<   2010年 01月 ( 13 )   > この月の画像一覧   

ロンドン・プライド   

elgar: overture, cockaigne (in london town)
mendelssohn: violin concerto
elgar: symphony no.1
james ehnes (vn), vladimir ashkenazy / po @royal festival hall

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今日は午後の音楽会。なのでせっかくだから少し早めに出かけて、いつものウォータールーの駅ではなくひとつ手前、テムズ川のこちら側、エンバンクメントで降りてテムズ川を渡りました。観光観光。といっても橋を渡るだけなので、歩いて5分ほどでロイヤルフェスティバル・ホールに着くんですけどね。ちょっぴり、そんな気分を味わってみてくださいね。ロンドン、冬の午後3時。1月の終わりになってずいぶん日が長くなってきたのに、曇っていてモノトーン。これ、カラー写真なんですよ。遠くに見えるのはセントポール・カテドラルやキュウリ、ロンドン塔がかろうじて。サウスバンク・センターの南の方は川を挟んで有名な国会。ビッグ・ベンが建ってます。左手にはロンドンの観光名所、大きな観覧車、ロンドンアイ。
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それにしてもロンドンの音楽会は次から次へと凄い才能の人が現れる。わたしが聴きに行くロンドンの4つのオーケストラがどこもレヴェルが高いから合わせて一流の独奏者を呼ぶからかしら。USで聴いてたナショナル・シンフォニーはお世辞にも一流とは言えなかったから(一流半くらい、好きだったんですけどね)、呼ばれるソリストも玉石混淆。でも、だからこそこれから伸びていくかもしれない若手も来て面白かったんですけど。もちろん、ロンドンにもこれからの若手も来るんですけど、すでに上手い人ばかり。今日のソリストのジェームズ・エーネスさんも30代前半のカナダ人若手。わたしは全く存じ上げていませんでした。で、実は全く期待してなかったんですよ。ところが聴いたら上手いったらありゃしない。とっても気持ちよく聴けました。ただ、よく分からないんです。これが良い演奏なのか名演なのか。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲って上手に弾けば誰が弾いてもステキに聞こえちゃうんですね、よっぽど独創的なことをしなければ。って思ったら、名演奏ってなんだろうって考え込んでしまいました。そしてそれは聴いたわたしに分かるのだろうかって。もちろん痛く感動することはままあるというか、わたしの感動の閾値は低いと思います。それをみんな名演奏と呼んでいいのか。って何つまらないことで悩んでんでしょう。音楽の喜びはいわゆる名演奏とは関係ないのかもしれませんね。

メンデルスゾーンの協奏曲を挟んでエルガーでした。もちろんわたしたちの作曲家。アシュケナージさんはオーケストラにぴょこんとお辞儀をして最初の曲を始めました。cockaigne、暴飲暴食の暗喩の意味です。で、ロンドンのことです。ふふふっ。我が町じゃないですか。音楽はなんだかかっこいいというかスターウォーズで悪の軍隊が行進してくるような感じ(もちょっと明るいんですけどね)。ばしばしと決まって楽しかったです。
そして最後は交響曲第1番。この曲聴くの2回目だなぁ。なので、余裕を持って聴けます。アシュケナージさんの演奏はとっても堂々としていてステキです。恰幅の良い老紳士が背筋を伸ばして堂々と歩いてる感じ。ものすごくかっこいいのです。最初と最後に出てくるこの行進曲、なんだかこれぞわたしたちの音楽だってイギリス人のプライドを刺激するような感じで、こんな音楽を持ってるイギリス人っていいなって思います。わたしも今夜はロンドン・プライドを飲んであやかろうっと。帰りも橋を渡って帰りました。今度はほんとの夕暮れ。街に灯がともってかえって色がありますね。
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by zerbinetta | 2010-01-31 21:49 | フィルハーモニア | Comments(0)

涙を固めたら透明できらきらした水晶になるのかな   

sibelius: orchestral songs, symphony nos.3 & 2
helena juntunen (sp), osmo vanska / lpo @royal festival hall


ヴァンスカさんとロンドン・フィルによるシベリウス・チクルス第2夜。今日はオーケストラ付き歌曲と交響曲第2番と3番。交響曲はほぼ順番通り演奏していくのですが、今日だけは3番が最初で2番がトリ。でも、これは曲の性質を考えたら納得の順番ですね。今日の交響曲はシベリウスの交響曲の中ではメロディアスです。さて、どんな演奏になるんですよう。
幕開けはいきなり交響曲第3番。シベリウスの交響曲の中では一番マイナーだと思うのだけど、実はわたし、すご〜〜く好きなのです。教会旋法の得も言われぬ清廉さ、穏やかさ。ヴァンスカさんの演奏は頭にしっかりアクセントを付けた低弦の跳ねるような旋律で始まりました。楽しい気持ちになるんですよね。結構リズミックでわくわくするし。そして最後は突然のアーメン。もうなんかこうステキステキ。第2楽章は対照的に秘やかで雨の日の風景もしくは過去への憧れ。実はここがものすごく好きなんです。普段はあまり過去なんて思い返さないけど、わたしにも何か憧れがあるのかな。わたしが持っていたであろう手の届かないものへ。どうしても涙が溢れてしまう。第3楽章はいつものシベリウスらしさが出て少し取っつきにくいけどでも、どうしてこの曲、人気がないんでしょう。清楚で静かすぎるのかな。地味というより滋味に溢れてるのにな。心が涙に洗われて浄化されていく。
ヴァンスカさんの演奏は憎らしいほどツボにはまってほんとにステキ。音楽が生きてる。静寂の表現がとても良かった。シベリウスの音楽は直接的に心に言葉(ロゴス)を生むものではないけれども世界を満たす。というか音楽そのものが世界。ヴァンスカさんは世界を創り、わたしを誘いました。シベリウスの世界に漂うってなんて気持ちの良いことなんでしょう。ロンドン・フィルも前回にも増してシベリウスらしい透明でひんやりとした音を出していました。金管楽器も荒れてなかったしね。

交響曲のあとはオーケストラ付きの歌曲です。シベリウスってピアノ伴奏のを含めるとたくさん歌曲を書いてるんですね。7曲の独立した歌曲が歌われたけれど、最初の「秋の夕べ」がいきなりどよんと暗い感じでびっくりしちゃった。
「初めてのキス」も短いけど「トリスタンとイゾルデ」っぽい感じで良かったな。歌ったのはフィンランドの若いソプラノ、ヘレナ・ユントゥネンさんです。もちろん全く名前を知りませんでした。でも第一声を聴いたとたん好きだって思いました。この声の凛とした透明感、好き。ついついこういう音色って北欧のって形容したくなるけど、でもやっぱりなんか森と湖の北国を感じさせるのです。まだ30代前半の若い人。プロフィールを見るとヴァンスカさんやサロネンさんなどフィンランド系の指揮者に重用されてるみたい。オペラはまだフィンランド国内での活躍が主みたいですが、これからはもっと世界に活躍の場を広げていくんじゃないかしら。彼女の歌うイゾルデ聴きたいなぁ。ワグナー歌いではなさそうなので、ちょっとタフかもしれないけど、彼女の声、わたしが本で読んだトリスタンとイズーの物語のイズー(イゾルデ)にぴったりだと思うのよね。しっかり見守っていかなくちゃ。

最後はいよいよ交響曲第2番。これはもう堂々とした演奏でした。小細工をすることもなく音楽があるべき姿で自然に立ち現れる感じ。完全にシベリウスの世界に浸りきれる。交響曲第1番ではまだそれぞれの小さな細胞の扱いがバラバラだったけれども、ここでは小さな細胞がそれぞれ生命を持ちながら大きな構造の中に取り込まれているように感じる。そしてそこから大きな感情が生み出されてる。若さゆえの生をコントロールできる大きな意志の力が働いてるように思える。やっぱりここでも静寂の表現がステキ。割とステージに近い席で聴いてたのに耳を澄まさないと聞こえないくらい。そして最後は自然に感情が沸き立ってくる。こんな演奏を聴かされるとしばらくは他の演奏は聴けないや。第2楽章の終わりでふと感じたんだけど、もうこの曲で形式の溶解が始まってる。シベリウスの交響曲の成熟って、形式の溶解と音楽の蒸留だと思うんです(今日の演奏を聴いて言葉にしてみた)。第6番での第1楽章と第2楽章の境界の曖昧さ、第7番での単一楽章への有機化、不純物を含まない透明な音楽。その間にある第4番と第5番はどんな演奏になるのでしょう。次回が待ち遠しいです。
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by zerbinetta | 2010-01-30 10:14 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

200年前のソープ・オペラ   

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mozart: cosi fan tutte
sally matthews (fiordiligi), nino surguladze (dorabella),
charles castronovo (ferrando), troy cook (guglielmo)
helene schneiderman (despina), william shimell (don alfonso),
jonathan miller (dir)
julia jones / roh @covent garden


モーツァルトのコジ・ファン・トゥッティ。お話的に不道徳だとか、くだらないとか昔からいろいろ批判があるけれども、音楽はやっぱりステキだし、面白いし、楽しんだもの勝ちっ。結構好きです。ジョナサン・ミラーさんのオリジナル演出(今回の再演はダニエル・ドゥーナー(daniel dooner)さんが監督してます)のです。ダ・ポンテのお話を見事に現代に置き換えて、ソープオペラに仕立てています。コジは過去に何回かオーソドックスな演出で観たことがあるんですけど、今回のが圧倒的に面白かったし分かりやすかったです。歌詞に対しても音楽に対しても違和感がないのも凄いです。200年以上も前に書かれたお話が、今に生き生きとよみがえってきます。男性陣の最初はスーツ、次に軍服、そしてロックンローラーのコスプレ、もちろん、デスピーナのコスプレ、女性陣がロックンローラーと結婚することになって感化された服装、などコスプレ・ファンにはたまりません(ちがう?)。携帯電話などの小道具も使い方も上手い。キー・アイテムはステージの奥に置かれた姿見ですね。内と外、本音と建て前を見事に象徴しています。演出家の勝利ですね。
歌手陣は残念ながら最上とは言えませんでした。でもそれがなんでしょう。このオペラは6人のそれぞれの配役をほぼ同等に扱っているので、突出した歌手はいらないと思います。むしろアンサンブル重視の方がいい感じ。なのでわたしはほとんど不満はありませんでした。とにかくこういうオペラはつべこべ言わずに笑って楽しむ。これに限りますね。
指揮者のジュリア・ジョーンズさんはまだ珍しい女性指揮者。なんて早く死語にならないかしら。全く引け目を感じさせることなく良い演奏でした。さやさやと音を抑えて演奏していたのが、会話で劇が進行する(アリアでさえも真っ直ぐ劇の進行に役立ってますしね)このオペラにはぴったりだったんではないでしょうか。コンティニュオがピアノフォルテだったのもちょっぴり現代的な響きで良かった。
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by zerbinetta | 2010-01-29 06:43 | オペラ | Comments(2)

うぎゃーーやっちまったぜーーー   

beethoven: symphonies no.4 & 7
vladimir jurowski / OAE @queen elisabeth festival hall


いや〜〜、仕事がオワラナ〜〜〜イ。なんとかぎりぎりでチューブに間に合ってホッとしたのもつかの間、チケットを見たらがびーーーん。音楽会7時からだった。平日なのになんでいつもと違うの〜〜。7時半の音楽会にぎりぎりで着くタイミングなので遅刻必至。今日はベートーヴェンの交響曲2曲だけのプログラムなのでまるまる1曲聞き逃すことに。しかも大好きな第4番。ぐすん。会場に着いたときは第2楽章を演奏していました。モニターの音はとっても悪く聴かない方が良い感じなので、本を読みつつ待ちました。
今日はロンドン・フィルの主席指揮者、ユロフスキさんがピリオド楽器のオーケストラ、エイジ・オヴ・エンライトゥンメントを振るのです。会場は小さなクィーン・エリザベス・ホール。ユロフスキさんとピリオド・オーケストラの組み合わせは、彼のロンドン・フィルを振ったピリオド・スタイルのハイドンを聴いてとっても良かったので期待していたのです。残念ながらこれしか聴けなかったベートーヴェンの交響曲第7番、ユロフスキさんの演奏は想像していたものと少し違ってました。ゆっくり目のテンポでじっくりと仕上げていく感じです。でも、ホールの響きが悪いのと、ピリオド楽器の特徴の乾いた音のためかちょっと音楽がすかすかに響いてしまいました。現代楽器で聴いたなら全く違う印象、もっと好印象を得られたかもしれません。終演後の拍手は大きかったので、わたしの感想はちょっとネガティヴに過ぎるのかもしれませんが。そうそう、今日はピアニストの内田光子さんが聴きに来られていました。彼女を音楽会の聴衆の中に見かけたのは数回目です。音楽会を楽しまれる方なのですね。スコアを見ながら聴いていましたよ。
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by zerbinetta | 2010-01-28 17:58 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

佳曲   

sibelius: the wood nymph, six humoresques for violin and orchestra,
symphony no.1
henning kraggerud (vn), osmo vanska / lpo @royal festival hall


友達にバカだと言われた音楽会シリーズの1日目。ヴァンスカさんとロンドン・フィルハーモニックによるシベリウス・チクルスの第1夜。4回にわたって7曲の交響曲がほぼ順番に、シベリウスの割と有名でない曲と共に演奏されます。今日は「森の精」「6つのフモレスク」「交響曲第1番」です。このシベリウス・チクルス、とても楽しみにしてたんです。シベリウス大好きだし、でも有名な曲以外ほとんど演奏されませんよね、イギリスは本国以外でシベリウスを受容している最大の国なので、こういう機会があるのが嬉しい、そして、ヴァンスカさんがいいのですよ。ヴァンスカさんの去年のベートーヴェン、とっても良かったですからね〜。得意のシベリウスと言ったら尚更でしょう。
始まりの曲は「森の精」。初めて聴く曲です。作品15番だから最初期の作品。シベリウスは楽譜を出版せずにお蔵入りにさせたのを何年か前にヴァンスカさんが採り上げて演奏したのがこの曲の再発見だそうです。チャイコフスキーっぽさも残るけど、シベリウスらしい透明感に満たされたきれいな音楽。デモーニッシュな引力はないけど、聴いていて心地のよい音楽。シベリウスって佳曲というかこういうしみじみと聴ける音楽が多いですね。2番目に演奏された「6つのフモレスク」もそう。ヴァイオリンを弾いたヘニング・クラッゲルードさんは、初めて聴く方ですけど、ノルウェイ出身の30代後半の人。聴いた印象は一言で言うと怖ろしく正確に弾く人。こう書くと褒めているんだか貶してるんだか分からなさそうだけど、実はとっても凄いことだと思うんですね。音程、リズム、アーテキュレイション、音量、求められる音色に至るまで全てに正確。テクニックをひけらかせるわけではないけど、基礎的なテクニックが凄いんだと思います。そして、正確に弾くことは決して音楽をつまらないものにするんじゃないということをきちんと証明して見せてくれました。きっと彼が正確な音の上にさりげなくささやかな彼の調味料を加えていたからですね。彼のシベリウスの協奏曲とか聴いてみたいなぁ。

休憩の後はいよいよ、交響曲第1番。実はわたし、ヴァンスカさんのシベリウスってほとんど聴いたことがなかったのですよ。録音では交響曲第5番の初稿とヴァイオリン協奏曲の初稿くらい。なんかマニアックな選曲ですね〜。なので、ヴァンスカさんがシベリウスに対してどんなアプローチをしてくるのか分かりませんでした。最初のクラリネットのソロは、指揮をせず奏者任せ。とてもゆっくりとしたテンポで始まりました。鳥肌立った。どっしりと腰を据えた雄大なシベリウスが来るのかなと思ったら、主部に入っていきなり快速テンポ。かなりアグレッシヴ。トランペットなどの金管楽器にかなり鋭い音を要求していて、演奏がちょっと荒くなったのは残念。シベリウス独特の細かなフレーズをそれぞれ独立の細胞のように演奏していて、めまぐるしく雰囲気が変わります。シベリウスを好きになれるかって、このシベリウス特有の短いフレーズの集合を受け入れられるかだと思うんですね。後期になるほど顕著になってくると思うんだけど、長く歌うような旋律があまり出てこない。ヴァンスカさんはシベリウスをほんとに愛しているんでしょう、ヴァンスカさんのそれぞれのフレーズ群の扱い方にはとても感心しました。対照的にたっぷり歌うところはゆったりと抒情的に歌い込んでいきます。これって、嵐。雷や怒濤の海の嵐ではなくて、空を雲が走り天気が目まぐるしく変わるような。イギリスのお天気みたい。シベリウスがイギリス人に人気なのもこんな郷土の雰囲気に似ているからなのかもしれませんね。それにしても激しいシベリウスだったなぁ。若い音楽。シベリウスにも若い疾風怒濤のときがあったということをあらためて感じさせられました。
そして、この際だった激しさを演出した演奏は、今日の音楽会がシベリウスの交響曲を第1番からほぼ順番に第7番まで採り上げるチクルスの演奏会だからだったせいも加味されているのかもしれません。シベリウスのそれぞれの時代の音楽をきちんと描き分けて聴かせるということが意識されていたようにも思えます。音楽の演奏の仕方って同じ指揮者、同じ演奏者、でも、会場や、お客さん、当日のプログラムなど、いろんな要因で変わってくるものだと思います(実際フルトヴェングラーがそんな発言を書き残していますよね)。これは残念ながら録音されたものを聴いているだけでは分かることのできない、音楽が生まれる瞬間に立ち会える音楽会ならではのこと。だからこそ音楽会に行ってしまうのです。次回の音楽会、次の交響曲をどんなアプローチで演奏してくるのかとっても楽しみです。

あっ今日はフルートのトップが普段見慣れない若くてきれいな女の人でした。ゲスト・プリンシパルにローラ・ルーカス(laura lucas)さん(ウェブ・サイトあり)。彼女、クラシックのフルートも吹くと同時にジャズ・シンガー(プロフェッショナル)でもあるんですね。ポピュラー音楽を演奏するクラシック奏者は今では珍しくもないけれども、違うパートというのは凄い凄い。
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by zerbinetta | 2010-01-27 04:52 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

好き それ以下でもそれ以上でもない   

dutilleux: metaboles
ravel: le tombeau de couperin
couperin: le tic-toc-choc, le baricades misterieuses
ravel: piano concerto in g major
stravinsky: the firebird suite
angela hewitt (pf), lionel bringuier / bbcso @barbican hall


ふと見たらチケットがあったの。どうして買ったんだっけ?マルティヌーのシリーズかなぁ? 最近音楽会が多いのでちょっとお疲れ気味なのです。週末のバービカンもあまり好きではありません。オフィス街なので週末は人がいなくて閑散として暗いんですね。しかも今日はチューブがややこしく止まっていて、途中乗り換えしたりちょっとめんどくさかったのです。こんな感じで惰性で行ってきました。だってチケットがあったから。
バービカンに着いてプログラムを見てみると、またしてもどうしてこのチケット取ったんだろう感が広がります。マルティヌーないし、BBCのディスカウントを得るための数合わせかしら。なんてやる気のなささらに助長。まあでもせっかくだからのんびり音楽でも聴きましょう。始まりはデュティユーのメタボール。あっこの曲知ってる、って音楽が始まったとたん思いました。デュティユーは今シーズン、ロンドン・シンフォニーのゲルギーもシリーズを組んでるので記念年かと思ってみたら、ご存命なんですね。93歳。演奏は、さすがBBCシンフォニー、現代音楽上手いですね。繊細できれい。そして演奏慣れしている感じがあって余裕綽々。それに、指揮者のリオネ・ブランギエさんがとっても上手くまとめてる。納得のデュティユーでした。

2番目は面白い企画。ラヴェルの「クープランの墓」オーケストラ版とピアノ版をクープランのクラヴィアのための作品をときどき挟んで、オーケストラとピアノが交互に演奏するように並べられました。こういう企画大好きです。200年も時を隔てている音楽なのにこうして聴くと違和感が全くないのは、ラヴェルがクープランの音楽をしっかり租借して、その上に自分の音楽を乗せているからでしょうか。BBCシンフォニーはとてもきれいにラヴェルを演奏していたけど、ちょっと音が重い感じかな。これはオーケストラの特徴なのでしょうがないんですけどね。

休憩を挟んで今度はラヴェルのト長調のピアノ協奏曲。第1楽章や第3楽章はジャズ風の音が出てきたりにぎやかな感じの音楽。そして中間楽章はちょっぴりノスタルジック。この協奏曲、そして前半のピアノを弾いたのはアンジェラ・ヒューイットさん。あとで調べたら有名な方だったみたいなんですが、初めて聴く人でした。とってもにこやかで品のいい女性。で、音楽も誠実そのもの。決して奇をてらったことをせず、華やかでもなく、ある意味普通なんだけど、居心地がいいというかその普通が凄いんですね。優しさがあってほんわりしていて、そこにあるべきところにある、まさにそれ以下でもそれ以上でもないちょうど良い音楽。多分この人の音楽は、1回聴いただけじゃ物足りなく感じるかもしれないけど、何回も聴くうちにしみじみと良さが沁みてくる、いつも聴きたくなる音楽をしているんだなぁと思いました。

プログラムの最後は「火の鳥」。最初の組曲版です。しっかりと譜面を読み込んで、敢えて普段は聞き慣れない音を大きめに出してみたり(でも決して不自然でもわざとらしくもない)、結果、より現代的な感覚の音楽になってました。素朴な民族性よりも和声の斬新さを強調した感じ。それにしてもリオネル・ブランギエさん、若そうだけどいい指揮者だな〜って思って調べてみたら、なんとまだ23歳!!ひょえ〜〜っ、凄い才能だわっ。23歳にしてこの指揮振り、この音楽、末恐ろし〜。将来を期待しましょー。

この音楽会、いつものBBCラジオ3で土曜日まで聴けるのでぜひ。
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by zerbinetta | 2010-01-23 08:44 | BBCシンフォニー | Comments(2)

きゃーーイケメンくん はあとはあと   

mozart: piano concerto no.20
mahler: symphony no.5
david fray (pf), leif segerstam / po @royal festival hall


とおっても楽しみにしていた、セーゲルスタムさんのマーラーの交響曲第5番。巷ではじんわりとセーゲルスタムさんのマーラー評判いいですからね。そしてわたしもセーゲルスタムさんにはとっても好感触。あの独特の風貌も森の魔法使いっぽくて大好きなんです。マーラーの作品の中ではあまり魅力を感じていないこの曲をずうっと脳内演奏していたこともこの音楽会への期待の表れかもしれませんね。それに対して、ピアノ協奏曲を弾くフレイさんには全く関心がありませんでした。プログラムの写真を見てもなんだか怖そうでふうんって感じでしたし。なので、始まりはモーツァルトのニ短調の協奏曲なのね、この曲よく聴くなぁ、今回で4度目かなぁ、少人数で弾くんだなぁ、あっ椅子がパイプ椅子だ、なんてぼんやりしながらステージを見てました。そしたら。ちょっと鬱々とした感じで入ってきたフレイさんを観てどきゅん。イケメン系。千秋先輩系。プログラムの写真より全然いいじゃない!目が悪いのでよく見えないのが残ね〜ん。抑えた音で始まった音楽。枯れる寸前まで音量を絞ってきましたね。ピアノはとっても柔らかなステキな響き。でも鬱々した感じは、よく分からないけど和音の響かせ方にあるんじゃないかしら。ペダルを使ってもったりめに和音を響かせてる感じ。内省的で引きこもりがちなモーツァルト。そういえば千秋先輩のバッハも屈折して鬱々としたイメジだったんですね。フレイさんのモーツァルトは屈折しているという感じじゃないけど、鬱々した雰囲気は千秋先輩もこんな感じなのかなぁって思った。長い髪をときどき耳にかける仕草、結構広いおでこ、うふふいいっ! 第2楽章はちょっぴり速めのテンポ。楽章の間でお客さんが律儀にコホコホするのを待たずに静かに弾き始めたのも自分の音楽に浸ってるみたいで吉。第3楽章も同じようにピアノを弾き始めて、速いテンポでオーケストラとの掛け合いがスリリングで面白かった。結構予定調和にならなくてドキリとするように崩してきたり。セーゲルスタムさんも上手に引き立てながらオーケストラをコントロールしていた。なんか、普段聴くモーツァルトとは一線を画したモーツァルト。多分、自分のためのモーツァルト。シューベルトに近い感覚なのかしら。他のソナタをどんなふうに弾くのか聴いてみたい。アンコールに弾いてくれた、ゆっくりした音楽も(曲名は分かりませんでした)、しみじみと美しく深く、とても良かったです。ダヴィッド・フレイ、28歳のフランス人なんですね。英語っぽいスペルのお名前だからイギリス人かと思ってた。ダヴィ・フラみたいな発音できないような発音がほんとなのかもしれませんね(フランス語のRののどの奥をこするような発音、わたしできません)。音楽会のあと、サイン会をしていました。CDは買わないし、プログラムも持っていなかったので(フィルハーモニアのプログラムは季節ごとにまとめて1冊なので前に買って家に置いてありました)、サインはしてもらわなかったけど、ちゃっかりと写真を撮っちゃいました。サイン会の彼は、さっきの鬱々とした表情とは違ってにこやかで人当たりも良さそうです。ひとりひとりのファンと笑顔でおしゃべりしていました。笑顔がまたステキなんです〜。ファンになるぅ〜〜。あっフレイさん、既婚なんですね。しかもパートナーはなんとあのムーティーさんの娘さんだとか。美人です。女優さんです。すごいっ。(って何を感心?)
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休憩の後はいよいよマーラー。この曲は去年初めて聴いて以来、2回目です。ステージにはわらわらと人が乗ります。今日のリーダーは日本人のマヤ・イワブチさん。フィルハーモニアの次席ファースト・ヴァイオリンの人です。魔法使いセーゲルスタムさんがゆっくりと登場していよいよ音楽が始まります。セーゲルスタムさんの指揮棒が動いてトランペットのファンファーレが鳴り出します。ただ縦に直線に下ろした感じのシンプルな動きなのにここまできちんと音が出て、自然に音楽の世界に浸っていく、魔法のようです。この始まり、ものすごく神経を尖らせるところだと思うんだけど。それに続くオーケストラのトゥッティはやっぱり鳴らしますね。セーゲルスタムさんの鳴らし方、潔い感じがして好きです。相変わらずアンドリュー・スミスさんのティンパニは凶暴でわたし好みだし。そして葬送の行進曲は、アウフタクトに独特の大きな間をとって引き摺るようにゆったりと丁寧に、でも普通のと何か違う。なんだろうと思って頭を巡らしながら音楽を追って。セーゲルスタムさんの音楽は、マーラーの音楽をひとつひとつの部品にまで分解してその部品ひとつひとつを丁寧に磨き上げている。だから、それぞれの部品がとってもきれいによく見えるし、マーラーが書いた複雑な音符が全てしっかりと聞こえてくる。でもそういう演奏なら最近多いし、こんなに不思議な気持ちになることはないと思う。何かが違う。そう、組み立て方が違うんだ。っていうか組み立てていないっ。セーゲルスタムさんは部品をそのまま部品の状態で置き放したまま組み立てるのを止めたよう。これがわたしの第一印象でした。戸惑うのも当たり前ですよね。こうして書くとただ即物的に音楽を鳴らしてる、まとまりのない演奏、駄演ということになりかねないんですけど、不思議なバランスで音楽として成り立っているんです。この感覚は第2楽章でも同じ。それぞれの声部がそれぞれ独立に音を創ってく。いろんな音のカセロール。情熱的な音、静かな音、悲痛な叫び、諦観、メランコリー、低俗すれすれの野卑た音、透きとおった清廉な音。ありとあらゆる音がそのままの状態でいろんなところから降りかかってくる。イワブチさんのソロも小節入って。思い出した。あれこそがポリフォニーだ、といろんな音が雑多に混ざるお祭りでマーラーが言ったこと。まさに今そんな音楽が展開されてる。そしてマーラーは続けてこんなふうに言っている。ただ作曲家はそれらの音をともに調和して響き合う全体へと秩序づけ、一体化させるだけなんだ、と。セーゲルスタムさんはどのように秩序づけてるんだろう? その答えは聴き進むうちに見えてきたような気がします。セーゲルスタムさんは音楽の中に秩序を求めないで、音たちの外に世界を作り出してるの。音たちがあちらこちらから飛び込んでくる世界にわたしたちは入り込んだよう。音どおしを関連づけて音楽を創ることを止めて、音を入れる大きな入れ物を創った。そしてそれは閉じずに開いている。世界なのだから。わたしたちはマーラーの音楽を聴くことができない。聴くというのは耳からわたしたちの裡に音楽を取り込むことだから。ここにある音たちはわたしたちと一緒に世界に存在している。音は外にある。
じっくりと間をとって、イワブチさんに合図してチューニングをして(音合わせというより間をとった感じ)、ゆったりと始まった第3楽章も同じ。ここでもたくさんの音が八方からバラバラに飛び込んでくるポリフォニー。楽しい音楽のところでセーゲルスタムさんが巨体をくねくねさせて指揮をする仕草はなんとかわいらしく可笑しいんだろう。音のないくすくすがまわりに広がって一体になる。この頃にはわたしにも世界の仕組みが分かってきて心地良い。
そうなると、興味が出てくるのが最後の2つの楽章。アルマへのラヴレターとして書かれたと言われるアダージエットと最後のロンドは、なんだか当たり前というか、ポリフォニーの作り方が前の3楽章とは全然違うんですもの。それはアダージエットが始まってすぐに思いました(アダージエットはむしろホモフォニックかもね)。ゆっくりと演奏しているんだけど、透明でむしろあっさりとした感じです。北欧の透明感なんて言われちゃうんだろうな。さて問題の最終楽章。確かにフーガになったり対位法を駆使しした音楽は複雑ではあるんだけど、全部枠の中というか予定調和的というか、マーラーさんどうしちゃったの? もしかしてアルマと出逢って頭の中お花畑状態? なんて悪口を言いたくなるくらい音楽が真っ当に書かれちゃってるんですね。最後のファンファーレも確かにある間が批判したように当たり前すぎるというか、第2楽章に出てきたときはうんと効果的だったのに。。。と感じつつも、実はわたしは音楽の凄さにしっかりと捉えられたいたんです。セーゲルスタムさんの創った巨大な世界はずうっと生きていてその中で音楽が進行していたんですもの。世界から見たら音楽のつまらなさなんて些細なもの。それにしてもなんて巨大なマーラーの交響曲第5番だったんだろう。聴き終えたときはぐわんと疲れてしまいました。充実疲れ。割とコンパクトにまとまっているかに見えるこの音楽からこんな大きな世界を生み出すなんてセーゲルスタムさん、ただ者ではない。そして魔法使いの巨人セーゲルスタムさんはイギリスの聴衆からも愛されています。終演後はブラヴォーと指笛の嵐。もちろんわたしも思いっきり拍手です。
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by zerbinetta | 2010-01-21 08:25 | フィルハーモニア | Comments(2)

ロミジュリ再び   

prokofiev: romeo and juliet
alina cojocaru (juliet), johan kobborg (romeo),
bennet gartside (tybalt), brian maloney (mecutio), kenta kura (benvolio), etc
kenneth macmillan (choreography), boris gruzin (cond) / royal bakket @royal opera house


また行ってきました、ロミジュリ。違うキャストでも観たいと思ったんだけど、前回と同じキャストの。でもコジョカルさんは何回観てもいい感じなのでいいんです。今回は上の方の席で舞台を鳥瞰しながら落ち着いて観ました。前回はやっぱり興奮してましたからね。久しぶりのマクミラン版だし(マクミランってロイヤル・バレエにいらしたんですね)かぶり付きだったし。今回も前回の印象を変えることなくうんと良かったです。たくさん泣いたし。それにしてもコジョカルさんって表現力が凄いっ。ロミオとの愛に溢れる踊りもいいし、パリスとの魂の抜けたような踊りもいい。特に後者が印象に残りました。コジョカルさんの他のバレエも観てみたいです。次はシンデレラかなぁ。あっまたプロコだ。でも、実を言うと今回もタイボルトに胸きゅんでしたよ。踊ったのはファースト・ソロイストのベネット・ガートサイドさんです。
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by zerbinetta | 2010-01-20 09:20 | バレエ | Comments(0)

うとうとヘンツェ   

henze: phaedra
maria riccarda wesseling (phaedra), john mark ainsley (hippolytus),
marilis petersen (aphrodite), axel kohler (artemis), lauri vasar (minotaur)
michael boder / ensemble modern


今日はBBCシンフォニーの音楽会だなと思って行ったら、アンサンブル・モデルンでした。人形劇かなと思っていたらオペラでした。演奏会形式です。予期せぬことばっかり。で、ヘンツェのオペラ、パイドラ。まずこれ読めなかった。ギリシア神話ですよね。わたしはヘンツェの作品を好きかと言われれば、よく分からないって答えるしかできないんですけど、今日のオペラはヘンツェにしては現代的、でも声の扱い方は自然で上手いなって思いました。編成は弦楽四重奏(但し第2ヴァイオリンの代わりにコントラバス)と各セクションふたりくらいずつの木管楽器と金管楽器、打楽器群にハープ、ピアノ、チェレスタ、サンプラー。歌手は5人で、それぞれの役の他に、全員で合唱のような効果を出していました(これって、もしかしてシュトラウスのナクソス島のアリアドネの3人のニンフの扱いの真似? ギリシア神話のこの物語もアリアドネに関係ありそうだし)。なんだけど、ぼんやり聞いていたら睡魔が。今読んでる筒井康隆さんの小説パプリカのように夢と覚醒の間をゆらりゆらりと漂ってました。こうして聴く音楽もなんだか贅沢で気持ちがいい。なんて言ったら作った人がっかりしちゃうね。その作った人、会場にいらしてました。指揮者のボダーさんが終演後客席に向かって拍手をしていたので、見るとヘンツェさんその人が。元気そうだけど、ご高齢なので(今年84歳)ステージには上がらなかったけど、その場で会場から大きな拍手を受けていました。さて、演奏は。うとうとしてたくせにって言われちゃいそうですが、とっても良かったのです。このオペラ、2007年にほぼ今日のメンバーで初演されてるので、皆さん音楽が自家薬籠中。歌手の人たちも暗譜で歌ってましたし。なんかうとうとしたのもったいなかったな〜。
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by zerbinetta | 2010-01-17 08:19 | 海外オーケストラ | Comments(0)

わたしの好きがふたつ   

shostakovich: five fragments, symphony no.4
szymanowski: violin concerto no.1
carolin widmann (vn), vladimir jurowski / lpo @royal festival hall


実はまた振られました。ほんとは今日はユリア・フィッシャーさんが弾くはずだったんです。とってもわくわくしていたんですが、ユリアさんは出られなくなっちゃってカロリン・ウィドマンさんが弾くことになりました。初めて聴くお名前の人です。がっかり。のハズだったんですが。。。何しろ曲はヴァイオリン協奏曲の中で一番好きと言っていいくらい大好きな曲。そして、大好きなのに初めて生で聴くシマノフスキ。そして、なんと!ウィドマンさんのヴァイオリンが素晴らしすぎることに! 感動するっきゃないでしょう。理想の演奏者を迎えた音楽の幸せなとき。ウィドマンさんの音色はまさにシマノフスキの求めた音楽そのもの。凍えた夜に聞こえる口笛のよう。冷たく澄んででも尖っていなくて。そして音が大きいのです。大きなオーケストラに対座して十分に渡り合える音量(もちろんオーケストラがヴァイオリンに覆い被さるようには書かれていないんですが)は、表現に余裕が出るし音楽が痩せないので美質だと思うんです。ちなみに、キャンセルになったユリアを初めて聴いたときの第一印象が、わ〜音大っきいでした。でも音色や音量のことばかり書くのは片手落ちです。音楽がとっても良かったから。オーケストラの出だしは細かい音符の速めのテンポでしたが、ヴァイオリン・ソロの伸ばした音からは一転ゆったりしたテンポになって、静かにたっぷりと音楽が歌われていくんです。不純物のない水晶のように透明なのに音が豊かで音楽が柔らかい。清廉で、でも精神的なエロスを感じさせる音楽。弦の上を流れる弓の圧力が心地良い。ひとつひとつの音に付けられるニュアンス、音のつなげ方、フレーズ、どれをとっても繊細で歌に溢れてる。音色は凛として冷え冷えと冴えてるのに、音楽には温もりのある歌がある。この人、現代の作曲家の作品をよく演奏してらっしゃるみたいなので、彼女からすればシマノフスキの新しいところも時を経て馴染んだものに映るのかもしれませんね。慈しむように歌われる音楽に心温まります。盛り上がるところも実に自然で澄み切った空のように星がきらめく。あああ、わたしにもっと詩的な言葉があったら。でも、語ることよりわたしの中の宝物にしたい、そんな演奏でした。(こんなこと言っちゃブログ書き失格よね)
ウィドマンさんは1976年生まれだから、ヒラリーやリサの世代とミドリや諏訪内さんの世代とのちょうど間。この世代のヴァイオリニストってわたし、あまり知らないんですよね。ミュンヘン在住だそう。ミュンヘンって確か、ムターさんやユリア、リサも住んでて、女性ヴァイオリニストの住みたい街第1番なんでしょうか。
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もうわたしはシマノフスキに大満足で、あとはおまけ、おまけみたいなモノと決め込んでいたんだけど、そのおまけがまた凄かったんです。これまた大好きなタコ4。ショスタコーヴィッチの交響曲第4番。タコの交響曲の中では8番と共に通好み。って通ってなんだよ、タコヲタなだけじゃないかって感じですけど。もちろん始まりからハイテンション。鋭く尖った高い音の木管楽器が耳に突き刺さります。一瞬にしてタコの世界に。この音なんですよね〜、タコって。そしてそのあとに来る怒濤の行進。速いテンポ、そうだ、ユロフスキさんの基本テンポって速めなのよね。ユロフスキさん、自国の音楽がほんと大好きなんでしょう。ロシアものをもう何回か聴いていますが、いつも自信に溢れて一点の隙もない。このショスタコヴィッチも同じ。音楽に同化するような勢いでオーケストラを完璧にコントロール。それに応えるロンドン・フィルも熱いし上手い。金管楽器も打楽器もそして弦楽器もいいんだけど、今回は敢えて木管。特に狂気の小クラリネットとピッコロは凄かったです。こうでなきゃ。第1楽章の弦楽器が速い音符でフガートで入るところはオーケストラが壊れる寸前のテンポで手に汗握りまくり。でも、ここでもぴたりと合わせてくるオケに脱帽。ほんと凄いもの聴きました。マイクがたくさん立っていたので録音されたのでしょうか。ユロフスキさんの指揮でタコの交響曲全集を出して欲しいです。あっシマノフスキも音盤になればいいな。
実はタコ4は、わたしにはまだよく分からない音楽です。CDでよく聴いてはいるんですけど、謎がたくさん隠されていそうで。引用も多くてどんな意味なのかなぁ〜って考えても分からないことばかり。この曲も多分、モーツァルトの魔笛やマーラーの復活なんかが重要なところで引用されてるよね。最後もハッピーエンドなんだか、悲しい終わりなのかよく分からないし。今日の演奏は例えば、マーラーの交響曲第9番の第1楽章の終わりのように清廉とした終わり方でした。なんか夢の中に墜ちていくような感じ。ユロフスキさんの演奏は、ショスタコーヴィチの持つ意味の難しさや複雑さをひとまず脇に置いて、音楽の凄さを分かりやすく伝えようとする若者らしい演奏だったと思います。精神性よりも音楽のスペクタクルに音楽そのものを語らせようとするような。そこのところでは少し不満が残るかもしれません。でも、交響曲第4番ってショスタコーヴィチ30歳の時の作品なんですね。もしかすると本質は若い勢いに迸る音楽と考えるのが正解なのかもしれません。音楽を聴いたあとの圧倒的な充足感はユロフスキさんの音楽とショスタコーヴィチの音楽がやはりしっかり共鳴している結果に違いないような気がしました。

今日の一番はじめに演奏されたタコの5つの断章はたった10分くらいの音楽。新ウィーン学派の3人の音楽の影響なのかしら、でもタコってミニマムに集中していくタイプじゃなくて拡大拡散していく傾向のある音楽家(だと思う)ので面白くはあるけど無理あるなかなぁ〜。もっと聴きたいって思っちゃうもの。タコらしい冷たいラルゴが聴けたのは良かったけど。交響曲第4番と同じ主題が使われたりしてたけど、作品番号隣り合わせなのね。

今日はバスに思いっきり水をはねられてずぶ濡れ状態になったり、風邪気味で頭が痛かったりしたけど、こんなステキな音楽会を聴けて幸せでした。
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by zerbinetta | 2010-01-16 08:13 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)