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さようなら 高関/シティフィル シベリウス、マーラー   

2016年5月14日 @東京オペラシティ

シベリウス:交響曲第7番
マーラー:「大地の歌」

小山由美(メゾ・ソプラノ)、小原啓楼(テノール)
高関健/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


確か今日が今シーズンの始まりだと思うんだけど、なぜかお終いのようなプログラム。シベリウスの最後の交響曲とマーラーの「大地の歌」。人生の終焉。プログラムを見たとき、わたしはどうしてシベリウスが先でマーラーが後なのかって思いました。確かに常識的には規模の大きい「大地の歌」が後に来るのでしょうが、「大地の歌」には(物語が)完成されていない感じがするのです(関係ないけど、「大地の歌」の初演の際もこれが音楽会の前半でしたね)。それに対してシベリウスの最後の交響曲は、短いけれども極限までに蒸留され純化された結晶の密度と重さを感じるのです。短さゆえに音楽会の前半に置かれがちのこの曲は音楽会のメインにふさわしいと思います。「大地の歌」との組み合わせででも(だからこそ)「大地の歌」を補完して完成させるのにふさわしい音楽だとわたしは思うんですね。

始まる前に、高関さんが今日のプログラムについて、どうしてシベリウスとマーラーを組み合わせたのかについてお話ていました。1907年にマーラーがヘルシンキで指揮をしたときに、ふたりはホテルで会っていたのだそう。ただ、ふたりの音楽感(交響曲感)は結局相容れなかったみたい。全然違う方向の作風だからね。
シベリウスの最後の交響曲は、交響曲全体を織りなしていた、(レードと)シードの動機に最後収斂される、ということを説明されてたので、「大地の歌」は、最後、離別の動機のミーレが解決されないまま終わる、というのを話されるかと思ったらなかったので、あれ?違うのかな?これが対称になってると思ったんだけど。まあいいや。

シベリウスの交響曲第7番は、大好きな曲。うんと高く評価している高関さんと好感度大のシティ・フィルがどういう風な演奏をするのか、楽しみだったんだけど、正直ちょっと辛かった。始まりから、何か先をせかすような感じがして(始めの音階、ちょっとアチェレランド気味?)、何か落ち着かない。決して速いテンポではないんだけどね。オーケストラの音も荒い感じがして、弦楽器もシベリウスらしい寒色系なのは良いのだけど、ナイフの刃で切られるような痛みでわたしを傷つけます。繰り返し降り注ぐ天啓のようなトロンボーンの光りも解決にならなくて、どうしてこうなっちゃうんだろう?オーケストラに飲まれてしまっていたから?確かに時に美しい瞬間、木管楽器のさざ波とか、あったんだけど何か腑に落ちない感じが残ってしまいました。マーラーの音楽とは相容れなかったシベリウスの音楽。うがち過ぎだけど、マーラーの音楽をとても研究している高関さんには合わなかったのでしょうか。

じゃあ、マーラーは、と言うと。。。ううううむ。シベリウス以上にもやもや感が残りました。高関さんもおっしゃるように、マーラー自身一度も演奏していないこの曲は、いわば未完成で(オーケストラと練習を重ねながら筆を入れるのが常だったので)、その通りに演奏してしまうと、オーケストラが声を圧倒してしまう場面もちらほら。でも、それを警戒するばかり、オーケストラを引っ込めすぎて、全体が壊れた積み木のようにちぐはぐしてしまった感じです。例えば、「美について」の中間の盛り上がるところは野性味がなくてなんか薄ぼんやりとしたトーンになってしまいました。オーケストラが弱音の美しさを持てていれば、全体を損なうことなく歌の後ろに厚いけど静かに付けることができると思うのだけど。。。そして、シベリウスでも感じたのと同じように、何か音楽が先へ先へと進みすぎていると感じました。特に、「秋に寂しき者」でのテンポ設定、歌った小山さんとのテンポなのかも知れないのですが、なにか行進曲のように歌われてしまって、全然雰囲気が。。。残念ながら終始、小山さんの歌に疑問を持ってしまいました。音程も悪かったしマルカートのような発声(発音)の仕方もわたしにはダメでした。正直、「秋に寂しき者」で帰りたくなりました。
美しさが足りないゆえに、魂が浄化しきれない「大地の歌」。(「告別」のオーケストラの間奏の後、少し雰囲気が出たのですが、、、足りません)

高関さんもシティ・フィルもマーラーもシベリウスもみんな大好きでとても期待していたのに。。。「大地の歌」の主人公のように、シティ・フィルから静かにさようならするべきでしょうか。最後、寂黙に至らないまま終わった音楽をあとにして、すうっとまだ誰もいないホールの外に出て帰りました。

by zerbinetta | 2016-05-14 00:10 | 日本のオーケストラ

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