80%の音楽 テミルカーノフ/読響 マーラー3   

2015年6月5日 @サントリーホール

マーラー:交響曲第3番

小山由美(メゾソプラノ)
ユーリ・テミルカーノフ/新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団、読売日本交響楽団


テミルカーノフさん、今まで何回か聴いたことあるのに、実は、ロシアもの以外を聴くのは初めて。当たり前だけど、ロシアもの専門の指揮者というわけじゃないからいろんな曲を振ってるのに違いないけど、珍しい機会(メリーランドに住んでたとき、ボルチモアのオーケストラの指揮者だったのに聴いてなくて悔しいい)。今日はマーラー。テミルカーノフさんがどんなマーラーを聴かせてくれるのか興味津々で聴いてきました。オーケストラは最近、苦手意識が高まってる読響さんだけど。

今日は交響曲第3番、1曲だけ。最初の深々したホルンのユニゾンの響きが会場を満たしたとき、今日はステキな音楽会になると予感しました。んだけど。。。第1楽章の暗い部分は何だか葬送行進曲のように音楽が進んで何だか暗〜〜い。低弦の速いパッセージの弾かせ方(頭の音を溜める)とか木管楽器やホルンのオクターヴ上がるメロディ(意識的な間をとる)とか、わたしのマイクロ・フェチ・ポイントのトランペットの吹奏にさりげなくオーボエが重なるところの音色とか、テミルカーノフさん、細部にこだわってかなり仕掛けてるところもあるんだけど、どうして?というかどんな音楽を創りたいのかちょっとよく分からなかったんです。でも、それはわたしがだけじゃなく、オーケストラもどうしたらいいのか動揺している感じ。第1楽章は、客席はとても良い緊張を保って聴いているんだけど、オーケストラは、指揮者がどうしたいのか分からなくて右往左往。コンサートマスターの日下さんも恋人同士のようにホルンと美しく絡むところなんかはちょっとツンとしてたり、何だか動揺しているみたいで、オーケストラと指揮者の間で迷っている感じ。打楽器からは楽器を落としたのか雑音まで。そんな中、がんばっていたのは第2ヴァイオリンかな。第2ヴァイオリンが目立つってあまりないんですけど、縁の下の力持ちで、しっかり音楽を支えていたと思います。とても良かった。

多分。多分ですよ。テミルカーノフさんって本番では、練習と違うことをやってるのか、オーケストラに敢えて指示を与えないで野に放つとか。心当たりがあるんです。前に聴いた、サンクトペテルブルク・フィルとの演奏では、オーケストラの弾きたいテンポと指揮者の求めるテンポの食い違いが音楽に緊張感を生み出していたし、フィルハーモニアとの演奏では、指揮者に必死に付いていくオーケストラが多少乱れたものの、指揮者の求めるものを先読みしてすごくいい音楽を奏でていました。読響にはそこまでの力はなかった。これもわたしの想像だけど、テミルカーノフさん、本番では練習したことの予定調和を乱して、常に新しく生まれてくる音楽の創造を求めているんじゃないのかな。オーケストラを放任することで、自発的な演奏を促してるんじゃないのかな。指揮者の音楽をきちんと演奏することが上手いオーケストラも、どうぞ、自由に、とハシゴを外されることによって混乱して、指揮者が振っているところまでは音楽にできるけど、振らない部分は音にできなくて、テミルカーノフさんがオーケストラの自発に委ねた20%を引いた80%の音楽にしかならなかったんじゃないかしら。お互いがぶつかり合って止揚して指揮者もオーケストラも思い描いていた以上のものになるはずがならなかったのが今日の演奏ではないでしょうか。マーラーのあまり演奏されない曲にオーケストラが慣れていないこともそれを助長して。オーケストラには厳しいことを書いたけど、テミルカーノフさんも彼のマーラーがどんな音楽なのかよく分かりませんでした。1番でも2番でも5番でももしくは9番でもない、第3番を敢えて採り上げるんでしょうから何かあるんだと思うんですが、それがよく分からなかったです。何でマーラー?何で3番?

第2楽章からは、オーケストラが持ち直したのか、テミルカーノフさんが指揮を変えたのか、落ち着いてきたと思います。わたし的には今日は第2楽章が良かったです。3楽章のポストホルンは、むーん、珍しい楽器ですからねぇ。ちょっと弱かったかな(音量じゃなくて)。メゾソプラノを歌った、小山さんは、声質が軽いので、酔歌を歌うのには物足りなく感じました。面白かったのは、第5楽章の児童合唱。とてもかわいらしくて、日本人の声だわ〜って思いました。まだ訓練で作られていない(発展中の)生の声って、身体の構造が違うのか、欧米の子供たちと随分違うんですね。どちらがいい悪いじゃないんですけど、へぇぇと感心。わたしは好き。
最終楽章は、普通にしても感動しちゃう音楽だから、やっぱり感動したんだけど、ある意味、テミルカーノフのアクもオーケストラのアクもなくした、素直なピュアな演奏でした。変態好きのわたし的にはそういうのには物足りなさを感じるのがいつもなんだけど、今日はむしろ丁寧に弾き込まれていて、いいなって思えました。マーラーの音楽の力に助けられた感じです。

初めてのテミルカーノフさんの非ロシアものだったけど、結局よく分かりませんでした。当たり前だけど、これだけで分かるはずもないんですよね。やっぱりロシアものを聴いてみたいと思いつつ、いろいろ聴いて彼の音楽のこと知りたいです。客演のときは、ロシアものを求められると思うけど、少しずつでも違うのやってくれたらなと思います。
[PR]

by zerbinetta | 2015-06-05 01:31 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

<< 理想に向かってワクワクしよう ... ばらの騎士の夢、未来への離別 ... >>