カテゴリ:啓蒙時代管弦楽団( 14 )   

わたしだったらずるしちゃう エマール、ラトル、啓蒙時代管 ラヴェル「左手のための」   

10.06.2012 @royal festival hall

fauré: suite, pelléas et mélisande
ravel: piano concerto for the left hand
debussy: prélude à l'après-midi d'un faune; la mer

pierre laurent aimard (pf)
sir simon rattle / oae


夜は、ラトルさんとOAEを聴きにサウスバンクへ。ごめんね〜ハイティンクさん。
ラトルさんとOAEは密月。ベルリン・フィルのシェフになったラトルさんも毎年1回は振りに来ます。OAEはピリオド楽器のオーケストラだけど、今回は20世紀フランスもの(正確にはフォーレの「ペレアスとメリザンド」とドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は19世紀最後の方の作品ですが)。楽器的にはもう現代楽器といっていいのではないでしょうか。わたしはあまり区別がつきません。

フォーレの「ペリアスとメリザンド」の組曲はものすごくきれいで、アンニュイ(日本語の)で、癒し系という言葉が嫌いなわたしでもうっかり使ってしまいそうな音楽。静かで柔らかく感傷的。シシリエンヌが有名な曲ですね。
ラトルさんとOAEはこの音楽を本当に柔らかく繊細に演奏しました。ピアニッシモがとにかく美しくて、聞き耳を立てて聴きたくなる音楽。どんな些細な一音も聞き漏らしたくない。単なるムード音楽に終わらないステキな演奏でした。

2曲目は、ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲。ラヴェルの2つのピアノ協奏曲のうちこちらの方が有名だし、録音も多いような気がするけど、わたしはト長調の協奏曲の方がいいと思うなって今日まで思ってました。で、今日聴いてあっさり宗旨替え。めちゃかっこいいーー。かっこよすぎる。もちろんそれは、エマールさんの演奏のせいでもあるんですけど、どこのピアノを使っていたかはちゃんと見ていなかったので分からないんですけど、今の高性能なスタインウェイなんかより響かないピアノを思いっきりたっぷり響かせた音は、とっても深く硬質だけど木目調の音。そしてやっぱり、エマールさんのピアノがもう、音楽の偉大さだけを感じさせるような大きな演奏で。実は今シーズンのわたしのベスト音楽会のひとつがなんと言っても、エマールさんのリサイタルなんですけど、そのときの感動再びです。エマールさん、いつの間にかに現代を代表するピアニストになりましたね。それにしても、よくもまあ、こんな複雑な音を左手だけで。わたしだったら、ずるして右手も使っちゃいそうだけど、っていうより右手両足、ネコの手を使ってもわたしには弾けない。
もちろん、エマールさんのかっこよさをラトルさんとOAEのシャープな演奏がこの上もなく引き立てるんですけど、これはもう稀に聴く素晴らしい演奏だと思います。エマールさんは今後、聞き逃せないピアニストでしょう。
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休憩のあとはドビュッシーがふたつ。「牧神の午後」と「海」。わたしの大好きなドビュッシーです。
「牧神」は、とても静かで、白昼夢というか夢うつつにたゆたう、ちょっとでも触れると弾けて消えちゃう繊細さ。わたし的には、真ん中の降りてくる音の旋律の箇所、もっと盛り上がって欲しかったんだけど、夢うつつという解釈だとこれがいいのかもしれませんね。最後の古代シンバルの音色のなんて澄んでてきれいだったこと。それにしても、この曲って、真剣に聴くのがいいのか半分寝ながら聴くのがいいのかいつも迷ってしまいます。こんなステキな演奏、ぼんやり聴くのはもったいないけど、音楽の情景と同じように夢うつつで聴けたらなんて贅沢って思っちゃいます。悩みの種。

「海」はこれまたとってもステキな演奏。ラトルさんって音楽する喜びをオーケストラから引き出す天才だと思います。波や風や、カモメやトビウオがぴょんぴょんはね回るような生命感。生き生きとしていて、わたしまで新しい生命力を満たされるみたい。生命が海から始まった始原的なエネルギーをもらいました。この曲ってやりがいがありそうだけど、ラトルさんの演奏も細かいところまで気を遣って音符のひとつひとつを大事にした演奏。OAEもいつも以上の力を出してラトルさんに応えてる感じ。吹きづらいピストンのない古楽器じゃない、クロマティックも吹けるちょっと近代的な楽器で開放感たっぷりに吹く金管楽器が良かった。これはまるで音の絵。最後はいつも踊る大捜査線の映画を思い出しちゃうんだけど(この音楽がアレンジされて使われてますよね)、冷静にかつ熱く盛り上がって終了。

そしてなんとアンコールに熱くなった体をさますようにサティーのジムノペディの第1番。これがまたステキな演奏で、退廃的なんだけど心が溶けるように美しく、バックグラウンド・ミュージック(サティは自分の作品をそう捉えていたと思います)というよりうっとりと聞き耳を立ててしまう音楽。それにしても、この曲を最後に持ってくるなんたるセンスの良さ。自分まで洗練された人になった錯覚。
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by zerbinetta | 2012-06-10 17:00 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

看板に偽りあり! と一瞬思った「見て!指揮者いない!」 啓蒙時代のオーケストラ   

03.05.2012 @queen elisabeth hall

haydn: symphony no. 104
mozart: violin concerto no. 3
beethoven: triple concerto

robert levin (fp)
isabelle faust (vn)
steven isserlis (vc)
oae


音楽会のタイトルは「look! no conductor! (見て!指揮者いない!)」デス。でも会場に行ったら、指揮台はあったし譜面台が立ってて椅子が置いてあったの。えええっ?看板に偽りあり?最初のは交響曲だから、これだけ指揮者ありでやるのかな。と思ったら底に座ったのはチェロのイッサーリスさん。なんとチェロの弾き振りです。もちろん弾くのはオーケストラのチェロパート。ふわふわの髪を揺らして弾き振りです。イッサーリスさんの後ろ姿もなんだかユーモアのある感じで、愉しい。
ロンドンで聴く「ロンドン」。出だしは重くゆっくり。そして軽快な音楽に続いて、ピリオド楽器で弾くとまったりしないで、さばさばと音楽が流れてステキ。もちろん、ハイドンの後期の交響曲は現代楽器でビロードのような柔らかな肌触りの演奏も極上のシュークリームを食べるようで大好きなんですけどね。それにしてもチェロの弾き振りって初めて見た!貴重な体験?

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番はファウストさんの弾き振り。これはこの間、ロンドン・フィルでリサの弾き振りで聴いたばかりですね。ファウストさんを聴くのは2度目だけど、モーツァルトも端正な感じでいいなぁ。余剰な飾りのない、実にまっすぐで庭に咲いてるきれいに品種改良された花ではなく、野原にぽつりぽつりと咲いてる華美ではないけど生を謳歌している力強さのある花のような音楽。わたしのイメジではこの曲は緑の草原(くさはら)なんですけど、その中に咲く野生の花みたい。ファウストさんの弾き振りは、前に出る独奏者というよりは、小さなオーケストラと一緒に音楽を作っていく感じ。そこから絶妙なバランスでソロが浮かび上がってくる。協奏曲的な華やかさはないけど、ミント味の炭酸水(menthe à l'eau)のような爽やかな感じはとっても好き。

最後のベートーヴェンの3重協奏曲は、フォルテピアノのレヴィンさんが弾き振り。このベートーヴェンはわたしにはちょっと慎ましやかすぎたかな。この曲って、あのベートーヴェンの苦虫をかみつぶした顔がなくって、3人の名人と共に素直に華やかに音楽を楽しむって雰囲気があると思うので、音楽的には正しいけど、音が地味めな古楽器では、現代楽器で派手にやられた演奏と較べられると面白味に欠けるんだよね。豪華な料理は豪華に食べたいじゃない。蕎麦道とか言ってざるにこだわるのもいいけど(しかもつゆはちょっとしか付けないしわさびはのせない)、大きな海老がのってる天ぷら蕎麦が食べたいときもある。ベートーヴェンのこの曲は天ぷら蕎麦だと思うんです。とか言いつつ、でもやっぱり、このソリスト人は豪勢ですね。最高のお蕎麦に何文句言ってるのって感じかも。しみじみと豪勢な音楽に満たされて、家路についたのでした。
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by zerbinetta | 2012-05-03 02:31 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

イギリスの作曲家といったらヘンデル 啓蒙時代管弦楽団   

07.03.2012 @queen elisabeth hall

handel: overture from saul; concerto grosso, op.3-1; organ concerto op.7-4;
concerto grosso op.6-11; overture from il pastor fido

laurence cummings / oae

イギリスといったらヘンデルです!(パーセルやエルガーはどうしたと言われそうですが) 大バッハの陰に隠れて、日陰者の扱いだけど、実際はバッハに勝るとも劣らないバロックの巨匠。なあんて、ロンドンのヘンデル博物館にも行ったことのないわたしが言うのもなんですけどね。でも、ロンドンにいるうちに一度くらいはちゃんとヘンデルを聴こうと、OAEの音楽会、「バロックの巨人たち、ヘンデル」を聴いてきました。会場はクイーン・エリザベス・ホール。OAEの音を聴くにはピッタリのホールです。

さっき大きなことを言って、ヘンデル博物館にも行ったことがないことを告白しましたが、白状するとヘンデルはほとんど聴いたことがありません。というわけで今日の曲も全部マイ初演。新鮮です。最初のオペラの序曲からして、予想を覆すシンフォニア。ヘンデルの頃のオペラの序曲って、オペラの始まりというより、独立の音楽の前座だったんですね。あっこれはオペラじゃなくてオラトリオか。無知暴露。でも最後に演奏された、オペラの序曲も同じだから。。。
カミングスさんがチェンバロを弾いたりオルガンを弾きながらオーケストラを指揮するスタイル。オルガン協奏曲での教会のパイプオルガンにはないポジティヴ・オルガンの鄙びた感じの音が、音楽の朴訥とした感じに合って(特に第1楽章)ステキでした。

ヘンデルはリラックスして聴いていられる音楽。緊張を強いられるバッハとはそこが対照的。紅茶を飲みながら午後のひとときをイチゴジャムと共に憩ってるステキな感じです。古楽の音色も艶々しすぎないので心地良いし、贅沢な心の時が流れます。これを最上級の音楽と言わずして何を言う。ヘンデルはそんな音楽です。こうして300年にもわたって聴き継がれてきた音楽だから、さりげなく上品に最高の音楽が詰まっているのです。決してバッハの日陰者ではない。

わたしは初めてこの曲たちを聴くので、この演奏が他に比べて良いものであるか悪いものであるかは判断できません。でも、わたしにとってステキな音楽会だったし、だったらステキな演奏だったに違いありません。ヘンデルの素晴らしさを楽しめたのですから。
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by zerbinetta | 2012-03-07 22:35 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

健やかに愉しい音楽 ブリュッヘン、啓蒙時代オーケストラ ハイドン、ウェーバー、シューベルト   

01.11.2011 @queen elisabeth hall

haydn: symphony no. 60
weber: concertino for horn and orchestra
weber: symphony no. 2
schubert: symphony no. 5

roger montgomery (hr)
frans brüggen / oae


啓蒙時代のオーケストラはかっこいいオーケストラだと思います。まずうたい文句「not all orchestras are the same」がかっこいい。ってかうたい文句を標榜してるオーケストラが少ない。それに宣伝用の写真がむちゃセンスがいい。そんなオーケストラだから、先入観ばりばりだけどスタイリッシュな演奏をすると思います。ピリオド楽器のオーケストラだけど、ワグナーやマーラー、果てはドビュッシーやラヴェルまでレパートリーに入っちゃいます。

今日はハイドンからウェーバー、シューベルト。指揮はブリュッヘンさんです。ブリュッヘンさんは、長身痩躯、足が悪いのか歩くのが大変そう、いすに座っての指揮です。そして、腕もちょっと動かない感じなのですが、生み出される音楽は、フレッシュ! 学者肌の怖い頑固じじいみたいな風貌なのに、音楽はウィットに富んでいて、してやられました。
ハイドンの交響曲第60番は、むちゃ可笑しい曲。まじめな音楽じゃないんですよ。わたしは予備知識がなかったので、最初普通に聞き始めたんですが、音が小さくなって消え入りそうになって、あれれ、と隣のおじさんと顔を見合わせてくすくす。こういう静かなコミュニケイションが音楽会の醍醐味ですね。第2楽章は、せっかくのステキなアンダンテに闖入者が続々。これまた笑える。でも、イギリスのお客さんってまじめというか、声を立てて笑わないんですね。もちろん会場は無言で笑ってるんですけど、もちょっと素直になってもいいかなって思った。この楽章が終わったあと、お一人拍手をしてましたが、わたしはそれが正しい音楽の聴き方だって思いました。そのあとも次から次へとユーモアのある音楽が続いて(交響曲だから4楽章までと思ったら6楽章までありました)、可笑しくて愉しい気持ちになりました。

ふたつめはウェーバーのホルン協奏曲。もちろん、ホルンは弁のないナチュラル・ホルンです。弁を使って音程を調節できないのでとっても吹くの難しそうですが、ロイヤル・オペラのオーケストラのモンゴメリーさんは、めまぐるしく音を操って名人芸を披露してくれました。もちろんときどき音がかすったりもするのですが、それ以上に曲芸的な吹奏を楽しみました。音ごとに音色が変わるのも面白いです。それに重音をホルンで初めて聴きました。それにしても、ウェーバーはホルンのために容赦なく超絶技巧曲を書いたんですね。よっぽど上手いホルン奏者がいたんでしょう。これまた面白かったです。

休憩を挟んで、今度はウェーバーの交響曲第2番。ウェーバーの交響曲なんてあるの知らなかったくらいマイナーだけど、ロマンティックだけどマイナーらしい、やっぱり何となく特徴のない音楽でした。珍しい曲を聴いた、というのが良かったと言えば良かったんですけど、音楽はもう思い出せません。

シューベルトの交響曲第5番は、明るくてかわいらしい大好きな曲です。ほんの一瞬光りが明滅するときがあるんですが、後期の音楽のように深刻ではなく、お日さまの光りが葉っぱの影を落とすくらいの陰影です。でも純粋でみずみずしくて若者らしい。おじいさんのブリュッヘンさんが作る音楽もとっても若くって、この人は体はその年なりに衰えてるかも知れないけれども、精神はずうっと若々しいんだなって思いました。ほんっとチャーミング。

今日の音楽会は、魂を揺さぶるような感動する音楽ではないけれども、とっても心爽やかに愉しい音楽会でした。深刻な音楽の方が高級って見方もないことはない気がするけど、こういう愉しい音楽でも魂が健やかに育つような気がしてます。おいしいお菓子を食べたときのように幸せ度の高い音楽会でした。
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by zerbinetta | 2011-11-01 10:33 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

語るように歌う   

21.06.2011 @royal festival hall

haydn: symphony no. 64
mozart: Concerto in E-flat major for two pianos, K.365
mozart: symphony no. 33
haydn: symphony no. 95

Katia Labèque, Marielle Labèque
sir simon rattle / oae


ラトルさんと啓蒙時代のオーケストラ(OAE)。ロンドンのオーケストラの中では、ラトルさんと一番仲の良いオーケストラです。毎シーズン1度は共演してるしね。今日は古典の王道、ハイドンとモーツァルト。でも、プログラムは凝っていて、珍しい、ハイドンは交響曲第64番とか、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲とか。ハイドンの交響曲第64番は時の移ろいというなんだかおしゃれな副題がついてるんですけど、これがまた面白い曲でした。
最初、えっ?聞こえないよみたいな弱音のささやきから始まって、いきなり虚を突かれて、ハイドンらしい明快な音楽と思ったら、なんだか取り付く島のないようなつかみ所のないような音楽で、でもそれがかえって面白いんです。音楽は歌うと言うよりぶつぶつとおしゃべりしているようで、特に第2楽章なんて暖炉の前でゆったりと会話しているような音楽です。とってもしみじみ。

ふたつめのモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲はラベックさん姉妹の独奏。ラベックスさん、フォルテピアノも弾くんですね。でもOAEとは初めてのようです。そう言えば、ネットで検索するとラベック姉妹さんって日本では過去の人の位置づけなのね。CDが発売されなかったり、来日しなかったりすると、活躍していないように誤解されるかもだけど、わたしはUSでもこちらでも彼女らのステキな演奏を聴いたし、こちらではちゃんとずっと活躍しているんですけどね。
ステージに現れたラベックスさんは相変わらず美人。そして、おしゃれ〜〜。フロックコートを着て、コスプレみたい。わたし、どちらがカティアさんでどちらがマリエルさんか分からないんですけど、このお二人、見事に演奏のスタイルが違っていて、それがデュオにぴたりとはまるんですね。奔放な第1ピアノ(服装も容姿も派手め)を支えるしっかり者の第2ピアノ。二人の個性の違いが音楽の幅を広げて奥行きを深くしているように思えます。と、事件が。
指揮台に立ったラトルさん、真っ赤な拍子の楽譜を持ち上げて、「ここに美しい、モーツァルトの交響曲第33番の楽譜があります。。。取りに戻った方がいいですね。しばらくお待ち下さい」なんてことを言って会場大笑い。和みます。しばらくして戻ってきたラトルさんの手には、正しい協奏曲の楽譜。これも真っ赤な拍子なので、係の人、間違ったんですね。でもね、こういう気の置けない音楽会だったんです。音楽もそんなintimate(日本語でどういうの?)な雰囲気の曲だし、古楽器自体が音が小さくて距離感の小さな音楽を作るから。ただ、大きなロイヤル・フェスティバル・ホール。遠くで聴いていた人には聞こえづらかったかもしれませんね。会場はラトルさん人気で立ち見が出るほど盛況だったけど、本当は小さなホールでやるべきでしたね。
でも、演奏はとってもステキ。モーツァルトは2台のピアノをほぼ対等に扱ってるのでふたりの個性の違いが際だつことはあまりないんだけど、それでもそれぞれの個性は聞こえてくるし、長年デュオで演奏を続けてきているだけに息ぴったり。音の粒まで完璧に合わせてきます。凄いとしか言いようがありません。そういえば、この曲の最終楽章、さっきのハイドンの交響曲の最終楽章と作りが似てませんか?旋律の繰り返しとか似てるような気がするんだけどなぁ。

休憩のあとはモーツァルトの交響曲第33番。第29番とともにかわいくて大好きな曲です。ジュピターのメロディが登場するんですね。モーツァルトの若い頃の(って亡くなったのが35歳だから最後まで若いんだけど)音楽って、やっぱり古楽器の演奏が好き。ふくよかに塗り固められちゃうとなんだかべったりとして軽さがなくなるから。音に羽が生えてるような風のような軽さがスキなんです。ラトルさんの音楽って、そんなモーツァルトにぴったり。ラトルさんの指揮ぶりを見ていつも思うのですが、この人と音楽を一緒に演奏したらとっても楽しいんじゃないかって思うんです。ラトルさんの音楽が大好きという気持ちがストレイトに伝わってきて、スキだと告白されるみたいに嬉しくって天にも昇る気持ちになるんです。そんな音楽デショ。交響曲第33番って。

最後のハイドンの交響曲第95番も余り有名でない曲だけど、最後にロンドン旅行の際に書かれた交響曲のセットの入り口で、あとのものほどではないんだけど結構堂々とした構え。チェロの独奏が大活躍するのもなかなか独創的だし(しゃれ?)、最後にフガートが出てくるのが、なんか立派な感じでステキ。ラトルさんはハイドン得意だし、OAEと親密な理想的な演奏だったと思います。今日の音楽会では、ほぼ同時代を生きたハイドンとモーツァルトの対比が面白かったし、話すように歌う音楽が、音楽って実は雄弁な言葉なんじゃないかなって感じられて、とても良い音楽会だったと思います。つい夕暮れ時のテムズ川沿いの夜景を見ながらホールをあとにしました。ハイドンが来たとき、ビッグベンはあったんでしょうか?

そうそう、あとで知ったのですが、今日の音楽会、歌手のマドンナさんがいらしていたそうです。ううう、近くで見てみたかったな〜(ミーハー)。気がつかなくて残念。
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by zerbinetta | 2011-06-21 00:07 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(4)

今ベートーヴェンが面白い   

08.02.2011 @queen elisabeth hall

mendelssohn: overture, intermezzo, nocturne, scherzo from a midsummer night's dream
weber: clarinet concerto no. 1
beethoven: symphony no. 7

antony pay (cl)
david zenman / oae


調子が良いときはめちゃ面白い演奏をしてくれるOAE。OAEは古楽器の団体だけど、決して古風な演奏をするわけではなく、実はとっても新しい演奏をするオーケストラです。まさしくイメジはこんな感じ(OAEの今シーズンのイメジ・タグです)。今日はこの間、ロンドン・フィルで聴いて鬼軍曹ぶりを遺憾なく発揮してくれた(ってか見た目ね。ほんとは優しい人なのかも知れない、ってかきっとそう)、ジンマンさんの指揮。今日はどんな演奏になるんでしょう。とか言いつつ、会場に着くまで何を演るのか知らなかったわたし。メンデルスゾーンにウェーバー(これは珍しい)、ベートーヴェンでしたか。

さて始まりのメンデルスゾーンの夏至の夜の夢。シェークスピアの原作の、というより、アリー・マクビールのキャリスタ・フロックハートさんが出ていた映画版の印象が強くて、序曲の弦楽器の細かい動きが妖精が飛び回ってるようで大好きなんです。他の曲もみんな好きなのでできたら全曲聴きたいのですけど、今日は有名な曲を集めた組曲(版)です。あああでも、なんと結婚行進曲が入ってないっ! 結婚行進曲にやけるくらい好きなのに。あっでも、ちなみにわたしが結婚式で流して欲しいのは、フィガロの結婚の結婚行進曲です、はい。それにしてもこの曲、ピリオド楽器でやるとお化粧が取れて爽とした軽やかな感じになってステキです。シェイクスピアの時代の素朴な感じ(という印象を勝手に抱いてる)がして好きだな。それに、今日のOAEはいい音出してる。やっぱ、流石ジンマンさん。

ウェーバーのクラリネット協奏曲は初めて聴く曲。第1番っていうことはウェーバーって複数のクラリネット協奏曲書いてるんだ。クラリネット協奏曲自体が珍しいので(わたしが知ってるのはモーツァルトとコープランド。あとサーリアホさん)、珍し物好きのわたしとしては聴けて嬉しい。独奏はOAE主席のペイさん。信楽焼のたぬきの置物のような風貌の人(失礼!) なんだけど、むっちゃ上手かったぁ。古いタイプの楽器は音を創るのが難しいと思うけど、それをものともせず。曲はウェーバーらしくロマンティックな音楽だけど、古楽器のやや乾いた音色は、過度に甘くならずにいい感じ。メンデルスゾーンもそうだったけど。初期のロマンティシズムがべたべたな甘いものではなかったことに気がつかされる良い演奏でした。

そして、ベートーヴェン。交響曲の第7番です。始まりは音が急速に減衰するので(そう演奏させていたのかな?)、あらちょっと、って思ったんだけど、主部に入ると音楽が躍動して生き生きして、うわ〜っこれいい! ジンマンさんのベートーヴェン、とてもリズミカルなんです。そして、第2ヴァイオリンがこんなにも活躍する曲だとは、初めて知りました。もの凄く激しいトレモロや駆け上がり駆け下りてくる音たち。それが、古楽器故に突出せずに、音楽の枠内でぴったりとはまるんですね。今日第2ヴァイオリンのトップを弾いたのは日本人のアイソ・ケン(ken aiso)さん。アグレッシヴにでもけんか腰にならずにむちゃステキでした。あっちなみに今日のリーダーは、大好きなトルスコット(matthew truscott)さん。ちょっとかっこいいんです。
今日は、ホルンが4本、フルートも倍管して4本だったけど、この間のドゥダメルさんのように特定な部分を強調するためというより、音のバランスをとるための措置。でも、フルート4本はいけてるなぁ。この曲フルートが大活躍ですものね。オーケストラの中に埋もれさせてはいけないわ。
そして今日びっくりしたのが、木管楽器に即興的に装飾音符を入れていたこと。第1楽章の途中のオーボエのソロで、あれぇ〜こんな音あったっけ?ってびっくりして、よく聴いていくと、ところどころ(あまり目立たないんだけど)(多分)楽譜にない音符を入れてました。それが、音楽をさらに生き生きさせることにつながって。これはジンマンさんのアイディアなんでしょうか。ライヴならでは、古楽器ならでは(現代楽器でやると多分目立ち過ぎちゃう)、ではないでしょうか。新鮮でめちゃステキ。
第1楽章に続いて間を置かずに演奏された第2楽章でも、リズムが生き生き。さくさく進むという感じではなく落ち着いているんだけど、しっかりリズムが躍動して、うっかり伴奏って思っちゃうリズム主題がちゃんと主役なんですね。確かワグナーがこの曲を舞踏の聖化と呼んだのもよく分かる演奏です。わたしだって身体が弾むもん。最新の楽譜研究の成果なのかしら、お終いの弦楽器は弓ではなくピチカートで弾かれていました。初めて聴くのでこれもびっくり。
第3楽章は、弦楽器と管楽器のバランスが素晴らしく、続く第4楽章は、再び熱狂的なリズム感。それでいて大仰な音楽にならないところが古楽器の良いところかしら。でも、ジンマンさんは古楽器のというよりもベートーヴェンの素晴らしい音楽を創りあげていた。もちろん楽器の響きは違うので、少し違った音楽作りをすると思うけど、基本は現代楽器でも古楽器でも変わらないんじゃないかって思う。そして、クイーン・エリザベス・ホールの小さめの大きさもこの音楽のサイズにぴったり。にこやかにオーケストラを煽るジンマンさん。応えて溌剌と弾くオーケストラ。さくさくとしているけどぱさぱさとはしていない、ショートブレッドのような歯ごたえの音楽。ジンマンさんにはぜひ、OAEでベートーヴェンのシリーズを振って欲しいな。新鮮な驚きをもっと聴かせて欲しい。それにしても、ベートーヴェンって面白いな。なんだか、神聖な巨人のヴェイルがとられて、いろんなベートーヴェンが演奏されるようになったのが大きいのかな。最近いろんなアプローチのベートーヴェンを聴く機会が増えてほんとに楽しい。声を大にして言いたい。今ベートーヴェンが面白い、と。

そうそう、今日の音楽会はu-streamで放送されるみたいで(オンデマンドで観られるようでしたらあとでurlを載せますね)、丸いロボットみたいなカメラが会場にありました。ヴィデオ撮影も今では自動で、簡単な装置でできちゃうんですね。TV放送やDVDにするならば力不足なのかも知れないけど。ますます技術が進んでいけば、音楽会も簡単にヴィデオ放送される時代が来るんでしょう。でも、音楽会の感動は、会場に足を運んだ人にしか味わえないというのは未来になっても変わらないと思うけど。
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by zerbinetta | 2011-02-08 21:39 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

スナフキーーーン   

21.01.2011 @royal festival hall

wagner: prelude to parsifal
mahler: totenfeier
mahler: leader eines fahenden gesellen
liszt: les préludes

sarah conolly (ms),
vladimir jurowski / oae


おっと、実はすっかりチケット買うの忘れていたんです、OAE。ごめんなさいOAE。で、ほんとだったら、よおし、今年の目標は音楽会の回数を減らすこと、いい機会だ、パスしましょってなるのだけど、意志薄弱のわたし、うっかり買ってしまいました、しかもいくつかおまけ付きで。。。あああ。
OAE、大好きなんですけど、良い演奏の日と悪い演奏の日があるのですね。今日はどちらになるのでしょう。そして今日は、なんとマーラーとか。OAEの後期ロマン派ものは夏のプロムスで、ラトルさんの下、トリスタンを聴いているので、心配はしていないのだけど、どうなるのか楽しみ。マーラーの時代の楽器ってどんなだろう?

今日の音楽会は、録音されて、BBCラジオ3で放送される(現在オンデマンドで聴けます)他、CDにもなるようです。最初にアナウンスがありました、携帯電話の音源はしっかり切ってくださいって。

始まりはパルシファルの前奏曲。ユロフスキさん、この曲はロンドン・フィルと演っているので(そのときは聖金曜日の音楽付き)、好きなのかなぁ。いつものように、オーケストラのメンバーの顔を見回したあと、音楽が始まりました。とってもゆっくりで、糸を引くような音楽。そして、オーケストラの音色がとってもきれい。楽器は、わたし、19世紀後半の楽器についてなんの知識もないのだけど、ホルンは弁のあるの(でも、フレンチ・ホルンではないし、替え管を使って調を変えていました)、トロンボーンは細身、チューバはピストンの位置が今の楽器とは違うの、フルートは歌口の唇当てがないもの、コントラファゴットは朝顔が上向き、オーボエは楽器に直接リード部を差し込むウィンナ・オーボエみたいな感じ。わたしが見て気づいたのはそんなくらいかな。そしてもちろん音色。見た目の違う楽器の音色ももちろん、ヴィブラート控え目の弦楽器の音色も、現代楽器の豊満な艶やかさはないけれども、その代わり、澄み切った流れのような清廉な音。ワグナーはこんな音を聴いて作曲していたのかしら。

2番目はマーラーの葬礼。あとで交響曲第2番の第1楽章になった曲です(楽器編成はこちらの方が少し小さくて、ちょっぴり(10数小節?)長い)。なんかフルートにアクシデントがあったみたいで、3番フルートは金属の現代楽器を急遽舞台袖から持ってきて吹いていました(休憩時間中に楽器を直して、後半はまた古いタイプの楽器を吹いていました)。
今度はユロフスキさん、出てきて指揮台に上がるや間髪を入れずに激しく音楽を始めました。行進曲の部分はきびきびとして張り詰めた快速テンポ。音をざくざくと切っていって強い意志で前に進む感じ。この音楽が行進曲であるということに改めて気づかされました。ただし葬送行進曲ではなくて、例えば死刑宣告された英雄が自分の正義を示すためにはっきりした意志を持って死刑台に向かって歩いていく感じ。対照的にゆっくりとした抒情部分では、テンポを落としてメリハリのきいた分かりやすい音楽。とてもステキな演奏。

休憩の後は、セイラ・コノリーさんの歌でマーラーのさすらう若者の歌。コノリーさん今日は、赤の単色のシンプルなドレス。ふうう良かった。いやその、コノリーさんってドレスの趣味が独特で、なんか結構サイケデリックな衣装を着るのね。でも、歌は良かったですよ。わたしの好みはこの曲は男声なんだけど、十分楽しめました。それにオーケストラが、なんか曇り空のくぐもった音色でステキに幻妖的。ところでマーラーがこのオーケストラを聴いたらどう思ったでしょう。マーラーはオーケストラ(歴史)が常に進化していくことを信じていたし、だからこそ、現代のオーケストラに適したように古典の音楽を編曲した人だけど、彼が、現在のさらに進化したオーケストラを聴いたら、そして多分当時のままに近いOAEの演奏を聴いたらどちらを支持したでしょう? OAEの音を聴いていると現代の楽器が機能的になったことで失った、代え難い音色があるような気がします。それでもマーラーは進化した楽器をとるのかな。ベルリオーズやブラームスのように吹きにくい楽器の音色を大事にするのでしょうか。現代の楽器に慣れたわたしにとってOAEの音色は新鮮でした。できたら、OAEでマーラーの全集とか出して欲しいな。

意外なことに今日一番良かったと思ったのが最後の、リストの前奏曲。この曲のホルンは弁のないもの。ゆっくりと始まった音楽は、ユロフスキさんの場面ごとの変化の付け方がとっての良くって、草原でゆっくりと寝転がったり、嵐が来たり、すぅーっと風が通り抜けたり、草の匂いのする青々とした平原の音楽でした。ハープに導かれてホルンのソロが出てくるところステキだったー。そこから行進曲が戻ってくるまでの音楽が全曲の白眉でした。リストのオーケストラ曲って仰々しくて大時代的な感じであまり好きになれなかったけど、こういうのならもっと聴きたいな。

あっそうそう、タイトルのスナフキンは、プログラム(ただ、OAE太っ腹〜)に載っていた一言インタヴューで、架空の架空のヒロインで一番好きなのは?と聞かれたユロフスキさんが答えた答え。ふふふ、分かってるじゃないですか(偉そうに)。わたしも自由人スナフキンが好きなのよ〜。わたしのヒーローはスナフキンとバカボンのパパです。それと寅さん。彼らと結婚するかと聞かれたら、むむむとなっちゃうんですけどね。でも、恋人のひとりにはしたいっ。
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by zerbinetta | 2011-01-21 23:50 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(2)

魔法使い降りる   

berlioz: romeo and juliet -love scene
wagner: tristan and isolde -act 2
violeta urmana (isolde), ben heppner (tristan),
franz-josef selig (king mark), sarah connolly (brangäne),
timothy robinson (melot), henk neven (kurwenal)
sir simon rattle / oae @royal albert hall


お久しぶりです。こんばんは。
夏はわたしにとっては音楽会お休みシーズンなのでゆったりした夜を過ごしています。近所ではプロムスやってるというのに。ヨーロッパ中で夏の音楽祭やってるというのに。まぁでも、今年は気分を変えてちょこっとはプロムに行こうと思ってるのですよ。というわけで行ってきました。なんと日曜日なのに仕事でロンドンの郊外に行ってたので、それを途中でさぼって帰ってきました。時間配分が分からなかったので、1時間も前に会場に着いてしまいました。お天気の中、自由席(当日券とシーズンチケットのみ)のアリーナ席とギャラリーに並ぶ人を初めて見ました。さすが並ぶのが好きなイギリス人、きちんと並んでいましたよ。多分、プロムスの醍醐味はこの自由席。仲間とわいわいと列に並んだり、みんなで音楽を聴くというのがお祭りのようで楽しいのではないでしょうか。音楽会の途中、休憩時間が終わる頃、アリーナ席で何人かの人が大きな声で何かを呼ばわっていましたが、何だったんだろう。よく聞こえなかった。今度ちゃんと聴いてきますね。と、そんな感じのプロムスですが、実はわたし、立ち見の席が苦手で、それがプロムに足を運ばない理由なのかもしれません。わたしはちっちゃいので立ち見の人の中に紛れると、ステージなんて絶対見えないし、前の人の背中を見て、周りの人たちに踏んづけられそう。とちょっとびびってるんです。上のギャラリーでごろ寝をしながら聴くというのには魅力を感じてるんですが、ごろ寝スペースのある人気のない音楽会がどれか検討中ではあるんです。それと、それらの席は当日券というのが辛いんです。チケット持ってないとついつい面倒がって行かないんですね。立ち見席は5ポンドで安い!って言うけれども、実はロンドンの他の音楽会も安くてロンドン・シンフォニーのわたしの定番の席は6ポンド弱だし、他のオーケストラも10ポンド以下の席でばかり聴いてるので、それほどお安い感がないのももうひとつの要因です。

とつらつら関係のないことを書きつなれてしまいましたが、今日のプロムは、是非聴きたかったものです。ラトルさんが、OAEを振ってなんとトリスタンの第2幕。わたしのツボを思いっきりつつきまくり。ベルリオーズのロミオとジュリエットのラヴ・シーンと合わせて愛の夜じゃないですか。あっわたしはひとりですけどっ。ラトルさんは、イギリス出身の指揮者ですが、ずっとバーミンガムで仕事をされていたので、最近はロンドンのオーケストラにはあまり登場しません。でも、その中で特別な関係を持っているオーケストラがOAEなんです。一昨年のシーズンにはシューマンの全交響曲を2夜にわたってステキに演奏しています。

とまた、長い前振りになってしまいましたが、ラトルさんが登場してふわりと指揮棒をおろした瞬間、魔法がかかりました。なんと柔らかく美しい響きなんでしょう。古楽のオーケストラ(とは言っても今回はバロックの楽器を使っていたわけではありませんが)からこんなふくよかな響きを出せるとは。ラトルさんって特別オーラがあるわけでも、エクトプラズムを出すわけでもなく、ほんとにさらりと魔法をかけちゃうんですね。ベルリオーズのロミオとジュリエットはわたし的には退屈な曲だけれども、魔法がかかっているおかげでうっとりと聴くことができました。

休憩の後はいよいよトリスタンとイゾルデの第2幕。もちろんわたしはトリスタン好き。第2幕のマルケ王が出てくるまでが大好き。というわけで、しかも古楽のオーケストラでどんな音楽が聴けるのか興味津々。ホルンはさすがにワグナーの時代なので弁のあるの(ベルリオーズでは無弁のを吹いてました)。でもトロンボーンなんかはまだ細い管の。
トリスタンはとっても好きなので何を聴いても感激しちゃう方なんだけど、今回の演奏で一番面白かったのは舞台裏のホルン。わたしはオーケストラの後ろで聴いていたので、ホルンがずいぶん近くに聞こえました。これならブランゲーネがまだ近くにいるよと注意するのもよく分かります。っていうか、舞台裏のホルンは無弁の狩りのホルンを使っていたのですね(舞台裏からひとり、ステージに戻ってきたので分かりました)。あれは本物の狩りのホルンの音色でした。と、本筋と関係ないところでまず感激しているわたしだけど、音楽の方はわたし的にはもっとどろどろ感が欲しかったです。だってこれ不倫の物語だもの。家主が戻ってきたらそこで目にしたのは、信頼する部下と妻とのまさに不倫現場。ちょうど絶頂に達しようとする瞬間が目に飛び込んできたんですもの。そりゃマルケ王怒るわさ。トリスタン視点で見てみれば、狩りから帰ってきたトリスタンが見たものはクーベナールとベッドを共にして今まさにエクスタシーに達しようとしている我妻イゾルデ。イゾルデ視点で見たら、寝室の戸を開けるとそこで見たのは、トリスタンに抱かれているブランゲーネ。そりゃもう修羅場だわ。

とまたまた脱線してしまったけど、音楽はわりと健康的に流れているので、昼のトリスタンの部は普通に良かったんですけど、夜のトリスタンとイゾルデでになってお互いに仮面を取り払って本能的な愛の奴隷になるところでの、淫靡な美しさの表現が弱いなって感じました。蠱惑的な和音の扱いとか耳に残るところはたくさんあったんですけど。もしかして、わたしがオーケストラの後ろに座っていたので、歌う声が直接届かないせいもあるのかもしれません。歌が弱いので全体的に薄めの感じに聞こえていたのかもしれません。実は、昔ヘップナーさんでトリスタンを聴いたことがあって、そのときのヘップナーさんは絶不調で、今日は大丈夫かなぁとドキドキしながら聴いていたのも敗因かもしれません。今日はよく歌っていたと思うけど(正面から聞いていないので正確に評価はできないですが)。イゾルデを歌ったウルマナさんは前にブランゲーネを歌ったのを聴いたことがあります。トリスタンとイゾルデの弱点のひとつはイゾルデとブランゲーネの性格分けが声ではあまりなされていないことかしら。ブランゲーネ役の歌手はイゾルデも歌えそう。ウルマナさんの歌もヘップナーさん同様音楽にとけ込んでいました。わたしとしては強力な歌が聴きたかったのですが、でも、きっと歌手の正面で聴いていれば全然違った感想になるんだと思います。主役のおふたりより、ぴりりとスパイスをきかせてくれたのは、出番は少ないけど脇を固める人たち。ブランゲーネのコノリーさんは、ロンドンではよく歌ってる方ですけど、とっても良かったです。夜警の歌がとっても好きなことや、ステージの後ろでも歌ったので、わたしの席に声が届きやすかったこともあってちょっと点数高くなっているんですが。この人のイゾルデも聴いてみたいです。

そして、そしてですよ、なんと!今日は大嫌いなマルケ王がむちゃ良かったんです。マルケ王を歌ったのは、ゼーリヒさん。若々しい張りのある声で若い方なのかなぁって思ったら40代後半のの中堅どころ。声が外向的なのと、ラトルさんの音楽作りが健康的なので、いつもなら胃にもたれるマルケ王の独白も爽やかに聴ける(といったら大袈裟だけど)。なんて書いたら、音楽的(劇場的に)にそれでいいのと言われちゃいそうだけど、それでいいんです。だってわたしはこの方が好きだもの。ワグナーが聴いていた音楽ももしかしたら今日のようにわりとさらさらと流れるものかもしれない。今のオーケストラとは音色も演奏の仕方も違うからね。ちょっとそういう想像をしてみた今晩でした。

ああ、でも、トリスタンとイゾルデの2幕だけというのは酷だわ〜。だって、あ〜いく〜〜っていう瞬間に邪魔が入るんですもの。欲求不満たまっちゃうよね。せめて愛の死も演ってくれればいいのに。エロスはタナトスでしか成就できないんだ〜。

魔法使いラトルさんと振り返るヘップナーさん
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ゼーリヒさんとコノリーさん
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by zerbinetta | 2010-08-01 07:20 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

だ〜い好き   

monteverdi: vespers
robert howarth / choir of the enlightenment, oae @royal festival hall


わたしの一番大好きな曲は、実はいつも今聴いている音楽が一番って思っちゃうので上手に決められないんだけど、でも、聞かれたら答えちゃうのはモンテヴェルディの「ヴェスプロ(聖母マリアの夕べの祈り)」なんです。無人島に持っていきたい1枚もこれ。とは言え無人島にはあまり行きたくないんですが。だって想像するに、お店もないわけだし、日がな一日食料探ししてなきゃいけなくって、バナナ以外の果物がたくさんなってて、磯にはアワビやサザエ、ムール貝やカメノテにウニなんかがわんさかいて、鯛やヒラメが簡単に釣れるようだったらいいんだけど、そんな都合よく行くわけないしね。とか脱線。で、モンテヴェルディなんてなかなか演ってくれないので、ヴェスプロがあったら迷わずチケット取っちゃう。今まで同じ演奏で3回しか聴いたことないんです。だからOAEで演るのを見つけたとき狂喜乱舞してチケット取りましたよ。なんか今年はヴェスプロの当たり年みたいで、シティ・オブ・ロンドンでもHMSCが聖ポール寺院で演るのはチケット取っちゃったし、プロムスでガーディナーさんがモンテヴェルディ合唱団と演るのもチケット取る予定。1年に3回違う演奏で聴けるなんてむちゃ幸せ。特に教会で演るのは響きがとっても楽しみ。ってふと気がついたら今年ってヴェスプロ出版からちょうど400年じゃないですか。マーラーやショパンばっかりやってるんじゃないデスよ。シューマンもよろしく。

モンテヴェルディの時代の音楽は、近代の音楽のように完全に楽譜に書かれているわけではないので(作曲家と演奏者は不可分な関係にあったので、わざわざ細かく書かなくても正しく演奏できたんです)、リアライズする人によって違った音楽になります。今回のリアライゼイションは指揮とオルガンで大忙しだった(両手がふさがってるときは頭で指揮してました)ロバート・ハワースさんで、特徴は小編成、ハイピッチ。現在よりも半音くらい高いピッチです。曲によっては移調しているそうです。歌は最低10人でできるんだけど、今回は20人。少人数だけど合唱パートで各パートを複数で歌えるので厚みがあって良かったです(実はわたしは、この華やかな曲は大編成の方が好みです)。伴奏は控え目。ときどき聞いたことのない装飾が聞かれたので面白かったです。ニグラ・スムは独唱とキタローネ1本でした。

始まりはオルガンが聴いたことのないメロディを弾き始めてびっくりしました。違う曲が始まったのかなと。もちろんそのあと、例のゴンザーガ公のファンファーレが始まってほっ。これが好きなのよね。そこからはぐいぐいヴェスプロの世界。うっとり。歌のソロはCDのようにソリストを揃えているわけではないので、ソリスティックではいけれども十分でした。わたしの心は400年前のヴェネチアに飛んでいったみたい。ヴェネチアはカラフルで大好きな町です。モンテヴェルディの音楽も、ルネッサンスとモノディ(モンテヴェルディ自身も創始者のひとり)の激しい混合体。音楽史上最も大きな分水嶺で新旧両方で極めたモンテヴェルディはもっと評価されても良いと思うんですが(ってかわたしはモンテヴェルディこそ音楽史的に最大の作曲家だと思ってる)、なかなか一般には聞かれないのは近代の派手なオーケストラじゃないから? でも今日は小さなクィーン・エリザベス・ホールとは言えチケットは完売。満員でした。

アヴェ・マリス・ステラのあとに聴き慣れないアヴェ・マリアやマグニフィカトのあとにヴァイオリンのソナタが挿入されたり、いくつかわたしの知らない音楽が挿入されていました。そして、最後はグレゴリオ聖歌の応唱で静かに、本当に静かに音楽を閉じてとってもステキなときを過ごしました。やっぱりこの曲大好きです。わたしの一番。
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by zerbinetta | 2010-04-27 09:07 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

 今日は行けた〜   

beethoven: symphony no. 9
rebecca evens (sp), diana montague (ms),
timothy robinson (tn), christopher purves (bs)
ilan volkov / philharmonia chorus, oae @royal festival hall


実は昨日も音楽会あったのですが、体調不良で断念したんです。今日もしんどかったのだけど、何とか行ってきました。OAEのベートーヴェンの第9。マッケラスさんが体調不良のため降板で(ってアナウンスがあったあと、ロイヤル・オペラで指揮してるマッケラスさんを聴いているのですけど、オペラでいっぱいいっぱいだったのでしょうか。何にせよご高齢なのでお大事にして欲しいです)、代わりはイラン・ヴォルコフさん。全然知らない人。c0055376_1311147.jpgプログラムを見たらおおおっイケメンじゃないっ!わたしの胸はいやが上でもときめきます。それにしてもイスラエル生まれなのにお名前がイランだなんて。って思うのは日本人の悲しい性。国のイランはiranなのね。iranとilanを勘違いするのは、こちらの人にはあり得ないことなので(友達に言わせるとrとlの区別が付かないなんて理解できないんだそう)、全然問題ないのね。で、期待に胸膨らませてるうち登場した指揮者は。。。。えええええっ?写真と全然ちが〜〜う。出てきたのは長身痩躯で長髪、おでこが広くて、ショルダーバック抱えて秋葉原でラジオの部品あさってる感じの人(うわっなんて独りよがりな偏見に満ちた想像だろう。でもそういう友達に似てたので)。これでちょっとテンション下がり目。
でもね、彼の音楽はとても素晴らしかった。堂々としていて、古楽器オーケストラだけど古楽器に媚びてなくて、現代オーケストラの演奏に近いテンポ感、表現、でもきちんと古楽器の魅力を生かして。そして、内声部の扱いがとっても上手いの。対旋律の付け方がって訳じゃなくて、例えば和音の響かせ方とか、そういのがとっても丁寧でひとつひとつの音に確固とした役割を持たせてる。ざくざくと響く古楽器の音とベートーヴェンの音楽の持つ推進力が相まってとっても生き生きとした演奏。オーケストラも指揮者の棒に機敏に反応してぴたりと指揮者の表現したいものを音にしてる。合唱はフィルハーモニア合唱団が担当したんだけど、とっても良かったです。合唱が上手いとこの曲引き締まりますね。独唱陣は、わたし的にはちょっと疑問。レガート気味の甘い歌い方(特にバスの人)は指揮者とオーケストラのざくざくとした音楽とずれがあるように感じられました。
ヴォルコフさんってまだ30代半ば?凄い。この人の将来もなんだかとっても楽しみ。これからどう成長していくんでしょう。今はどこのオーケストラの指揮者ではないので、ぜひ、若い将来有望な指揮者と一緒に成長したいと思ってるオーケストラに引き抜いて欲しいな。わたしとしてはUSの地方オーケストラか日本のオーケストラなんかが立候補してくれると嬉しいんだけど。小澤さんの下でアシスタントをやっていたそうなので、ボストンが健康問題を抱えるレヴァインさんの後に引き抜いたりして。
それにしても古楽器でのベートーヴェンの交響曲第9番は音楽会では初めて聴くけど、たくさんの発見があって面白い。そしてベートーヴェンの音楽はすでに彼の時代の楽器の性能を超えてるなって思った。これは、単純に現代楽器での演奏の方が良いって言うのではなくて、わたしには古楽器の響きが大変心地良いのだけど、オーケストラの人からすると、ものすご〜く難しい。かなり無理があるんじゃないかと。OAEの人をしてかなり大変そうでした。でも、古楽器の音も何物にも代え難い魅力なんだよね〜。音色や質感は古楽器で音量や演奏にしやすさは現代楽器なんて玉虫色の楽器発明されないかしら。虫が良すぎ?

本物のヴォルコフさん
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独唱はオーケストラの後ろ
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トロンボーンのようなトランペット、リコーダーのようなオーボエ、煙突みたいに立ってるのはコントラ・ファゴット、第4楽章のマーチの始まりでぼっぼっって鳴る音は頬笑ましかった
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by zerbinetta | 2010-04-09 01:29 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)