カテゴリ:イギリスのオーケストラ( 12 )   

ブリテン・シンフォニアお誕生日コンサート アリーナも出るよ   

27.10.2012 @barbican hall

purcell: hear my prayer, o load
nico muhly: looking forward
bach: concerto for two violins in d minor
britten: les illuminaties
james macmillan: one
prokofiev: symphony no. 1
pekka kuusisto: omg hbd
bach: keyboard concerto no. 5
moondog / macgregor: sidewalk dances

bitten sinfonia, britten sinfonia voices with many guests


ブリテン・シンフォニアの二十歳のお誕生日音楽会。オーケストラに関係の深いゲストの人たちをたくさん迎えて盛りだくさんの音楽会。アリーナやクラシック、ジャズ・ヴァイオリニストのクーシストさん、テナーのパドモアさん、作曲家のニコ・マーリーさん、ピアノのマグレガーさんなどなど。幅広い音楽性のゲストが集まったところは、ブリテン・シンフォニアの面目躍如。

ブリテン・シンフォニア・ヴォイシスの合唱でパーセルの「主よ、わたしの祈りを聞いてください」から始まって、あれれ楽器が入ってるよって思ったら、そのまま重なってマーリーさんの「looking forward」期待とか希望って感じの意味でしょうか。シームレスにそのままパーセルの音楽につながって、ロイヤル・バレエで初演された「マシーナ」でもそうだったけど、バロック音楽との相性の良さを感じました。美しい曲。マーリーさん、オーケストラでチェンバロ弾いてました。髪型で浮いてたけど。

その次はわたしのお目あてのアリーナの弾くバッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲。もちろんアリーナひとりで2挺のヴァイオリンをアクロバット弾きするのではなく、もうひとりはクーシストさんが担当。アリーナが弾き振りです。といいつつ、アリーナが弾き振りすると、去年のAAM(アカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージック)のときもそうだったのだけど、どこか引っ込み思案で、前に出てぐいぐいと音楽を引っ張る感じじゃなくて、遠慮気味にアインザッツを揃える感じになるんです。というわけで、音楽はどちらかというと(前面に出てるわけではないけど)手練手管の鬼才、クーシストさんが若干リードする感じになりました。アリーナはまだ、オーケストラをリードするよりも、指揮者のいるオーケストラと競奏する方が持ち味が出るんじゃないかなって思いました。でも、控えめながらも肩肘の張らないステキなバッハでしたよ。(あとでプログラムを見たら、アリーナの弾き振りではなくて、振りなしでした。確か事前アナウンスでは弾き振りになってたんだけど。。。うっかりしてました)

というわけで、アリーナを聴きに来たわたしにとってはあとは付録のつもりだったんだけど、わたし的には今日はパドモアさんが歌った、ブリテンの「レ・イルミナティ」が圧巻でした。パドモアさんはほんとにもう大好きな歌歌いだし、ブリテンの音楽がとってもシンプルで素晴らしいの。短い歌曲が9曲続くのだけど、どれも詩情があって、それにパドモアさんの声がのってきて、見事な夕焼け色の世界。これを聴いただけでも十分幸せだな〜。この曲のとき、アリーナは一番前の隅っこの方の席で聴いてました。パドモアさんの出番が終わった次の曲では、アリーナの隣にパドモアさんが入らして、一言二言言葉を交わして音楽を聴いていました。そうそう、全然関係ないけど、この間のアリーナのソロ音楽会に引き続いて、チアロスキュロス・カルテットのセカンド・ヴァイオリンの男の子が聴きに来ていました。彼もアリーナの追っかけ?

マクミランさんの音楽は、何回か聴いたけど、スコットランドのローカル作曲家のイメジです。ローカルだけど国際的だから流行のグローカルだと思ってググってみたら、グローカルって国際的だけどローカルな活動のことなんですね。マクミランさんは反対。ローカルなものを強く根に持ちながら、国際的な普遍的なセンスを持ち合わせている。静かでシンプルな音楽はいつもそう。

さらに(今日は盛りだくさん)、プロコフィエフの古典交響曲。古典と言いつつこの曲ちっとも古典じゃないと思うんですね。結構プロコフィエフらしいとげがいっぱい刺さってる。指揮者のいない、ブリテン・シンフォニーの演奏は、指揮者のリードする個性がないゆえ中立的で、プロコフィエフのとげが丸くなってしまった感じがしました。古典的な演奏も以前はいいと思ったけど今日はシャープな現代的な演奏を聴きたいと思ってしまったのでちょっと物足りなかったです。意外とOAEなんかが昔の楽器、昔のアーティキュレイションで演ったら面白いかなぁ。20世紀の作品だけど。ここでやっと休憩。

休憩後はいきなり雰囲気変わって(何が始まるのかと思ったよ)、クーシストさんのソロで、なんて言うのでしょう、現代音楽とポピュラー音楽のクロス・オーヴァー。エレクトリック・ヴァイオリンを足下にあるたくさんのペダルで音を加工しながら(多分半分即興で)音楽を作っていくんだけど、正直あんまりよく分かりませんでした。結構長かったぁ。

そして、いよいよマグレガーさん登場。マグレガーさんは音楽会シリーズを持ってたくらいブリテン・シンフォニアと親密な関係。この人もクラシックとポピュラーの間を自由に飛び回る音楽家。超かっこいい女性。最初は弾き振りでバッハの協奏曲BWV1056。彼女のバッハ、評判いいので楽しみでした。そして楽しみ通り。バッハの持つかちかちとした矩形が角が取れて丸みが帯びた感じで、幾何学的なピアノの音がとんとんと心を打つ。智と情のとっても絶妙のバランス。

最後は、ムーンドッグ。アメリカのジャズの音楽をマグレガーさんが編曲したそうですけど、ジャズに疎いので原曲はちっとも知らず。でも最初っから親しみやすいのでとっても楽しめました。マグレガーさんはここでは弾き振りと、ピアノが入らない曲では指揮台に立って指揮をしました。黒のパンツスーツ姿のマグレガーさんがかっこよくて超ステキ。指揮姿のマグレガーさんもっと観たいと思いました。ドラムスとか、サックスとかゲストの音楽家がたくさん入って賑やかにお誕生日をお祝い。それにしても今日の玉手箱をひっくり返したような音楽会。ブリテン・シンフォニアの柔軟性をしっかり堪能できたわ。

ブリテン・シンフォニアのお誕生日なのに肝心のブリテン・シンフォニアについて書かなかったので最後に。このオーケストラ、多分全然有名じゃないけど無茶上手いです。古楽から(古楽器を積極的に使うオーケストラじゃないけど)、現代物、さらにはクラシックの外側の音楽まで、幅広い適応性で、どれでも一流のレヴェルでこなすし、指揮者を立てない団体なので自律的なアンサンブルも完璧。全体がひとつの生命のように演奏します。レパートリーもユニークだし、もっと知られてもいいなぁ(と言いつつわたしも聴いたの2回目)。
何はともあれお誕生日おめでとうございます。これからのさらなる発展を願って。30年後、50周年のお誕生日でお会いしましょう(ってわたし、いくつになってるんだ)。
c0055376_22552364.jpg

[PR]

by zerbinetta | 2012-10-27 22:54 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)

ビバカッパ(町田康的イメジ) ペトレンコ、RLPO タコ10   

23.8.2012 @royal albert hall

peter maxwell davies: symphony no. 9
delius: violin concerto
shostakovich: symphony no. 10

tasmin little (vn)
vasily petrenko / royal liverpool philharmonic orchestra


一昨日に引き続いてタコ♡ 今日は、前に交響曲第11番の衝撃的な演奏をフィルハーモニアと聴かせてくれたペトレンコさん。手兵のロイヤル・リヴァプール・フィルとの演奏です。タコの交響曲のひとつの頂点とも言える第10番。最近は第5番と並んでよく演奏されるようで、ロンドンで聴くのがこれで4回目かな。ペトレンコさんが、現在レコーディングを進行している交響曲全集の世評が軒並み高いので、わたしの期待も頂点。ううう、早く聴きたい。

まず始めは、新作、といってもすでに初演は済んでいるのですが、今年の女王のダイヤモンド・ジュビリーに捧げられた、サー・ピーター・マックスウェル・デイヴィスさんの交響曲第9番。メインのオーケストラの他に、金管6重奏が加わります。さてさて。わたしには、正直つまらなかったです。中途半端な現代音楽系によくあるように、分かりにくい部分と分かりやすい部分というかメロディっぽいものに媚びを売ってるような部分が混じり合ってぼんやりとぼけてるような、頭で聴いていいのか歌っていいのか分からないような、むしろ、後ろの金管合奏がジャズっぽい音楽を吹くとほっとするというか。女王の人は、芸術には全く興味がないそうなので、この音楽の存在も知らないような気もしますが、こんな音楽を捧げられたらちょっとかわいそうと、今日のわたしは辛辣だなぁ。何か嫌なことあったんだっけ?

ディーリアスのヴァイオリン協奏曲は初めて聴きます。ヴァイオリンのリトルさんは名前はよく見かけていたのだけど、これまた初めてです。わたし、ディーリアスをあまり聴いたことがないのだけど、でも音楽の響きはわたしの中のディーリアスっぽい感じ。あっディーリアスって気づいちゃう感じの、絵画で言ったらバルビゾン派の絵のような素朴な地味さ。ディーリアス好きには、セピア色の淡い音のグラディエイションがきっとたまらないのでしょう。わたしは、子供の頃、野山で遊んだあと、夕日が暮れかかってきて後ろ髪を引かれつつ友達と別れて家に帰る気持ちを思い浮かべました。リトルさんのヴァイオリンは、やっぱり派手さはないもののしっとりとした音で、叙情的な音運びはディーリアスの音楽にピタリ。とっても弾き慣れているというか、音楽を熟知している感じで、迷うことなく安心して身を任せて聴ける演奏です。この曲があまり人気がない理由はよく分からないけど、もしかして、この音楽の世界を表出するのが、ディーリアスに親しくないと難しいのかなって思いました。

さあいよいよタコ10。うわ〜、またこれは名演。何かぐいぐいと胸を押してくるような勢い。音はがしがしと鳴るんだけど、決してスペクタクルに鳴らすだけにならないで、音そのものに言葉があるような、意味があるような。音の後ろにある心までが直接身体に入ってくる感じ。それがどういう意味なのかは、まだ、咀嚼できていないけど、ものすごく心を締め付けるもの。長い第1楽章は、一筆書きのように綿々と心に淀んだ、不満や不安、暗い感情を紡いでいく。
疾走する第2楽章は、スターリンの姿を表しているとも言うけど、そんなことはどうでも良くて、音楽はもっと普遍的な、そして誰にとっても個人的な、実体を伴って迫ってくる。弦楽器に付けられたポルタメントがセクシィ。ショスタコーヴィチは決して、彼とスターリンとの個人的ないきさつを描いていない。スターリンとショスタコーヴィチの物語にしてしまうと、この音楽の本質を見落としてしまうと思うんです。例え、DSCHのサインがこれでもかと言うほど鳴り響いたとしても。だって、DSCHはわたしのはんこかもしれないんですもの。
でも、本当にわたしの心が吸い付いてしまうのは第3楽章に出てくる孤独なホルン。同じ音型を何度も何度もそれこそDSCHと対をなすようにインプリントしてくる。タコの音楽も、ペトレンコさんの演奏もとても孤独。心の澱の中にあった哀しみが音に吸着していくよう。そしてそのまま、第4楽章の始まりの木管楽器のソロの孤独。第1楽章からの不安の雲。唐突に始まる破れかぶれの狂騒。カッパ踊りをしながら群衆の中を駆け抜け夕日に向かって孤独な勝利を、自分の名前を叫ぶことによって勝利を現実のものに実体化するように音楽は終わる。たったひとりしか認めなくても勝利は勝利。負け試合でも、自分が勝ちを叫んじゃえば、誰も認めなくても勝ち。そんな孤独な魂の勢いが音楽に演奏に感じました。ペトレンコさんのタコは毎回わたしに新しい見方を、聴き方を教えてくれるような気がします。CD買っちゃおうかな。
[PR]

by zerbinetta | 2012-08-23 05:55 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

縦ノリタコナナ ネルソンズ、バーミンガム市響 ショスタコーヴィチ「レニングラード」   

21.8.2012 @royal albert hall

glinka: ruslan and lyudmila, overture
emily howard: calculus of the nervous system
shostakovich: symphony no. 7

andirs nelsons / city of birmingham symphony orchestra


うふ〜〜♡今日と明後日はタコなんです♬タコ7とタコ10の2連チャン。なんて楽しみなんでしょう。そして、今日はネルソンズさんとバーミンガム市シンフォニー、明日はペトレンコさんとリヴァプール・フィル。指揮者は若手実力派でめきめきと頭角を現している人ですね。そして、オーケストラは実は、どちらもまだ聴いたことがなかったんです。ますます楽しみではないですか。

ネルソンズさんは、フィルハーモニアに客演したときに聴いているし、最近はわたしは聴きそびれたけど、ロイヤル・オペラで「サロメ」を振って好評を博していました。わたしもネルソンズさん、若くてハキハキしてるし大好きです。
ネルソンズさんって曲を始める前、独特の構えをしますね。ヨーイドンを待つランナーのような、ちょっと前傾姿勢で、ここから一気にエネルギーを爆発させるような感じ。バネが弾けるように音楽が飛び出します。超快速演奏ではないし、勢いに任せて荒さが目立つという演奏でもなく、勢いの上にもしっかりと丁寧に演奏されます。ここでもう心を掴まれました。このオーケストラ上手い!

2曲目は、エミリー・ホワードさんの「神経系の解析」なんていうサイエンティフィックなタイトルの音楽。わたしも神経学者の端くれとして(ウソだけど)、神経系って何やねん、と突然大阪弁で悪態をついちゃったり。作曲者のホワードさんは、プログラムによると、何故かチェスのチャンピオンとの紹介が目に付くほど、作曲よりチェスで有名なのかしら。
超イントロクイズをしたら「涅槃交響曲」!!と応えちゃうような音のクラスターで始まりました。同じひとつの音を楽器を変えながら静かに繰り返して、ときどきはっとする違う音を混ぜたり、また同じ音が来るのかなと思うと違った音が来たりして、頭にくっついて頭の中で鳴ってるひとつの音と、聞こえてくる音とのずれや同期が、なんだか、記憶を刺激しているみたいで、わたしは、この曲は神経回路というより、記憶の固定の現象みたいで、確かに神経系、とおもしろかったです。そしてとても良く、緻密に構成されていてステキな音楽でした。聞こえてくる音と頭の中に生まれた音の間の協奏曲。この曲好き♡

最後はいよいよタコ7。ロンドンで何回か聴く機会はあったんだけど、わたしの好みの曲ではないのでロンドンで聴くのは初めて。タコ好きなのに、タコ7は何だか、間違って勢いで書いちゃったなーーって感じがして、それに長いし、苦手なのよね(好きな人ごめんなさい)。
わたしのイメジでは、(前に聴いたテルミカーノフさんの演奏がそうだったので)、最初どっこいしょと老人が昔語りを始めるように始まる音楽だと思っていたんです。ところが、ネルソンズさんの演奏は違った!前置きなしに最初っから本文、勢い全開、全速力、戦場にいます。びっくり。速い速い。昔語りではない、今この場の戦争、音楽。今まで行進曲のところから戦争が始まるんだと思ってたんだけど、そうではない、最初っから戦場なんですね。こんなやり方あり?びっくりしたけどすごく納得しました。これならこの音楽退屈じゃないし。ネルソンズさんの演奏で目を開かれた感じです。
ネルソンズさんの演奏は、とっても切れがあります。リズムが弛緩しないので、ロックの打ち込みを聴くような爽快感。実際あのボレロのような行進曲の部分は首を振りたくなるくらいな縦ノリ。実際、アリーナに首をぴょんぴょん振ってるおばあさんやおじさんが。分かるよ分かるー。そんな音楽だもの。わたしだってちっちゃく首振ってたし。
それにしてもこんなにもざくざくと切れ味良く演ってもらうと、この曲好きになっちゃうじゃない。速い部分と、ゆったりと叙情的な部分のメリハリをしっかり付けて構成的に、物語ではなく交響曲として演奏された音楽だと思います。表題性を除いたゆえに、反対に音楽が説得力を持って響いてくる結果に。後半の楽章の、ゆっくりとした音楽からだんだん速度を増して盛り上がってくるところから、最後のクライマックスまでの音楽の運び方がとっても良くて、最後は圧倒的なカタルシス。これが勝利の雄叫びなのか、黒い何かを背負ったものかなんてどうでも良くて、音楽の力強さを感じたのでした。結局、ショスタコーヴィチは音楽のポジティヴな力をこの時は信じていたに違いないと思いました。そして演奏した誰もがみなも。音楽は血になってわたしの体を駆けめぐり、熱いエネルギーになる、そんな体験です。ネルソンズさんとバーミンガム市のオーケストラは、緊張感に満ちた弛緩のない音楽でわたしの裡にエネルギーを満たしてくれました。
[PR]

by zerbinetta | 2012-08-21 03:40 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

祝!初プロム! でもわたしは音楽会を観に行くんだなぁ   

9.8.2012 @royal albert hall

sibelius: symphony no. 6
delius: cynara
grieg: piano concerto
per nørgård: symphony no. 7
sibelius: symphony no. 3

roderick williams (br)
steven osborne (pf)
john strorgårds / bbc philharmonic


BBCプロムスは、もともとの名前を、なんとかこんたか(確か人の名前)プロムナード・コンサートと言うんだけど(詳しくは各自ググってね)、それは、あらゆる人に安く、気軽にクラシック音楽を聴いてもらいたいからということで始まったそうです。プロムナードは、散歩の意味で、最初は自由に出入りできたり、サンドウィッチを食べながら聴ける音楽会だったようですね。BBCプロムスと名前が変わった今は、演奏の途中で出入りしたりそぞろ歩いたりサンドウィッチを食べるのはできないけど、プラスチックのコップに入ったワインやビールを飲みながら聴くのはOKだし、5ポンドの立ち見の席(ステージの前の一番良い場所と上のギャラリー)はシーズンチケット以外は当日券のみで、誰でも気ままに(とはいえ人気の公演はかなり前から並ばなければいけないんですが)聴ける雰囲気は残ってます。そしてその立ち見の席で聴くことをプロミングと言って、立ち見の席に熱心に通うファンをプロマーと呼ぶんです(プロムに通っても席で聴いてる人はプロマーとは言わない)。わたしは、軟弱者で、当日券に並んだり、音楽会の間ずうっと立って聴いてるなんて、芸当できないから、今までプロムしたことなかったんです。でも、これじゃいかん、一生の思い出に(大袈裟)プロムしようということで、人気がなさそうで空いていそうな(ぎりぎりに行っても入れる&後ろの方で座って聴ける)音楽会を選んでみたのでした。今まで見た感じ、今年はオリンピックのせいかいつもより空いているような気がしたし、国内のオーケストラは空いてる傾向にある気がしたので、今日のBBCフィルハーモニックのシベリウス・プログラムにやってきたのでした。シベリウスはイギリスでは人気だけど、今日のプログラムはマイナーな交響曲第3番と6番なので、真ん中にグリーグのピアノ協奏曲が入るとしてもきっと空いてるでしょう。わたし的には、交響曲第3番と6番はシベリウスの交響曲の中で1、2を争う大好きな曲なので、よくぞ2曲いっぺんにというヨロコビのツボです。でも、こんなマイナーなプログラムでも、ロンドンに来てからシベリウスの交響曲全曲演奏会が2回もあったので、聴くのは第3番は3回目、第6番は5回目です!

いやあずいぶんと前置きが長くなってしまいましたが、のこのこと開演時間ぎりぎりにやってきたわたしも、途中下の通路で音出しをしていたオーケストラの人にすれ違ったり、雰囲気を楽しみながらアリーナへ。もちろん前の方で聴いてやろうという気は端からなく、後ろの方の隙間にちょこんと腰を下ろしました。久しぶりの体育座り。
ぼんやりと天上を見上げていると、清楚なヴァイオリンの響きが聞こえてきて。ああ、大好きな交響曲第6番。でも、今日は耳を澄まして聴くというより、天上にある丸いマッシュルームのようなオブジェを見ながら、音の世界に遊んだという感じです。この曲、作曲家の吉松隆さんもおっしゃっていましたが、わたしも宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い描いてしまうんですね。だからつい上を見上げてしまう。星は出てないけど。演奏はとてもステキでした。雰囲気が良かったし、宙の彼方の構成の光りのような白い冷たい光りが降り注ぐ感じ。初めて聴くBBCフィルハーモニックも堅実に上手くてびっくり。マンチェスターのオーケストラなんですね。イギリスの地方オケも侮れないなぁ。

と、聴いていたのはここまで。今度は寝っ転がって(わたしの他にも寝ころんでた人いたんですよぉ〜)、聴いてるうちにうつらうつら。それにしても突然歌が聞こえてきたときにはびっくり。歌付きの曲だったんですね。ステージが見えないのでステージで何が起こってるのか分からないのです。これはディリアスの「サイナラ」という曲でした。ひと聴きしてディリアスと分かる音楽。
ここでわたしの記憶はぷっつり。グリーグのピアノ協奏曲は、全く覚えていません。うわ〜寝ちゃった。駄目ですね、横になると。とたんにリラックスしちゃう。

休憩のあとは、デンマークの作曲家、ノルガルドさんと発音するのでしょうか、交響曲第7番。デニッシュ放送交響楽団の本拠地のホールのこけら落としのために作曲された曲です。と、こんなことは、聴かなくてもプログラムを見れば書けるのですが、はい、ちゃんと聴いてませんでした。何だかよく分からない曲だなぁ〜とぼんやり。今日のプロム、わたしのやる気のなさが思いっきり反映してますね。アリーナは前に立って気合いを入れて聴いてると違うのでしょうが(たいていそうしてる)、わたしみたいに後ろの方でやる気なさげに座ってるという時点で負けです。まあ、わたしの場合立っていてもちびっ子なので前が見えないから、どちらにせよ負けなんですが。

最後のシベリウスの交響曲第3番は大好きなので、体育座りに座り直して聴きました。ストルゴーズさんのシベリウスは、一切奇を衒わずにそのまま、素直に音楽を作った感じ。そこが物足りないと感じることもあるけど、すうっと音がしみこんでくる。音に棘がないから、引っかからないんですね。わたしが透明になって音がわたしの中を流れゆく感じです。それは、交響曲第3番と6番に共通した特徴でもあると思うんです。

初めてのプロミング、いろんなことを感じました。一番は、わたしは音楽会を観に行くんだな〜ってこと。わたしにとって音楽は聴くだけのものではないということを再認識しました。ステージにいるイケメンくんを探したり、演奏している姿を観るのがわたしの音楽にとって切っても切り離せない、うんと大切なものなんだと分かりました。わたしがちゃんと音楽を聴くには耳だけでは足りないんです。鼻をつまんだらどんなおいしいお料理も味が分からないのと一緒でしょうか。
[PR]

by zerbinetta | 2012-08-09 07:57 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

またまた若者 ラニクルズ、スコットランド・ユース・オーケストラ、BBCスコティッシュ交響楽団   

5.8.2012 @royal albert hall

james macmillan: fanfare upon one note
wagner: the mastersingers of nuremberg -prelude
bruch: scottish fantasy
strauss: don juan
thea musgrave: loch ness -a postcard from scotland
respighi: pines of rome

nicola benedetti (vn)
donald rannicles / bbcsso, national youth orchestra of scotland


またまた、若者のエキス。今度はスコットランドのユース・オーケストラ。昨日がイギリス全土だったのに、今日はスコットランド・ローカル。さすがに小粒感は拭えませんね。今日はユース・オーケストラ単独で演奏されたのはブロッホの「スコットランド幻想曲」だけ。あとは、BBCスコティッシュ交響楽団との共演です。わたしの目的は、プチ応援してるニキとラニクルズさん。ニキのヴァイオリンはなるべく聴かなくちゃと思ってます。

最初はマクミランさんの金管楽器と打楽器のかっこいいファンファーレ。3分くらいの短いファンファーレだけど、十分に複雑でステキ。ファンファーレって単純な音楽だと思ってたけど、どっこい、まだまだかっこいい可能性が残されてるのね。
2曲目は「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲」。まあこれまたかっこいい音楽だけど、ラニクルズさんがオペラ指揮者の本領発揮で、オペラの序曲のようにさらりとでもふくよかな味付けで演奏されました。内声がとても充実していて、対向する旋律群がきちんと全部聞こえてすごくいい演奏。ますます好きになったよ、ラニクルズさん。
休憩の前、最後は「スコットランド幻想曲」。もちろんソロはニキ。オーケストラはユース・オーケストラ。スコットランド生まれのラニクルズさんとニキ、スコットランドの若者オーケストラ、もう、みんな同じ釜のハギスを食べた仲よね。そんなスコットランドつながりのスコットランド大好きっ子たちが演奏する「スコットランド幻想曲」ですもの、共感に満ちていたのは間違いありません。それにしてもスコットランドってきれいな旋律の宝庫だなぁ。日本人には何故か特に親しみがありますよね。ニキのヴァイオリンは今日は普通かなぁ。丁寧に歌っていたけど、驚きはなかったです。今日は遠くからぼんやりとリラックスして音楽を聴いてたからかなぁ、まったりと楽しみました。
アンコールには、ユース・オーケストラのリーダーの男の子!を誘って、ふたりでデュオ。曲はスコットランド民謡を編曲した感じの曲。若いけれどもコンサート・ヴァイオリニストとして世界中を飛び回ってるニキお姉さまと、ステージの上ではまだシャイな高校生の男の子という構図が何とも微笑ましかったです。
c0055376_1452062.jpg


休憩のあとの「ドン・ファン」は、BBCスコティッシュ交響楽団の演奏。これはもうとってもステキな演奏。ゴージャスな艶やかさはないけれども、しっとりと柔らかくってじんわりと深く音楽の中に沈み込めるような演奏。モノラルのレコードのような色彩感。でも、これがかえっていい!ちょっと古ぼけた感じがシュトラウスから薫るノスタルジアを上手く表現しているような気がして。
それから、ティア・マスグレイヴさんの新作、「ネス湖ースコットランドの絵はがき」、初演です。ネス湖と言ったら怪獣。もうわたしったら、ネス湖の怪獣にもの凄い憧れを持っていて、できることなら見に行きたいっ、イギリスにいる間にぜひ!と思っていたんだけど、実現せず、だってネス湖ってかなり辺鄙なところにあるんですよ、だから今でも怪獣が住んでるんだと思うんですけど、で、この曲はネス湖の怪獣の音楽なんです。チューバのソロがそれはもう大活躍で、プログラム・ノートによると、これが怪獣を表してるそうなんですけど、チューバ協奏曲と言ってもいいくらい。怪獣はゴジラみたいに凶悪でもおどろおどろしいものでもなく、ぬるりとした不思議の生き物みたい。むしろ霧の中の神秘な風景画と言ったところかしら。演奏後、客席にいた作曲家をラニクルズさんが呼んだんですけど、その場で立って挨拶されただけで、控え目な感じのおばあちゃんでした(御歳84歳)。
最後は、BBCスコティッシュ交響楽団とスコットランド・ナショナル・ユース・オーケストラ全員合同で「ローマの松」。何だかずいぶん久しぶりに聴いた感じがするこの曲。好きだ〜この曲。ラニクルズさんの演奏は、派手やかなところよりも、静かな部分をとっても美しく強調した音楽で、カタコンバの松とジャニコロの松がステキでした。鳥の声はテープだったけど、これって調べてみたらレスピーギ自身が録音を使うことと指定してるんですね。知らなかった。舞台外の金管楽器はどこかとんでもないところから聞こえてくるのが好きなんだけど、舞台の後ろの方に座っていてオーケストラの中の音として聞こえてきたのはちょっと残念でしたが、しっかり盛り上がって、熱くなって終わりました。
[PR]

by zerbinetta | 2012-08-05 01:43 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

若いエキスをいっぱい浴びて ペトレンコ、ナショナル・ユース・オーケストラ「トゥランガリーラ」   

4.8.2012 @royal albert hall

varèse: tuning up
nico muhly: gait
messiaen: turangalîla symphony
anna meredith: handsfree

cynthia millar (om), joanna macgregor (pf)
vasily petrenko / national youth orchestra of great britain


トゥランガリーラ・シンフォニーを演るとあれば聴きに行かないわけにはいきません。と、最初の頃は思ってたけど、さすが20世紀のモニュメンタルな大作。意外と演奏機会が多くて、かれこれもう8回目くらい(?)。ブルックナーの交響曲第8番だってまだ3回か4回しか聴いてないので、その多さが際だってますよね。そして今日は、高校生クラスの若者のオーケストラ(メンバーは13歳から19歳、16、17歳が中心です)が演奏するのです。若者だからと言って侮ってはいけません。イギリス全土から集まった、多分将来音楽家になっていく子供たちだし、去年聴いたマーラー/クックの交響曲第10番の演奏が、アマチュアのレヴェルを遙かに超える素晴らしい演奏だったのでとっても期待してたのです。ペトレンコさんも、徹底的にオーケストラを鍛え上げてるふうなのが音に出てるし。それにしても高校生のオーケストラがメシアンを弾く時代が来たなんて。びっくり。でも、技術的にできていれば感覚的には同時代の音楽なのでかえって演奏しやすいのかもしれません。

始まりは、ヴァレーズの「チューニング・アップ」。この曲は前に聴いたことがあるので、何が起こるのか分かっていたから混乱なし。いつまでもチューニングしてるんですよね。茶々を入れつつ。そして今日はそれに小芝居付き。原曲は多分、小芝居は付いてないと思うのだけど、今日のは、チョウ・ウェンチュンさんが手を入れたヴァージョンです。小芝居の部分は大人がやるとちょっとしらけちゃうけど、高校生ならではな感じの、何だか学園もののテレビ・ドラマを観ている感じ。最後の方でペトレンコさんも登場して小芝居。そして、お客さんまでAの音を歌ってチューニング。うむむ、なかなか楽しい♪

2つめは「チューニング」の余韻もさめやらぬまま、ニコ・ミューリーさんの「ゲイト」という新作。ミューリーさんのお名前、どこかで聴いたことあると思ったら、ついこないだのロイヤル・バレエの「ティシャン」の最初の音楽が、彼の作曲だったんですね。ジョン・アダムズっぽいミニマル風な音楽。ミニマルは苦手だけど、アダムズさんは許せるので、この曲も新しさはさほど感じなかったけど、楽しめましたよ。何だか景色が走馬燈のように駆け抜けていく感じで、あとでプログラムを見たら動物たちの走る様子に音楽がインスパイアされているそうで、ああなるほどって思いました。

休憩のあとはいよいよトゥランガリーラ、ピアノとオンド・マルトノは去年ゲルギーとロンドン・シンフォニーで聴いたマグレガーさんとミラーさんのコンビ。ペトレンコさんのトゥランガリーラはわりと遅めのテンポ。特に、盛り上がる第5楽章「星たちの血の喜び」がゆっくりとしてました。わたしはこれは狂喜乱舞して弾けちゃってるのが好きなので、どっしりと構えたペトレンコさん演奏はわたしの好みではなかったけど、全体的には若さの火花がスパークしてカラフルで溌剌として、若さゆえの自信や野望が音楽の中に含まれている気がして、爽やかな青い気持ちを味わいました。ふたりのソリストが、オーケストラを煽って引っ張っていたのも印象的です。最後のフェルマータは、短く終わったけど(さすがにあれを伸ばし続ける体力は高校生にはまだないかな)、すかっと終わってかえって気持ちよかった。30代のメシアンだってこの曲にたくさんの音と共に野望をたくさん詰め込んでるものね。

そしてなんと!トゥランガリーラのあとにもう1曲。普通、このあと、アンコールだってないでしょ。ちょっとむむむな気分で見ていたら、ペトレンコさんが、リーダーの少年(!)のヴァイオリンをひったくるようにしてステージを降りて、なんと!!指揮者なし、楽器なしの音楽が始まったのです。アンナ・メアディスさんの「ハンズ・フリー」は、拍手の音楽。楽器は拍手と(若干の)声のみ。それが、リズムを変えたり強弱を付けたり、オーケストレイションもされてて、そして振り付けも(振り付けはデヴィッド・オグルさん)、音が立体的に聞こえてきて、実にステキ。これは初めて味わうびっくりするような音楽体験でした。

なんか若いエキスをしっかり浴びてわたしもちょっぴり若返ったようです。え〜え〜気のせいですとも。

ペトレンコさん、そんなに目を見開かなくても!
c0055376_7333263.jpg

相変わらず年齢不詳のマグレガーさん
c0055376_7342849.jpg

演奏しているじゃなかった拍手しているメアディスさん(女性)と(多分)オグルさん
c0055376_735234.jpg

[PR]

by zerbinetta | 2012-08-04 07:31 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

地味だけど実力者 ラニクルズ、BBCスコティッシュ交響楽団 ブルックナー交響曲第8番   

3.8.2012 @royal albert hall

wagner: siegfried idyll
bruckner: symphony no. 8

donald runnicles / bbcsso


ドナルド・ラニクルズさんという指揮者を知っているでしょうか? 知っていたらかなりのクラヲタかも。現在、BBCスコティッシュ交響楽団とベルリン・ドイツ・オペラの指揮者をしている中堅どころ(60歳手前)の左利きの指揮者さんです。活動の中心がオペラだし(ベルリン・ドイツ・オペラの前はサンフランシスコ・オペラでした)、CDをばんばんと出している人ではないので、あまり名前が通っているとは言えません。見ただけでファンが付くようなイケメンでもありませんし(失礼)。わたしも彼と彼のオーケストラ、BBCスコティッシュ交響楽団を知ったのは、一昨年のプロムス。彼の指揮したマーラーの交響曲第3番の演奏が、そしてオーケストラの音色が、地味じゃなかった滋味に溢れるとっても心に浸みる良い演奏で、ひと聴きでこの指揮者とオーケストラが大好きになったのです。そんな彼らに再会するために、プロムに行ってきました。今日はブルックナーの交響曲第8番。

始まりは、「ジークフリート牧歌」。いきなりヴァイオリンのソロで、弦楽四重奏のように始まってびっくり。あれ?こんな曲だったっけ?あとで調べたら、弦楽合奏はソロでもできるように書かれているらしいんだけど、今日のように部分部分でソロと合奏に分かれるのは初めて。きっとラニクルズさんのアイディアですね。ソロが際だって、もともとコジマのために書かれたプライヴェイトな音楽が、今日はわたしたちひとりひとりのために演奏されたプライヴェイトな音楽のように聞こえて良かったです。それに、このオーケストラの素朴で優しいなほっとするような音色。さらさらと草の匂いを含んだ風のように流れる音楽。野原が見える開放感。ほんとに牧歌なんだわ〜。

ブルックナーの交響曲第8番は、とても巨大でブルヲタではないわたしには、手に余る感じだったんだけど(どうにもこうにもブルックナーの交響曲第5番と8番と9番はわたしには大きすぎて聴くのがたいへん)、数年前にネゼ=セガンさんとロンドン・フィルの素晴らしい演奏を聴いて以来、ちょくちょくその録音を聴いていたら、好きになっちゃいました。大きいけど意外とさっぱりしてるのよね。
ラニクルズさんの演奏は、そんなわたし好みのブルックナー。大きいけど重くなりすぎず、引きずらず、流れのある音楽。第1楽章で、フレージングの仕方というか、音のリズム、つながりのニュアンスの取り方が、わたしの感覚に合わなかったので、ちょっと戸惑ったけど、慣れてきたらこれはこれでいいかもって。BBCスコティッシュ交響楽団は、日本で言えば、札幌交響楽団のようないわば地方のオーケストラだけど(スコットランドの首都ではあるけれども)、実に上手い。もうわたし大好きなんですね、このオーケストラのくすんだ感じの優しい音色が。ラニクルズさんのブルックナーは、わりとスマートなブルックナーだけど、それが都会的に気障にならなくて、素朴な微笑みを称えているのはオーケストラのせい。もちろん、ラニクルズさん好みの音なんでしょうけど。ベルリン・フィルやロンドンのオーケストラみたいなスーパー・オーケストラとは違うけど、クラヲタ好みの良いオーケストラです。もし、エジンバラに住んだら絶対、応援しちゃうんだろうな(って、わたしどこに行っても地元贔屓だけど)。
ラニクルズさんのブルックナーは、教会的、宗教的というよりは、とっても外に向かって開放的で、自然の中に佇んでるみたい。ブルックナー的かどうかは分かんないけど(どうでもいいし〜)、わたしは好き。苦悩も苦しみもなく全てが解決している音楽。でも、それがブルックナーの本質ですよね。だって、神さまを深く信じるってことは、もう全てが解決してるんだもの。ブルックナーにはベートーヴェン的な苦悩から勝利へなんて音楽は書けなかったんです。まあブルックナーもベートーヴェンかぶれなとこあるから、第1楽章や第4楽章には苦悩や闘争っぽいとこあるけど、金管楽器いっぱい鳴らしたかっただけだし〜。というようなこと、考えつつ、とか言っちゃうとブルヲタ的にはダメな演奏だったのかな?、やっぱ、ブルックナーは単純でいいやって思ってました。音が世界に解き放れて天上まで届け〜〜。
わたしのデフォルトのネゼ=セガンさんのライヴでは最後の最後の方で、ネゼ=セガンさんの叫び声が聞こえるんだけど、今日は叫び声が聞こえなくて肩透かし。もはや叫び声までがわたしの音楽の一部だったなんて。ちょっと苦笑い。最後の3つの音をささっと筆を撥ねるようにして終わって、お終いまで仰々しくならない芯の通った演奏でわたし的には大満足〜。

ラニクルズさん、派手さはないかもしれないけど、実力者なのでもっと、ちゃんと評価されるといいのにな。オススメしたいけど、CDがあまりないのでは難しいですね。音楽家は日頃の演奏で評価されるべきだというのが持論だけど、CDとかがないと評価の俎上に上がることもないのが、(特に欧米から遠く離れてる日本では)残念です。ウェブ・ラジオとか、音楽会が積極的に放送されて、世界中で聴けるようになると、少しは変わってくるかしら。良い方向に変わりますように。

一番偉そうにしてる第2ヴァイオリンのトップの人にも再会できて嬉し〜〜♡ と、ラニクルズさん
c0055376_8153734.jpg

[PR]

by zerbinetta | 2012-08-03 08:13 | イギリスのオーケストラ | Comments(6)

トランペット吹きはマックもできなければ   

24.05.2011 @queen elisabeth hall

arvo pärt: fratres
joanna macgregor: lost highway, gospel and blues from the deep south
arve henriksen/helge sunde: four pieces from cartography
james macmillan: piano concerto no. 2

arve henriksen (tp)
joanna macgregor (pf) / britten sinfonia


現代音楽を演奏する演奏家って、ときどき予想外に大変。以前に弦楽四重奏の人が水の入ったホラ貝を回してぴちゃぴちゃと水の音のする音楽を奏でていたし(とはいえ、ずうっとホラ貝を回すだけなので弦楽四重奏団じゃなくてもいいのかも。専門のホラ貝奏者がいればいいんだけど、ホラ貝回すだけじゃ食べていけないよね)、今日はトランペット奏者がマックのコンピューターをいじりながら吹いていました。

今日の音楽会はジョアンナ・マグレガーさんとブリテン・シンフォニアの音楽会。マグレガーさんは去年、ゲルギーとロンドン・シンフォニーでメシアンを弾いたとき、うひゃ〜〜かっこいい〜〜ステキ〜って思って、ちゃんと聴かなければと思った人なのです。去年、シティ・オヴ・ロンドン・フェスティヴァルでも弾いたのですが、のんきに構えてたら当日チケットが売り切れちゃってて聴けなかったんです。なので今日は楽しみにしていました。バッハを弾くのよね、ってるんるんしながら会場に着いてプログラムを買うと、全然別の思ってもみなかった曲。全く勘違いしてたのでした。まあいいや。全てが現代曲。なのに、クイーン・エリザベス・ホールはほぼ満員。誰が人気があるのでしょう。

始まりはペルトのフラトレス。美しい曲です。一時期わたしもペルトにはまったなぁ。ステージにピアノはでんとあるけれども、弦楽器(と打楽器ひとり)の静謐な音楽。ブリテン・シンフォニアは初めて聴くけど、結構上手いですね〜。少人数の室内アンサンブル。少し堅めの音色で、濁りのない澄み切った世界を表出していました。
2曲目からマグレガーさん登場。自身のロスト・ハイウェイという曲です。副題通り、ゴスペルとブルースを編曲した音楽。そして、トランペットのヘンリクセンさんも参加。ステージの右手にはマックブックが置いてあって、マイクが2本立っていたのだけど、トランペットはそのマイクに向かって吹くんです。マイクを通した音をコンピューターで加工してスピーカーから会場に届けるという趣向です。特殊な吹き方もしてるんでしょうが、息が漏れるフルートのような(むしろ尺八)音色になったり、靄がかかったり面白かったんですけど、たまにはマイクではなく会場に向かって吹いて欲しいと思いました。マグレガーさんの好みなのかなと思ったんですが、あとで聴いたヘンリクセンさんの曲もそんな趣向だったし、この曲は違う編成のオリジナル曲をヘンリクセンさんのアドヴァイスの元、今日のように編曲しているので、マックをいじりながらトランペットを吹くというのはヘンリクセンさんの得意技なんでしょう。先にも書いたとおり、わたしとしてはこればっかりじゃなくて、トランペットの直接音も聞きたかったです。
マグレガーさんの曲は、なんだか懐かしい感じの、原点を思い出させるような音楽です。マイクを通して加工した音(ときにはピアノの音や弦楽オーケストラの音も加工しています)が、輪郭をぼかしたソフトフォーカスみたいな感じになって、膜を通して脳みそに届くような感じで、それがなんだか、過去のもう手の届かない思い出のような音に感じたのかも知れません。♪い〜つくしみ深〜き〜、わ〜が君イェスよ〜♪のメロディが聞こえたときわたしも、思春期の頃、教会に通っていたのを思い出しました。思い出は誰でも美しい。でも、もう永遠にないもの。消えていく音と同じですね。

休憩の後はヘンリクセンさんの曲。彼はクラシックの奏者というより、ジャズ、フュージョン系を中心としていろんなスタイルの音楽を演奏しているのですね。静かな心安まる音楽でしたが、わたしにはちょっぴり退屈でした。眠くなっちゃった。というかそういう音楽なのかも知れません。お休みなさいの音楽。
もうひとつは、マクミランさんのピアノ協奏曲第2番。マクミランさんの音楽はときどき好き、ときどき苦手、という感じで聴いているのだけど(マクミランさんの曲、ご当地イギリスでは結構よく演奏されます)、今日のは圧倒的に良かった。さすが、職業作曲家って思っちゃった。やっぱり演奏家が作ってる音楽よりも専門の作曲家が作ってる音楽だけに、説得力が違いました。マクミランさんの音楽としては分かりやすい系(基本的に彼の音楽は分かりやすいのですが、ちょっと小難しいのになると何言ってるんだか分からなくなります)。これは良い曲でした。ピアニストは小太鼓も(手で)叩きます。面白い面白い。

アンコールにはまたヘンリクセンさんが出てきて静かな音楽。
でも、今日の音楽会はやっぱり、マグレガーさんでしょう。年齢不詳というかとても若く見える51歳。やっぱりめちゃかっこいい。なんかすごい特別なオーラみたいなものを持った人なのよね。最近わたしが、かっこいいと憧れてる女性は、マグレガーさんとロイヤル・バレエの総帥モニカ・メイソンさん。わたしもできたら、あんなかっこいい人になりたかったな。ぼーっとした豆電球のような人じゃなくて。。。どうすればなれるんだろう。ごまめの高望み?
[PR]

by zerbinetta | 2011-05-24 08:14 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)

年下の男の子   

24.04.2011 @royal festival hall

judith weir: we are shadows
mahler/cooke: symphony no. 10

vasily petrenko / national youth orchestra of great britain


しつこくマーラー記念年。10代の若者のオーケストラが、マーラー/クックの交響曲第10番を演るというので聴いてきました。ってか、指揮者のペトレンコさんが大好きなのでチケット取りました。
若い人たちってときにびっくりするくらいステキなことするのです。この間はロンドンの(多分)高校生のオーケストラだったけど、今回はイギリス全土から集まる10代の若者のオーケストラ。アマチュアとはいえ多分、多くはプロを目指していると思われる、かなり上手いオーケストラでした。ペトレンコさんはやっぱりステキ〜〜。指揮者界の王子様だわ。背が高くってきれいな金髪でノーブルな感じ。そしてアマチュア・フットボーラーでもあるのです。

最初のウィアーさんのわたしたちは影は、合唱、少年合唱を含む大編成の曲。オーケストラも大人数で、これはパートが多いというより、たくさんの若者にプレイするチャンスを与えたい、または、アマチュアゆえの音量不足をカバーしたいという意図があるのでしょうか(実際プロのオーケストラでも超一流のオーケストラは音量が大きいです)。
ウィアーさんの曲は初めてなんだけど、新しさはないけどとても良くできた曲だと思いました。大人数の合奏向きで、今日の演奏者にぴったりな感じ。分かりやすさも、若い人が共感しやすいのではないでしょうか。少年少女合唱の前列右から2番目の男の子がかわゆらしかったぁ〜。まだ小学校に上がる前かなぁ。年下だけど、お友達になりたい〜。

なんて馬鹿なこと言ってないで、というかあと目を付けた男の子は、第2ヴァイオリンのトップの子。OAEのリーダーのひとりに似てる。親子という歳じゃないので兄弟かしら。若い子見ると胸がときめいちゃうのよねっ。
マーラー/クックの交響曲第10番は、実はこの選曲ありかなぁって思ったのです。というのは、偏見だけど、マーラーの後期の音楽って、若者が理解したって言ってはいけない音楽だと思うからです。それにかなり難しそうだし。マーラーで演るのならば、交響曲第1番とか、若々しい音楽の方が合うんじゃないかなって。まさに青春時代の人が演奏する青春の音楽ってぜひ、聴いてみたいじゃないですか。交響曲第10番は、第9番や大地の歌と違って未来に向いているからいいのかもしれないし、この間のドゥダメルさんの第9番の演奏のように全く新しい音楽を見せてくれる可能性もあるので、やっぱり偏見なんですけどね。
アマチュアのオーケストラなので演奏の評は控えますが(といいつつ、とっても良い演奏でした。アンサンブルも良かったし、思いっきり練習して弾き込んでるのがよく分かる、慣れや手抜きの一切ない演奏でした)、ペトレンコさんの音楽は、緩急をはっきりさせた分かりやすい音楽で、ときどき面白いテンポの変化があって、この人のマーラーの演奏をもっと聴いてみたいなって思いました。ゆっくり歌った最終楽章のカンタービレの音楽は感動的でした。最後、ペトレンコさん力を出し切った感じで、演奏の本気度が凄かったです。ペトレンコさんにとってもオーケストラにとっても、もちろんわたしにとっても、一期一会の演奏に違いありません。
今日のお客さんは、オーケストラや合唱の人の家族や関係者が多かったです。でも、いつものお客さんよりとてもきちんと音楽を聴いていました。イースターの日の午後のステキな音楽会でした。
[PR]

by zerbinetta | 2011-04-24 06:45 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)

夏の音楽   

mahler: symphony no.3
karen cargill (ms),
edinburgh festival chorus, royal scottish national orchestra junior chorus,
donald runnicles / bbc scottish so @royal albert hall


またまたプロムに行ってきました。夏なのでマーラーの交響曲第3番でも聴いておこうかなって思って。だってこの曲ってまさに夏って感じでしょ。夏風に吹かれて草原で聴くのがふさわしい感じ。そういえば中学生の頃、ラジカセを持ち出して外でこの曲を聴いたのを思いだしてしまった。何か恥ずかしい思い出。音楽会のシーズンは秋から春だけれども、クラシックの音楽ってなぜか夏を感じる曲が多い気がする。わたしにとって冬を感じさせる音楽を書いた作曲家って、すぐに思い浮かぶのはチャイコフスキーとショスタコーヴィチくらい。シベリウスもプロコフィエフもわたしには夏なんですね。実は今日の音楽会はなんとなくチケットを取ってみたので、指揮者は確かランニクルスさんだっていうのは覚えていたけど、オーケストラがどこの団体なのかしらなくって家に帰ってからプログラムで確認して分かったくらい。ほとんど期待してなかったんです。まあでも、生で聴ければいいかって感じ。

最初のホルンは、まさにそんなわたしの思ってたまま。なんだか元気が良すぎたというかマーチっぽすぎたというか、わたしの好みはふくよかに全体(ホール)を包むような音なんだけど、先頭に立って走り出しちゃった感じで、わたしも慌ててついていった感じ。でも、やっぱり生で聴くのは良くって、大きな大太鼓のピアニッシモの轟きは、これは絶対、オーディオでは無理って思いました。この大太鼓が今日は大活躍。大音量で叩きまくるというわけではないんだけど、ピアニッシモでもずっしり響く音は、特に第1楽章の嶮しく聳える峰の見上げる重たい行進曲にぴったり。
そんな感じで生の音楽はいいなと思いつつも、期待もなしにぼんやりと聴いていたんだけど、音楽が進むにつれてあれ?どうしてだろう?って音楽がわたしとシンクロナイズしていくのを感じる。この曲の第1楽章って長くって、さすがのマーラーも上手くまとめ切れてないなっていうか退屈な感じを感じちゃったりしたこともあったんだけど(前に聴いたマゼールさんとニューヨーク・フィルの演奏はまさにそんな感じだったのです)、今日はだんだん音楽にのめり込むようになって。このオーケストラ、あとで見たらBBCスコティッシュ・オーケストラだったんだけれども、決してものすごく上手というわけではないのだけど、とっても丁寧に演奏しているのが手に取るように分かるの。指揮者のドナルド・ランニクルスさん(左手に指揮棒!)はオーケストラを縛り上げずに信頼してまかせている感じ。細かい指示もあまりなくて、でも、オーケストラとはものすごくしっかり意思疎通が取れていて求める音楽の方向が一致しているのが素人のわたしにもよく分かる。きちんとした練習をしてきている。これだけステキなマーラーの音楽を創りあげるランニクルスさん、ただ者ではない。
第1楽章が終わってソリストが入ってきて(合唱は最初からステージに出てました)、第2楽章が始まってまずびっくり。オーボエのなんとチャーミングな鄙びた音。こんな素朴なオーボエの音聴くのなんて久しぶりなんだろう。最近のオーケストラの音ってスマートでつるつるした感じが多いから、こういう素朴な音に新鮮味を感じるの。オーケストラ全体の音色はどちらかというと線の細い、風通しのいい透明な感じなんだけど、スコットランドの風景と関係あるのかな。北欧系に似た響きだけど、そこまで冷たくないのね。このオーケストラ、ヴァイオリンは対抗配置だったけど、第2ヴァイオリンのトップの人がオーケストラを統率してる感じでした。リーダー(コンサートマスター)が現在空席で、今日もゲスト・リーダーが招かれていたんだけどそのせいもあるのかしら。いやでも、普通はないよね。これはちょっと面白かったな。
第3楽章が始まる前に、トランペットの人が舞台から退出したりして(舞台裏でポストホルンを吹くためです)、忙しい。第3楽章も表現はわりと控え目。聴き映えのする派手さのある表現とは一線を画して、丁寧に丁寧に音楽を作っていく。それがとおっても温もりがあっていい感じなんです。星付きのレストランの驚くべくような味じゃないけれども、街のお総菜屋さんのひとつひとつ丁寧に作られたお総菜のようなご飯に合うおかずの味。そんな丈の音楽。マーラーのこの音楽が一時、マーラー自身が、野の花々がわたしに語ること、森の動物たちがわたしに語ること、夜がわたしに語ること、等、「語ること」と表題を付けていたのを思い出させてくれる。自然や天使の語りは決して大きな声でなされるものではない。静かに耳を澄ませて聴くものだってね。
メゾ・ソプラノを歌ったのは、スコットランド出身の若いカレン・カーギルさん。輪郭がはっきりした凛とした響きのステキな声です。同じくスコットランド出身の指揮者、ランニクルスさんとスコットランドのオーケストラの音色とぴったり。透明な空気に満たされた夏の夜の歌。
続けて演奏された第5楽章は最初、児童合唱団は座ったまま鐘を鳴らし始めたけど、これは良かった。静かに終わる前の楽章に続いてがさっと立って歌い始めたら目が覚めちゃうものね。ここは座ったまま歌い始めた方が自然。音楽が鳴りだしてから合唱団は立ったけど、目の前で人が立ちあがったのはちょっとびっくり。女性合唱団の後ろっ側に座っていたのです。でも、ビーンバーンくらいはわたしも歌えるかなぁって一緒に歌いたい誘惑。
最後の第6楽章は大好きな大好きな音楽。涙なしには聴けません。ランニクルスさんとオーケストラの丁寧な音楽作りは予想通り、ここで頂点を迎えたと思います。ひとつひとつのフレージングの丁寧なこと。アクセントを付けた音符とレガートの見事な対比、チェロにメロディが移ったときの心にしみいるような歌い方、どこをとってもステキ。音楽が進んで行くにつれ、このまま終わって欲しくない、時間よ止まれって叫びたくなりそうな幸せな時間。トランペットとトロンボーンの静かなコラール(ベルに布を当てて消音していました)から大きなクレッシェンドを経て最後の長い音が鳴り終わるまでの至福の時間。この楽章ではランニクルスさんはきちんと棒を振ってオーケストラをしっかりドライヴ。プログラムのインタヴューで答えていた、この曲の技術的な難しさをマラソンに例えていたとおり、最後にオーケストラをドライヴする見事なペース配分。泣きました。って第1楽章から涙出てたけど。自分の書いた文章を読み返してみると、何回も丁寧なって言葉で形容しているけれども、本当に本当に心に残る演奏でした。

ランニクルスさんとカーギルさん 向こう側の人がオーケストラを仕切っていた第2ヴァイオリンの人
c0055376_86066.jpg

大きな大太鼓 隣に座った人も凄いって言ってました
c0055376_864410.jpg

[PR]

by zerbinetta | 2010-08-04 08:01 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)