イギリス田園風景 尾高/日フィル   

2015年12月12日 @サントリーホール

フィンジ:クラリネットと弦楽のための協奏曲
ヴォーン・ウィリアムズ:バス・テューバと管弦楽のための協奏曲
シューベルト:交響曲第8番

伊藤寛隆(クラリネット)
柳生和大(テューバ)
尾高忠明/日本フィルハーモニー交響楽団


金曜日の公演を土曜日に振り替えての日フィル。土曜日のお客さんは(マナーが)良くないと言われていたので戦々恐々としていたのだけど、今日はそんな感じでもなかったです。わたしが鈍感で気にしないだけかも知れないのだけど。
前半は、尾高さんお得意のイギリスもの(尾高さんはウェールズの劇場で活躍しておられた)。後半にシューベルトのハ長調の大交響曲。それにしても、前半の2曲、初めて聴く曲。ロンドンでも聴いたことなかった(1曲目は作曲家の名前さえも初耳)。

フィンジのクラリネット協奏曲は、戦後書かれた音楽だけど、イギリスの田園風景を彷彿させるような、さりげなくロマンティックで分かりやすい曲。柔らかな光りの彩度を落とした風景画のような世界。クラリネットが優しいメロディを奏でていくところに、弦楽合奏が空気のように世界を満たしていく。懐かしいような田舎の風景の映像の裏に流れていくような音楽。読響の主席の伊藤さんのクラリネットもオーケストラもその風景に溶け込んでいて、でもただそれだけ、なんだよね~。そつなくきれいなんだけど存在感の薄い人みたいな。

RVW(ヴォーン・ウィリアムズをイニシャルをとってこう略すんです)のテューバ協奏曲は、テューバ吹きには有名な曲(と言うのはテューバ吹きの友達に聞いて知っていました)。テューバの協奏曲なんて珍しいですしね。テューバの良さ、低音の重さに加えて軽やかさもあるんですね、を生かし切ったマニアックではあるけど名曲だと思いました。自在に吹く読響の柳生さんもここぞとばかり楽しそうで。チューバの音楽を存分に楽しませてくれました。不満があるとしたら、曲が15分ばかしで短かったこと。あっという間に終わってしまいました。
それにしても、この2曲で日フィルのソリストの魅力の一端が分かったし、尾高さんとイギリス音楽の相性の良さが確認されたのでした。

休憩のあとは打って変わってシューベルト。始まりのホルンのユニゾンは、魅力的な音で魅力的なテンポだったんだけど、流れるような流線型の音楽が、シューベルト特有の翳の部分を隠してしまった感じがしてちょっと物足りなかったです。同じ田園風景も感じさせる音楽だけど、イギリスの音楽とシューベルトの音楽の風景って違うと思うんですよ。陽光の気持ちの良いお散歩なのに、歩くことに夢中になってしまって、足元の小さな花や虫の死骸、木の陰に潜む鳥を見逃してしまって、豊かな語彙が感じられませんでした。ちょっと雑だったし、オーケストラの音にももう少し潤いが欲しかったです。日フィルってどちらかと言うとドライな音のするオーケストラだと思うけど、せっかく積極的な奏者が集まっているんだから、丸味のある音も身につければもっと良くなるのに惜しいなぁ。
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by zerbinetta | 2015-12-12 12:28 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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