巨匠達の残り香 FAF管弦楽団第48回定期演奏会   

2015年1月18日 @すみだトリフォニー

ブラームス:交響曲第3番
ベートーヴェン:交響曲第7番

土屋邦雄/FAF管弦楽団


FAF管弦楽団の熱心なサポーターではないんだけど、彼らがブラームスの交響曲第3番をやるからには聴きに行きたくなります。何しろ、オーケストラの名前、FAFはブラームスのこの曲(冒頭の3つの音、ブラームスのモットー「Frei aber froh(自由にしかし楽しく)」から採ったもの。そして、土屋さんがおっしゃってたんだけど、ベートーヴェンの交響曲第7番もこのオーケストラの最初の音楽会で演奏された記念すべき曲とのこと。なんだか記念の多い特別な音楽会みたい。

指揮の土屋さんは、ベルリン・フィルで長きにわたってヴィオラを弾いていた(プログラムを見て初めて気がついた)、ヨーロッパのオーケストラの日本人の草分け的存在。演奏家としてとおっても偉い人なのです。80を超えてとてもお元気。そしておしゃべり。演奏を始める前に、曲目解説をしてくれる人はいるけど、いかに私はこの曲を振りたくないのかを話す人は初めて見た(曲が嫌いなのではなくて、指揮者としてはペーペーの私が振るのには難しいという理由で)。ブラームスの交響曲第3番は、ブラームスの交響曲の中で演奏頻度が低くて、どうしてかというと、最後が静かに終わる、ということもあるのかもしれないけど、難しい、ということがあるのかもしれない。確かにね、前にドホナーニさんとフィルハーモニアのを聴いたとき、木管楽器が地味に細かい音を吹きまくってて合わせるの難しそうだなって思ったもの。

お話を終えると、あまり間を置かずさっと(ちょっとびっくり)音楽を始めました。そして今日もやっぱり難しいんだなって思いました。弾けてない吹けてないっていうわけではないんだけど、アンサンブルするのにぎりぎりだなって。一所懸命になりすぎて周りを見ていないというところがいくつか聴かれました。第1楽章は、最初ゆっくりと始めてかなりテンポを揺らしてきました。長めにとった最初の音と旋律が始まるところの微妙な間とテンポにちょっと船酔いに似た感じを覚えたり、いつの間にか速くなってきたり、とても細かく表情を付けてきます。土屋さん、結構テンポ揺らすんだと思ったら、第2楽章からはそれほど大きな変化を付けず、どちらが彼の音楽なのか、それともどちらも彼の音楽なのか、は分からなかったのですが、後ろの楽章は、まだまだ音楽を深め足りていないようにも感じました。切りはないんですけどね。本人も多分謙遜しておっしゃっていたように、何とか聴かせられるものになった、丁度なのでしょう。FAF管弦楽団は、おおっと思ういい音を出したかと思うと、おや?普通な感じ?と思う音になったりして、ちょっとムラがあるな、っては感じました。
土屋さんの指揮は、素人っぽくて確かにぎこちないように見えたけど、音楽の精神面というか、技術的なものよりも奥にある内容をオーケストラにしっかり話してそれを音にしているように思えました。そして、何だか往年の巨匠達の飾らないかっこを付けない演奏の面影を聴いてるみたいな気持ちにさせられました。演奏家として巨匠達と音楽をしてきたことが血になってるんですね。

休憩のあとのベートーヴェンの前にもお話があって、ベートーヴェンではこの7番と5番と、あれもうひとつ6番だったかな?、の3つは振りたくなかった、若い番号のをやりたかった、みたいなことをおっしゃって、またやおら音楽を始められました。
ベートーヴェンの方は、技術的な難易度がブラームスよりも低い(でも音楽的にはやっぱり難しいと思う)からかオーケストラに余裕があって、その分音楽を語るところが上手かったです。土屋さんもあまりテンポを動かさずに、あっ一番最後の瞬間だけぐっとテンポを落としたのにはびっくりした(ここは短距離のランナーがゴールを走り抜けるように終わって欲しかった)けど、堂々とした演奏でした。特別なことはしていないのに、にじみ出てくる香りが土屋さんにはあるのですね。これは若い指揮者には絶対できない。土屋さんには、彼のやりたい音楽をぜひじっくり聴かせて欲しいと思いました。アマチュア・オーケストラでもいいから、土屋さんを常任にして演奏してくれないかな。彼から教えてもらいたい宝物の音楽うんとあるから。

今日の最高の演奏は、でも、アンコールの「エグモント」序曲でした。始まりからえっ!こんな音が出せるの!とびっくりするくらいの厚い重厚な音で、熱のこもった音楽は名演でした。素晴らしかった。打ち上げのお酒がきっとおいしかったことでしょう。わたしも満たされた気持ちでホールをあとにしたもの。


♪♪
FAF管弦楽団の第49回定期演奏会は、7月12日、ミューザ川崎です。
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by zerbinetta | 2015-01-18 01:23 | アマチュア | Comments(0)

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