際コンクールの優勝者。のこのことセミファイナルを聴きに行って、切符売り場に行ったらもうチケットないと言われて、せっかく日本から(ウソ)来たのに〜って地団駄踏んでたら、劇場の係の人がこっちこっちと言ってただで入れてもらった思い出のコンクールです。わたし自身は、別の人が優勝するかなぁと聴いていたのだけど、意外にアンさんが優勝して、ううむ、わたしの耳もまだまだだなぁと思ったんです。で、彼がどんな風になっているか聴いてみたいと。そのとき、セミファイナルに残っていた人に結構活躍中の三ツ橋敬子さんがいらして、審査員にいじられて大変だなって思いました(コンクールでは審査員は黙って聴いているだけではなくて、ここをやってとかこうしたらとか指揮者をいじり倒すんです)。

そんなこんなでのこのこやって来た川崎。今日は音楽会の前に公開リハーサルではなく(残念)、ホールでプレコンサート(これ英語的にヘンじゃない?)。どこでも座れるかと思ったら、持ってる本公演のチケットと同じ席で聴かなきゃならないのがちょっと残念。自由に座らせても良いのに〜とも思ったけど、結構お客さん多いし、あまり時間を置かずに本コンサートなので、混乱がないようにするのにしょうがないかな。
木管5重奏のラヴェル「クープランの墓」と弦楽合奏でモーツァルトのディヴェルティメント。コンサートマスターの日下紗矢子、おしゃべりも上手ですね。弦楽合奏は指揮者なしで自由だけど、オーケストラでは指揮者に納得しない、、、なんてこともない、などとドキリと笑わせてくれたり。最後も、みんなを回れ右させてステージの後ろのお客さんにも礼をさせたり、なんか良い人だ〜〜。

オール・チャイコフスキー・プロ。始まりはなんといきなり、「眠りの森の美女」からワルツ。よくアマチュア・オーケストラのアンコールでかかるし、夜中のNHKのBSの音楽番組のテーマでもあるね。わくわく感ったらハンパない。ステキな音楽会の予感。アンさんの指揮は、客演オケで安全運転しつつも熱い感じで、緊張しつつも自信を持って振ってるのが分かる。きっと得意なんですね。

2番目のヴァイオリン協奏曲のソロは、松山さん。初めて聴く人です。でー、それがー、わたしとは接点のないタイプでー。たっぷりとよく響く美音で歌わせるのは、久しぶりに聴くジュリアード系かしらーと思ったら、ジュリアードで勉強されてた方で、タイプとしては、サラ・チャンさん系なんだけど、彼女ほどはアクは強くなくテクニックを押し出す主張はなく(チャイコフスキーの協奏曲って華々しいヴィルトゥオーゾ要素もあるから、テクニックを魅せる弾き方をしてもいいと思うの)、ちっちゃなサラ・チャンって感じ。アクが抜ける分、いいかなと思いもしたけど、意外とそうではなかった。かなり緩急を付けてテンポを揺らすのだけど、ことごとくわたしの感覚の外に行ってしまって。これはわたしにはダメだなと思いました。決して彼女がダメとかじゃなくて、上手いし、いい音だし、合う人には合うんだと思います。むしろわたしのような人は少数派かも。

協奏曲では、随分テンポを揺らしたけど、これは多分松山さんの趣味だとは思ったけど、実はアンさんもそうなのかしら、と心配しつつ、「悲愴」。この「悲愴」がすごく良かったです。アンさんはわりとインテンポでストレートな表現。奇を衒わない王道な「悲愴」です。がっしりとして男らしい(これって性差別?)。そしてアンさんとともに演奏をまさにぐいぐいと引っ張ったのがコンサートマスターの日下さん。いや〜〜、これは凄い。漢字の凄い。強烈なリーダーシップでオーケストラを引っ張って、もう気持ちが良いくらい。さすが、ドイツのオーケストラでもコンサートマスターを務めてるだけあるわ。英雄を尻に敷く妻の日下さんですもの(過日の「英雄の生涯」のソロですよぉ)。今日は指揮者を尻に敷いて、じゃなかった、指揮者と火花を散らすことなく、痒いところに手が届くように指揮者の孫の手になって、今日の演奏の素晴らしいところは、指揮者半分、コンサートマスター半分の辣腕的リードの力でしょう。
もうひとつ、アンさんの「悲愴」で印象に残ったのは、第2楽章の(2つ目の)主題が、最終楽章の主題となって再現されるんですね。第2楽章ではドキドキと脈打つティンパニに乗って、そしてフィナーレでは、コントラバスの不整脈に乗って。下降する別れの主題は知っていたと思うけど、今日初めて気づいたというか、パズルのピースがはまったように目の前が開けた。今までどうして気がつかなかったんだろう?何回も聴いてる曲なのに。試しに家でCDを聴いてみたけど、変、やっぱり、第2楽章とフィナーレのつながりが強く感じられませんでした。やっぱり、アンさんの演奏は特別だったんだわ。そういうつながりを強く意識して演奏したのに違いない。アンさん、なかなかやるなぁ。これから、どしどし活躍して欲しいな。コンクール聴いたんだよ〜、予想は外れたけどって自慢できるから。
それと、日下さんが乗るときの読響はできるだけ聴きたいな。ってコンサートマスターまでは事前に発表しないんだよね〜。残念。
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by zerbinetta | 2014-07-29 22:51 | 日本のオーケストラ | Comments(2)

Commented by 久兵衛 at 2014-10-28 21:39 x
miuさんの記事を読むと、こちらまでその(日下さんが乗る)コンサートに行ってみたくなります。でも確かに「英雄の生涯」みたいに事前に発表は少なく(読響の場合はコンマスの人数増えたし)、公式webに宣伝兼ねて載る記事の写真にたま~にコンマスの姿が見えるくらい。
そうそう、日下さんといえば11/1に所沢でワンコインコンサートでソロ演奏します。ソロ2曲\500なんてお買い得?でっせ。(11/2には高崎で普通のリサイタル\3,500)今帰国中ということなんでしょうね。
Commented by zerbinetta at 2015-05-06 20:31
久兵衛さん、
日下さんは素晴らしいコンサートマスターだと思います。
ところで読響の各音楽会のチラシを見ていたらコンサートマスターの名前が載っていますね。これを見て行くのがいいかも。
所沢はときどき安い値段の音楽会があるし、攻めのプログラムがあったりして楽しそう。でも、家から遠すぎるのですよ〜〜。近くに住みたい。

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