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後悔した   

31.03.2011 @royal opera house

tchaikovsky: swan lake

marianela nuñez (odette/odile)
thiago soares (siegfried)
christopher saunders (rothbart)
jonathan howells (the tutor)
itziar mendizabal, melissa hamilton, valentino zucchetti (pas de trois)
leanne cope, emma maguire, romany pajdak, sabina westcombe (cygnets)
nathalie harrison, laura mcculloch (two swans), etc.

anthony dowell (production),
marius petipa, lev ivanov (choreography),
boris gruzin / orchestra of the roh


またまた白鳥の湖。ドレス・リハーサルも入れると4回目。なんだか行きすぎ? でも、今日は大好きなヌニェスさんの日なのです。この間体調不良で、ヌニェスさんの回を1回すっぽかしているのでヌニェスさんの白鳥は今日が初めて。とってもわくわく。でも、こんな日なのに、心の調子が悪くって、急に涙が出たり、むやみに悲しくなったり、自分でコントロールできないんです。バレエに集中できるか不安。でもね、音楽が始まって幕が開いたら、わたしはなんて幸せなんだろう、って思えてまた涙がたまってきた。ひとりで勝手に異国に住んで、たくさんのステキな音楽を聴いてたくさんのステキな舞台を観て、おいしいものはあんまりないけど、自分勝手な時間を楽しんで、って妙に感傷的になってる。わたしはいつのまにか王子様のパーティーに招かれて舞台の中にいました。
今日の王子様はむっつり。ツンデレタイプ? わたしが誘っても、じゃなかった、美しいお姫様たちが誘っても心ここにあらずという感じで、つんとして迷惑そうにしてる。お母様に結婚を催促されても、まだまだ友達と遊んでいたいお年頃。パ・ドゥ・デュのおふたりの女性にも目にくれず、みんなと騒ぐことばかり。ダンスもひとりで踊ってるし。この舞台もう4回も観ているのに、まだまだ発見することばかり。後ろの人のひとりひとりまで細かく気を配って性格付けがされてるので、これだけ大勢の人が出てると、いろんな人間関係とかが読み取れたりして面白いんですね〜。それにちょい役でも演じ手によって、性格は違ってくるし、何回観ても楽しめる。
今日のパ・ドゥ・トワは、メンディザバルさんとハミルトンさん、ズチェッティさんでした。ズチェッティさんって、最近入団したばかりのアーティスト(1番下の階級)の方ですかね。この間も踊ってらしたけど、大抜擢ですね。ちょっとかっこいいので、どんどん役をもらって上に上がってくれると嬉しいな。メンディザバルさんは、妖精の女王みたいな怖いイメジが強いので、この役はちょっと合わないかもって偉そうに思ってしまいました。ロイヤル・バレエはこのパ・ドゥ・トワにプリンシパルからアーティストまで幅広いキャスティングをしているのだけど、どんな意図があるのかしら? 若手には経験を積ませるため? ヴェテランにはステージの間隔を開けないため? ううん。メリッサ・ハミルトンさんもまだ20代前半の若手。わたしがロイヤル・バレエを見始めた頃、ステキだなって思った方です。それ以来見かけていなかったので(出てはいたのですが、わたしの回には当たらなかったようです)、久しぶり。実はまだ、顔を覚えているわけではないので、これから覚えて行かなくちゃデスね。

第2幕、いよいよヌニェスさん登場。拍手多め。やっぱりファンの人多いんだな。それにしてもなんてステキな白鳥なんでしょう。わたしの予想では、ヌニェスさんの踊りは、オディールのときの方が絶対しっくり来るし、オデットはどうかなって思いがあったんだけど(楽しそうに踊る人なので)、予想は見事に裏切られてオデットもいい! 安定していて踊りが上手いことはもちろんだけど(技術的にとっても上手い人だし、今ロイヤル・バレエで一番勢いのある人だと思います)、表現がとっても分かりやすいんです。オデットの気持ちが強く強く何の不純物もなしに直接わたしの心に伝わるの。人によっては表現があざといとか言うかもしれないけど、わたしには見て分かりやすいというよりも、彼女(オデット/ヌニェスさん)の心の裡がわたしの中にすうっとそのままはいってくるような感じで、分かるというより、すでに気持ちがわたしの中に生まれてるんです。たくさん積み重ねられた言葉だってこんなに気持ちを上手く伝えることはできないのに。
そして、ヌニェスさんの踊り、どこか今まで観た人たちのとは違ってるんですね。ステップの仕方とか、間の取り方とか、形の作り方とか、少しだけ変えてあるみたいで、それが、ヌニェスさんらしいと感じられるほどにぴたりとはまってるのです。タマちゃんのときは、悪魔に引き裂かれて、白鳥へと変わりながら舞台の袖に引っ込むところ、背中で語っていたけど、ヌニェスさんはこちらを向いたまま。表現の違いがとても面白いです。

第3幕。オディール登場。もう最初っから王子を騙す気満々。ってかヌニェスさん魅力ありすぎ。128%本領発揮。これで転ばない男は男じゃないね。ソアレスさんの王子もころりといっちゃう(というか最初っからオデットに惹かれてるので当たり前だけど)のだけど、もうちょっと喜びの表情を顔に見せて欲しかったな。ツンデレで、第1幕のツンをここでデレッとさせると思ったのに、やっぱりツンのままで、わたしとしてはもっと素直に感情を表して欲しかったです。踊りはとっても良かったんですよ。ジャンプもきれいだし、オディールの32回転のあと、なにげに見せる難しい回転技も決まってたし。苦み走った系のいい男なので、あまりデレッとした顔は見せたくないのかも知れませんね。
ヌニェスさんの32回転は、とっても楽しみにしていて、絶対彼女の切れがあって凄いって思っていたから、意外や意外、最初、えっこんなもの?なんか速くないし切れがないなってちょっとがっかりしたんです。そしたら、彼女、この回転技にクレッシェンドをかけていたのですね。最初は虚を突くようにゆっくりと、それからだんだん速くしていって、切れのある回転でくるくる。軸もしっかりしてるしとっても美しい回転。最後もぴたりと決まって大拍手。そのあとの足を伸ばしながら後ろにぴょんぴょんと跳ねていく動きもステキ。32回転は技のクライマックスだけど、その前後の踊りが好きなんですね。いよいよ結婚の誓いをして、このあたりの駆け引きの表情もとっても上手かった、正体を現したときのお腹の底から出てくる笑いも、タマちゃんは大きな口を開けて呵々と笑ったんだけど、ヌニェスさんは肩を震わすように、もう可笑しくてしょうがないというような笑い。どちらが悪魔かだって。どっちも嫌よね〜、あんな笑い方されたら。

最後は、また悲しさの満ちる舞台。でも、力強さもあって、愛の力によって悪魔を打ち負かすところは、ヌニェスさんの芯の強さが出ていたと思います。
今日の舞台はヌニェスさんの舞台でした。タマちゃんも凄いと思ったけどヌニェスさんもこんなに凄かったとは(コジョカルさんは最初に観たので、まだどのように観てよいのか分からず、もう一度観たいです)。静止のバランスはタマちゃんに軍配が上がったけど、ヌニェスさんもほとんど負けていない。ヌニェスさんの物語の語り口はとっても上手いです。わたし的には、ヌニェスさんファンだということを差し置いても、完璧で様式化されたようなタマちゃんよりも、人肌感が残るヌニェスさんの方が好きだな。どちらを観たいかと聞かれたら、即座に両方って答えるな。

この間、ヌニェスさんのを観に行かなかったことは、もうむちゃ後悔してる。わたしのバカ。これからは、ヌニェスさんのは全部観たいな。いえ、観に行かねばなりません。そして、これから、ヌニェスさんのことは親しみを込めてマリアネラさんと呼ぶことにしよう。わたしの一番のダンサーだし。
あっそうそう、ロイヤル・オペラ・ハウスのこちらのペイジでマリアネラさんの白鳥の湖の最後のシーンのリハーサルが観られます。
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2羽の白鳥のマッカロックさんとハリソンさん
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マリアネラさんとソアレスさん
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by zerbinetta | 2011-03-31 09:40 | バレエ | Comments(2)

アリーナとセドリックのルクーとラヴェル   

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アリーナ(・イブラギモヴァさん)とセドリック(・ティベルギアンさん)のラヴェルとルクーのソナタ。アリーナのウェブサイトの情報によると去年の11月に録音されて、いつかCDとして発売されるとのことなんだけど、ちょっと予告編的に聴くことができます。2月にわたしが、仕事をさぼって聴きに行った、LSOセント・リュークでのランチタイム・コンサート。ただ今、BBCラジオ3のサイトでオンデマンドで放送中です。期間限定なのでお早めに。曲目はルクーのソナタとラヴェルのソナタです。アリーナ・ファンの方もこれからアリーナ・ファンになる方もぜひ!
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by zerbinetta | 2011-03-30 06:42 | Comments(4)

ヘリコプター・カルテット   

26.03.2011 @wigmore hall

lutosławski: string quartet
beethoven: string quartet in c# minor, op. 131

hagen quartet


そうだ!と珍しく突発的に思って昨日チケットを取った音楽会。CDで聴いて大好きだったハーゲン・カルテット。生で聴くのは初めてです。それに、今シーズン初めてのウィグモア・ホール。家から行くとチューブを乗り換えなければいけないのでちょっとおっくうがっていたのでした。土曜日だったので、ソーホーの中華街にも足を運んでみることに。豆板醤が切れたので買いたかったのよね。スーパーで買ったイギリス仕様の豆板醤もどき、まずくて使い物にならなかったので(損した)。というわけで最寄りの駅のレスター・スクエアからいつものロイヤル・オペラ・ハウスに向かうのとは違う道を歩いて、やっぱり予想通り道に迷っちゃった。それにしても大きなヘリコプターが1機、ぶるるるるると爆音を立てながら飛んでいて、なんか宣伝かなぁって牧歌的に思ったのでした。ふらふら歩いて通りの銀行のガラスには、割ったようなひびの模様があってちょっと前衛的って思ったり、でもその前には歩道にテープが張り巡らされて警官がいたり。偶然見つけてチャイナタウンの門をくぐってお目当てのスーパー・マーケット。中国人の友達が前に勧めてくれたブランドの豆板醤を無事購入して、やっぱ中国超市場はわくわくするな〜って後ろ髪を引かれながら、ピカデリー・サーカスに行くと、大勢の警官が隊列を作って立ってる。ピカデリー・サーカスはロンドンに住み始めて初めて行くので(って言ったらあんた何年ここに住んでるのって笑われた)、いつもこんなもんかなぁってのんびり思って、ああっ! そうだ、今日はデモがあったんだって、やっと思い出した。すっかり忘れてた。あとで調べたらさっきの銀行の模様は、暴徒化した一部のデモの人が銀行とか襲ったらしい。ううう、もしそんなさなかにぼんやり出くわしたら、巻き込まれるとこだったわ。場違いな場所にぽつねんと出現してしまった異邦人。そそくさと広場をあとにして、リージェント通りを北上、ウィグモア・ホールに向かったのでした。と、音楽会に着く前に今日はだいぶ時間がかかっちゃったね。

会場に早めに着いたら、閉じたドアの向こうでリハーサルをしていました。結構ぎりぎりまでリハーサルするのですね。今日の曲目はルトスワフスキのカルテットとベートーヴェンの作品131のカルテット。ハーゲン・カルテットは、ふふふ、3人は兄弟なのね〜って見た目で分かる。セカンド・ヴァイオリンがぽつりと他人。ご両親4人子供を作れば、兄弟だけでカルテットになったのにね〜って莫迦なことを考えていたら、ほんとは4人兄弟で、ひとり、才能に限界を感じて止めちゃったらしいのね。音楽の世界は本当に厳しい。男子クラヲタに人気のヴィオラのヴェロニカさんが真っ赤なドレスで、あとの男性3人は黒のスーツ。ヴェロニカさんかっこいい。
ルトスワフスキは、長い静かなヴァイオリン・ソロから始まって、1度聴いたくらいじゃよく分からない曲でした。聞きづらいというわけではなくて、長いので曲の構成というか全体像がつかみきれなくて、瞬間瞬間の音を楽しんだ感じ。ルトスワフスキは大好きな作曲家なのでまた聴いてみたいと思いました。最後まで集中して聴き通せて、充実した音楽だと感じました。でも、今日は静かな部分だと、例のヘリコプターの音が外からうっすらと聞こえてきて、ヘリコプター・カルテットかと思いましたよ。欧州の古いホールは(USのカーネギー・ホールなんかもそうですけど)、現代の街の騒音なんて考慮に入れて作っていないから、結構外の音漏れるのですよね。もの凄く気になるわけではないですけど、ルトスワフスキみたいに弱音が大事だと、ううんちょっとぉって思っちゃう。

正直に告白すると(多分もうしたことあるかも知れないけど)、わたし、弦楽四重奏が苦手なんです。弦楽四重奏曲で好んで聴くことができるのは、ハイドンとメンデルスゾーンくらい。大好きなモーツァルトですらどうも苦手で、バルトークなんかは目が回っちゃう。なので、ベートーヴェンの四重奏曲もあまりよく知らなくて、大フーガだけは手元にCDがあるので(ハーゲン・カルテット!)ときどき聴くのだけど、今日の作品131もほぼ初めて聴くような感じ。しかも、ベートーヴェンの最後期の四重奏曲ってとんでもないところにいっちゃってるから、一筋縄では聴けない。だから、ここで感じたことを書くのもおこがましいんだけど、とっても充実した演奏だったとわたしは思いました。ひとりひとりの演奏家の上手さもそうですけど、カルテットとして成熟していて一分の隙もないんです。全員がどういう風に音楽を考えてどういう風に弾くのか、練り上げられてて全く齟齬がないんですね。かといって練習通りの演奏というわけではなく、音楽が一瞬一瞬生まれ出てきて、それをみんなが同じ気持ちで共有しているの。次に何が生まれるか分からないライヴ感が強く感じられて、それはスリリングなんです。リーダーがいてその人に合わせているのではなく、中心になる人は常に変わっていて、お互いに対等な立場で音楽をしている。
そんな演奏に支えられたベートーヴェンの音楽はとっても雄弁。でも、この曲7つも楽章があって、複雑で1回聴いたら分かるという音楽ではないので、どうも上手く言葉にできないのだけど、最後のピアノ・ソナタ群のように、シンプルな音の中に(構成は複雑だけれども瞬間瞬間の音作りはとてもシンプルにできていると思います)、人間の深みのようなもの、この曲では諦観にも似た静かな境地、喜びや悲しみが直接表現されるのではなくて、思い出として、あるいは心のフィルターをいったん通して表現されているように感じられて、聴いたあと心地良い充実感がありました。
室内楽ももうちょっと聴かなくちゃと悪魔の声が聞こえたような気がしました。
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by zerbinetta | 2011-03-26 08:49 | 室内楽・リサイタル | Comments(0)

お誕生日音楽会   

25.03.2011 @royal festival hall

beethoven: piano concerto no. 3
strauss: ein heldenleben

mitsuko uchida (pf)
mariss jansons / bavarian radio so


お誕生日おめでと〜〜。ということで、内田光子さんとヤンソンスさん、バイエルン放送交響楽団の皆さんがお誕生日音楽会を開いてくれました。ヤンソンスさんとバイエルン放送交響楽団は去年も一昨年も聴いたけど、今が旬の若いフレッシュな(若い奏者が多い)オーケストラで、ヤンソンスさんもロイヤル・コンセルトヘボウよりもこちらの方が自由に音楽ができてる感じでわたしはこちらのコンビの方が好き。曲目は今日はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番と英雄の生涯。

光子さんは、確かこの曲で今年のグラミー賞を受賞したと思うけど、ベートーヴェンの協奏曲を今、集中的に採り上げています。今シーズンから来シーズンにかけてロンドン・シンフォニーでもコリン・デイヴィスさんと全曲演奏する予定ですしね。その協奏曲。弦楽器のあと木管が主題を奏で始めたところでびっくり仰天。3つ目の一番高い音にもの凄いアクセント。あとで楽譜を見たらそうなってたんだけど、ここまで強いアクセントって。。。ときめくぅ。それにしてもこのオーケストラ、音がまろやかで角がなくてとってもきれい。そして木管楽器奏者の揺れること。へびつかいのように楽器を回しながら合わせてる。この人たちもこの間のベルリンフィルと同じ、指揮者じゃなくて自分たちで音を聴きあって合わせている感じ。自分たちが吹いていないときも他の人を見ながら音を聴いていたり、自分たちの音楽を聴いて楽しんでる。近くの席のひとと「うん」って言葉を交わしあったり、良い意味でアマチュアみたい。
光子さんもそう。この人本当に音楽が好きで、音楽を演奏するのが楽しくてたまらないというのが、聴いていてよく分かるの。この人も良い意味でアマチュア。音楽会の会場でも普通に聴きにいらしてる光子さんをよく見かけるしね。そして、本物のプロフェッショナルな芸術家。この人の演奏から彼女の音は聞こえない。音楽そのものが鳴っている。音楽の内面に深く切り込んだ演奏。でも決して冷たくならない、あたたかな小さな光りが灯っている。それはもう本当に心の内に染み込んでくるベートーヴェン。音のフェルトのような柔らかさにうっとり。第1楽章のカデンツァの後半で、えっこれ!シューベルトの音楽みたい!ってなんだか嬉しい発見があったけれども、光子さんの弾くシューベルトって本当にステキなんですよ。来シーズン、最後の3つのピアノソナタを弾いてくれるので、今からますます楽しみになってきました。光子さんのベートーヴェンは巨人の音楽ではなくて、あたたかなひとりの人間の音楽。だから、シューベルトの音楽が聞こえてきたのかも知れませんね。ほんとにステキな演奏でした。演奏後の光子さんの相変わらず可愛らしいこと。仕草のひとつひとつが本当に少女のようで可愛らしいの。かけっこするようなポーズでステージを降りていったり。このかわいらしさは光子さん、そしてアルゲリッチさんに共通してあるんだな。わたしも、ずうっとそんなかわいらしさを失わずにいたいな。

休憩の後は、英雄の生涯。皆さんは英雄というとどんな人を思い浮かべますか? 強くてカリスマ性があってでももの凄く怖ろしい織田信長のようなタイプ? ひとが考えつかないようなことを他人を上手に操作してやり遂げてしまう坂本龍馬のようなタイプ? ヤンソンスさんとバイエルン放送交響楽団の音楽は、そんな英雄ではありませんでした。とっても柔らかくて優しい。偉ぶるところがなくて、オーケストラの音は、南ドイツの丸みのある山と柔らかな日向を感じさせる音色。美音。例えばトランペットの普通なら耳に突き刺さるようなハイトーンも丸みのあるオーケストラの音の中に溶け込んでいるのです。英雄面していない英雄には好みが分かれるでしょう。でも、34歳の青年の等身大の姿がそこにあると思います。まだ、彼を彼にせしめたサロメもエレクトラもバラの騎士もアリアドネもない未来の英雄。シュトラウスの故郷バイエルンのオーケストラ。シュトラウスが見ていた景色の中で培われた音は、シュトラウスが聴いていた音でもあるのかも知れませんね。

アンコールはバラの騎士のワルツ。こちらはずいぶん気の置けない感じで、開放的でビアホールの楽隊みたい。雑だとかという意味ではなくて、シュトラウスがオペラに仕込んだワルツの意味を汲み取ったステキな演奏でした。ワルツってこうでなきゃね。

ふふふ、ステキな誕生日でした。もちろん、お誕生日コンサートなんて妄想の中ですよ。今日みたい日は勝手にお姫様気分でいさせて〜。明日から普通の貧民に戻りますから〜。
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by zerbinetta | 2011-03-25 09:12 | 海外オーケストラ | Comments(8)

男前っ   

24.03.2011 @barbican hall

shchedrin: lithuanian saga
shostakovich: violin concerto no. 1
tchaikovsky: symphony no. 2

leonidas kavakos (vn)
valery gergiev / lso


今シーズンと来シーズンにわたるゲルギー、ロンドン・シンフォニーのチャイコフスキー交響曲シリーズ、第2弾は交響曲第2番。かなりマイナー。全曲を順番に演るのでしかたないんだけどね。

オーケストラの音合わせが終わったあと、ステージの隅にMD(米語だとCEO)のマクドウェルさんとゲルギー、カヴァコスさんが出ていらして、マクドウェルさんが、ロンドン・シンフォニーと日本との関係、今日のコンサートを日本の方々に捧げる旨の挨拶。ゲルギーとカヴァコスさんの表情を観てたら、心痛してくださってる気持ちがきりきりと伝わってきてじーんと来ました。今日も音楽会の前に泣かされるぅ。

始まりはシチェドリンさんのリトアニアン・サーガという作品。今日はタコとチャイコフスキーの2曲とばかり思っていたから、おまけが付いたみたいでお得な気分。リトアニアのナショナル・フィルハーモニック協会の委嘱で作曲されて、ゲルギーとロンドン・シンフォニーによって2年前に初演された曲。ロシアの聖歌を元にしたような旋律が聴かれて、とても分かりやすくて美しい音楽。シチェドリン好きのわたしには嬉しい。今シーズンはこの作曲家をゲルギーはたくさん採り上げてくれたけど、どれもステキな音楽ばかり。ゲルギーとシチェドリンさんの相性もとってもいいし、わたしも好きなんだな〜って再確認。シチェドリンさんは会場に来ていらしていて、ミーハーなわたしは奥様のマイヤ・プリセツカヤさんを一目見ようと探してしまいました。遠くからしか見えなかったけど、美しい人。あとで彼女が85歳と聞いてびっくり。美しい人は年を経ても美しいのね。

そして、タコこと、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲。有名な第1番。カヴァコスさんとゲルギーはどんな演奏をするのでしょうと思って聴き始めたら、もう最初っからノックダウン。とんでもなく凄い音楽が。まるで次元の違うタコ。ブラックホールに吸い込まれるように、二度と再び引き返せない世界に連れ込まれてしまう。カヴァコスさんは、魂の深い淵から音楽を紡ぎ出すようにヴァイオリンを弾いていく。リズムが切れるようにしっかりしていて、それでいて横の線も豊か。ものすごく余裕のある音作りで、これ以上の演奏はまず聴けないだろうと唸ったくらい。筋肉質で、こういう音は女性には出せないだろうな、だって筋肉の付き方が違うもの。わたしのアリーナが秋に日本でこの曲を弾く予定になってるのだけど、わたしは聴けないけど、今日の演奏を聴いたら、アリーナといえども太刀打ちできないなって素直に思いました。もちろん音楽は多様なアプローチがあるので、アリーナはアリーナのステキな演奏をするはずですけど、今日のカヴァコスさんのはタコの演奏のひとつの究極だと思います。特にパッサカリアの鋼のような何かを拒絶した無機質さ(それでいてどこかあたたかいのは雪の優しさ?)から長大なカデンツァに移行するあたりは、音楽の重力の大きさに身体ごとつぶされそう。そしてバックのゲルギーとロンドン・シンフォニーが輪をかけて良かった。なんか今日の音楽会、ゲルギーの集中力がいつにも増して(いつもものすごいんですけど)凄かった。曖昧なところが全くなくリズムが切れまくり。音が重いから、速いところはものすごいエネルギーが発散されてる。タコはこうでなくちゃ。演奏者にとっても一期一会の演奏だったように思えます。会場は割れんばかりの拍手と歓声(半分は便乗して騒いでる高校生)。アンコールにバッハのソナタ第2番からアンダンテ。下で等間隔でリズムを刻みながら上で旋律を弾くというとんでもなく難しい曲だと思うけど、リズムむちゃきちんと刻んでました。重くどっしりしたバッハ。今日の音楽会のテーマは重厚さです、って言っちゃえるかも。

チャイコフスキーの交響曲第2番は愛称、小ロシア。日本語だと、小日本。あっこれだとなんだか侮蔑されてるみたいだから、ちょっとスケールは違うけど、小京都とかそんな感じですかね。もしくは谷中銀座とか。なんてくだらないことを思っていたら、オーケストラのトゥッティ一発あと裸のホルンが民謡風のメロディを吹き始めてびっくり。なんて大胆な管弦楽法。そして第2楽章にいきなり行進曲。うひょひょ〜チャイコフスキーぶっ飛んでるよ〜。で、思い出したのは、シューベルトの交響曲第8番の第2楽章も見方によったら行進曲。音楽の冒頭も裸のホルン(ユニゾン)だし、シューベルトはグレート、チャイコフスキーはリトル。うふふ、なんたる符合。ははは、もちろん偶然のこじつけ。チャイコフスキーのはウクライナの民謡がいくつか引用されてるので、このニックネームが付いたのです。
ゲルギーのチャイコフスキーは、抒情的な要素を押しとどめて、音楽の勢いや構成を大きく構築する方向性。これは前回の交響曲第1番のときも感じました。ロンドン・シンフォニーもそれに応えてとっても立派に演奏していたんだけど、曲が曲だけに叙情性をもうちょっとブレンドしないと面白くないなっても思いました。なんかドライすぎてぱさついちゃうみたいな感じ。わがままかも知れないけどちょっぴり潤いが欲しかった。

今日もゲルギーとロンドン・シンフォニーは本当に凄い演奏をしていたのだけど、今日はお客さんが悪かったです。同じ曲目で2夜(録音のためだと思います)、しかもマイナーな曲だったのでお客さんが入らなかったのでしょう、わたしの近所には先生が引率してきた高校生のグループが何組か座って、クラシックの音楽会にあまり馴染みのない人が多かったのです。もちろん、そんな人たちも音楽のステキさに目覚めてくれたら嬉しいのだけど曲目がね。一般受けしないから。で、タコの協奏曲のときは楽章の合間に拍手が入ったり、チャイコフスキーも1回拍手が入ってゲルギーが手で制したかな、最後はフライング・ブラヴォーに寛容なわたしでもまゆを顰めたくなるタイミングで拍手をされた方が。ちょっと演奏者がかわいそうでした。わたしも集中するのに精一杯。こんな日もあります。
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by zerbinetta | 2011-03-24 10:30 | ロンドン交響楽団 | Comments(2)

japan tsunami appeal concert   

20.03.2011 @linbury studio theatre

先日の東北大震災で、こちらでも多くの日本人やイギリス人の人たちが心配して心を痛めています。いくつかの音楽会は日本の方々のために捧げられています。また募金活動も始まっています。わたしの職場でもみんなで義援金を集めようと話し合っています。そんな中、ロイヤル・バレエの元プリンシパル・ダンサー、吉田都さんが急遽、チャリティー・コンサートを企画され、今日行ってきました。コンサートが決まったのは金曜日のお昼過ぎ。最初ツイッターを通してballet.coからアナウンスメントがあったみたいで、それをリツィートしてくれたロイヤル・バレエのカスバートソンさんのツィートでわたしは知ったのでした。ちょうどバレエを観に行く日だったので、ボックス・オフィスでチケットを買ったのでした。まだ、売り出したばかりなので、前の方の真ん中というとっても良い席が取れました。チケットを取った時点では、わたしは何を演るのか全く知らなかったのですが、ロイヤル・バレエの日本人ダンサー総出演でしかも都さんも踊られるという、なんとも贅沢。しかもそれを間近で観られるなんて。会場のリンブリー・ストゥディオは小さな劇場で、しかも今日はオーケストラピットがなかったのでほんとにすぐそばでダンスが観られたのです。チケット代20ポンドは全額募金されたのですが、なんか善意の募金というより、それ以上のステキなものを観れてしまってわたし的にはなんともラッキー。

会場は短い期間のアナウンスにもかかわらず満員。9割方日本人でした。前半は小学生から高校生くらいの子供たちにより楽器の演奏で、緊張しつつ出てきて、演奏が終わったあとほっとした表情で帰っていく姿が可愛らしかったです。
そして後半いよいよバレエ。演目は
高田茜さんと蔵健太さんによるジゼルのパ・ドゥ・デュ
ユフィ・チェさんと平野亮一さんによる白鳥の湖の第2幕のパ・ドゥ・デュ
マラ・ガレアッツィさんとエドワード・ワトソンさんによるマクレガーの作品
小林ひかるさんのラ・バヤデーレの第1幕のソロ
吉田都さんとヴァレリー・ヒリストフさんによるシンデレラの第2幕のパ・ドゥ・デュ
でした。ユフィさんのオデットとかひかるさんのニキアとか本劇場の舞台で観ることができないものばかりでむちゃお得な気分。それに間近で観ることでいろんな発見があって良かったです。圧巻は、ガレアッツィさんとワトソンさんのプリンシパル・ペアのダンス。やっぱり、プリンシパルはすごいですね。ガレアッツィさんは目だけでわたしをノックアウト。そして、ひかるさんのニキアは、1シーンだけど、物語を全部見せてくれたようで、うんと良かったです。普段の舞台では清楚であまり感情表現をしない控え目な踊りの印象が強かったんですが、こんなに感情を踊りに込められる人なんだとびっくりしました。流石ひかるさん。そしてもちろん、都さん。(ロンドンでの)ロイヤル・バレエで最後に踊ったシンデレラ(振り付けは違いますが)。もうなんでロイヤルから引退しちゃったんだろうってもったいないというかすごく残念。彼女の踊りまだまだ観たかった。
茜さんと蔵さんも、茜さん上手いけどまだまだフレッシュ感があって蔵さんがとっても上手にサポートしていたというか、演技していました。蔵さん好きのわたしとしては蔵さんにもソロを踊って欲しかったんですけど(カエルかな)。ユフィさんと平野さんの白鳥もとっても良くて、ユフィさんには早くオデット/オディールを本劇場でも見せて欲しいな。平野さんの王子もちょっと恋にうぶな感じで良かったです。

お終いに都さんが英語で挨拶されたのだけど、冗談交じりに、計画してこんなに速やかにすんなり劇場がサポートしてくれてコンサートができたことは初めてなんておっしゃってました。確かに大きな劇場で人を動かすことは大変だし普通時間のかかること。都さんがおっしゃっていたように劇場のスタッフさんたちもそれだけ日本のことに心を砕いていてくださったということだと思います。また、カスバートソンさんがツィートして宣伝してくれたように、ツイッターの中で、ロサトさんとかガートサイドさんとかロイヤルのダンサーたちも宣伝に参加してくれていました。たくさんの人たちが日本を応援してくださっているということを感じて本当に嬉しかったです。とってもとっても心に沁みるコンサートでした。わたしもがんばらなくっちゃ。
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by zerbinetta | 2011-03-20 10:04 | バレエ | Comments(1)

悩んだ末に   

19.03.2011 @barbican hall

rachmaninov: the bells
walton: symphony no. 1

viktoria yastrebova (sp)
frank lopardo (tn)
vladimir vaneev (br)
semyon bychkov / bbc sc, bbcso


実は今日、サウスバンクであるわたしの応援するオーケストラ、ロンドン・フィルハーモニックの音楽会のチケットも持っていました。というか、そちらに行くつもりでシーズンが始まる前にチケットは取ってあったのでした。そのときも悩んだんだけど、バービカンで同日あるBBCシンフォニーの音楽会も捨てがたい。ロンドン・フィルの方は確か、ユロフスキさんのチャイコフスキー。BBCはラフマニノフの鐘。ううむ。でまた再び悩んだ末に、ロンドン・シンフォニーのチケットを2つリファンドして(MTTが来ることになっていたのが変わったのでいいやと思って。でも、ひとつ目の音楽会のレビュウを見てあっしまった、と。とっても良かったらしい)、今日のBBCシンフォニーに振り替えてもらいました。

ラフマニノフの鐘は、録音も含めて初めて聴く曲です。3人の独唱と合唱、大きなオーケストラによる4楽章からなる交響曲のような作品です。指揮は、これまた初めての、年末に聴きそびれたロイヤル・オペラでのタンホイザー、とここまで書いたところで、あれ待てよ、前に聴いたローエングリーンは確かこの人が指揮したんじゃないかしら、と自分のブログを紐解くと、ありゃりゃ、聴いてる、というわけでビシュコフさん2度目です。
音楽は第1楽章の銀のソリの鐘をテナーが、第2楽章の甘美な結婚式の鐘をソプラノが、第4楽章の追悼の鉄の鐘をバリトンの独唱がそれぞれ歌います。第3楽章のけたたましい警報ベルだけ、独唱が入らず合唱とオーケストラのみです。とても大きなオーケストラで大人数の合唱。鐘の音を模倣するオーケストラが面白い、うんと迫力のある曲です。ラフマニノフの代名詞、とろけるような叙情性は控え目なんだけど、でもやっぱりソプラノ独唱が入る緩徐楽章は、ラフマニノフ満載です。
重厚で、音楽会のメインにぴったりのこの曲を(でもプログラム前半)BBCシンフォニーは、そのまま重厚に演奏しました。BBCシンフォニーは音色が重いので(リズムが悪いとかじゃないです。っていうか、ビシュコフさんとBBCシンフォニーはリズム切れ切れ)、こういう曲はぴったりですね。ビシュコフさんはきっちり指揮して、しっかりとオーケストラを従わせるタイプの指揮者ではないかと思いました。歌手は3人とも良かったです。ロパルドさんは、メトで何回か観ているハズなんですがすっかりお顔を忘れていました。バリトンのヴァネーエフさんは、ロシアらしい太いバリトン。そして、ソプラノのヤストレボワさん。この方もロシア(マリインスキー劇場)出身だけど、プロフィールの経歴から推測するとめちゃ若い。そして美人。この人、第2のネトレプコさんになれるかな。それにしてもマリインスキー劇場ってどんどんすごい歌手輩出してくるな。なんだか凄い。

休憩の後はウォルトンの交響曲第1番。滅多に演奏されることがなさそうな曲なのに、聴くの2回目。イギリスの作曲家だからかな。前に聴いた、ヴァンスカさんとLPOのは、シベリウスっぽさが強く感じられたんだkど、今日はなんだか、心を紙ヤスリでざらざらと削られていくような感じの苦汁の音楽。この曲って戦争に関係あったかしら。そんな思いを抱かせられる耳あたりの悪い音楽。ビシュコフさんは外面のかっこよさには目をくれず、現代的な響きで、音楽の真相をえぐっていきます。耳にするのが苦痛になるほど。容赦ない。わたしは苦しくて、途中で逃げ出したい気持ちでした。でも、これは決して演奏が悪かったということではないんです。むしろ良かった。楽譜に書かれたひとつの真実を紛うことなく音にしてしまったんですから。現代音楽を弾き慣れてるBBCシンフォニーの良さが上手くいかされてましたね。複雑なテクスチュアがきれいに分離していたし、リズムもきっちりと切れていて、縦の線がしっかり揃っていました。第2楽章のスケルツォも攻撃的で、殺伐とした感じだし、第3楽章も荒涼として救いがない。唯一第4楽章が前向きの音楽なんだけど手放しで歓びを解放するという感じではなく、苦しみの勝利という感じ。わたしは、この音楽を聴いて、東北大震災を思い浮かべてしまいました。もちろん、ビシュコフさんはそれを想いに入れて演奏したとは思わないし、聴いているわたしの問題であるのは間違いないんだけど、試練のときというのは、人が生きていく上で必ず訪れるものなんだ、そこからの勝利は決して開放的ではなく、苦汁を口に含んだままの勝利もあるんだって思ったのです。音楽って癒しとか慰めとかそんな作用ばかりが強調されるけど、苦渋の音が心を沈めてしまうこともあるし、上へも下へも心を揺さぶってしまうものなんですね。甘いチョコ食べて気持ちを戻さなきゃ。

ヤストレボワさんとヴァネーエフさん
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ビシュコフさん
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by zerbinetta | 2011-03-19 09:39 | BBCシンフォニー | Comments(0)

始まる前に泣かせるなんてずるい   

18.03.2011 @royal opera house

tchaikovsky: swan lake

tamara rojo (odette/odile)
carlos acosta (siegfried)
gary avis (rothbart)
alastair marriott (the tutor)
akane takada, deirdre chapman, valentino zucchetti (pas de trois)
leanne cope, emma maguire, romany pajdak, sabina westcombe (cygnets)
hikaru kobayashi, itziar mendizabal (two swans), etc.

anthony dowell (production),
marius petipa, lev ivanov (choreography),
boris gruzin / orchestra of the roh


清水の舞台から飛び降りました。1回くらいバレエをとても良い席で観よう、計画でロホさんの白鳥を平土間で観たのです。80ポンド以上。ついにわたしのロンドン音楽会生活、最高値超高級チケットです。バレエの怖さは、1度良い席で観てしまうと、もう戻れなくなってしまうこと。バレエ破産もしかねない。とは言え、いつもと違った感じで、場違いさにちょっぴりおろおろしてしまったのも事実。あああ、でもやっぱり良い席は良い。年に1度くらいはここに座りたいなぁ。

今日は舞台が始まる前になんと、ロイヤル・バレエの監督、モニカ・メイスンさんが舞台に登場。なになに、メイスンさんが登場するほどのキャスト変更、なんて会場はちょっと緊張に包まれましたが、わたしは知ってるもんね。白鳥の湖、東北大震災で大変な思いをしている日本のために捧げるってこと。でも、直接、メイスンさんから穏やかな声でお話があると、もうダメ。幕が開く前から涙の海。ロイヤル・バレエは1970何年(正確な年は忘れてしまいました)から日本へは何度も行って、日本の皆さんとは関係が深い、とおっしゃっていましたが、それだけではなく、ロイヤル・バレエで活躍している日本人も多くいるので、個人的な親密な関係もあるでしょう。こうして人が世界中へつながっていることを肌で感じて、今回は日本のことを覚えてみんなで思っていてくださることはどんなにか嬉しい勇気づけられる思いか、本当にとっても嬉しく思いました。

今日は、この間観たタマちゃんアコスタさんの配役なので余裕を持って観ていられます。それに双眼鏡を使わなくてもいいので、いろんな表情がよく分かるんです(双眼鏡は確かに細かく見えるけど、1点を集中的に観てしまうので、回りとの関係が飛んじゃったりするんです)。こうして改めて観てみると、アコスタさんがとても細かく丁寧な演技をしているのが分かりました。王子の気持ちがとてもとてもよく分かりました。それから王子に振られるお姫様たちの気持ちも。それにしてもこの舞台ほんと良くできていて、多分誰も見ていないだろう脇役の人に至るまでしっかりと演技しています。そんな全体があるからこそ王子の物語が映えるんだなって思います。そして酔っぱらい先生のマリオットさん。舞台にポンとユーモアを落としてお話を小さくしないようにしています。子供たちもとっても可愛らしくて、踊りも上手だけど、ふらふらと子供の相手をしている酔っぱらい先生の方がほんとはずっと踊りが上手いのにね、なんて思っちゃって、酔っぱらい先生にほ。
今日のパ・ドゥ・トワには高田茜さんとチャップマンさん。それからズチェッティさん。茜さんはフレッシュでステキ。ぶれないし上手いです。ソリストまでスルリと上がっちゃいそうですね。あっ、チャップマンさん、挨拶のときちょろりとよろけて、ちょっと可笑しかった。まわりもくすくす。

第2幕で、タマちゃんのオデットが出てくると、今度はタマちゃんに目が行っちゃいます。悲しくも強いオデット。相変わらず踊りは切れていて、アコスタさんとのゆっくりとした踊りのなんて美しいこと。王子が一瞬で恋に落ちて、でも、そろそろと躊躇しながらオデットを誘っていく。心揺れながらも少しずつ王子に心を開いていくオデット。最後のとろけるような抱擁(王子はオデットを後ろから包むように柔らかく抱いてその中で(心が)溶けていくオデット)。うっとり。でも悪魔に無理矢理引き裂かれて、白鳥に戻されるオデット。ここの表現はタマちゃん全く隙がなくて(わたしとしては、もう少し不完全さがあった方が完璧すぎるより好きかも知れないのですが)、見事すぎ。今日も4羽の白鳥は良かったです。タマちゃんとアコスタさん、あとエイヴィスさんも、が舞台を引っ張って、みんなその3人に引き摺られるからかしら。

うって変わってタマちゃんのオディールは魔性の女。怖〜い。ロットバルトとなにやらひそひそと相談しながら王子を誘惑して、男を誘惑する手練手管をわたしにも教えて欲しいよ、ロットバルトさん、恋人を見つけて騙されたとは知らず、さっきまでの鬱いだ表情から一変してぱっと明るく嬉しげなアコスタさんの王子。タマちゃんとアコスタさんの踊りはやっぱり圧巻。アコスタさんなんて歓びの活力に満ちちゃってるから回転は速いしジャンプは高い。アコスタさんってジャンプの途中で足をピットさらに伸ばして止まるのよね。完璧できれいなジャンプ。タマちゃんも瞬間瞬間決めのポーズで止まりながら切れ切れの踊り。タマちゃんの32回転から、アコスタさんの高速回転まで独楽のように回って、このおふたり踊りだけで人を感動させてくれるの。そして最後はやっぱりタマちゃんの大きく口を開けた高笑い。いやあ怖い。わたしも1度でいいからあんな風に男を手玉にとってみたい。そして高笑い(似合わん)。
今日はスパニッシュ・ダンスの蔵さんをしっかり観ました。この間はロットバルトにやられてましたからね。今日はしっかり踊りの方を観てたのよ。ユフィさんのナポリタン・ダンスはこの間より切れが増してたな。ユフィさん一時の低迷脱したかも。

第4幕は、本当はもうちょっとオデットと王子がロットバルトと戦うシーンを多くして欲しいと思うんだけど(ちょっとあっさりしすぎ)、ほとんど役に立たない王子に比べて、王子を守って勇敢に戦うオデット。タマちゃんの強さが生きるんだけど、タマちゃんだったらロットバルトをやっつけられた気がして止みません。で、そのままハッピーエンドで大団円。そのくらいの強さを持ったオデットなんですよ。女だって今は戦う戦士。愛のため生きるために戦うんだわ。とバレエから逸脱した感情を持ってしまったわたしでした。
でも、今日の公演は最初のメイスンさんの挨拶も含めて記憶に残るものとなるでしょう。白鳥はまだ続きます。いよいよ、大好きなヌニェスさん。それからこの間のアリスを好演した地元期待の新星カスバートソンさんです。どんな白鳥になるのでしょう。

悪魔も祝福するタマちゃん
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今日も嬉しい4羽の白鳥。もちろんわたしの応援してるコープさん(左から2番目)も。
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2羽の白鳥のメンディザバルさんとひかるさん
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by zerbinetta | 2011-03-18 10:21 | バレエ | Comments(0)

いのち弾ける   

16.03.2011 @royal opera house

なんとなくチケットを取ってみたロイヤル・バレエのトリプルビル。わたしは基本的にはバレエはフルレングスのクラシック物語ものが好きなんだけど、バレエにはまるにつれ、一応全部観ておこうかなっていう気持ちになってきて、都合の良かった日に1枚だけとったの。ちょっと後悔。だって、とっても良かったんだもの。1回だけしか観られないなんて悔し〜〜。

rachmaninoff: rhapsody

alina cojocaru, steven macrae, etc.

frederic ashton (choreography)
barry wordsworth / orchestra of the roh


まずはラプソディ。ラフマニノフのパガニーニの主題によるラプソディの音楽に付けられたフレデリック・アシュトンの振り付けによるバレエ。主役のおふたりはコジョカルさんとマクレーさん。アリスのときはメイクで素顔は見られなかったんですが、今日はお顔も堪能しました。とかいいつつ写真はコジョカルさん影になってるぅ。あっいや、踊りも良かったんですよ。ジャンプきれいだし、リズム感あるし。そしてコジョカルさん。白鳥のときは気持ちを張り詰めてまるでガラス細工のように繊細で壊れそうだったんだけど、今日は、精神を伸びやかに解放しての溌剌とした踊り。体が切れてて回転が速い。それにしてもコジョカルさんのフィッシュ・ダイヴ凄い。駆け込んでジャンプしながら回転して飛び込む、なんてアクロバティックできれい。受け止める方の男性も凄いけど、こういうのを観る度に、ダンサーの間での信頼関係の強さとダンサーの凄さを感じます。淡い恋のストーリーだと思うけど、踊りそのものを楽しめたプログラムでした。
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debussy/matthews: sensorium

leanne benjamin, marianela nuñez
thomas whitehead, rupert pennefather, etc.

alastair marriott (choreography)
barry wordsworth / orchestra of the roh


ドビュッシーの24の前奏曲のいくつかをオーケストレイションした作品(2曲はピアノのままのを使っていますが)に、ロイヤル・バレエの現役プリンシパル・キャラクター・アーティストでもあるマリオットさんが振り付けた作品。マリオットさん、白鳥の湖でも酔っぱらった家庭教師で剽軽な演技をしていたけど、才能豊富な方なんですね。バレエはドビュッシーのまったりとした午後の倦怠みたいな雰囲気によく合っていて、彫塑のようにポーズを決めながらゆったりと動いていくの。回廊をそぞろ歩きつつ芸術作品を鑑賞していくみたい。主役は2組。ベンジャミンさんとホワイトヘッドさんのペアとヌニェスさんとペンネファーザーさんのペア。小柄なベンジャミンさんと並ぶとヌニェスさんってすごく大きく見えるのね。びっくり。それにしてもベンジャミンさんの踊りはきれいだなぁ。

ローラ・マカロックさん(左)とナタリー・ハリソンさん
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ヌニェスさんとペンネファーザーさん
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ベンジャミンさんとホワイトヘッドさん
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simon jeffes: 'still life' at the penguin cafe

david bintley (choreography)
paul murphy / orchestra of the roh


ロイヤル・バレエお得意の動物の被り物バレエ。被り物って視界を狭くするので、人気の演目、ヴィクトリア・ポッターの物語がロイヤルで一番怪我の多い危険な演目であるというのをどこかで読んで、大丈夫かなぁ怪我しないようにねって心配して見始めたんだけど、ペンギンのコミカルな踊りを観ているうちに心配はどこかに消えてしまって、舞台に集中してもうむちゃ楽しめました。とっても楽しい、というだけじゃなくて、何かいのちの躍動みたいなものを強く感じました。心が弾けてむやみに感動。そもそもわたし、自然が大好きで、都会を旅するより、ジャングルに行きたいっていう人なので、野生動物ものは大好きなんです(ペットの動物はかわいいけどそれに比べると好きではないです)。生きている力というか動物たちの持つ純粋な命の力ってすごいです。そしてそれが音楽(とおっても良かった)とバレエで表現されて、観ているわたしの中にも命の塊としてずんずん入ってくるのです。わたしの裡で命が踊り出します。むやみに希望がわいてきます。最近のことでちょっと落ち込んでいたわたしも心臓が新しい酸素を含んだ血を全身に勢いよく送り出して、細胞のひとつひとつが新しい酸素を浴びて活性化します。なんかやたらとステップを踏みたくなる。むちゃくちゃに希望が溢れてきます。最後の方、雨が降って、あっ恵みの雨? それにしてもみんな逃げまどってるなって思ったら、背景に船が出てきて、あっのあの箱船って思ったのですが、これが??? 意味が分からなくてちょっともやもやしていたのだけど(それでも圧倒的な命のパワーの印象が弱まることはありませんでしたが)、ロンドン音楽会ブログ仲間というか圧倒的にステキな音楽会評をいつも書かれているvoyager2artさんのブログを読んで、あっこれは今絶滅に瀕している動物たちの命を未来に継ぐ、わたしたちのノアの箱船の物語なんだなってすっかり霧が晴れました。何しろ、出てくる動物たちが、テキサス・カンガルーネズミとかフンボルト・ホッグノーズ・スカンクのノミとかマニアックなものばかり。絶滅した動物や今絶滅に瀕している動物なんですね。わたしたちは人も動物も未来に命を繋いでいく使命を持っているんだと思います。今日わたしにみなぎった命の力は、過去からそしてまわりの人や生き物たちからもらった大きな宝物なんだって。今度はわたしがそれを繋いでいく番。なんて小難しいことを見終わってから考えてしまいましたが、バレエは圧倒的に肉に突き刺さる命の衝動よ。頭ではなく身体が反応するもん。
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ノミのアイオナ・ルーツさん、後ろにネヘミア・キッシュさん
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南ケープシマウマのワトソンさん
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ブラジリアン・ウーリー・モンキーのマクレーさん
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ゼナイダさんとエイヴィスさんとペンギン
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by zerbinetta | 2011-03-16 08:08 | バレエ | Comments(1)

どうも苦手   

14.03.2011 @royal opera house

verdi: aida

liudmyla monastyrska (aida)
roberto alagna (radames)
olga borodina (amneris)
brindley sherratt (king of egypt)
michael volle (amonasro)

david mcvicar (dir)
fabio luisi / ro chorus, orchestra of the roh


やる気ないっス。って最初っから言ってるようじゃダメね。どうもアイーダ苦手なんですよ。だったら行くなって言われそうだけど、アラーニャさん歌うし、安い席なら行ってもいいかなって。てっぺんの方の席で、舞台からは少し遠いけど(それでもメトの上の方の席より近い気がする)、舞台の全体はほぼ見渡せるし、実は音響は上の方が良かったりもする。それで2000円しないんだから、チケット買っちゃうのはしょうがないよね(自己弁護)。

アイーダが苦手な理由はなんとなく。第2幕で華々しくお終いってなってくれれば嬉しいんだけど(オペラファンに怒られちゃう)、だから、2幕が終わって帰るのが粋! なんて勝手に思ってるんだけど、貧乏性のわたしなのでやっぱり最後まで観てしまう。本当のところは後半の2幕の方がドラマがあって面白いハズなんだけど。ただ、なぜかアイーダだけは野暮と知りながら冷静に観てしまうのよね。ラダメスは、なんでアムネリスにあんなに愛されているのにすげないの。アムネリスむちゃかわいそう。わたしとしてはヒロインよりもこういう人についうっかり感情移入。そしてオペラにつきもののとんでも親父。我が娘の恋路を利用して敵の秘密を聞き出そうとは。まあみんながそれぞれ、少しずつあんぽんたんで、普通はテキトーに上手く丸く収まることが悲劇を生んじゃうってオペラ的悲劇。ごめんなさい。やっぱアイーダ苦手のせいね。

でも歌手陣はものすごく良かったんです。お目当てのアラーニャさんはいつもの通り絶好調。ってかこの人いつでもしっかり歌うよね。アラーニャさんがよれよれだったの聴いたことない。凄い人だわ。音切れのときの泣きも健在。
それからボロディナさんはいつもの通り貫禄十分。いろいろあったけど最後は恋人のために祈っちゃうなんて健気すぎ。
そして、アイーダを歌ったモナスティリュスカ(? なんて発音するんでしょうね)さん。もともとカロシさんが歌うはずだったんだけど、プログラムの冊子の印刷の差し替えにも間に合わない段階での降板。妊娠のため、ということだけど、体調不良でしょうか。赤ちゃんが無事生まれるといいけど。心配です。で、モナスティリュスカさん。ウクライナ出身でプロフィールから推測すると20代くらいの若手。ロイヤル・オペラには、5月に演るマクベスでデビュウする予定だったのが一足早くデビュウ。この人がとっても良かったんですよ。高音もきれいに出ていたし、ヴェルヴェットのような声なのに力強くて、これから世界で活躍していく歌手になるでしょうね。
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by zerbinetta | 2011-03-14 10:25 | オペラ | Comments(0)