たゆたう時間 サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ <ホリガー>   

2015年8月27日 @サントリーホール

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
グザビエ・ダイエ:2つの真夜中のあいだの時間
ホリガー:レチカント
ホリガー:デンマーリヒト ー薄明ー
シャーンドル・ヴェレシュ;ベラ・バルトークの思い出に捧げる哀歌

ジェヌヴィエーヴ・シュトロッセ(ヴィオラ)
セーラ・マリア・サン(ソプラノ)
ハインツ・ホリガー/東京交響楽団


サントリー財団サマーフェスティバルの今年のテーマ作曲家は、ハインツ・ホリガーさん。稀代のオーボイスト。わたし的にもやっぱりオーボイストで、作曲もしているというのは一応知っていたし、確かうちにCDがあるはず、と思って探したら、むむむ、他の人の現代のオーボエ作品で、ホリガーさんは演奏者だった。
この音楽会、サントリーホールのウェブ会員になると(ちょこちょこと必要事項を入力するだけ。無料だし、ホールからのご案内は来るけどそれでメイルボックスがいっぱいになっちゃう程ではないし、特典もあるからオススメですよ)、毎年このシリーズのオーケストラの部のチケット・プレゼントがあって、今年も当たっちゃった。でも、去年、一昨年と偶然同じ席が当たって、わたしの指定席かなと思っていたら今年は違う席でした。

ホリガーさんが作曲家として関心を持っている作品を自作に添えての音楽会。始まりは、出発点とも言えるドビュッシーの「牧神の午後」。ホリガーさんがどんな音楽をするのだろう?と観ていたら(聴いていたら?)、最初のフルートのソロから、細かく振りまくり。奏者を信頼して自由に吹かせても(練習でしっかりと欲しい音楽をたたき込んで)良いんじゃないかしら、窮屈よねって思ってしまいました。ソロだけじゃなくて、ずうっと細かな拍で振り続けて、なんかそよ風の薫る音楽なのに目には嵐が吹いているみたい。目を瞑って聴いている分にはものすごく繊細な音楽(お終いの方の古代シンバルの扱いが面白かった)に聞こえるのでしょうけどね。ホリガーさんの音楽の特徴は、縦の線を合わせるというより、ゆらゆらと伸縮しながら重層する横の線の流れを大切にするみたい。全てがコントロールされていて、コントロールされないところに官能があると思っているわたしは、微細な精密画を観ている驚きはあるけど、牧神の夢想したエロスは感じませんでした。

2つめの「2つの真夜中のあいだの時間」は、作曲者の言葉を借りると「いくつかの時間の合っていない大時計が予期せぬ時を告げるように」、オーケストラの中で時間が曖昧になって、楽器(群)の間の時間の位相のずれがたゆたうような音響を作っていくような音楽なんですけど、あっそうか、ホリーがさんの関心事って、音楽の縦に存在するリズムではなくて、横に流れる時間なのねって納得。

それはホリガーさんの作品にも色濃く示されていて、ヴィオラのソロとオーケストラのためのレチカントは、しゃべるような(レチ(ターレ))歌うような(カント(ターレ))ヴィオラの独奏と、それに絡んでたゆたうようなオーケストラ。ヴィオラとオーケストラの対話というより、ヴィオラとオーケストラが何となくそこにいてゆるやかな化学反応をしている感じ。完全に自分の音楽として演奏しているヴィオラのシュトロッセさんがとても素晴らしくて、この曲に新たな解釈者を得て(献呈者はツィンマーマンさん)広がりを持っていくんだろうなって思いました。

もうひとつの「デンマーリヒト」は今日が初演。ホリガーさんが大晦日に皇居のそばの公園で作った俳句(ドイツ語で)を元にした5つの歌。和風かというとちっともそうではなく、でも、時間の流れの曖昧さはもしかすると、雅楽のような規定されない時間のゆらぎに共感があるのかなとも感じました。厳格な書法を超えて自由に歌われる歌(サンさんがとても自然に歌いました)と暗くて清廉なイメジのオーケストラ。今日の音楽の中でこれが一番好きでした。

反対に、「バルトークの思い出に捧げる哀歌」は、打楽器が一定のリズムを打っている音楽で、わたしには、それがホリガーさんの微妙に伸縮する音楽とは矛盾するなって思えました。むしろ、きちんとした一定のリズムで進めた方が、有無を言わさないビート感(それが悲しいものであれ)が生まれて音楽が自然に力を持つように思うからです。でも、初めて聴く曲なので、確固たるリズムでやると違った音楽になってしまうのかもしれません。いろいろ聴いてみたいな、と思いました。

それにしても、ホリガーさんの作品を初めて聴いて、わたしにはまだ知らない、知るべき世界が豊かに広がっていて、これからもまだまだたくさんの出逢いがあることを確信して嬉しく嬉しく思いました。今日演奏した東京交響楽団もなにげにとても良くて、このオーケストラ、まだあまり聴いていないけど、これからたくさん聴かなくちゃ。若手のフレッシュな名手たちが管楽器に多いのも将来性を感じさせますね。
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by zerbinetta | 2015-08-27 23:48 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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