周回遅れのベートーヴェン 広上/日フィル   

2016年3月4日 @サントリーホール

シューベルト:交響曲第7番
尾高惇忠:ピアノ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第5番

野田清隆(ピアノ)
広上淳一/日本フィルハーモニー交響楽団


初めて聴く広上さんと日フィルの名曲系プログラムに挟まれてぽつんと本日初演のピアノ協奏曲。プレコンサート・トークで広上さんは、定期演奏会でクラシックの定番に新しい(現代)音楽を挟むというのは珍しい、とおっしゃっていたけどええぇそうなの?当の日フィルも新作を定期演奏会でいつものレパートリーの中に入れて初演してるし、珍しいことではないのではないかしら。

シューベルトの「未完成」とベートーヴェンの「運命」の間に挟まれたのは、尾高惇忠さんのピアノ協奏曲。惇忠さんは指揮者の忠明さんの兄。お父さんの尚忠さんは指揮者、作曲家だったから父の仕事を兄弟で分け合った感じ(?)。で、広上さんは、惇忠さんの教え子。
そのピアノ協奏曲は、和風の入ったちょっとメシアンっぽい、一見複雑そうで、実は至極単純な細胞の積み重ねでできている感じ。変拍子のような第3楽章もなれてくると頭でリズムが取れるようになったのでやっぱり単純な繰り返しなんでしょう。尾高さんは、プログラムノートの中で、斬新な音楽の語法に囚われないで真に新しい現代音楽を模索していると書いていましたが、わたしには、この音楽が、今の人の心を突き刺す音楽のようには聞こえませんでした。でも、もしかすると今の人は、心に突き刺さるような音楽を求めていないのかも知れませんね。ちょっと背伸びをすれば分かりやすい、耳に入りやすい音楽で、クラシック音楽の文脈からは、普通の音楽会でラフマニノフの協奏曲の代わりに入ってもいい感じの曲だと思いました。
野田さんのピアノは、難しさを感じさせずにこの曲を弾きこなしていたし、今日初めて演奏される音楽を癖なく紹介している感じは好感持てました。広上さんは、なんかものすごく気合いが入っていて、シャドウボクシングのようにしゅっしゅと発しながら複雑なリズムを右に左に捌くようにオーケストラをドライヴしていてアスリートみたいでした。

ピアノ協奏曲を挟んで前半の「未完成」は、初めて聴く広上さんの指揮だったんですけど、わりとオーケストラを自由に歌わせるような演奏だったんだけど、オーケストラはなんかおとなしく、あまり積極性が感じられなかったのが残念です。ベートーヴェンにも言えるんですけど、ダイナミックレンジが狭く、正直退屈でした。弱音の純度がもっと上がらなければ、こういう曲は難しいかも。

「運命」は、残念ながら完全に時代遅れ。敢えてそういう音楽をしたいという、必然性や覇気も感じられず、昔レコードを聴いて育ってきた往年の巨匠の演奏の表面をなぞってるだけのように思えました。ベートーヴェンって常に新しくされ、それぞれがもう本当にエキサイティングで新しい発見に満ちている音楽だと思うのだけど、ロンドンではいつも最新鋭のベートーヴェンを聴けたのだけど、それは贅沢で、日本では難しいのでしょうか。広上さんの指揮は見ていて楽しいのに、楽天的な性格なのか、音楽が深い淵をぞくりと見(魅)せることはありませんでした。演奏慣れしている名曲系は演奏者にとってむしろ怖いかも知れませんね。



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by zerbinetta | 2016-03-04 00:04 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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