スルメと若者 第5回音楽大学オーケストラフェスティバル 4日目   

2014年12月7日 @東京芸術劇場

ファンファーレ
服部伶香:suppression ~child town fanfare~
東京音楽大学

島崎智徳:quiet lights
東邦音楽大学

ブラームス:交響曲第4番

田中良和/東邦音楽大学管弦楽団

シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

川瀬賢太郎/東京音楽大学シンフォニーオーケストラ


さあ、いよいよ音楽大学オーケストラバトル最終日。これで準決勝に進む4校が決まるわけです(ウソ)。
今日のファンファーレは、ユニーク系のタイトル。服部さんの思わせぶりな解説の「子供の街」が面白かったけど、表したい内容にはちょっと足りてないかな。音楽の中に謎(暗喩)を喚起する要素が少なかった、というか、難しいこと考えないで音だけそのままでいいんじゃないかなぁ。ガチャガチャして楽しい作品だったけど。

今日のプログラムも重量。最初が、東邦音楽大学でブラームス。桐朋学園とは漢字違いですね。東邦音大は、女性のコンサートマスターをコンサートミストレスなんて変な英語で表記してなかったのでポイント高いです。
田中さんは初めて聴くんだけど、お名前は前から知っていました。それがどうしてかよく分からないんだけど、もしかして、日本の合唱曲たくさん指揮して録音してましたっけ?
そんな田中さんの指揮、始まってみるとあれれれ?って感じでした。何と言うか力が抜けていて、やる気みたいなものが感じられない。僕しらないもん、ってオーケストラに勝手にやらせてると感じたのです。この間聴いた、尾高さんの、思いっきりやれー、俺が責任とる!、とは正反対。責任逃れって、ちょっとむかつきながら聴いてました。ところが、音楽が進むにつれて、また、あれれれ?どうしてか分からないけど、音楽がいい。音楽に自然と引き込まれていくんです。田中さんはその中心には、いない。と言うか見えない。自分を消して音楽だけがある。でも確かに、オーケストラは見えない田中さんの重力の下、演奏してるんですね。ブラックホール?それが田中マジックなのかな。田中さんの音楽をオーケストラは奏でているんだけど、でもそれは、オーケストラの音楽と一緒。オーケストラ自身が有機体となって自律的に演奏してるみたい。噛めば噛むほど後を引くスルメのような音楽でした。後に引く演奏だったので、休憩のあともう1曲聴くなんて大変。ブラームスの精神的な密度って尋常じゃないもん。

大取は、東京音大で「英雄の生涯」。指揮は、ぜひ一度聴いてみたかった30歳(多分)、若手のホープ、川瀬さん。現在、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者でもあります。舞台に出てきた川瀬さんは、シャツのボタンを外してるような(実際そうしていたわけではありませんが)ちょっと昔の不良っぽい(ツッパリ、死語だけど)ところがあって、古色蒼然なクラシック音楽会に風穴を開けちゃる、みたいなナナメに世の中を見ている、若さゆえの自信に溢れていてちょっといい感じ。と、音楽に関係ないことばかり書いてきたけど、音楽もまさしくそれ。川瀬さん、田中さんとは対照的にぐいぐいと引っ張る。先頭切って学生オーケストラと走りまくり。若い音楽。若さゆえの過剰。若者たちが火花を散らして、一緒になって音楽をがんがん鳴らしてる。若者ってときとしてとんでもないことを成し遂げてしまうけど、そんな一期一会の音楽。あとで興奮して俺凄かったぜーと言い合ってることでしょう。指揮者もオーケストラも今しかできない音楽。最後には引退までしちゃう自著伝のような音楽だけど、この曲を書いたシュトラウスは弱冠34歳。若者の熱は正しい!

それにしても音楽大学オーケストラフェスティバル、それぞれの大学のオーケストラや、指揮者の音楽が堪能できて本当にステキな体験でした。プログラムの解説も各大学の先生や学生さんが書いていて、それも個性があって面白かったです。バトルと思っていたけど、全員に一等賞を差し上げたい。現実には、この中から将来演奏家として活躍できる人はごく一部でしょう。でも、一瞬でも輝いた時があって音楽でつながっているなんて、なんてステキな大きな財産なんでしょう。音楽って素晴らしい。そして、音楽とは違う世界にいたわたしにはかなり羨ましい!皆さんに幸あれ!!
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by zerbinetta | 2014-12-07 23:28 | アマチュア | Comments(0)

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