異次元から来たモーツァルト イブラギモヴァ、ピツァラ、東響 モーツァルト、ヴァイオリン協奏曲   

2015年9月27日 @ミューザ川崎

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番
ベートーヴェン:交響曲第7番

アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
パトリチア・ピツァラ/東京交響楽団


アリーナがモーツァルトの協奏曲を弾くというのでチケットを取った東響の名曲コンサート。最近聴きたい度が高まってる東響さんも聴けて一石二鳥。風邪をおしてミューザへゴー。

今日の指揮者は、4年くらい前にデビュウしたばかりのポーランド人のピツァラさん。もちろん日本で振るのも初めて。東響さんよくこんな人探してきたな。大抜擢だよね。さて、どんな音楽をする人でしょう。

始まりの「フィンガルの洞窟」は、海が凪いだり、波が立ったり絵画的な演奏。ただ、音と音の間に見えない隙間があるせいか、少し孤独感を感じもしました。楽しい航海と言うよりちょっと傷心旅行。景色は染みわたるようにきれいなんですけどね。ピツァラさんは、オーケストラにクレッシェンドとかデクレッシェンドとか細かく指示したりしてるんだけど、オーケストラはあまりよく反応していない感じでした。オーケストラの側でも音楽を創ってしまっていたのかな。

そしてアリーナのモーツァルト。今回わたしはステージの後ろ側で聴いていたので、ちょっと独奏ヴァイオリンにはキツイかもしれません。ステージの後ろの席、協奏曲のソリストを聴くのはミューザは少し弱い感じですね。サントリーはわりと音が来るのですが。
アリーナのモーツァルト、どんな風に来るのか、ドキドキだったんです。彼女、ピリオドとモダーンを垣根を作らないで自由自在に行き来するし、でも、同時進行のソナタの相手はモダン・ピアノのセドリックだし、いやでも、何か仕掛けてきそうだ、なんて。ただモーツァルトの音楽はイノセントに音楽の結晶を聴かせてくれる方がいいというか、わたし好きなので、策士策に溺れるみたいなことになったら嫌だなとも。いや〜でも来ましたよ。正直わたし、よく分かりませんでした。モーツァルトが異次元から来たかと思っちゃった。わたし的には、なんだこのヴァイオリニスト、サイテー、と感じた人がいたかもと想像するくらいにびっくり。でも拍手も多かったからこの演奏、すぅっと聴けた人もたくさんいるのかな。わたし、構えすぎていたかな。それにしても、アリーナの表現は多彩。そして、バッハの無伴奏で聴かせてくれたように語り系。それも囁いたり、対話したり、お話ししたりクルクルといろいろな声で。モーツァルトとおしゃべりした気分。白眉は第2楽章の静かな歌うような語り口だったけど、第3楽章の場面ごとに手練手管を尽くして驚きのある音楽を弾きだしていたのには、もうやられたって感じ。むぎゅー。モーツァルトの音楽って今聴いてもこんなにドキドキすると言うか、コンテンポラリーに感じたよ。
若い指揮者とオーケストラは、一所懸命アリーナをフォローしていたけど、自由に弾きまくるアリーナに対して、引き出しが足りてなかったかな。デビュウしたての指揮者にはちょっと荷が重すぎたかしら。アーノンクールさんみたいな人が振ると輪を掛けて仕掛けてきそうだから面白い演奏が聴けたかもと思ってしまいました。
そういえば、アリーナはここに来る前に、ハイティンクさんとロンドン・シンフォニーで同曲を演奏しているはずだけど、どうだったんでしょう。ハイティンクさんってモダン・オーケストラの極致を行くようなクリーミーで柔らかな古典を演奏する人だから、アリーナと火花を散らしたか、高い次元で調和するひとつの音楽にしたのか、気になる〜。
アリーナのアンコールは、バッハの無伴奏ソナタのガヴォット。重音による2つの旋律線の独立した表現の冴えに舌を巻きました。
近々東京で行われる、アリーナとセドリックのモーツァルト、ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会、ちょっと楽しみになってきました。

最後はベートーヴェンの交響曲第7番。ピツァラさんの思いっきり腕の振りどころ。ピツァラさんの音楽は、とても形のよいフレッシュな果物のよう。ゾクゾクって来ることはないけれども、オーケストラをバランスよく美しく鳴らしていく感じ。ただ、ピツァラさんはもう少し、過激な表現がしたかったのかもしれない。オーケストラが少し抑えていたように思えた部分がときどきあったから。そして、まだ完全にオーケストラを掌握して振り切っていないと感じられたところも。特に盛り上がるコーダの部分など、オーケストラの箍を外して駆け抜けていくところ、オーケストラを引っ張っていけず、オーケストラのあとから振っている感じに見えたのがちょっと残念。ただ、まだデビュウしたての若者。とてもステキな原石に見えたので、これからの活躍を期待して見つめることにしましょう。東響さん、定期的に呼んでくれないかな。
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by zerbinetta | 2015-09-27 15:00 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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