<   2009年 03月 ( 14 )   > この月の画像一覧   

またまた復活、ヘンデルだけど   

handel: la resurrezione
camilla tilling, kate royal, sonia prina, toby spence, lorenzo regazzo,
emmanuelle haim / le concert d'astree @barbican hall


アイムさんとコンセール・ダストレによるヘンデルの復活。楽しみにしてました。だって、このコンビによるヘンデルのカンタータ集のCDがとっても良かったんですもの。バッハの陰に隠れてしまってなかなか正当に評価されないヘンデルだけど、わたしは好きなんですよ。雰囲気明るいしメロディきれいだし。それに地元の作曲家!ヘンデルはイギリスに帰化してロンドンに住んでます。
コンセール・ダストレは古楽のオーケストラ。アイムさんは指揮とチェンバロを受け持ちます(この曲にはチェンバロが2台使われていてアイムさんが担当したのはルシフェルに伴う方。役によってチェンバロを使い分けてます)。古楽器って音合わせが大変なんですね。チェンバロは開演前と休憩中にチューニングしてたし、弦楽器の音合わせもコンサートマスターが音を取って各セクションを回りながらひとりひとり音を合わせるように丁寧にしていました。
さて、アイムさんの第一印象は、いいなぁ髪がふさふさ〜でした。あっわたし、髪の毛に難点があるので。スカートをはいていて女性らしいなぁって。女性指揮者ってときどき男装の麗人みたいな言われ方がされて、指揮者の世界ってまだまだ男性社会じゃない。そんな中で女性らしさを表に出していたのはちょっとステキ。古楽のオーケストラで弾き振りというのも女性スタイルで違和感を感じさせなかった理由かもしれません。
復活はヘンデル23歳くらいの作品。わたしの大好きな愛の狂乱を思い出させるような、明るい音楽で始まる。宮崎駿さんの映画、天空の城ラピュタで、パズーが朝、屋根の上にのぼってトランペットを吹くシーンを思い出させるの。アイムさんの指揮はとってもはきはきとして音楽が躍動する感じ。鋭いアクセントを付けるとかじゃなくて、音楽が柔らかいのもステキ。それにしてもアイムさんと彼女が作ったオーケストラの音楽ってよろこびに溢れていて、とっても好き。歌手では天使を歌ったティリングさんがお目当て(マーラーの交響曲第4番のCDでステキな歌を聴いているので)だったんだけど、ルシフェルを歌ったレガッゾさんが声量もあってどっしりと安定していて良かった〜。幸せな気持ちをたくさんもらえた音楽会でした。
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by zerbinetta | 2009-03-31 07:52 | 海外オーケストラ | Comments(0)

風邪でだめだめ   

rossini: ermione
david parry / carmen giannattasio, patricia bardon, paul nilon, colin lee,
bulent bezduz, graeme broadbent, rebecca bottone, victoria simmonds, loic felix /
geoffrey mitchell choir / lpo @royal festival hall


ロッシーニのオペラ・セリア、エルミオーネの演奏会形式での音楽会です。ロッシーニのセリアを聴くのは初めて。でわくわく。と言いたいところだったんだけど、風邪が悪化してへろへろ状態。それでも無理をして聴きに行ったのだけど、なんか朦朧としてうとうとしたりちゃんとよく聴けなかった。ああこれがロッシーニ・クレッシェンドねってそういうところは覚えていたり、指揮者の方、手が長い人だなとかどうでもいいことばかり。演奏は良かったと思うのだけど、ちゃんと聴けていなかったのはもったいない。残念です。
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by zerbinetta | 2009-03-28 07:45 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

とっても珍しいステキなオペラ   

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martinu: juliette
jiri belohlavek / william burden, frederic goncalves, andreas jaggi, magdalena kozena,
zdenek plech, rosalind plowright, jean rigby, anna stephany, roderick williams /
bbc singers / bbcso @barbican hall


今日はヤナーチェクの珍しいオペラだ、BBCシンフォニーの指揮者さんってチェコの人だからね、なんてうきうきして出かけたら、チェコ違い。もっと珍しいマルティヌーのオペラでした。演奏会形式。実はわたし、マルティヌーの交響曲全集とピアノ協奏曲全集のCDを持っているのです。何故そんなものをって?スロヴァキアに遊びに行ったとき、珍しいからと買い求めたのでした。あれ?友達にもらったのかな?何はともあれ全く知らない作曲家ではなかったわけです。でも、CDだけで、もちろんオペラの方は聴くのも初めて。楽しみ〜。
マルティヌーは不思議な作曲家。彼独自の技法を持っているのにいろんな人の音楽も聞こえてきます。オペラの始まりはオーケストラのトゥッティと同時に始まるファゴットのソロが春の祭典みたいだし、ところどころペトルーシュカを彷彿させる和音が聞こえます。マルティヌーの特徴は多彩な色彩感。音が、いろんな色のガラスの破片に乱反射する光のようにきらきらとカラフルに輝きます。混じりけのない透明な色彩が万華鏡のように変化してとってもきれいなんです。
1936年から翌年にかけて書かれた(作曲家の最後の年である1959年に改訂されてます)3幕のオペラは、同時代に書かれたヌヴーの戯曲、ジュリエット、もしくは夢への鍵を元にしたオペラです。台本がとてもステキでした。村上春樹さんの小説を読むような、もしくはマグリットの絵を見て感じるような現代的で不思議なお話。物語が心にしみこみます。そして音楽も。BBCシンフォニーは新しい作品を多く採り上げるプログラムがステキなので大好きなオーケストラなんですが、あまり演奏されない曲(演奏し慣れない)にも上手く対応してステキな演奏を聴かせてくれます。歌手もタイトルロールのコジーナさんを始め粒ぞろいで心おきなく楽しめました。
これはぜひ、舞台を観たいです。でもなかなかかからないんだろうな。でもでも、とおってもうれしいことに、オペラじゃないけど、ビエロフラーヴィクさんとBBCシンフォニーは来シーズンマルティヌーの全交響曲(6曲)サイクルを行うのでめちゃ楽しみです。これらの作品、ステキなのに滅多に聴く機会に恵まれませんからね。そうそう、今日もロビーで内田光子さんを見かけましたよ。演奏される方も一音楽ファンとして音楽を共有できるのはちょっぴりうれしい。
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by zerbinetta | 2009-03-27 07:44 | BBCシンフォニー | Comments(0)

心で聴くマーラー   

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mahler: symphony no.2
sylvia schwartz (sp), katarina karneus (ms), benjamin zander / the bach choir, po
@westminster cathedral


教会の大聖堂でマーラー、復活。教会のオルガンで復活。これはなんだかわくわくするじゃありませんか。しかも指揮は一部にカリスマ的人気を誇るザンダーさん。名物のプレコンサート・レクチャー付き。誕生日イヴじゃなくても行かなきゃデスよね。実はザンダーさん、わたしもCDを1枚だけ持っていてそれはとっても好きだったんです。仕事をさぼり気味に、いや朝からばばばって終わらせて、出かけました。でも初めて行くところ。やっぱり迷子。っていうかわたしの思っていたのと違うところだった。ウェストミンスターって名の付く教会、2つあったのね。わたしは有名なウェストミンスター寺院の方だと思っていたのに、大聖堂(カテドラル)は違うところなのでした(歩いて10分ほど離れてます)。寺院を目の前にして、国会議事堂の警備の人に道を尋ねましたよ。
そんなこんなで早めに出たにもかかわらず、レクチャーにはちょっぴり遅刻したんだけど、考えてみれば音楽会に遅刻したんじゃなくて良かった。レクチャーではザンダーさんがピアノを交えながら熱〜く復活を語ってくれました。内容は本やCDの解説なんかで知ってることなんだけど、ザンダーさんの熱い語りでとても楽しく聴けました。結構デフォルメした感じで弾き歌い(わりとへたくそ)していたので、かなり異形のマーラーを期待しました。演奏前に先日フィルハーモニアと一緒に仕事をしていたプロデューサーの方が亡くなったということで今日の演奏をその方に捧げるとおっしゃっていましたし。
が、それは見事に外れました。
意外にきちんとしたマーラー。見得を切ったり、緩急の差を極端に付けたりっていうデフォルメはなくて、どちらかというと速めのインテンポかな。さっきの弾き歌いとは大違い。だってさっきは主部は雷鳴のようにむちゃ激しく弾いて、第2主題はゆっくり弾いたんだもの。でも、教会でマーラーはきついな。音が響きすぎて、細かく分離しない。それにわたしは後ろの方の安い席で聴いていたので、直接音よりも間接音の方が多く聞こえて、お風呂でもわんもわんと響いてるみたいでした。オーケストラも弾きづらそうにしてました。第1楽章と第2楽章の間に長い間を取って(楽譜通りの5分以上の間という長さではなかったけど。この間に独唱者が出てきました。合唱は最初からステージです)始まったアンダンテ・モデラートは速めのテンポ。まさにダンスのリズムです。へ〜、こんな感じもありか〜って、たいていもうちょっとゆったりしてダンスのステップを踏むという感じにならないので、びっくりした〜。レクチャーではこの部分はルバートが大事とおっしゃっていたけど、めちゃくちゃなルバートかけ放題ではなく、ちゃんと控えめでした。ただひとつ残念だったのが、ダンスの軽いステップが、それを背景にチェロのレガートの対旋律が入ったときから緩くなってしまったこと。できたら、ダンスのリズムでずうっと通して欲しかったな。音楽の方向性が曖昧になっちゃったし、ダンスの方がわたしには新鮮で面白かったから。そういえば、ザンダーさんって音楽学者でもあったんでした。熱い語りから熱烈なアマチュアリズムの心を持った人だと思ってしまったけど、演奏はとても冷静でむしろあっさりとしていると言ってもいいくらい。中心になるスケルツォも過不足のないそんな演奏で、第4楽章もあっさり目。メゾソプラノのカーネウスさんの声も重心は低いけれど軽めで、もう少し深く哲学的に歌った方がいいのか、いや、天使の歌だから少し軽い方がいいのか、わたしも迷いました。ザンダーさんとフィルハーモニアはマーラーの交響曲を録音していってるので、このことはぜひCDが出たら確かめてみたいと思っています。教会の響きの中では正直よく分からなかったので。
最終楽章もそれまでと変わらず、もったりとしないでさらりと進めていきます。ステージ外のホルンが頭の上から聞こえたり、トランペットと打楽器のバンダが遠くで鳴ったり、ライブならではの面白さ。(でも、ほんとは逆かなぁ。トランペットが頭の上からでホルンが遠くからの方がいいかな。これは座った位置によるんですけど) 打楽器の壮大なクレッシェンドに続く行進曲の部分は壮大に盛り上がってわたしの好みにぴたり。ナイチンゲールが鳴いて静かに合唱が始まると、ここからはうって変わってゆっくり目のテンポ。それがとっても感動的で、今までの音楽設計はすべてこのときのために計算してたのかって思ったくらい。ここからは本当に感動的な音楽が展開していきます。そしていよいよ教会のオルガン。フォルテッシモでオルガンが入るんですが、その瞬間はもうびっくり。すべてがかき消されてしまいました。オルガンは教会の後ろに設置されていたので、わたしの席ではオルガンの音でオーケストラの音が吹き飛んでしまったのです。オルガンはずうっと鳴り続けているわけではないのでいいのですが。もう完全にはちゃめちゃな音響バランス。音楽的にはどうかと思うんですが(会場の問題で)、わたしにはこれがむしろツボ。マーラーってはちゃめちゃなところがいいなって思うんです。マーラーだって、最後まで独唱者を歌わせる(合唱に吸い込まれて聞こえないのに)書き方をしてるし、この曲には理知的ではない熱に浮かされた何かがあると思うんです。そしてそれがわたしにはとっても大切な部分。会場のせいで異形のマーラーだったけど、めちゃ感動できました。ただ、会場が寒かったのでボスからうつされていた風邪をこじらせてしまった。。。
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by zerbinetta | 2009-03-24 01:58 | フィルハーモニア | Comments(0)

頭で聴くマーラー   

berg: piano sonata, kommerkonzart
mahler: symphony no.9
mitsuko uchida (pf), christian tetzlaff (vn), esa-pakka salonen / po @royal festival hall


サロネンさんとフィルハーモニアによる夢の都市シリーズの3回目。マーラーの第9番が採り上げられます。そして今日は少し変則的。というのは始めが内田光子さんのソロでベルクのピアノソナタ。それから内田さん、テツラフさんのソロと管楽器オーケストラで室内協奏曲。そのあと休憩を挟んでマーラーです。
ピアノのソナタは初めて聴きます。オーケストラ編曲版はCDで聴き慣れているのでそちらがつい思い浮かぶのですが、ピアノで聴いても音が多彩で全くオーケストラと遜色のない表現。というより、ピアノの持つ硬質な打鍵や自在な表現の方がむしろ好ましい感じ。内田さんの音楽は、ベルクのソナタとステキに共感し合います。作品1なのにとっても完成度の高い音楽。ベルクらしい熱い情熱を十分に表現しつつ理知的に作品を構築していたと思います。スリリングな10分間。でも巨大な作品を聴いたという充実感も感じました。続く、室内協奏曲は少し肩の力を抜いた感じ。ヴァイオリンと共に協奏曲というより室内オーケストラの一部として機能していました。わたしには耳慣れない曲だけれども、20世紀の側からの世紀末音楽という感じで楽しめました。オーケストラも上手いし、マーラーへの期待が高まります。
休憩のあとは準備万端、マーラーの第9交響曲。だって、昨日は予習にと交響曲第1番のCDまで聴いていたんですよ。最初ものすごく緊張しますよね、弾くオーケストラも聴くわたしも。でも、そんな緊張をよそに始まったのは素晴らしいマーラー。わたしの好みからは少し快速テンポ、特にスコアにアレグロと書いてあるところはかなり速め、だったけど、音がほとばしるような熱い演奏。サロネンさんもめちゃくちゃ燃えてました。でも、素晴らしいのは、音がしっかりと整理されて、声部の絡み合いがものすごくクリア。オーケストラもアンサンブルが完璧で、しかもマーラーの音楽をよく知ってる。目立たない和音の伸ばしまで自発的に心憎いくらい音楽的に鳴らしていました。クライマックスは「最高の力を持って」のティンパニ強打とトロンボーンの強奏。アンサンブルが完璧なので音がすべてエネルギーとなってわたしの、わたしの青春を打ちのめす。ああわたしの青春。失われたもの。いえこれは過去への訣別。最後はほんとに心にしみますよね。渇いた心に潤んだ音が。フルートのソロとホルンの和音。音楽を聴く中でもっとも大好きな瞬間のひとつです。第2楽章はうって変わって走馬燈のように生の愉しみが。ここでもサロネンさんの指揮が冴えわたる。サロネンさんが見せてくれたのは、精緻な音楽。この曲ってものすごく対位法的だったのね。第4番の第2楽章と同様にバッハが一挺のヴァイオリンのみでフーガを書いたように、各楽器の入りだけで対位法的な表現を実現させているマーラーの巧妙な作曲を目の当たりに見せてくれました。それぞれに入りをさらりと強調して。同じような方法はアバドさんとベルリンフィルの交響曲第4番のCDでも聴かれたけど、生で聴くとますます面白い。そういえばこの曲と第4番の第2楽章って似てますよね。お終いの方でグロッケンが入ると第3楽章を予感させたりして、新しい発見盛りだくさん。知的刺激に溢れた演奏です。ブルレスケは、あっさりとさりげなく始まったんですよ。知的路線そのままに。もっとはっちゃけるかなぁと思ったんですが、とにかくクリア、旋律線がすべて見えるよう。もちろん小クラリネットはすっとぼけてるんだけど、それもピースのうち。錯綜する音楽は透明なガラスのキャンバスに描かれた色彩豊かな線画のよう。でも、最後はアンサンブルを乱すことなくはっちゃけてくれました。最後の楽章も同じ路線。クリアに絡み合う旋律線。でも、アクセントの付け方がとってもステキで、一音一音強調したり、だらだらとスラーでつなげずにわざと弓を弦から離してフレーズを作ってみたりものすごく工夫が凝らしてありました。サロネンさんの解釈は完璧に20世紀のマーラー。マーラーからシェーンベルク、ベルクをつなげて考えるこの音楽会シリーズの趣旨にぴったりだし、ものすごく知的好奇心に駆られる心より頭に響く演奏。フィルハーモニアの透明で寒色系の音色もその音楽の方向にぴったりでした。だから、最後も涙なしで静かに終わっていきました。だってそこにあるのは未来だもの。未来への希望を見せられて涙流せる?最後は音が消えてからサロネンさんがゆっくりと手を下ろしていって、15秒くらいの静寂の後に拍手。わたしは拍手はもっと早くてもいいなと思いました。だって、今回の演奏は長い静寂を求めてなかったから。ブレーズさんだったら、さっさと手を下ろしてしまうかもしれませんね(ブルックナーの交響曲第9番の最後ではそうしていた)。それにしてもマーラーって面白い。同じ曲なのに、生への永訣を表現できたり未来を見通せたり。言葉を換えれば19世紀への終曲であったり20世紀への前奏曲であったり。もちろんサロネンさんのは後者。そして前に聴いたガッティさんのは前者。正直にわたしが感動したのはガッティさんの方だったけど、それは今のわたしの気持ちが過去への憧憬を求めていたからで、今日のサロネンさんの演奏の価値を貶めるものでは少しもありません。むしろわたしは今日のような演奏を何回も聴いて音楽を考えたいなって思います。この演奏がCDになってくれたらいいな(このシリーズの音楽会はマイクがたくさん立っていて録音されてます)。
そうそう、今日もホルンの主席は若い女の人でした。客演主席。あとで調べたらこの方、バーミンガム市交響楽団の主席の方でした。バーミンガム市交響楽団は素晴らしいホルン奏者を持ってるんだなぁ。いいなぁ。
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by zerbinetta | 2009-03-22 07:27 | フィルハーモニア | Comments(2)

知らなかった〜   

john adams: doctor atomic @english national opera
penny woolcock (dir), lawrence renes (cond), gerald finley (oppie)


アダムスさんのオペラ、ドクター・アトミック(原爆博士)です。初めて行くコリッシアム、イングリッシュ・ナショナル・オペラの本拠地です。バービカンやサウスバンクセンターと同様にわたしの家や職場からチューブ1本で行けるので便利。コヴェントガーデンやトラファルガー広場の近く、町の中心です。会場はオペラハウスと言うより大きなミュージカルの劇場みたいな感じです。安い席でも座席とステージが近いのでいい感じ。イングリッシュ・ナショナル・オペラはオペラを自国語(英語)で上演する伝統的なオペラです。今では原語上演の方が普通と考えられていますが、実は近年までオペラは自国語上演が一般的だったんですよ。日本ではオペラは原語上演でなきゃっていう雰囲気がオペラを聴く人の間であるけれども、わたしは、もっと自国語上演が増えてもいいと思っています。原語上演でなきゃ駄目、でもなく自国語上演でなきゃいけないというわけでもなく、どちらもそれぞれに良さがあると思うのですね。だから、両方を聴く機会があればいいと思うんです。どんなに詩の内容を理解していてもそれが、自国の言葉で頭に入ってくるのと頭の中で翻訳されて理解するのでは決定的に違いますから。これは音楽が作曲された言葉で書かれているということと同様に重要なことなんです。という込み入った話はまたいつか別に機会を作ってちゃんとしましょう。
ごちゃごちゃ言ったけど、実はこのオペラ、アメリカ人のアダムスさんの作品なのではじめっから英語なのです。英語の字幕付き上演。タイトルが示すようにこのオペラはマンハッタン計画の責任者、物理学者のオッペンハイマーの物語です。原爆実験の前夜の物語。わたしもこれでも日本人の片割れなので原子爆弾には特別な感情を持っています。あまり軽々しくは触れたくない。アダムスさんがこのオペラを依頼されたとき、現代のファウスト博士(ゲーテの。悪魔と契約して心を売るという物語)の話を創りたい、それにはオッペンハイマーがふさわしいだろうと打診されたそうです。彼は躊躇したそうですが、結局引き受けた。とプログラム・ノートには書かれていました。わたしは知らなかったんだけど、オッペンハイマーは原爆の使用には批判的な立場だったようです。戦後はそれを強めて、また共産主義者との交流からアメリカ社会から抹殺されています。オペラにはそこまでのことは書かれてはいないのですけれども、明らかにアメリカの正義一辺倒ではありません。特に、最後のミズヲクダサイの語りのところは原子爆弾に批判的にも読み取れます。また、アメリカインディアンへの共感みたいのもあって、ヒッピー世代を経たアメリカも変わってきてるのかなぁとも感じます。ってアメリカに住んでたくせに何言ってるのかっても言われそうだけれども、わたしの世界はアメリカに直接触れていたわけではないからね〜と言い訳したり。アダムスさんの音楽は概して好きなのです。わたしはよく知らなかった話で(日本で原爆というと投下のことばかりですから、その前の実験の段階のことは知らなかったのです)、興味を持てましたし。最後、いよいよ原子爆弾の爆破実験がなされるときの緊張といったら。どんな音で表現するんだろうってずうっとドキドキ(結構長かった)。そして最後の最後のミズヲクダサイの語り。これは演出のせいなのか、全く感情のない平坦な声(日本語です)で、わたしはもっと切実な表現の方がいいんじゃないかってちょっと納得いかなかったな。そうそう、オッペンハイマー役のフィンレイさん、メトでパパゲーノを聴いたときはやんちゃな若造って感じだったけど、今や世界中で大活躍なのね。知らなかった〜。
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by zerbinetta | 2009-03-20 07:49 | オペラ | Comments(0)

老大家   

schumann: piano concerto
bruckner: symphony no.9
murray perahia (pf), bernard haitink / royal concertgebouw o


世界一たれ目の似合う音楽家、ペレイアさん。実はわたしとはちょっぴりそりが合わない。どうして?って言われるとよく分からないんだけど。って1回しかリサイタルを聴いたことのないわたしが言えることじゃないんだけどね。でも、やっぱりそんな感じは残りました。ペレイアさんは音も大きくしっかりした感じでとてもよくシューマンの協奏曲を弾いたんだけど、そしてハイティンクさんとコンセルトヘボウの音の悔しいくらいうっとりするような音色だったんだけど、わたしの持ってるものと何かが違う。なんだろう?わたしにはペレイアさんが曲を立派に弾きすぎてるんじゃないかと思われる。なんか知的に構成してしっかりとした構造物として。その結果、その音楽が持っている弱さも消えるけど、同時に弱さ故に美しい曖昧な部分も失われると思うの。特にシューベルトやシューマンなんかの個人的なモノローグが作品の大事なところにある音楽は、ペレイアさんの方法では理知的になりすぎると思うんです。何でも立派な音楽にしてしまう。もちろん、これは良い悪いではなくて好みの問題でもあるんだけど。ティンパニの調律が最初微妙に違っててさっと直してましたけど、ずっしりと重い感じの音で叩かせていたのにはちょっとびっくり。でも、これがあとで生きるんですけど。
ブルックナーの第9番はこの間、メータさんとウィーンフィルで聴いたばかり。実は今日はブルックナーの第7番だ〜ってずうっと思いこんでいて会場でプログラムを見てびっくり。心の準備は7番だったのに。何とか第9番モードに入って聴く体勢。でも、そんなこんなは最初の音が聞こえた瞬間に吹き飛んでしまいました。ステキすぎる。シューマンの時点でオーケストラがめちゃくちゃ上手いというのは分かっていたけれども、もうなんというか次元を超えた上手さ。今シーズン聴いてきた中では圧倒的に一番でしょう。音色もいいしアンサンブルもステキ。そしてハイティンクさんの音楽はしっかりとオーケストラをコントロールしているのに、無為というか指揮者がいない。そこにあるのはブルックナーの音楽だけ。全くブルックナーに音楽を語らせてる。わたしは実はお年寄りになって何故か世評がうんと良くなったハイティンクさんには、元来世の中をひねた目で見る癖かハイティンクさんってそんなにいい?って批判的な態度でいたのだけど、改心するっ!ここには純粋に音楽だけがある。そんな音楽を生み出すことのできるハイティンクさんはやっぱり凄かったんだ。雄大で純粋なブルックナー。ティンパニをしっかりと深い音で叩かせていたのが印象的でした。今日はちょっぴり寝不足もあって頭も痛く大丈夫かなと思っていたんですが、全く音楽に集中して浸ることができました。前に聴いて絶賛したネゼ・セガンさんのブルックナーもうんと良かったけど(そしてその価値は少しも変わることがないのだけど)、ハイティンクさんの真に巨匠的な(あまりこの言葉は使いたくなかったのですが、他によい言葉が見つからなくて)精神の充実した自然体の音楽を聴いてしまうとまだ若さが感じられるのでした。でも、わたしは若いワインも大好きなんですよ。
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by zerbinetta | 2009-03-15 07:50 | 海外オーケストラ | Comments(0)

初期ロマン派の快感   

brahms: variations on a theme by haydn
mendelssohn: piano concerto no.1
schubert: symphony no.9 great
stephen hough (pf), christoph eschenbach / lpo @royal festival hall


エッシェンバッハさんの音楽会2夜目。ブラームスのハイドンの主題による変奏曲は、とあるウェブサイトの音楽事典によると、一言で言うとテーマをいじり倒した挙げ句、最後にやっぱり主題がよかったですという内容(もちろんジョークです)。でも、そういう曲ですよね〜、最後に盛大に主題が帰ってくるところなんかはね。この間の交響曲第1番がとっても良かったので今回のブラームスも期待していたんですが、ちょっと肩透かし。というのはオーケストラの上手さが出ちゃうソロの部分や少人数で弾く部分が、統一ができていない感じで、オーケストラの弱点が出ちゃった感じなのです。合わせ不足かな。
わりと珍しいメンデルスゾーンのピアノ協奏曲はハフさんと。この方、ロマン派時代の珍しいピアノ曲をよく採り上げて演奏されてる方なんですね。前にも全く知らない人のピアノ協奏曲を弾いてくれました。考えてみるとロマン派初期のピアノ協奏曲って少ないんですね。こんな感じの曲、シューベルトやメンデルスゾーンの交響曲以外に聴いたことがないことに気づかされました。暖かな柔らかみとまだ崩れるまでにいかない、でも歌謡的な旋律がいい感じです。ハフさんはこの曲ととっても相性がいいのでしょう。さりげなく上品に弾かれました。大袈裟な感情表現がなくても音楽は雄弁です。とってもくつろいだほんわりとした気持ちにさせられました。エッシェンバッハさんとロンドンフィルのサポートも柔らかくってステキでした。ハフさんはアンコールにメンデルスゾーン、シューベルトときたらシューマンとおっしゃってトロイメライを弾いてくれました。これも柔らかくてステキ。
最後のシューベルトのハ長調の大交響曲(プログラムでは第9番となっていたので第9番と書きました。最近のトレンドでは第8番ですね)は、エッシェンバッハさんの面目躍如。最初から活発なテンポ(でも決して早すぎない)で溌剌と奏していきます。シューベルトの若々しい、でも彼の短い生涯の晩年の立派な音楽として演奏されました。シューマンが天国的な長さと評したように本当に長大に感じました。長くて退屈したという意味では決してなくて、偉大な作品という意味です。第2楽章のゲネラルパウゼを大きく取ったり、第1楽章や第4楽章の活発さはこの曲の大きさにふさわしいとってもステキな表現でした。でも、ただひとつ欠点をあげるとすればスケルツォのトリオの明と暗が明滅するところ、泣き笑いするシューベルトの気持ちが伝わらなかったことかな。もちろん、ステキに明るい解釈で音楽を奏でるのもひとつだと思うけど、わたしはここで涙したいから。この瞬間こそシューベルトの心に触れる大切な時間だと思うから。
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by zerbinetta | 2009-03-14 07:46 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

ファンになる〜   

bartok: four orchestra pieces
ligeti: violin concerto
tchaikovski: symphony no.4
alina ibragimova (vn), edward gardner / bbcso @barbican hall


リゲティのヴァイオリン協奏曲を聴きに行ったんですよ。ほんとはピアノ協奏曲の方が好きなんだけど、ヴァイオリン協奏曲でもいいやと思って。リゲティの音楽が生で聴ける機会もあまりないですものね。しかーし。そんな第二希望的な気分だったのに、すっかり虜になってしまいましたよ、ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリンのイブルギモヴァさんは聞いたことのない名前の、プログラムを見ても若い人だったので(20代前半)、まだ学生さん、たいした人じゃないかな〜(失礼)、果敢にリゲティを弾くのねなんて思っていたら、とんでもない。すらっと細っそりとしたちょこっとアヒル口のとってもかわいらしい方。じゃなかった、ものすごく上手いっ!この曲の難易度はわたしには分からないけど、全く余裕を持ってしかも、ほんとに音楽的に、とってもステキに弾いていく。個々がソロといってもいい小編成のオーケストラ、しかも調弦が少しずらしてある、と絡み合って音楽の美しさに感動。ソロ・ヴァイオリンが歌えるような民謡風のメロディを弾き、そこに調弦のずれた(音程の外れた)オーケストラが絡んでいくところなんてうっとり。ずうっとメロディを口ずさんでいました。メロディなんてゲンダイ音楽の急進家から見たらとんでもないコンサヴァだけど、こういう処し方もあったのねと目から鱗(あっわたしはゲンダイ音楽の人ではないんですよ)。この春には大好きなシマノフスキの音楽のCDを出すみたいだし、わたしこの人のファンになる〜〜。これからは親しみを込めてアリーナと呼ぶことにしよう。
メインのチャイコフスキーの交響曲第4番は、わたしの仲良しがチャイコフスキーのクラリネットってエロスだって言ってた曲。彼はこの曲のクラリネットを聴くと中学生時代の女の子の黒いタイツの色気を思い浮かべるんだって。ううむ。変なの。確かにこのクラリネットってなんだか淫靡っぽいかもしれないけど。でも、今日のはどちらかというと健康的でしたよ。指揮者のガードゥナーさんはリフレインを弱く弾かせたりして工夫してたり、シンバルは結構いい音で叩いてたな、とか、でもステキすぎるリゲティを聴いたあとだったので、ちょっと感動の度合い低め。しょうがないよ。今日はリゲティの日だもん。
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by zerbinetta | 2009-03-13 01:40 | BBCシンフォニー | Comments(0)

牛たろー   

schoenberg: verklarte nichat
zemlinsky: lyric symphony
solveig kringelborn (sp), juha uusitalo (br), esa-pekka salonen / po @royal festival hall


なんて笑っちゃ失礼ですよね。いや、パンフレットで牛たろーって見つけたときだけですけど、可笑しかったの。バリトンを歌った人です。さて、今日はシティ・オヴ・ドリーム・シリーズの2回目。浄夜と抒情交響曲です。わたしが一番楽しみにしていた一夜。だってツェムリンスキーの抒情交響曲なんですもの。こんな滅多に聴けない曲が、しかも大好きな曲が聴けるなんて幸せ。でも、とっても残念なことにお客さんが少なかった。でもラッキーなことに後ろの方の安い席のチケットを買ってたんだけど、前の方で聴けた〜。
音楽会は弦楽合奏版の清められた夜で始まりました。クリアカットででも熱〜い演奏。月夜の男女の語らいに体が火照るような感じです。いいなこういうの。トリスタンの第2幕や今日の後半の抒情交響曲のような愛のとろとろ感はないけど、題名のように清められた儀式のような、でも熱い男女の交わり。スクリャービンの神聖な詩やエクスタシーの詩の系譜でしょうか。もしくは愛の眠りの園に至る前。うねるように押しては引いていく透明な音の波。隣に好きな人がいれば手を握って聴いていたい。そんな感じ。
一方の抒情交響曲はもっと熟熟して退廃的で官能的です。音楽が柔らかくて、マーラーより進歩的な部分もあるのに(この曲は1922年から23年の作品)、よりしっとりとしたロマン。脳みそが甘いプリンになってるみたいな。でもそれが好きなんです。長調と短調をたゆたうような感じが。夢と現実の狭間で微睡むような感じが。この特異な時代のウィーンのもう一つの象徴であるクリムトの官能的な絵画の空気。サロネンさんとフィルハーモニアはそんな音楽を本当に心を溶かすようにしっぽりと音にしてくれました。わたしの心はとけたバターのよう。歌手もクリンゲルボーンさん(かわいらしかったぁ)とウウシタローさんもとてもよく歌っていて、この音楽の最高の演奏のひとつになったのではないかしら。こんな音楽は隣に好きな人がいれば肩にもたれかかりながらうっとりと聴きたい。それにしてもオーケストラはホルンがむちゃくちゃ上手かった。若い女の人でした。音楽会の帰り道はひとりで幸せに浸りながら歩きました。なんという幸福感、愛に満たされていたんでしょう。夜が暖かかった。
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by zerbinetta | 2009-03-12 01:38 | フィルハーモニア | Comments(0)