弥七、走らず 西谷/ブロッサムフィル   

2015年10月18日 @ティアラこうとう

ベートーヴェン:交響曲第5番
チャイコフスキー:交響曲第5番

西谷亮/ブロッサムフィルハーモニックオーケストラ


また、知らないオーケストラ。ブロッサムフィル。オーケストラ連盟には入ってないけどプロのオーケストラです。東京にはいろんなオーケストラがありますね。指揮者の西谷さんの下に集まった、主にフリーの音楽家によるオーケストラ。地域(江東区)に根ざした活動をしていて、トップ・レヴェルのオーケストラではなく、いろんな人に聴いてもらおうということを前面に出している団体です。西谷さん、どこかで聴いたことのあるお名前だと思っていましたが、東京ハートフェルトフィルハーモニック(アマチュア)の創設者だったのですね。彼の指揮では聴きませんでしたが、オーケストラ・プロフィールに載っていたのを覚えていました。それで納得。THPOも「音楽音楽による地域社会活性化、低年齢層への音楽文化定着、音楽に触れる機会を持つことが困難な方々への積極的アクセス等を団の活動方針」にすることを謳ってますから、同様のことをプロのオーケストラでやるべく2008年に作られたのですね。あなたの隣のオーケストラ。

敷居低くいろんな人に聴いてもらう活動をしている(今日の音楽会も家族連れが多かったように思います)からと言って、レヴェルを下げた演奏ではないし、分かりやすさを前面に出しているわけではありません。本物を聴いてもらうことで音楽ファンを広げるという当たり前の方針です。今日だってベートーヴェンとチャイコフスキーの交響曲(どちらも第5番。テーマは「運命」)の重厚なプログラム。でも、始まる前にロビー・コンサートがあったり(それを聴いていた西谷さんの笑顔、ステキでした)、指揮者による解説があったり、俳句の募集があったり、プログラムの解説も通り一辺倒のものではなくて、クラシック音楽に興味はあるんだけどまだあまり慣れ親しんでいない人にも分かりやすく書かれていたり、随所に工夫が。良いですよね。

ベートーヴェンは、多分、わざとではなくて計らずして指揮者の西谷さんの性格が出たんだと思うんだけど、喉ごしの良い、分かりやすい演奏。ベートーヴェンのこの交響曲が書かれたのはちょうど、東海道中膝栗毛が書かれていた頃。当時大人気を博したこの本も今のわたしたちには読むのが難しいように、昔の言葉で書かれたベートーヴェンの音楽は、分かった気になっていても本当は作曲家の書いた奥の奥まで分かって聴いているのかどうかは、疑わしい。と、わたしは感じることがあるんだけれども、西谷さんの演奏は、現代語訳のベートーヴェンと言ったらいいのかしら、するりと入ってくる感じ。それが本当に良いのか悪いのかは問題ではなくて、みんなが楽しめる音楽を演奏してくれる意義は大きいんだと思います。

後半のチャイコフスキーは、時代が下って明治の「舞姫」の頃(交響曲が2年先行)なので、(今の倫理観からみる主人公がクズ男だということは置いといて)言葉も近いし感覚的に分かりやすいんですね。そういう肩肘が張らない分、演奏する方も聴く方も余裕が出来て、とても良い演奏になっていたと思います。音楽の流れに自然で、恣意的なところはほとんど無くて、西谷さんの音楽に合ってるんだろうなって思いました。ところでわたし的には、チャイコフスキーの交響曲第5番というと第4楽章の風車の弥七のテーマなんだけど、今日の演奏は、あまり弥七感がなかったな。って、はい、どうでも良いことですね。

アンコールは、弦楽合奏版のアンダンテ・カンタービレ。交響曲で熱くなった気持ちを柔らかく冷まして、午後のお茶会みたいなアットホームな雰囲気の音楽会は終わったのでした。近所にこういうのあるとステキよね〜。シティ・フィルのレジデンシーもあるし、シティ・バレエやお昼のワンコイン・コンサートとかティアラこうとうってがんばってるな。
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by zerbinetta | 2015-10-18 23:38 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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