掛川お茶大使は男前 長尾春花 アンサンブル・フォルツァ・ウ〜ノ第7回演奏会   

2015年4月4日 @杉並公会堂

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第5番

長尾春花(ヴァイオリン)
田尻真高/アンサンブル・フォルツァ・ウ〜ノ


ウ〜ノの伸ばしはなぜか波線。
というのは置いといて、オーケストラの名前がどういう由来なのかは分からないけど、ベートーヴェンの交響曲を指揮者なしで演奏できるくらいを目指す(実際に指揮者なしでするのではないけど)少人数のオーケストラだそうです。今日は交響曲第5番。指揮は田尻さん。

始まりは、モーツァルトのオペラ「魔笛」の序曲。むむむ。このオーケストラは、2007年結成だから8年目。年に1回の演奏会をしてるみたいで、今回が7回目の演奏会なんだけど、まだ、オーケストラの基礎体力ができていない感じ。特に弦楽器の弓圧が低くて音が痩せてるような気がするの。決してダメとか下手とかいうのではなくて、音楽はみんなひとつの方を向いているから、練習していくと上手くなると思う発展途上。オーケストラは1日で鳴らず、よね。

で、ヴァイオリン協奏曲は置いておいて(おいしいものは最後に残す主義)、ベートーヴェンの交響曲第5番は、やっぱり難しい。アンサンブルの微妙な乱れが音楽にもろに出ちゃうし、いきなり休符から始まる音楽は合わせづらい。ので、始めのうちは少し危なっかしかったんだけど、音楽が熱を帯びてくるにつれて勢いが出てきて、フィナーレでは、オーケストラものってきたと思う。ゴールまで走り切った爽快感の残る演奏になりました。

アンコールは、「エグモント」の序曲。最初の弦の音がずっしりと重くて、打って変わってやればできるじゃんって思いました。小編成で指揮者なしでも演奏できるくらいを目指す高い理想を持つオーケストラ。ぜひ、その明確な理想に向かって歩んでいって欲しいです。目標がはっきりしてると迷わないものね。コンサートマスターの人ちょっと引っ込み思案だった感じがしたので、ぐいぐいオーケストラを引っ張っていけるようになればいいな。

で、今日のハイライト。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ソロを弾いた長尾春花さんは初めて聴きます。お名前も初めて。プロフィールを見るとまだ若い、今藝大の博士課程にいらっしゃるのですね。そして、プログラムと一緒に配られたクリアファイル、何々、お茶?と訝しんでたら、春花さん、生まれ故郷の掛川のお茶大使でもあるんですね。お茶の宣伝。
ステージに現れた春花さんはとってもかわいらしい、小柄な方。速めのテンポでオーケストラの序曲が始まって、ドキドキしてたら、春花さんの最初の一音からカキーンときた。ちょっと緊張してらっしゃる感じだったけど、ヴァイオリンの音がソリストの音!艶やかではないけどとても豊かで、音楽が全てソロに集中する吸引力。そしてこの曲を何と、さくさくと叙情性を排して弾いていくの。漢(おとこ)だわ。男前。見た目と音(音楽)のギャップはもうひとりの漢、ピアニストのグリモーさんを思い出しちゃった。普通、夢見るように弾かれる高音のフラジオレットも、
凜とした豊かな音(すごい)で、しっかりと目を開けて前を見つめている感じ。このリアリスティックなチャイコフスキー好き♥オーケストラの方もなんか春花さんに巻き込まれてるみたいで、ばしばし弾いていくのだけど、オーケストラのみのトゥッティでヴァイオリンに先行するところ、田尻さんが切り込むようなアチェレランドをかけて、オーケストラもヴァイオリンもアグレッシヴ。でも決して春花さんのソロは、荒くならずに丁寧に音楽を進めていくの。
叙情的な第2楽章も同じ。でもね、歌が素っ気ないとかそういう感じが全くなくて、チャイコフスキーの音楽を蒸留して不純物を除いたらこんなに透明になったって感じ。この路線で行く第3楽章が悪かろうはずなく、冷静さと興奮を同時にまき散らしながら、跳ね回る、踊り回る。前進するエネルギー。久しぶりに見つけたって感じ。宝物にになる原石を。
アンコールにはバッハの無伴奏から、ソナタ第3番のラルゴ(ちょっと記憶が曖昧)。バッハの方も音楽をたゆまず推し進めるような流れの強い演奏。でもこちらは、少し立ち止まって路傍の花も見て欲しかった。小さな世界にも耳を凝らしてみると聞こえてくる精巧な美しさがあるから。

この人凄い!ファンになるぅ。日本に帰ってきてから追っかけようと思ったふたりめのヴァイオリニスト。ヒラリー、アリーナ、今は読響の瀧村さんに続いて通算4人目のプチ追っかけ。瀧村さんとは全く違うタイプ。瀧村さんがほんわかしていてソロよりもアンサンブル(オーケストラに入ったのは良い選択。室内楽もぜひ)の人なのに対して、春花さんは根っからのソリスト。これからどんな風に成長していくのでしょう。チャイコフスキーを一度聴いたきりなので、どんな音楽が向いているのかまだ分からないけど(ブラームスやシベリウスで聴いてみたい気がする)、なんかずっと聴いていきたい。わたし絶賛。長尾春花さん、ぜひ機会があれば聴いてみて下さい。素晴らしい(きっと、しくなる)ヴァイオリニストですよ。


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アンサンブル・フォルツァ・ウ〜ノの第8回演奏会は、来年2016年4月9日、杉並公会堂の予定です。
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by zerbinetta | 2015-04-04 10:13 | アマチュア | Comments(0)

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