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出逢いそして別れ ツァグロゼク/読響   

2016年3月17日 @サントリーホール

ベンジャミン:「ダンス・フィギュアズ」
コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

ローター・ツァグロゼク/読売日本交響楽団


あとで気がついたら、今日がわたしの読響さんのシーズン最後の音楽会になってしまいました。来シーズンはサブスクライブしないので、読響さんとはお別れです(お客さんとしていくつかの公演はシングル・チケットで聴きに行きますよ)。指揮者のツァグロゼクさんは、全然知らない人。なので、ヘンに期待もせず、平常心で聴きに行きました。

始まりはイギリスの存命の作曲家、ジョージ・ベンジャミンさんの「ダンス・フィギュアズ」(2004)。で、今日の収穫その1は、ベンジャミンさんを知ったこと。
と、初めて聴く人のように書いてしまいましたが、あとで調べたら、わたし、この人のオペラ聴いているんですね。すっかり忘れてました(というか誰が書いていたか意識してなかった)。バレエのための音楽ということで、どんな踊りになるのか妄想しながら聴いたら楽しかった。とは言え、どんな踊りになるかあまり想像できなかったんですけど。わたしは物語バレエの人なので、まず物語を想像するんだけど、ちょっとそれが難しかったな。初めて聴く曲だし。でも、これ、とってもステキな音楽でした。響きがとってもきれいなんですよ。その響きを作るための楽器の選択がとっても色彩的でいいの。

「ハーリ・ヤーノシュ」は、今日の最後の「英雄」とナポレオンつながり。ほら吹きヤーノシュがナポレオンを打ち負かした話が、第4曲なんですね。この曲は、前にも聴いたことあるのだけど、ツィンバロムをちゃんと見たのは初めて(前に聴いたときはかぶりつきだったので楽器がよく見えなかった。今は亡きマズアさんがしきだいから落っこちたのを鮮明に覚えてる)。打楽器だとは知りませんでした(正確には打弦楽器と言うんだそうです。ピアノの弦のようなものをばちで叩くの。
ツァグロゼクさんの演奏は、即物的。物語性や絵画性を強調することはあまりしないで、音をあるがままに音にした感じ。ドライでわたしは好きな演奏でした。ただオーケストラにはもちょっとがんばって欲しかったな。特に金管楽器。弱音と強音での音の力に差がありすぎて、弱音では音に芯がないというか、ただ小さい音で吹いたという感じで響きが薄かったです。あと、トップ奏者はまだしも、セカンド、サードの人たちが少し力不足でした。

ベートーヴェンの「英雄」は、「ハーリ・ヤーノシュ」の演奏から予想されたように、やっぱりさくさくとドライなある意味ピリオド・スタイルに近い演奏でした。ティンパニも固いマレット使っていたし、鋭く付けたアクセントとか、もったりしないテンポとか、甘いケーキ系ではなくておせんべい系な感じ。この間の、広上さんのベートーヴェンが時代遅れ(そういうロマンティックな表現も音楽に説得力があればいいのですけど、昔聴いた巨匠の演奏をなぞってみました的な演奏ではダメです)だったので、今日のツァグロゼクさんの演奏で溜飲を下げました。第2楽章のお終いでティンパニのマレットを柔らかなものに代えていたのも心憎いです。あっでも、ホルンにはもっとがんばって欲しかった。

ツァグロゼクさん、好みのタイプのイケメンおじいちゃんだったわ。音楽が老いぼれてなく尖っていたのもステキ。
読響さんとはこれでお別れ(定期会員として)だけど、上手いっぽいのに物足りなさを感じることが多かったのは、多分、トップ奏者と後ろの方の人たちの音楽の力に差があるからだと思います。読響がもう一段のレヴェルアップを図るには、後ろの人がその他大勢ではなくひとりひとりがオーケストラの音楽に前の人と同じように参画するようにならなければいけませんね。全員がひとつの音楽を奏でられるように。良いオーケストラなのでそうなって欲しいです。

by zerbinetta | 2016-03-17 00:07 | 日本のオーケストラ

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