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うわっ! 凄いもの聴いた   

ives: from the steeples and the mountains, the unanswered question
prokofiev: piano concerto no.3
stravinsky: the firebird (original)
yuja wang (pf), michael tilson thomas / lso @barbican hall


MTT、ロンドン・シンフォニー、2回目の音楽会です。だったんだけど。。。ユジャに圧倒されました。わたしの心はユジャ一色。すごかったですよ〜。わたしは前回の印象からユジャはきれいな柔らかい音色系のピアニストだと思ってたんですよ。それなのに、打楽器系にばんばんピアノを叩くプロコフィエフの音楽は大丈夫かなぁ、オーケストラに負けちゃうんじゃないかって、心配してたんです。彼女にはこの曲合わないよって。ところがところが。彼女、この曲をいとも軽々と弾きこなしたばかりじゃなく、音量も十分。なんというか体育会系のがしがしと熱い演奏なのに、しっかりと冷静で音楽の奥行きがとても深い。もう引き込まれました。吸い込まれました。そして、アンコールに弾いたモーツァルトのトルコ行進曲。ヴォロドス編曲の変態ヴィルトゥオーゾ風に彼女がさらに編曲を加えたもの。これが、びっくりして椅子からずり落ちるほど凄い!なんという左手のテクニック。超絶技巧ですよ。左手でオクターヴの早いパッセージを弾いたときなんか参りました。信じられません。会場大興奮。わたしも隣のおじさまと唖然として顔を見合わせてしまいました。凄いもの聴いた。彼女のファンになるぅ。それにしても、彼女少し前にロンドンでリサイタルをしているのですね。知らなかったとは言え聴きそびれたのはなんて残念。来シーズンロイヤル・フィルハーモニーと協奏曲を演るみたいなので聞き逃さないようにしなくっちゃ。
彼女の前にすっかりかすんじゃったMTTですけど、アイヴスの作品も火の鳥もステキでしたのよ。答えのない質問なんかはトランペットとフルートだけがステージに出て弦楽合奏はステージ外で演奏させたり、火の鳥はこの間バレエを観たばかりだったのでシーンがよみがえってきたり。でもやっぱり最後は1945年版の現代的にざくざくと切りまくる編曲の方がいいなぁ。もちろんそれは45年版でのみの改変なので望むべくことではないんだけど。
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by zerbinetta | 2009-06-30 01:11 | ロンドン交響楽団 | Comments(0)

わたしを指揮して〜   

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debussy: trois images
ravel: rapsodie espagnole, piano concerto in G
villa-lobos: choros no.10 'rasga o coracao'
yuja wang (pf), michael tilson thomas / lso, ls chorus @barbican hall


えへへ。愛してるんですよ。MTT。きらきらと明滅するベートーヴェンの交響曲第5番の第2楽章を聴いて以来。指揮棒で自由に操られてみたい人ナンバーワンのひとりです。そりゃ喜んで出かけるでしょう。そして今回は珍しいヴィラ・ロボスの曲。ブラジル風バッハなんかは大好きなんだけど、ショーロスは聴いたことない。期待大です。さて、音楽会はドビュッシーの映像から。この曲の時なぜか合唱団の人がステージに上がってたんですけど、合唱は使われてるのでしょうか?観察していたんですが、合唱が使われていた形跡なし。???です。それからラヴェルのスペイン奇想曲。ロンドン・シンフォニーはやっぱり上手いですねぇ。フランスものの繊細な雰囲気をとても見事に表現してましたし、MTTの美しいバトンさばき。わたしもさばいてさばいて〜。ト長調のピアノ協奏曲は、のだめの弾くやつですね。ユジャ・ワンという人はわたし知りませんでした。若い中国人のピアニストさんです。髪がぼさぼさな感じがちょっとのだめ的。彼女のピアノはとても柔らかいタッチで音の粒がきらきらときれい。ぞくっとするものはないけれどもとてもステキでした。彼女まだ駆け出しなのかしら。挨拶の時、指揮者を置いてさっさと舞台を降りていってしまいました。残されたMTT、困った顔してちょっとわらわら。(この記事、30日の演奏を聴いたあとに書いてるんですが、もしかすると、彼女この日の演奏に満足してなかったのかもしれません。アンコールもなしであっさり終了)。ショーロスは結構盛り上がりますねぇ。オステナートな感じでぐいぐいきます。中南米系の音楽ってこんな感じかしら。あの猥雑なパワーが満ちていて好き。
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by zerbinetta | 2009-06-25 01:06 | ロンドン交響楽団 | Comments(0)

風そよぐバッハ   

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bach: complete works for unaccompanied violin
alina ibragimova (vn) @barts hospital, great hall (part 1),
st bartholomew-the-great (part 2)


勝手に応援してるヴァイオリニスト、アリーナのソロ・リサイタル。バッハの無伴奏全曲を2回に分けて1日で弾いてしまうというとんでもすごい音楽会です。シティ・オヴ・ロンドン・フェスティヴァルの一環です。歴史ある慈善病院のお部屋と小さな教会での音楽会。会場の建物の雰囲気もとってもステキで、天井画なんかを見るとそれだけでわくわくします。第一部、地味な方のソナタとパルティータの1番、ソナタの2番はバーツ・ホスピタルのホールです。グレイトホールといっても客席はパイプ椅子で500人程度でしょうか。初めて行くところだったので案の定道に迷って、余裕を持って出てきたのに着いたら開演間際でした。彼女のウェッブサイトで着てた濃い葡萄色のドレスがステキ。彼女結構ほっそりとして華奢なんですね。
バッハの音楽はものすごく集中力いると思うんだけど、アリーナはとても丁寧に風が木の葉を揺らすようなさやさやとした若いバッハを聴かせてくれました。テンポは少し速めでそよそよ音楽が流れます。バッハの持つ複雑なそしてわたしにとって正しすぎると感じる息苦しい精緻さはみじんも感じさせず、澄んだ高原の空気に感じられるような爽快さがありました。精神的な奥行きはまだ少ないかもしれません。でもアットホームな心穏やかなバッハです。ひとつだけ残念だったのは、ソナタ第2番のアンダンテのリズムが乱れていたこと。同じ長さのリズムの伴奏を刻みながら重音で旋律を奏でるのでとっても難しいと思うんですけど、リズムが安定していませんでした。彼女もずいぶん弾きづらそうにしていました。

すぐ近くのセント・バーソロメウ教会で1時間ほどの間を置いて始まった第2部は有名な3曲。パルティータの第2番と3番、ソナタの3番です。長大なシャコンヌやフーガを含んでいて、技術的にも精神的にも大変。でもアリーナはしっかりと弾ききりました。シャコンヌは速めのテンポで一見あっさりなんだけど息をつかせぬ緊張感があってぐいぐいと音楽に引き込まれました。それにしてもこれがこのプログラムの1曲目なんですね。この音楽のあとにまた違う曲を弾くタフさには驚きました。ソナタ第3番の大きなフーガは一転して遅めのテンポ。各パートの入りをとっても上手くコントロールしてフーガの妙をしっかりと丁寧に聴かせてくれました。彼女のポリフォニーの扱いとっても上手い。ヴァイオリン一挺でこんなに複雑な音楽が生まれるんですね。バッハも凄いしアリーナも凄い。最後のパルティータのさ3番は前の2曲に比べてかわいらしい音楽だけど、最後を飾るにふさわしい充実したものでした。前の2曲で力を使い果たしてふっと気が抜けるかと心配もしたけど、全然、集中力が切れることなくステキでした。彼女のバッハの良さは実に自然であること。速めのテンポで音楽がとっても素直に流れてふわりとステップを踏むようなリズムが心地良いの。
音楽会最後にアンコールを弾いてくれました。なんと!ソナタ第2番のアンダンテ。やっぱり最初の演奏が納得できなかったのかしら。今度はちゃんとリズムを刻んで、彼女も満足のできる演奏だったんじゃないかって勝手に想像しました。終演後の彼女、とても満足そうだったし。

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by zerbinetta | 2009-06-24 06:56 | 室内楽・リサイタル | Comments(0)

親父ラヴ   

verdi: la traviata
renee fleming (violetta), joseph calleja (alfredo), thomas hampson (giorgio)
richard eyre (dir), antonio pappano @roh


椿姫。わりと最近好きになったオペラです。オペラの初心者には先ずおすすめするもののひとつですが、わたしは最初ヴェルディの音楽になじめなくてしばらく敬遠してました。でも今は好きです。わたしにとってキーポイントは親父。この人がとんでもなくて(いや息子も馬鹿だけど)嫌いなキャラクターナンバー・ワンなんですけど、この人をステキな歌手が歌うと全体がしっかりと締まって良いのです。恋人を無理矢理別れさせてしまう許せない不条理な親父だけど、歌手がステキだと、頑固も親父の特権とか、親父いい味出してるぅとか、親父セクシーとか、ついうっかり親父に惚れちゃうんです。そう、今回のトーマス・ハンプソンさんも。わたしがヴィオレッタだったらうっかり親父と人知れずの恋に落ちて、親父の家族を壊しちゃうう。ってそれも悲劇的なオペラだな。それほどまでにステキなハンプソンさんの歌でした。一方のアルフレッドは、田舎育ちの純朴な馬鹿というか、あまりに世間知らずというか、せっかくのいい役をあてがわれてるのに存在感がないですよね。ヴィオレッタ、恋する人を間違ってるよ〜、とか。なんか話がそれまくりだけど、ハンプソンさんやフレミングさんに比べて、カレヤさんはちょっと影が薄かったかな。声は良かったんだけどな。さて、フレミングさん。USでは絶大な人気の彼女のヴィオレッタを聴くのは2回目なんですが、今日は最初はあまり良くなかったです。声があまり出てなかった気がしました。第1幕の恋の悦びを歌うところもいまいち抜けてなくて、だいじょうぶかな〜って思ってましたが、親父が出てくる第2幕からは俄然良くなりました。演劇性のあるのも彼女を引っ張り上げた原因かもしれません。親父と彼女の対立はスリリングでした。ここで盛り上がったのであとはしっかりフレミングさんのペースです。最後までしっかりとまとめてくれました。わたしとしては死の前の世界とすっかり切り離されて一瞬の生を生きる幻覚に完全な自由な浮遊感があると良かったんですが。演出は極めてオーソドックス。わたしはこのオペラを何回か観ているので、できれば今のわたしにも何か訴えるものがあるような演出で観たかったかな。それは贅沢な望みだけどね。パッパーノさんのオーケストラは今日もステキでした。ロイヤルオペラのオーケストラがこの若い指揮者と一緒に成長していけばいいな。レヴァインさんがメトのオーケストラを最高水準に高めたように。
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by zerbinetta | 2009-06-22 07:52 | オペラ | Comments(0)

モノトーンのルル   

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berg: lulu
agneta eichenholz (lulu), jenifer larmore (geschwitz), peter rose (animal trainer/athlete),
michael volle (dr schon/jack the ripper), jeremy white (professor of medicine/theatre
manager/banker/professor), will hartmann (painter/policeman/negro),
gwynne howell (schigolch)
christof loy (dir), antonio pappano @roh


とおっても楽しみにしていたんです。ロイヤルオペラのルル。好きなんですよ、すごく。そしてあまりかからない。なので貴重なチャンスなんです。前に観たのはメトで2回。シェーファーさん目当てで行きました(1回はシェーファーさんのキャンセルで代役だったけど)。音楽が好きなんです。サキソフォーンを使ったオーケストラが艶めいていてセクシーな感じ。そして、音階的な12音(無調)で作曲されているのでメロディーがないようでいて実に官能的な旋律美。矛盾する要素がなにげに共存してます。タイトルロールのアグネタ・アイシェンホルツさんは、初めて名前を聞く人でどんな人なんだろう、ルルのポスターやパンフレットにはとてもきれいな女の人の顔写真が使われているんだけど、この人なのかなってわくわくして待ってました(ルルはちゃんときれいな人じゃなきゃ納得できない気がするの)。さて、そのルル、土曜日のチケットは早くからとっていたんだけど、ロイヤルオペラのサイトを見るとあまりチケットが売れてなくて(現代曲だから)、朝見たら立ち見が出ていたのでひょっこりクリック。そしてあいてる高い席にちゃっかり座ってじっくり聴きましたよ。
舞台はめっちゃシンプル。衣装も白黒、舞台も白黒、モノトーンの世界です。舞台の上には椅子ひとつ、通常の演出ではキーとなる絵も出てきません。また、動きも極度なまでに抑えて、ちょっとした仕草、表情で表現していきます。また、台詞の部分はマイクを通して声に少しだけ電気的な効果を付け加えたりしていました。歌われる部分を台詞に置き換えたところもあったようです。また、間奏曲の間の無声映画も省かれていました。最後、ゲシュヴィツ嬢が殺されなかったのもちょっとびっくり。それによってかえってゲシュヴィツ嬢の胸を締め付けられるような喪失感が強調されているような気がしましたが。クリストフ・ロイさんのこの演出には、賛否両論が聞かれましたが、わたしは、動かさないことでかえって演劇性が高まっていて良かったと思います。音楽をじゃますることもなかったし。モノトーンのせいでセクシーな色気は削がれていたように思いますが、このオペラの本質ってセックスではないと思うのでこれはこれで良かったと思います。ただ、じっくりと観て考えることを必要としているので、もうちょっと具体的で分かりやすいものが好みの人や舞台から離れてみている人にはきついかなとは思いました。わたしは適宜双眼鏡で観ていました。歌手はどの人もとても演技が上手かった。この演出に合う歌手をきちんと集めたんだと思います。
歌もアイシェンホルツさんはじめ皆さん良く歌ってました。パッパーノさんのオーケストラもいつになくいい音で弾いていました(ロイヤルオペラのオーケストラって出来不出来がかなり大きいと思います)。なによりも音楽に集中できたのがステキでした。ぜひもう一度観たい、というかカメラワークを生かした映像として観てみたいな。
土曜日はほぼ満席で、賛否両方の批評が興味を呼んだのかもしれません。印象は最終日のこの土曜日の公演よりもヴィデオ撮影が入った水曜日の公演の方がわたしには良かったです。でもこれは、初めて観る日、より良い席だったからわたしにはそう感じられたのかもしれません。アイシェンホルツさんの歌に関しては超高音を出しにくそうにしていた水曜日より土曜日の方が良かったし。

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by zerbinetta | 2009-06-17 07:48 | オペラ | Comments(0)

これって超豪華キャスト?   

weill: the threepenny opera
dororothea roschmann (sp), angelika kirchschlager (ms), ian bostridge (tn),
christoph bantzer (narrator), florian boesh (br), cora burggraaf (ms),
hanna schwarz (ms), chorus sine nomine,
hk gruber / klangforum wien @barbican hall


クルト・ワイルの三文オペラを聴いてきました。コンサート形式。実はまた全く予備知識なし、行き当たりばったり。クルト・ワイルの作品も前にウテ・レンパーさんがキャバレーソングを歌ったのを聴いたことがあるくらい。そんないい加減な感じです。でも、この公演あとでみてみたらソールドアウトだったんですよ。人気あるんだ〜。そりゃ当然。歌手陣がなんと豪華なんです。レッシュマンさん、キルヒシュラーガーさん、ボストリッジさん、そしてなにげにみると、ハンナ・シュヴァルツさんまで。こんなメンバー、ロイヤルオペラだっていっぺんに集まらないよ。クルト・ワイルの音楽はクラシックと言うよりキャバレーピースのような肩肘の張らない音楽。もちろん物語も。それを歌手の皆さんもオーケストラの人たちも指揮者さん(歌でも参加です)もみんな楽しそうに演じていて、初めてこの曲を聴くわたしでも知ってる有名な歌もあったりで、なんとも愉しい夜でした。今回は音楽の部分だけだったので、ぜひ劇場で演劇付きで観てみたいなぁ。
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by zerbinetta | 2009-06-14 07:45 | 海外オーケストラ | Comments(0)

  

berg: three pieces for orchestra
mahler: symphony no.7
esa-pekka salonen / po @royal festival hall


夢の都市、ウィーンの今シーズンの最後は、ベルクのオーケストラのための3つの小品とマーラーの交響曲第7番です。このシリーズはあと1回。来シーズン始めに演奏会形式のヴォツェックで幕です。それにしてもこのシリーズに対するサロネンさんの意気込みって半端じゃありません。毎回毎回、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。今回もきっとステキなものになるに違いないと聴く前からわくわく。といいつつ会場に着いたのは開演3分前。実はチューブがストで、でもわたしの利用する線は動いてたんだけど、途中乗り換えするのがめんどうで、お天気もいいし、ロンドン橋から歩いちゃえっていうことで、お散歩かたがたのんきに歩いてきたのでした(意外に距離あった)。
さて、いきなりの曲はベルクのオーケストラのための3つの小品です。小品といいつつ、たくさんの打楽器を含む大オーケストラ。実はこの曲、CDを持ってるくせにほとんど聴いたことなかったのでした。なのでよく分からない曲。でも、ベルクって新ウィーン学派の3人の中では一番マーラーの影響を受けてた人ですね(一番熱狂的だったのは意外にもウェーベルンだったみたいだけど)。まさに無調の音楽をマーラーが書いたらこんな感じになるだろうってオーケストラの響きでした。そして、サロネンさんとフィルハーモニアは思いっきり力一杯演奏してくれました。木管楽器、特にオーボエがめちゃくちゃステキな音色で、それから、こんなにがんばったら金管楽器、マーラーまでもたないんじゃないかしらと心配になっちゃうくらい。熱に浮かされた取り付く先がなくて浮遊感のある音楽は夢。突然ハンマーが打ち下ろされてびっくりしたけど、ああそう言えばこの曲ってマーラーの交響曲第6番へのオマージュだったのね。ハンマーは第3曲の山場で3回、そして、マーラーでは消された、最後にもう一度打ち下ろされました。これはぐさりときました。死んじゃうのかな。で、ふと思ったのが、サロネンさんはどうしてこの曲とマーラーの交響曲第6番を組み合わせなかったんだろう?3つの小品/交響曲第6番、ヴァイオリン協奏曲/交響曲第7番っていう組み合わせでも良かったんじゃないかって。
休憩のあとのマーラーの交響曲第7番は、マーラーの作品の中ではあまり人気のない曲。でも、わたし、高校生の頃、マーラーの中では交響曲第7番が一番って主張してた変わり者。あとでもっと聴き進めるうちに第6番や第9番、第10番の良さがしみじみ分かるようになっていったんですけど(高校生で交響曲第9番に共感できる人は人生を踏み外しているか、何も分かってないか、そんな気がします)。でもやっぱり第7は掛け買いのない曲です。6番にない艶やかな色があるし、幻想的できれい。そしてサロネンさん、この曲と相性よさそうって思うのですね。スマートでかっこいい演奏するから。この曲に染みついちゃってる妙な哲学的な澱を取り去ってくれると思うんです。
ドキドキしながら集中していきます。始まりのテノールチューバの旋律は短い音符を鋭くきりっと。対旋律が出てくるところではそちらは柔らかくという対称が面白かったです。深刻ではないけれども暗めの雰囲気。そのままの雰囲気で主部に突入。暗いけれども深刻さがそれほど感じられないのはこれが死の音楽ではないから。深い森にさまよい迷ったときのどきどき感。見えない世界への畏怖みたいものでしょうか。トランペットのファンファーレも戦闘というより自分の気持ちを鼓舞するような内に向けた感じ。そして幻覚的な第2主題。大きく歌うところでは大きくテンポを落として音楽を描き分けていきます。これは夢の中?夢の音楽?どうしてこんなふうに聞こえるんでしょう?サロネンさんの表現は音の抜き方がとっても上手くて足場を失ったような無重力感を表出します。それに音の立ち上げ方がとってもスムーズで何もない彼方から音がふわりと立ち現れるよう(といってもピアニッシモからクレッシェンドするのではないのですが)。これだけの表現ができてしまうフィルハーモニアの上手さにも舌を巻くばかりです。ここまで幻想的なこの第1楽章はあったでしょうか。会場の雰囲気が変わったているのを肌で感じました。この音楽会シリーズのプログラムには、マーラーのこの音楽はおとぎ話的な世界を表出していると書かれていました。予想外のねじれや展開、現実と幻想の混沌とするおとぎ話の世界はマーラーのこの音楽の空気と共通するって。なんていう慧眼なんでしょう。深刻でない暗さ、夜の世界にさまようどきどき感、魔法使いが出てきそうな影の踊り、月下のセレナード、突然の真昼の爆発。子供目線のおとぎ話に還元すればすべてが嵌ります。この音楽をおとぎ話と読み解いたのは、わたしの知ってる限り初めてです。そして、当日のこの演奏もまさしくその世界でした。プログラムを書かれた方が誰なのか分かりませんが(記名されていなかった)、もしかしてサロネンさんと議論した上で書かれたのでしょうか。あまりに符丁が合いすぎてます。夜の行進曲である最初の夜曲も、夜の影!?のちょっと怖いけど決してグロテスクではないスケルツォの表現もセレナードも夢の世界と現実が行き来してます。サロネンさんはそういうふうに演奏していたと思います。ひとつひとつの音をとっても丁寧に扱って。わたしの好みでは夜曲はどちらももう少しゆったりが好きなんですけど、スケルツォの影の踊り、本当に質量感のない幻想的な表現には鳥肌が立ちました。そして白昼夢。敢えて夢という字を加えます。真昼は現実なのでしょうか、まだ夢の中なのでしょうか。音楽はわたしをどこかに連れ去ったようです。さすがに、オーケストラに疲れが見えて、アンサンブルが雑になってしまったところはあるのですが、それでもここでの大爆発はステキでした。ティンパニの叩き方に癖みたいのがあって、ティンパニストの表現なんだわって(そう言えばこの間の第6番やチャイコフスキーの交響曲第5番の演奏でも同じような叩き方をしていたから)、でも実はわたし、気に入ってます、打楽器群は最後の壮大なクレッシェンドがすごかったです。ハープの人たち、耳に手を当てていましたもん。演奏後はブラボーの嵐。満席ではなかったけど、音楽をよく知っているお客さんが入っている感じでした。この音楽に心からの大きな拍手は気持ちの良いものでした。
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by zerbinetta | 2009-06-11 07:58 | フィルハーモニア | Comments(2)

なんて美しい手の表現   

hans warner henze: ondine
frederick ashton (choreography)
miyako yoshida (ondine), edward watson (palemon), genesia rosato (berta), richardo cevera (tirrenio)
royal ballet @royal opera house


わたしだって曲がりなりにも日本人。日本人が外国で活躍しているのを見たり聞いたりするととっても嬉しいし勇気づけられる。で、せっかくロイヤルバレエが見られるんだから、吉田都さんの踊りはぜひ観たいって思っていたの。それが今日かなった。都さんは日本人(東洋人)の女性では森下洋子さんに次ぐ世界のトップクラスのバレリーナです。バレエが体を使った西欧の芸術であるだけにこれってものすごくすごいことだと思います。西欧の人とアジア人では顔も体の作りも違いますから。西欧主義、白人コンプレックスと思われるかもしれませんが、歌舞伎の舞台にヨーロッパ人の役者がひとり混じってることを想像してみてください。その舞台に立つためにどれだけ身体的なハンディキャップを克服して努力してきたか。それをかなえたひとりとして都さんをものすごく尊敬してるのです。
ごめんなさい。前置きにすごく力が入ってしまいました。
オンディーヌ。いくつかのバレエのブログで見るとあまり人気のある作品じゃないみたいです。ヘンツェの音楽が分かりづらいとか。実はわたしヘンツェの音楽はCDで聴いたことがあったので(この曲ではないのですが)、そんなに違和感なく聴けたのです。っていうか、わたしにはアヴァンギャルド好きなのでかえって物足りなかったくらい。でも、オーケストラがいつもと違って気合い入れて演奏していたので良かったです(過去2回はふぬけてたもんね〜)。ちなみに今日の指揮者はバリー・ワーズワーズさん(見てみたら過去2回のも同じ人だった。ってことは指揮者のせいじゃない?)。さて、オンディーヌ。水の精です。腕を優雅にひらひらさせる表現はほんとに水の流れるよう。都さんの柔らかで豊かな表現に最初っから引き込まれました。もう完全に都さんの、いやオンディーヌの世界。もうほんっとに観て良かった。もっと切れのある踊りをする若いバレリーナはたくさんいるでしょう。でも、年齢というか経験に裏打ちされた柔らかな豊かな表現力は、勢いや技術では太刀打ちできない魅力です。あっもちろん、都さんの技術うんぬんを評価できるほどわたしはバレエを知らないのです。でも、技術的なことを全く感じさせない、ただそこにとても美しいものがあるという自然な本当に自然な表現力はすごいと思うのです(技術があるからこそできるのでしょうが)。こういう気持ちは同世代のヴェテランバレリーナのフェリさんやニーナを観たときにも感じました。その人たちはそこにいるだけで空気が変わるのですね。こういうのを観ると、それが例え悲しいお話でも幸せな気持ちになります。そしてバレエを観たあとは、なんとなく仕草が優雅になってるような気がするのは、やっぱり気のせい?
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by zerbinetta | 2009-06-03 01:07 | バレエ | Comments(0)