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ベートーヴェンの精神 特別演奏会〜吹奏楽による第九〜   

2015年2月20日 @ミューザ川崎

村井邦彦/三浦秀秋:翼をください
村井邦彦/金山徹:虹と雪のバラード
岡野貞一/三浦秀秋:ふるさと
菅野よう子/三浦秀秋:花は咲く
ベートーヴェン:交響曲第9番
(吹奏楽編曲、1福田洋介、2石毛里佳、3小野寺真、4三浦秀秋)

吉田珠代(ソプラノ)、中島郁子(メゾソプラノ)
北嶋信也(テノール)、大沼徹(バリトン)

松元宏康/高津市民合唱団、混声合唱団「樹林」、世田谷区民合唱団
文京シビック合唱団、かわさき市民第九合唱団、神奈川県立湘南高等学校合唱部、
神奈川県立海老名高等学校合唱部、ブリッツフィルハーモニックウィンズ


吹奏楽で弾くじゃなかった吹く第九。去年か一昨年、初演されたのを聴き逃してしまったーっと思っていたら、なんと再演されるというので聴いてきました。どんな風になるんでしょう。ドキドキ。
実は、わたし、基本、原理主義者なので、オリジナル第一主義なのよね。主義というのは堅苦しくておこがましいけど、まあ緩い感じで。だから、吹奏楽もオーケストラからの編曲ものではなくて、吹奏楽のために作曲された音楽が一番と思ってました。編曲されたのはまがい物だ、みたいに。でも、そんな偏狭な考えは、プリエムさんの「海」や今日のブリッツさんのシュトラウスを聴いて改めたのでした。でも、まだそんなに管楽器が大活躍じゃないベートーヴェンの、一部のクラシック音楽ファンからみたら’神聖な’ベートーヴェンの音楽が吹奏楽になるとどう響くのかドキドキ。果たして上手くいくのでしょうか?

さて、今日は、実は、ブリッツ主体じゃなくてほんとは、高津市民合唱団の創立25周年の演奏会なのです。高津市民というから、群馬かどこかの市の合唱団なのかな、なんでミューザで記念の演奏会なんだろうと、勘違いしていたんだけど、川崎の団体なんですね〜。そりゃそうだ。でも何で高津?

前半は、吹奏楽の伴奏で、歌。どれもわたしでも知ってる名曲ばかり。流行り歌じゃなくてずうっと歌い継がれていくんでしょうね。わたしは、札幌オリンピックのずいぶん後に住んだけど、ジャンプ台はいつも見えてたし、歌は知ってたから、「虹と雪のバラード」には懐かしくて涙が出ちゃった。

後半は、いよいよ第九。もちろん、弦楽器はコントラバスだけ。合唱は人数が多くなって(多分前半が高津市民合唱団のみで、第九から他の合唱団が加わったんじゃないかな?)、結構大人数。これが良かったんだよね。
本来なら、弦楽器のみの緊張感に満ちた細かな刻みで始まる音楽が、管楽器のロングトーンで始まると、これはもうどうしようもないんだけど、少し違和感。そして、ちょっと驚きだったのが、管楽器って弦楽器より音がスピーディーだと思ってたんだけど、特に低音(吹奏楽だとチューバとかトロンボーンかな)の音のエッジの立ち上がりが遅い感じがして少し鈍重に聞こえるの。吹く楽器の方がアタックのエッジが効くと思ってたから意外。というようなことを考えた始まりの数十小節。でも音楽が進むにつれてそんなこと気にならなくなって。ベートーヴェンの音楽凄い。オーケストラとはまるで音色が変わってるけど、音楽の力が音から沸いてくる。ベートーヴェンの音楽の本質は、編曲されてもびくともしない。ベートーヴェンの精神は、もっとずっと深いところにあるのね。

吹奏楽への編曲は、各楽章別々に4人の人の手で行われています。わたし的には第2楽章と第3楽章が良かったんだけど、編曲者というより曲との相性かな?実際、最初の3楽章は、ほぼ同じ感じで編曲されていました。オリジナルに基本忠実。楽器を変えたり重ねたりすることで、新しい音色を作っていたところはほとんど聴かれませんでした。でも、楽器を移し替えただけではなくて、吹奏楽ならではの音になっていて面白いの。
それに対して、三浦さんによる第4楽章はより積極的。シロフォン(グロッケンだったかな?)とかベートーヴェンが使わなかった打楽器も加わります。それは効果的にも使われたりしたんだけど、例えば、楽章の最初の方で、前の3つの楽章を改装する部分で、前の楽章では使われなかったシロフォンが使われたりして、全体の整合性に欠けた部分があったのが残念でした。回想なので新しいものを付け加えちゃうと筋が通らなくなっちゃいます。それ以外で、使うのはいいと思うんですけど(でもちょっと派手かな)。

演奏そのものはとても良かったの。ってか、第九ってものすごい力があるから、演奏する方も聴く方も本気と書いてマジになる。その気持ちをしっかり受け止めて投げ返す力のこもった演奏でした。
指揮の松元さんは、わたしのイメジでは元気な、音楽を実に楽しく演奏する、聴かせる方だと思うんだけど、もしかすると裏腹に音楽に深みがないと言われるかもしれない。でも、わたし、フルトヴェングラーの音楽が精神的に深くてカラヤンがチャラい、なんて思ったことない感受性だから、クラヲタさんがよく言う深いって分からない。松元さんの第九は、フルトヴェングラーのような雰囲気はなかったけど、音楽に巻き込む力は素晴らしかった。それに、大人数の合唱団の特別な思いがこの音楽に乗り移って、全てを巻き込んでいく、前にも書いたけど、旗を振って民衆の先頭に立つ自由の女神なるベートーヴェンの音楽の世界観そのものだったと思います。わたしたちは、その自由の女神に先導される市民。音楽に巻き込まれて平常心でいられるでしょうか。まさにベートーヴェンの思惑通り、音楽に心動かされて熱い気持ちで音楽会をあとにしたのでした。音楽会に関わった全ての人にブラヴォー。

by zerbinetta | 2015-02-20 10:35 | 吹奏楽

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