back to the future 同時代の音楽 ロト/都響 ストラヴィンスキー   

2016年4月12日 @東京文化会館

ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」(1911)、「火の鳥」(1910)

フランソワ・グザヴィエ・ロト/東京都交響楽団


「ペトルーシュカ」と「春の祭典」だと思って行ったら「火の鳥」だった今日の音楽会。指揮者は、去年、読響さんを振ったのを聴いて大絶賛のロトさんだし、そのロトさん、ピリオド・スタイルの「春の祭典」のCD(わたしは未聴)が話題になっていたので、とても期待していた音楽会でした。そしてその期待は裏切られることなかった。ロトさん最高!都響がんばれ!

4月始まりの都響のシーズン・オープナー。と言っても、音楽監督はお留守で、特別なこともしない、いつもの定期演奏会なんですね。日本のオーケストラのシーズンって4月始まりと西欧のように秋始まりがあるみたいでこんがらがるんだけど、シーズン開幕に特別感がないのもそれを助長してるのかも。これはちょっと残念。

ストラヴィンスキーのバレエがふたつ、でも、今回はひとつひとつあれこれ書くよりも、2つ対比して書いた方がいいかな、って思える音楽会でした。
ロトさんのアプローチは、「ペトルーシュカ」と「火の鳥」では全然違ってて、「ペトルーシュカ」では、音楽の前衛性(複調とか異質なものを積み重ねていくやり方とか)を強調。他方、「火の鳥」の伝統的なロシア音楽の親しみやすさと楽器の響きの革新。20世紀始まりの当時、ストラヴィンスキーのバレエ音楽を初めて聴いた人たちの驚きを、今のわたしたちにも、ーもう100年も前の音楽なのに、もっと新しい音楽をたくさん知っているのにー、再現させてくれる類い稀な演奏。タイムマシンで連れてこられた、まさに、同時代性のピリオド・スタイル精神の音楽。それぞれの音楽の本質を突いているからこそ。違ったアプローチと書いたけど、実はどちらも音楽の生まれたときの同時代性の核心を付くアプローチなんですね。この次代の音楽を今演奏するのには、珍しい対向配置だったけど、わたしの席(サイド)では、その効果は残念、限定的だったかな。

「ペトルーシュカ」は華やかな明るさ、お祭り広場の賑やかさ、親しみやすいメロディに溢れていて、すうっと分かりやすい、一見分かりやすい音楽だけど、それ以上に、緻密に重ねられた異質のモチーフの斬新さ。ロトさんはそれを4kハイヴィジョンのような高精細に聴かせてくれる。
ロトさんの演奏は、この間聴いたヤマカズさんのような独特な節回しはなかったけれども、同じようにフレーズひとつひとつ、一音一音まで目が行き届いていて、隙がないの。重ねられた音たちが全部聞こえて、軋んだり調和したり、色を放ったり、全てが聞こえてくるもの凄く情報量の多い演奏。楽章をつなぐドラムロールにディナーミクの変化を加えてドキリとさせたり、アクセントを強調したり。謝肉祭の賑わいが消えて最後に向かってどす黒いカオスが渦巻いて来るさまは圧巻で、でも首を刎ねるタンバリンは控え目、そこはヤマカズさんに軍配が上がったけど、そこからグロテスクに音楽が終わって、糸が切れてすっと力が抜けた。お見事。

「火の鳥」は、全曲なのでバレエのシーンが浮かぶんだけど(「ペトルーシュカ」はまだバレエを観たことないんです)、ロトさんの演奏は、組曲版にはないバレエのつなぎの部分がとても丁寧で聞かせどころになっていました。組曲はいいとこ取りをしているので、その間の部分は(音楽的には)あまり価値がない、聞いてもつまらない、と思われがちだったのに、ロトさんのはその部分にこそストラヴィンスキーの天才を見いだしている感じです。今日の演奏を聴いてわたしもその部分で音楽的実験がたくさんなされているように感じました。それを明晰に聴かせてくれて、むしろ普通にきれいなメロディが出てきたり盛り上がったりする部分よりも面白かったです。そして最後、主題が倍の音価になって繰り返されるところ、わたしの大好きな1945年版のように音を短めに切って演奏させたところは、ほんともうツボ。素晴らしい「火の鳥」でした。

ただ、オーケストラにもうちょっとがんばりというか余裕があれば。。。ロトさん、素晴らしい指揮者だけど、都響を鳴らすのは、現時点でフルシャさんの方が上かな。フルシャさんは首席客演だし、ロトさんは多分初めての共演だと思うから仕方がないんだけどね。でも、ロトさんには都響を定期的に振りに来た欲しいわ。去年素晴らしい演奏を聴かせてくれた読響と取り合いになっちゃうのけど。って言うか、どこか東京のオーケストラの音楽監督になって下さらないかな。ロトさんの音楽は、今の東京のクラシック音楽の聴き手を変えていくために絶対必要だわ。アーノンクールさん亡き後、彼を引き継ぐ次代の若手はロトさんだもん。



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by zerbinetta | 2016-04-12 01:11 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

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