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ワグナーに愛は語れない さまよえるオランダ人、ロイヤル・オペラ   

29.10.2011 @royal opera house

wagner: der fliegende holländer

anja kampe (senta), eglis silins (the dutchman),
stephen milling (daland), endrik wottrich (erik), etc.

tim albery (dir)
jeffrey tate / roc, oroh


初めて観に行くワグナーの「さまよえるオランダ人」。あらすじを予習してみたら、このオペラ(オペラと言っていい!)、1幕もので2時間半くらいで終わっちゃうんですね。ワグナーにしては短〜〜い。長くてだらだらしたのが嫌なのでこれはいいっ。開演も8時から(普通は7時半)。でも、これが罠で、立ち見だと2時間半ずうっと立ちっぱなしなので辛い。長くても途中で休憩が入るのの方が楽かも。という経験を「ラインの黄金」でしたことあるので、わたしは座って観てましたが。見てたらバルコニーの立ち見のお客さん、今日は空席があったので係の人に誘導されて、バルコニーの一番良い席に座らせてもらえてました。バルコニーの立ち見の人ラッキー。

さて、前置きはこれくらいにして、さくっと感想を言うと、序曲で飽きた〜〜。あの序曲、オーケストラの音楽会で聴くといい曲だけど、オペラの序曲としてはどうよ。なんか充実しすぎてない?メインにサーロイン・ステーキの大盛りを頼んでいるのに、前菜にフィレ・ステーキを食べてる感じ。くどい。と、ワグナー・ファンに顰蹙を買うようなことから書いてるんだけど、序曲の間、ステージのカーテンの後ろで人影がくるくると動いているのが、わたしにはダメで目が回ってしまったんですよ。むちゃ三半規管弱いの。

やっと幕が開くと、地味〜な舞台。灰色系で暗くて、シンプルな舞台装置。予算削減でしょうかねぇ。女の人の服装から、1950年代か60年代くらいに設定してると思うんだけど、なんだかこうちぐはく。正直演出からは、何を問題にしたいのかよく分かりませんでした。
オペラは、ワグナーにしては、とってもオペラらしい。2重唱があったり、わりと普通のオペラっぽいの。このオペラ、ワグナー初の成功作だったんですね。この頃、もっとちゃんとオペラを勉強してれば、もっと普通のオペラ書けたのに。但し、但しですよ但し(偉そうに)、やっぱり、ワグナーの自己陶酔型自分勝手の片鱗はちゃんと感じられるんですね。2重唱は、確かにちゃんと2重唱っぽいけど、なんかふたりが絡んでないというか、銘々勝手に歌ってるように聞こえるし(歌手が悪いのではなくて音楽がそうなってる)、これって、あとの楽劇ではより顕著で、もはや登場人物が全員独白状態ですよね。自分勝手に自分の主張を歌うだけで、ちっとも他者と絡まない。変わらない。「さまよえるオランダ人」でも、それぞれの人物は皆、自分勝手で、自己陶酔的で交わろうとしないんです。ダラントはお金のことしか考えてないし、オランダ人は、自分が救われるために乙女の愛を探している。彼も愛し合おうなんて考えていない。ゼンタは、無償の愛をオランダ人に捧げることを夢見ている不思議ちゃんだけど、それはオランダ人のためではちっともなく、自分の夢の実現のため。この人もセルフィッシュ。唯一普通なのはゼンタを愛するエリックだけかなぁ。報われないけど。ほんと、もう、それぞれ、自分勝手なことばかり考えていて、相手によって自分が変わることもなければ、他者の存在は意識の外。自分だけの世界に住んでる。もうこれって典型的なワグナーの登場人物。オランダ人とゼンタの間には本当の愛は生まれない。だから多分、オランダ人は(ゼンタも)救われることはないんだろう。オペラはそうは進まなくても(正直、この演出では最後、オランダ人とゼンタが救われたのかどうか分からなかった。多分救われてない)、愛ってお互いを認めて新しいふたりの世界を作ることじゃない。相手も変わるし自分も変わる。そんな相互作用が愛にはあるはずなのに、ワグナーには欠けている。ワグナーって自分では愛していると思っても、それは自己愛の投影でしかなくって、本当の意味で人を愛したことがない、というかできなかった人なんだろうと、彼の作品を観てつくづく感じるのです。「さまよえるオランダ人」もそのご多分にもれず。

歌手は良かったんです。オランダ人のシリンスさんは渋かったし、カンペさんもワグナー歌いとして堂々としたものになってました。他の役の方たちもとっても良い。でも、何よりも今日は合唱かな。わたしはわりとずうっと退屈してたんですが、最後の方の酒場のシーンで群衆の合唱が入るところらへんから、音楽がぐいぐいと迫ってきて、ここから最後までは音楽的に圧巻でした。テイトさんの指揮も合唱やオーケストラの良さを引き出していたと思います。短いのでまた観てもいいかなという気にさせられるオペラだけど、次は、オーソドックスな演出か、思いっきりすっ飛んだ頭を挑発するような演出で観てみたいです。

暗い舞台
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シリンスさん、テイトさん(下半身が不自由な方です)、カンペさん
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by zerbinetta | 2011-10-29 08:52 | オペラ | Comments(2)

ムーミンはいなかったけどトロールはたくさんいたよ オラモ、BBCSO シベリウス他   

28.10.2011 @barbican hall

bax: tintagel
saariaho: leino songs
sibelius: luonnotar, symphony no. 3

anu komsi (sp)
sakari oramo / bbcso


今シーズンのBBCシンフォニーの目玉のひとつは、シベリウスの交響曲全曲演奏でしょう。シベリウスの交響曲全曲演奏は1昨年のシーズンにロンドン・フィルがオスモ・ヴァンスカさんでやっているのですけど、BBCシンフォニーのは、ひとりの指揮者ではなく、6人の指揮者によるシーズンを通しての音楽会です。今日がその第1段。なんと!意表を突いて一番マイナーな第3番から。わたしは大好きなんですけどね。イギリスはシベリウスを高く評価した外国のひとつなので、こうしてシベリウス頻度が高いのが、シベリウス好きのわたしにはとっても嬉しい。そういえば、オラモさん、プロムスでも交響曲第6番のしみじみと良い演奏を聴かせてくれたので期待してたのです。

始まりはバックス。フィンランドの作曲家だと思ってたら、イギリスの作曲家でした。音楽会が終わるまで気づかないでいて、ばかね〜わたし、今日はフィンランド特集って独り合点してました。ってよく考えたら、この人の音楽、オラモさん、プロムスでも聴かせてくれたんだった。。。すっかり忘れてた。「ティンタジェル」は交響詩。解説を読んでいないので、どんなことを音楽にしているのか分からないけど、なんだか海の香りがしました。とても聞きやすくて、ちょっとかっこよくて、吹奏楽っぽくて(前に聴いたバックスの音楽もそんなこと思ったっけ)、知らなかったステキな曲を教えてもらって嬉しい気持ちです。つかみOK!

でも今日の刮目は(使い方合ってる?)、サーリアホさんの「レイノ歌曲集」。これがもうステキなのなんの。サーリアホさんの音楽はこの間バレエでさんざん聴いてたし、前にも何曲か聴いたことあるんだけど、この4曲からなるちいさな歌曲集は、とっても親しみやすくて、透明できれいでとってもステキ。そしてこれを歌った、アヌ・コムシさんがまたきらきらな透明な水晶のような声でステキなの。こんな紋切り型の言葉使いたくないけれども、もの凄い透明度で底の砂や水草やお魚まで見える北の国の湖のようなきれいさ。そして、フィンランド人の彼女にとって自分の言葉。それに、この曲、彼女のために書かれているのですね。だから、わたしには言葉は分からないけれども、彼女の言葉と音楽と意味が自然に結びついているのが、とても強く感じられました。音符だけを歌ってるんではなくて、言葉の持つ意味が込められているように感じられたんです。

休憩のあとの、シベリウスの歌曲「ルオンノタール」。この曲もとってもステキでした。交響曲第2番を思わせるな旋律があって、夜の月明かりに暗く銀色に光る波頭のよう。それはもうきらきらときれいで、でも、なんだか哀しい。空や星や月の誕生を歌った神話の物語なんですね。真っ暗な世界にわたしも浸れていたような気がします。お客さんもたくさんの拍手をコムシさんに贈っていました。

最後は交響曲第3番。わたし、この曲ってちっちゃくてさりげなくて、秘やかに咲く花のようと思っているのですね。大曲交響曲第2番と孤高の苦渋に満ちた交響曲第4番に挟まれて、ほのやかな光に満ちていて心が安らぐ。という曲だと思ってたんだけど、オラモさんの演奏は、雄大で少し重々しいものでした。わたしの好きとは違うと思ったんだけど、音楽の雄弁さに心が揺れて、最後はどっしりと感動しちゃいました。オラモさんの演奏にはフィンランドの森の空気をしっかり感じました。BBCシンフォニーもオラモさんに相応して、深い森の静けさ、愉しい不気味さを音にしていました。BBCシンフォニーの音はもともと地味(あっこっちの漢字の方がいいかも。滋味)で派手やかさはないので(色彩感がないということではなく、それぞれの色にいぶし銀色が混ざっていて、いぶし銀色がオーケストラの基調のトーンとなっている感じ)、それがオラモさんの音作りにぴたりと合うのです(わたしはもう少し軽いのが好きなのですが)。
フィンランドの森はムーミンの森。でも、ムーミンはいなかったけど、ムーミンの仲間のトロール(妖精)たちはそこここにいました。風が木木を揺らしたり、遠くに山が見えたり、葉がずっと覆い被ってお日さまを曇らせたり、そんな森の中をわたしは音楽に誘われてずうっと歩いていたような気がします。ときには駈けてみたり、立ち止まったり、歌ったり、完爾としたり、泣いたり。音楽はわたしの記憶も呼び覚まします。それは、現実だったり、お話の中の世界だったり、心は妖精と一緒に自由に飛び回ります。そんな音楽でした、オラモさんの音楽は。

大きな風が木々を吹き抜けるように、会場からは大きな拍手。BBCシンフォニーの音楽会は、暗黙の了解みたいのがあって、どんな良い演奏でも指揮者を呼び出すのは2回(あれっ?3回だったかな)というのがいつもですが、今日は1回多く呼び出されました。お客さんが少し変わったのかな。北欧の人多かったのかな。でも、BBCシンフォニーの音楽会は、おいしいお米を食べてるようで本物のごちそうを食べた幸福がいつもあるようです。
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by zerbinetta | 2011-10-28 09:29 | BBCシンフォニー | Comments(0)

極限の孤独 ズウェーデン、ロンドン・フィル ショスタコーヴィチ交響曲第8番   

26.10.2011 @royal festival hall

chopin: piano concerto no. 2
shostakovich: symphony no. 8

rafaeł blechacz (pf)
jaap van zweden / lpo


タコタコタコ。しかもタコ8。嬉しくて舞い上がっちゃって、いつもより早めに出かけたのに、何故かぼんやり、途中のレスター・スクエアで降りてしまって、あれわたし、オペラ・ハウスに行くってか? と大ぼけ。結局いつもの時間に、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールに着いたのでした。
そういえば、今日はもうひとつ、ショパンをピレシュさんが弾くんだってわくわくしていたら、こちらはピレシュさんが直前にキャンセル、代わりにブレハッチさんが弾くことになりました。ブレハッチさん(というか、名前読めなかった)、お年を召した方だと思っていたら、ステージに出てきたらなんと!お若いじゃない! しまった、カメラ持ってこなかった! なんてこと考えながら、あとで調べたらブレハッチさんって、2005年のショパン・コンクールでぶっちぎりで優勝しているんですね。若くて礼儀正しそうで、清潔で、なんだか新入社員っぽい(わたし、会社勤めしたことないけど)。結構小柄で、華奢で、ハンサムっぽい♥ さてそんな彼のピアノ、多分とっても難しいと思うショパンの曲をさらりと弾いて、難しいように聞こえない。そしてとってもきれいな音色。彼のピアノは一言で言うと、普通。それはもうもの凄い高みで普通なんです。何も足さないし何も引かない音楽。あるがままに完成されてる。何かを主張したり表現しようというエゴは感じられないし、ことさら個性を強調することもない。どこかで目立ってやろうとも思わない。ある意味なにもしない。お刺身。でも、お魚はきちんと適切に締められて、手入れの行き届いた包丁ですうっとちょうどいい厚さに切られてる。そんな見えないところできちんと仕事のされてる音楽。彼はこうして音楽会で弾くときも、おばあちゃんの家のピアノで弾くときも、全く同じ音楽を弾くんだろうな。まだ20代半ばでこんなに完成度の高い音楽をするなんて。とんでもない恐るべき若者です。この人の音楽、集中的に聴きたいと思いました。

そして休憩のあとはいよいよタコ8。タコファンにはたまらない第8番。弦楽四重奏曲の第8番もいいですよね。
指揮者のズウェーデンさんは、去年の直前インフルエンザ降板事件があったので、聴くのは今日が初めてです。ショパンのときも感じたのですが、彼の指揮は音楽をぐいぐい引っ張っていくタイプ。ショパンの協奏曲でも音楽をリードするのはズウェーデンさんでした。もちろんショパンの曲はピアノが弾いてる間、オーケストラはなすすべもなく音を伸ばしてるだけとかなんだけど。
そしてタコは、最初っからめちゃくちゃ意志の強い音楽。大きな筆で畳十畳分の和紙に闇と力強く書くように深い闇を眼前に創出。コントラバスの重い粘りけがタコ心を刺激する。それにしてもこの音楽、もの凄く暗く、孤独。今日改めて気がついたんだけど、ショスタコーヴィチは、この曲を徹底的に、単旋律にして、ひとりの奏者、愚直なまでのユニゾンに託して、魂の孤独、寂寞を表出しているように思います。裸で長いソロを吹く奏者たちは、だれも助けてくれず、独り、寒々しい孤独。やっと旋律が絡み合うところは、安らぎではなく不安を表すよう。なんて厳しい音楽をショスタコーヴィチは書いたのでしょう。そして、ズウェーデンさんは克明にそれをなぞります。速めのテンポでざくざくと切り込んでいきます。安らぎ、休息を求めても音楽はとりつく島もなく進んでいき、聴いてるわたしも孤独。凶暴な第1楽章。ピッコロも小クラリネットも耳をつんざくような叫び。ホルンの叫びのあとの行進曲は、速いテンポのゆえ、早回しにされカリカスチュアライズされた戦争。膝を打ち、これは戦争の音楽なんだ。戦争に対する個の孤独、無力感。でも、戦争ってなに?
これでもか、っていうくらいの速さで始まった第3楽章。リズムが切れまくっていて、トロンボーンもティンパニも完璧について行く。もの凄くすごい。怖い。反対に無表情の第4楽章のパッサカリア、点描的に音が対比されるソロも悲しみというより、悲しすぎて涙も涸れて、抜け殻のよう。そんなところにも平然と春が来る。ってなんだか大地の歌みたいね。雪どけて芽吹く緑。でも、これは希望? 繰り返される不幸の始まり? 謎を孕んだまま音楽は終わったけど。。。結局わたしは独りでそこにぽつんと残された。
でも、わたしにとって戦争ってなんだろう? 直接戦争に関係したことのないわたしには(戦争をしている国に住んでいたことはあるけど)、この音楽は、過去のもの、それとも物語? 多分違う。この音楽は特定の戦争の交響曲ではないと思う。もっと普遍的なものを持っているに違いない。なぜならわたしはとっても心を揺り動かされたもの。それも悲しい物語を聞いたからではなく、孤独な叫びが今のわたしの心に直接反響して。世界から孤立して立ち現れる、孤独感、不安。そして無力の人に否応なく襲いかかる世界。そんな今の現実をもこの音楽は表現しているんではないかしら。だからこそ、直にわたしを震わしめたんではないでしょうか。圧倒的な力の前にどうすることもできない自分。そして答えは与えられない。

オーケストラはいつも以上の力を出し切った演奏でした。ソロの人たちそれぞれが本当に上手い。もう圧倒されて呆然としてしまった音楽会でした。残念ながらマイクは立っていなかったので、録音も放送もないでしょう。まれに聞く名演だったのにもったいなさすぎ、残念。
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by zerbinetta | 2011-10-26 08:47 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

深化する踊り手 マリアネラ・ヌニェス 「眠れるの森の美女」 ロイヤル・バレエ   

24.10.2011 @royal opera house

tchaikovsky: the sleeping beauty

marius petipa et al. (choreography)

marianela nuñez (princess aurora), thiago soares (prince florimund),
genesia rosato (carabosse), claire calvert (lilac fairy), etc.

boris gruzin / ooroh


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ははは、早速「眠れる森の美女」の2回目。今日は大ファンのマリアネラさんとティアゴさんのコンビ。これがゴージャスでなくてなんとする。マリアネラさんの楽しそうな踊りは絶対この演目にぴったりだもん。しかも最後のパ・ド・ドゥは妬ける。本物のパートナーだもの最強。

とかのんきなこと考えていたんですけど。なんと、第1幕(オーロラが最初に出てくる幕です)のマリアネラさんの踊りで心を射抜かれて感動。実はこの演目、楽しめるけど感動はないな(そういうお話なので)と思っていたんだけど、マリアネラさんの踊りを観て感動してしまったんです。もの凄い。まず最初のかわいらしさが尋常ではない。いや、もうだめ。箱入りで大事に育てられた(カラボスに呪いをかけられているので両親はそれを実現させないようにとっても気を遣って大事にしてるんです)、無邪気で素直で可愛らしい娘。もう最初っから反則わざです。そしてもちろん有名なローズ・アダージョ。前回のラムさんもしっかり踊ってたけど、マリアネラさん余裕ありすぎ。あの笑顔で完璧なバランスですもの。マリアネラさんは大好きでずっと観てるんですが、なんだかどんどん深化しているように思えます。本当に今一番勢いのあるダンサー。昨シーズンのジゼルや白鳥の湖、バロ・デラ・レジーナも本当にびっくり感動したけれども、さらにまた一皮むけたような気がします。神ダンサーになる日も近い?ここまで観ただけで、今日のチケット代15ポンドの元は取ったような気がします(まだティアゴさん出てないけど)。
そうそう今日のギャリーさんは英国王子。昨日のお父さんからちょっと歳いってるけど王子さまです。エロ王子。オーロラにあんなこと、こんなことするんじゃないかと心配でした。バックの人たちはずいぶん配役を変えてくるんですね〜。ローテーションでいろんな役を踊るようにしているのかしら。きっとその方が急遽代役が必要なときでもスムーズに行きそうだし。儀典長だけはまたマリオットさんです。お肌きれいですからね〜、変えられないんでしょう。

王様はサウンダースさん、お后様はマクゴリアンさん、儀典長はマリオットさん
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第2幕になってやっと(というのは、プロローグ、休憩、第1幕、休憩、そして第2幕なので)、ティアゴさん登場。最近はティアゴさんの見方が分かってきたので、目は♥。ティアゴさんはニヒルな顔で踊るのがいいんです。そこからにじみ出る小さな感情。男は黙って、みたいな感じがあって、昔の職人みたくていいんですね。ティアゴさんの踊りは、この間のマクレーさんが軽々とぴょんぴょん跳んでいたのと比べると重厚。回転するジャンプもゆっくり目で重く、ダイナミックな感じ。リラの精が見せるオーロラと王子の幻想的なシーンはとても良かったです。ただちょっと残念だったのは、マリアネラさんの方が、少ししっくりいっていなかったような感じ。もちろん、どう見てもプリンシパルの踊りなんですけど、第1幕ほどの凄みがなくて、本人もそれが分かっていたみたいでちょっと笑顔が足りなかったです。なんか首をかしげている風にも見えました。
第3幕の、グラン・パ・ド・ドゥはもう、お二人のためにあるようなもの。役と素が同化しちゃってる〜。こんなの見せつけられちゃったらひゅ〜ひゅ〜と口笛吹かなきゃいけませんね。
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今日の脇役で良かったのは、めちゃちょい役の伯爵夫人のクリスティナ・アレスティスさんは長身で相変わらずめちゃきれい。というのはおいといて、ユフィさんの青い鳥は良かったな。ユフィさんにはオーロラ、それかリラの精を踊って欲しいな。

青い鳥のユフィさんとキャンベルさん
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リラの精はクレア・カルヴェートさん。可愛らしいけどちょっと重たい感じがしました。
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そして我らが蔵さん。今日は長靴を履いたネコだったんだけど、これがもうはまり役! かぶり物をしているので顔は見えないんだけど、どこからどう見ても間違いなく蔵さんの踊り、仕草。蔵さん絶対こういうの好きそう(アリスのカエルとか)。弾けてます。そして動きがアニメチックなんです。日本人ならではの動きだと思います。

赤ずきんちゃんとオオカミにはパジェダックさん、ピカーリングさん、長靴を履いたネコはコープさんと蔵さん
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マリアネラさん、めちゃくちゃ感動したので、チケット取れたらもう一度いい席で観たい! 何度でも観たい(また病気再発)。
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by zerbinetta | 2011-10-24 10:36 | バレエ | Comments(11)

茜さん降板はざんね〜ん 「眠れるの森の美女」初日 ロイヤル・バレエ   

22.10.2011 @royal opera house

tchaikovsky: the sleeping beauty

marius petipa et al. (choreography)

sara lamb (princess aurora), steven mcrae (prince florimund),
kristen mcnally (carabosse), helen crawford (lilac fairy), etc.

boris gruzin / ooroh


春に今シーズン(当時は来シーズン)の秋のバレエのキャストの発表があったときから、そこに当時ファースト・アーティストの高田茜さんが「眠れるの森の美女」のオーロラで主役デビュウするアナウンスを見つけてから、もの凄く楽しみにしていた今日の「眠り」。茜さんはその後、今シーズンからソロイストに昇格して、順風満帆と思った矢先、彼女が怪我をしたという情報が。オーロラ・デビュウはどうなるんだろうって、ドキドキしながら、ウェブ・サイトに載ってるキャスト表を毎日観察して、ついに数日前にキャストが変更になっているのを確認して、がっかりしたのでした。でも、悲しんでるのはわたしたちよりも当のご本人。どうか早くお怪我を治して、またあの溌剌として元気な踊りを魅せてもらいたいです。冬には「くるみ割り人形」のシュガー・フェアリーにもキャスティングされているし(ロール・デビュウ)、彼女のステキな踊りがまた観られることを楽しみに待つことにして、今日の「眠り」を観に行ったのでした。
茜さんの代役はセイラ・ラムさん。事情通の方の噂によると、マリインスキーからオブラツォワさんを呼ぼうとしていたそうですけど(ヴィザが出ずに断念?)、オブラツォワさんはうんとステキな方だけれども、わたしは、急遽代役を外から呼ぶよりも、中のダンサーで見つけた方が、コンビネイションとかもあるし絶対いいと思っていたので良かったです。もちろんオブラツォワさんが始めからキャスティングされていたのなら喜んで観に行きますよ(2年前にマリインスキーが来たとき彼女のオーロラを観ているのですね)。

「眠れるの森の美女」。実は好きなバレエではありませんでした。物語バレエの物語にわりと重点を置いて観ていたわたしは、物語の弱いこのお話にはそれほど感動できないと思っていたからです。なのでチケットも安い席で4枚しか(えっ?!しかって?)取っていないんです。でもね〜〜、バレエを見慣れてきた今は、観たら良かった!ううう、こんなことならもっとチケット買っておけば良かった(まだ取るか?)。

「眠れるの森の美女」のステキなところは、音楽。「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」ほど有名ではないけど、チャイコフスキー円熟期の作曲(交響曲第5番の頃)でとっても充実してる。それに、バレエの踊りがとっても楽しくて充実していて踊りそのものを楽しむ見せ場がいっぱい。これはもう、楽しまなくっちゃって感じです。

カラフルな舞台
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今日のオーロラは上に書いたようにラムさん、そしてキスしてくれる王子さまはマクレーさん。正直、ラムさんは、わたしにとっては、コンテンポラリーはとってもいいけど、古典は高いところで安定していて、上手いけれどもときめかない人なんですが、でもやっぱり上手いので、観ていて清々しますね。茜さんは残念でしたけど、ラムさんのチケットは取っていなかったので、観ることができて良かったです。パートナーのマクレーさんは、とっても切れがあって速い。ずばずばと回って気持ちが良かったです。そう、このバレエ、男性ダンサーの見せ場が結構しっかりあるんですね。

そしてこのバレエ、主役のおふたり以外にも結構たくさんの人に見せ場が振り分けられているんです。まずその前に、踊りはないんですけど、今日の王様(オーロラのお父さん)は、ギャリー(ガリー?)・エイヴィスさん♥いやあ、この人観るとついエロ。いい加減ムッシュのイメジを払拭しなければいけないんだけど、、、強烈すぎて。今日もこの人いつエロに変身するんだって思ってしまいました。ちなみにわたしはギャリーさんを愛してます(告っちゃった)。わたしにはエロく接して欲しいです。そしてお后にはロサトさん。好きなんですよ、ロサトさんも。ロイヤル・バレエはこういう踊らない(踊れば上手いんですよ、ふたりとも)演じる役の人たちがとっても上手いのがステキです。物語にしっかりと真実味を与えてる。

それからカラボスに、クリスティン・マクナリーさん。この人今、ソロイストですが、振り付けもするし、将来はキャラクター・アーティストになるんじゃないかしら。ギャリーさんやロサトさんのように演劇性のとっても高いダンサーだと思います。でもちょっときれいすぎたかな。もっと悪でも良かったかも。それともこの演出はあまり悪を強調しないで、童話の世界を表現しているのかしら。
もうひとり、キャラクター・アーティスト、儀典長役のアラスター・マリオットさん。この人お肌つるつるなんですよぉ〜。最初ずうっと女の人だと思ってた。幕間にキャスト表を見てびっくり。どんなスキン・ケアしてるんでしょう。教えて欲しいっ。

手前から、ギャリーさん(エロ)、ロサトさん、お肌つるつるのマリオットさん
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物語を導くリラの精は、クロウフォードさん。なんだかお久しぶりに観る気がします。プロローグでは踊りがちょっと重たいかなとも感じましたが、後半は良くなりました。

マクナリーさんとクロウフォードさん
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フロレスタンとその姉妹のエンマ・マグワイアさん、ダウィッド・トルゼンシミエッチさん、メリッサ・ハミルトンさん
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赤ずきんちゃんとオオカミのサビーナ・ウェストコンブさんとエリック・アンダーウッドさん
長靴を履いたネコのポール・ケイさんとイオーナ・ルーツさん
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第3幕は、結婚の祝宴で童話の主人公たちがたくさん出てきて踊りを披露、それがとっても楽しいんですけど、中でも良かったのが青い人。じゃなかった青い鳥。今日は直前にキャスト変更になって、ひかるさんと蔵さんの日本人コンビだったんです。もう見るからに息が合っててステキ。青い鳥って幸せの使者だけど、ほんとその通り、幸せな気持ちにさせられました。ひかるさんって踊ってる間にふっと相手を見てにっこりとするんですね。相手を思う気持ちがそういうところにも出ているような気がしてステキです。
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とっても幸福な気持ちになれる「眠れる森の美女」でした。わたしも眠りたい。

ラムさんとマクレーさん
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by zerbinetta | 2011-10-22 07:17 | バレエ | Comments(0)

見つめられてドキドキ タマラ・ロホ 椿姫   

17.10.2011 @royal opera house

- limen

wayne mcgregor (choreography)
kaija saariaho (music)

leanne benjamin, yuhui choe, olivia cowley, melissa hamilton,
sarah lamb, marianela nuñez, leticia stock, fumi kaneko,
tristan dyer, paul kay, ryoichi hirano, steven mcrae,
fernando montaño, eric underwood, edward watson

- marguerite and armand

frederick ashton (choreography)
franz liszt (music)

tamara rojo (marguerite), sergei polunin (armand),
christopher saunders (his father), gray avis (a duke), etc.

- requiem

kenneth macmillan (choreography)
gabriel fauré (music)

lauren cuthbertson, melissa hamilton,
federico bonelli, nehemiah kish, steven macrae, etc.

anssi karttunen (vc)
robert clark (pf)
anna devin (sp), daniel grice (br)
barry wordsworth / rochorus, oroh


トリプル・ビルももう3回目ですね。ヴェテランです。キャスト違いはなるべく全部観るようにしてるんですけど、今回はチケットを取り間違えて、ファースト・キャストの方を2回観ることになってしまったのです。でもいいの! タマちゃんの椿がまた観られるんですもの。ベンジャミンさんのレクイエムもまた観たいけど。それにしても、リストのピアノ・ソナタやフォーレのレクイエムは大好きな曲だけれども、集中してこんなに何回も聴くとは思わなかったです。

やっぱり始まりは、「リメン」。少しずつ感じがつかめてきたからと言って、まだ何を語っているのかはよく分かりません。人の間にいざこざがあったり、怒ったり信頼し合ったりしているのは分かってきたけど、ダンサーは基本的には無表情だし、音楽が何かを表しているわけでもないし、ストーリーがあるのでもない。現代絵画のように観る人の感受性に委ねられている部分が大きいような気がするし、今の段階では、素直によく分からない、としておくのが正解なのかな。でも、大事なのはその分からないの中にある引きつける力であって、わたしもこの作品が嫌い、という訳ではなさそう。遠くに出かけても観る、というほどではないけれども、もしまた演じられることがあれば観に行って頭を悩ませると思う。
マリアネラさんは、いつものにこやかな表情じゃないから目立たないけど、ちゃんと踊っていると言うことで、
ワトソンさん、ラムさん、マリアネラさん
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タマちゃんの椿はやっぱりいい!今日はわりとステージに近い席に座ったのですが、最初のマルグリートとアルマンの出逢いのシーン。こちら側にポルーニンさん(背中向き)でステージの対角線側にタマちゃん。なのでタマちゃんの見つめる視線がポルーニンさんを通過してわたしにぐさり。うわわ〜〜禁断の恋に落ちちゃうよ。もちろんタマちゃんはステージの外にいるわたしなんか見つめてるはずないのだけど、視線の先にいるわたしはもうドキドキ。そして今日は、タマちゃんも相変わらず切れ切れでため息と涙が出っぱなしだったんだけど、ポルーニンさんが前回の役デビュウのときよりもより伸びやかに自在に踊ってるの。ポルーニンさんのダンスいい!ボネリさんがお坊ちゃま系だったのに対して、ポルーニンさんはやんちゃ系。虚勢を張ってるところがあるんだけどすぐ折れる弱さを持ってる以外と純情な若者。タマちゃんはやっぱり強い人。高級娼婦としての自覚がありあり。やっぱり泣ける。それにしても、リストのピアノ・ソナタにこんな物語を付けるなんて、アシュトンって天才。お互いに関係のない音楽とドラマに全く齟齬がなくて、まるでこのために作られたよう。これからは、この曲を聴くたびに悲しい物語を思い出してしまうでしょう。
写真は前回のを見てくださいね。

「レクイエム」は、カスバートソンさんの。前回、ベンジャミンさんの圧倒的なものを観てしまったので分が悪いんですが、でも、こういう作品って観れば観るほど理解が深まっていくし、見えていなかった部分が見えてくるので、しっかりと楽しめます。同じ振り付けなのに踊り手によって表現が違うのを観るもの面白いし、なんと言っても結局、感動してしまいました。最後のシーンのなんて美しいこと。音楽と踊りの見事な融合。

今回の歌は、デヴィンさんとグリースさん、どちらも若手プログラムの人です
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マクレーさん
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メリッサさん
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ボネリさん
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カスバートソンさんとキッシュさん
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by zerbinetta | 2011-10-17 17:21 | バレエ | Comments(0)

フレッシュ・フルーツ・デザート ネゼ=セガン、ロンドン・フィル ロッシーニ「スタバト・マーテル」   

15.10.2011 @royal festival hall

beethoven: symphony no. 2
rossini: stabat mater

eri nakamura (sp), ruxandra donose (ms),
ji-min park (tn), matthew rose (bs)
yannick nézet-séguin / lp choir, lpo


またまたロンドン・フィルハーモニックのマニアック・プログラム。今日は、ベートーヴェンの交響曲第2番とロッシーニの「スタバト・マーテル」です。ベートーヴェンの交響曲は決してマイナーではないけど、第2番はそれを聴きに人が来るプログラムとは言いづらいですよね。凄くいい曲なんですが。

ベートーヴェンの交響曲第2番は、交響曲で初めてベートーヴェンになった曲。溌剌とした若々しさと共に、ベートーヴェンらしいアグレッシヴな激しい感情もあって疾風怒濤。未来に向かって鋭い目線を投げかけてる。そんな音楽をネゼ=セガンさんとロンドン・フィルは意外なほど爽快にきびきびと演奏しました。ブルックナーのときは腰を落ち着けた悠然とした演奏だったのに、ベートーヴェンのこの曲では意外な快速テンポでざーっと風が流れるような演奏で、わたしはとても気に入りました。ネゼ=セガンさん、ベートーヴェンもいい!

後半は、ロッシーニの「スタバト・マーテル」。実は今日のチケットを取ったのは、大好きな応援している指揮者のネゼ=セガンさんを聴きたかったこと(彼の音楽会はなるべく聴くようにしています)と中村恵理さんが歌うからなんです。彼女は、ロイヤル・オペラ・ハウスの若手歌手研修プログラムを修了して昨シーズンからバイエルン国立オペラ・ハウスで歌ってらっしゃるんですね。5月にはロイヤル・オペラに凱旋したのを聴いているのですけど、とってもステキな旬の若手です。
軽妙なオペラ・ブッファの作曲家、ロッシーニのまじめな宗教曲。厳粛な雰囲気で始まるけど、4人の歌手それぞれにステキな歌が用意されているのはオペラ作家ロッシーニの面目躍如。イタリア人の歌に対する感覚ってとっても凄いと思う。歌の力を完全に信じ切って信頼してる。こういう歌、上手く歌えたら本当に気持ちよさそう。
若手の歌手(メゾ・ソプラノのドノセさんはちょっと年上かな)を起用した今回の演奏は、極上のクリームのデザートのようなまろやかでとろけるような感じではなかったけど、フレッシュなフルーツのような感じは、聴いていて爽快でした。それにしても恵理さん、とっても成長しましたね。キャリアに伴う自信に満ちている感じだし、ほんと今、筍のように旬。そして今日はロンドン・フィルの合唱もとっても良かったです。アマチュアだけどしっかり練習してきた感じ。とても好印象。ネゼ=セガンさんの音楽も多分奇をてらわない感じで、オーケストラと合唱をしっかりまとめていました。しみじみと満たされた音楽会でした。大好き♥こういうの。

恵理さんとドノセさん(男声陣はわたしの位置からだとオーケストラに隠れて上手く撮れませんでした)
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by zerbinetta | 2011-10-15 05:14 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

聖母の祈り リャーン・ベンジャミン@ロイヤル・バレエ レクイエム   

14.10.2011 @royal opera house

- limen

wayne mcgregor (choreography)
kaija saariaho (music)

leanne benjamin, yuhui choe, olivia cowley, melissa hamilton,
sarah lamb, marianela nuñez, leticia stock, fumi kaneko,
tristan dyer, paul kay, ryoichi hirano, steven mcrae,
fernando montaño, eric underwood, edward watson

- marguerite and armand

frederick ashton (choreography)
franz liszt (music)

zenaida yanowsky (marguerite), federico bonelli (armand),
christopher saunders (his father), gray avis (a duke), etc.

- requiem

kenneth macmillan (choreography)
gabriel fauré (music)

leanne benjamin, marianela nuñez,
carlos acosta, rupert pennefather, ricardo cervera, etc.

anssi karttunen (vc)
robert clark (pf)
madeleine pierard (sp), zhengzhong zhou (br)
barry wordsworth / rochorus, oroh


先日、ゼナイダさんとボネリさんのリハーサルを観たのに、彼らが踊る回を取ってなくて悔しい思いをしていた「マルグリートとアルマン」。チケットを求めようにも上の方の遠い席以外はほぼ売り切れ。もうダメかなーとあきらめつつもロイヤル・オペラ・ハウスのウェブ・サイトをこまめにチェックしてたら、なんと!ストールズ・サークルの立ち見、しかも一番良いセンター、のチケットが1枚だけ出て狂喜乱舞!したのもつかの間、その日は、お財布を職場に忘れて来ちゃってカードがない。カード番号を必死に思い出そうとしても思い出せず、とにかく誰かにとられないように、チケットをバスケットになるべくキープしつつ(30分だけバスケットに保持できます)、次の日の朝、奇跡的にまだ残っていたチケットを無事買ったのでした。6ポンドなり。この席本当に良いんですよ。すぐ目の前の席は60ポンド以上(演目によっては100ポンド)もするし、ちびっ子のわたしは座ると舞台が見えなくなっちゃうかも知れないから、障害物のない立ち見の方がいいんです。

まずはまた「リメン」。前回は誰が誰だか分からなかったので、今回は誰が踊っているのかしっかり観ることにしました。同じキャストです。今日は舞台の全体が見えるので、舞台上で何が行われているかよく分かりました。幾人ものダンサーたちがソロだったリペアになったりして舞台上で同時に動いているので、こういう演目は一度、全体が見通せる席で観ておくのも大事だなって思いました。やっぱり目を引いたのは、ベンジャミンさんやワトソンさん、ラムさんとアンダーウッドさんのペアも良かったです。金子さんも上手い!でも、まだ何を語っているのか分かりませんでした。男女のいろいろを語ってるみたいですけど。

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右端に平野さんがいらっしゃいます
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さあいよいよ「マルグリートとアルマン」は、ゼナイダさんとボネリさん。タマちゃんポルーニンさんとはどう違うでしょうか。ゼナイダさんはロイヤル・バレエの中で屈指の長身、タマちゃんはちびっ子ですからそれだけで全然違うのですけど、ゼナイダさんの踊りは長身を生かしてダイナミック。リハーサルのときはまだ手探りだった表現も完全にマルグリートと一体化して、短い人生を駆け抜ける。プロローグのあとの華やかな社交場のシーンで彼女が出てきたときの息をのむ美しさ。強さも脆さも両方持っている女の人。ボネリさんのアルマンは、なんか世間知らずというか、甘いというか、そんな田舎のお坊ちゃまな役を見事に演じていたと思います。ふたりは深く愛し合っていたけど、マルグリートは何故アルマンをという疑問は残ってしまいます。恋は盲目。アルマンの父親に許されなくても、アルマンに憎悪と共に拒絶されても愛し続ける強さはどこから来るのでしょう。一方のアルマンは物事の表面しか観られずに、うちに隠された本質を観ることができなかったのに。でも、最後の短いふたりの踊りは、全てを許し全てを解決する力に満ちてる。愛って舞台の上で起こってることで、客席から観るものではないんだなってふと思ってみました。今日の公演で印象に残っているのは、マルグリートとアルマンが出逢って恋に落ちるか落ちないかの瞬間をとらえたふたりのパ・ド・ドゥ。ゼナイダさんの踊りにこんなわたしが恋していいのかな、という初めて気づくかわいらしさを感じました。

今日はできるだけエロ公爵(右端)からは目を離すようにして
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ゼナイダさんとボネリさん
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そして、ベンジャミンさんのレクイエム。これはもう本当に泣いた。この作品の凄さを感じました。最初っから彼女の神々しさに魂を引きつけられたのだけど、特に良かったのが、ひとりで踊ったピエ・イェス。彼女の踊りを観て、このバレエの深い意味を感じることができたし、彼女のあまりに純粋無垢すぎて気が触れているようにさえ見える表現に鳥肌が立ちました。ベンジャミンさんのレクイエムは凄いということは聞いていましたが、ここまでとは。奇跡的な作品ですね。残念ながら、彼女の踊る日は今日が最後なので、もう観ることができませんが、1度でも観ることができて幸運です。ベンジャミンさん自身がもう引退も近いお歳なので、もし彼女の踊るレクイエムを観る幸運な機会に恵まれたら、万難を排して観ることを強くお薦めします。
そして、今日はイェス(?)を踊ったアコスタさんもとても良かった。今シーズンでロイヤル・バレエを辞められるという噂だけど、まだまだ全然踊れるし、身体能力は驚異的。難しいポーズを意図も軽々とこなしているように見えました。そんな余裕があるから、芸術表現に集中できるのですね。で、忘れてならないのは、マリアネラさん。最初の群舞の中から立ち現れて踊ったときは、目が彼女を捉えて離せませんでした。決して華やかな高度な動きを踊っているわけではないのですが、ぐっと心を引きつけられるものがありました。わたしは彼女の大ファンですがそれを抜きにしてもです。表現のレヴェルが圧倒的に違うと感じました。
ベンジャミンさんをサポートしたペンネファーザーさんもセルヴェラさんもとっても良かった。このレクイエムは忘れ難き宝物になりました。

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今日の歌手はピエラルドさんとゾウさん。おふたりともジェッテ・パーカー・ヤング・アーティスツ・プログラムの一員です。そして指揮者のワーズワースさん
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セルヴェラさん
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マリアネラさん
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アコスタさん
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ベンジャミンさんとペンネファーザーさん
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by zerbinetta | 2011-10-14 23:27 | バレエ | Comments(2)

向こう側からの語りかけ 内田光子、シューベルト最後の3つのソナタ   

13.10.2011 @the concert hall, reading

schubert: piano sonata d958, d959, d960

mitsuko uchida (pf)


内田光子さんは今どうしても聴いておきたいピアニストのひとりです。ミシュランの星で言ったら、出かけてでも聴きたい3つ星。ロンドンで最も尊敬されているピアニストのひとりです。しかもシューベルト。そんなわけで隣町のリディングまでのこのこ聴きに行ってきました。ロンドン市内の地下鉄の駅から電車によるけど30分ほど。でも実は、聴きに行くの心配だったんです。迷子になるからじゃないですよ。一度来たことあるし。シューベルトの最後の3つのソナタ、この世の音楽じゃないんですもの。彼の世から聞こえてくる誰そ彼どきの音楽。万が一、向こうに引き込まれちゃったらどうしよう。そういう心配があったんです。

プログラムはD958から順番。休憩を挟んでD960です。光子さん、いつものように颯爽とステージに登場。もうそのときから音楽が始まってます。ピアノに向かったとたん、ばーんとフォルテシモの和音が叩かれて。D958は、崖の縁に立っているけれども、まだこちら側に足がついている音楽。光子さんの演奏は、予想に反して、まだまだこちら側で生きている音楽として聞こえたのです。第1楽章が力強く立派な感じで、生命の灯りががしっかり灯ってる。ときどき向こう側に行きかける瞬間がふわりと表れるけどすぐにこちら側に引き戻される。そんな感じを光子さんのピアノから聴きました。第2楽章の歌もとってもきれいで、しみじみと慈しむように歌われます。でも、もしかして別れの歌。続く第3楽章と第4楽章はあちら側とこちら側の曖昧な場所でゆらゆらと踊ってる。ちょっと押せば向こう側に落ちてしまうし、ふと我に返ってこちら側に引き戻される。足はこちら側を踏んでるんだけど。最後はこの世界に足をしっかり下ろすような強い和音で終結。ほっと我に返る。

D959では、最初、一見健康的な感じで、こちら側に戻ってきた感じ。ふっと安心する。シューベルトは前曲の最後のふたつの和音で生命を取り戻したのでしょうか。でも、シューベルトはこの頃から向こうの世界に、足音の聞こえない世界のとりこまれてしまっているような気がするのです。元気な音楽の中にも油断するとふうっと魂が抜けていってしまって幽玄の世界を彷徨うような。最後の分散和音で魂はいよいよ体から自由になってしまう。第2楽章に入るといよいよ命が明滅し始めます。そしてついに向こう側への扉が開かれてしまう。力強く弾かれる分散和音と共にあちらの光りが差し込んで来るみたいに。シューベルトの魂は飛んでしまったのでしょうか。音楽が修飾されていくのはもう再び元の世界には戻れないことを刻印するよう。スケルツォの幻想的な煌めき(宮沢賢治の詩の光りを感じます)に次いで大好きな大好きなフィナーレ。一見明るい音楽なのにとっても哀しい。すぐ口ずさみたくなるメロディなのにこの世の音楽ではない、どこかに引き込まれそうになる逢魔が時の音楽。シューベルトの音楽の中で最も不思議な音楽ではないかしら。

いよいよ、最後のソナタ、D960。別の世界に入ります。音楽は彼の世から聞こえてきます。もうそれは始めから。光子さんは弱音はそれはもう幽かに聞こえなくなることをいとわず静寂の世界に引き込むように弾きました。シューベルトの音楽は、とてもインティメイト、個人的で親密。初期の頃の作品はまるでお話しするかのように音楽が書かれてるけど、今はまるで向こう側の世界の人とお話しするよう。光子さんはまるでシューベルトとお話してるみたい。光子さんは決して何かを主張せず静かに話を聞いている。そしてわたしとシューベルトの世界を混じりけなしに橋渡ししてくれるの。そこにあるのは純粋にシューベルトの世界。光子さんは巫女。
なんか、シューベルトの音楽の解説のようになってしまって、光子さんの演奏についてはほとんど触れていないように思われたかも知れないけど、違うんです。光子さんの演奏からはシューベルトの音楽しか聞こえないんです。そしてそれは、こちらの世界と彼の世界を行き来する、不思議な世界なんです。多分この音楽をこのように演奏する人はあまりいないのではないかしら。聴いていると音楽の外見がとってもよく見える演奏はあるけど、音の後ろにある世界にまで気がつかされる演奏ってあまりないように思うんです。
そう光子さんがシューベルトの音楽を深く愛していらっしゃるのが分かる。それは、光子さんが自分が表現したいものがそこにあるからではなくて、シューベルトの語りを静かに心に受け入れて、それをそのまま表現しているから感じられるの。そしてわたしは、光子さんを通して、わたしの大事なものとしてシューベルトの音楽を愛す。この音楽のなんと奥深く美しいことでしょう。生と死の世界を自由に行き来してしまったシューベルトの見せてくれる彼の世界。まるで臨死体験したみたいな感覚にさせられる恐ろしい音楽。
光子さんはわたしにもの凄く恐ろしいものを見せてくれたのかも知れない。でもそれはそのままシューベルトの世界なのです。来年の春に、この3曲をもう一度光子さんのピアノで聴きます。そのときはどんな風に感じられるでしょうか。それは楽しみでもあり怖くもあります。渡っては行けない川を渡ってしまいそうで。死ぬときはこの曲を聴いていたい。。。
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by zerbinetta | 2011-10-13 10:47 | 室内楽・リサイタル | Comments(0)

わたしブルックナー女子じゃありません! アンスネス、ビエロフラーヴェク、BBCSO ラフマニノフ&   

12.10.2011 @barbican hall

rachmaninov: piano concerto no. 3
bruckner: symphony no. 4

leif ove andsnes (pf)
jiří bělohlávek / bbcso


なんと! 3日連続でブルックナーです。でも、わたしブルヲタじゃありませんから。ブルックナー女子じゃありませんから。
でも、ブルックナーだからって会場を見回しても男性ばかりって感じじゃありませんよ、ロンドンは。今日は女性が多いです、それも日本人女性。ブルックナーなのに。BBCシンフォニーなのに(BBCシンフォニーはロンドンでは一番地味な(でも上手い)オーケストラで、日本人のお客さんいつも少ないんです)。あっそうか、アンスネスさんがピアノを弾くから? アンスネスさんってそんなに日本人女性に人気なのかな。とか言いつつ、わたしもアンスネスさんのピアノを聴きに来たのでした。アンスネスさんは、初めて聴いたときびびっときた音楽家のひとりなんです。

アンスネスさんが弾くのは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。そういえば今日がBBCシンフォニーのシーズン開幕。今年はプロムスでBBCシンフォニーを聴かなかったのでずいぶんと久しぶりです。指揮はもちろんBBCシンフォニーの主席指揮者、我らがビエロフラーヴェクさん。おふたりでそろってステージに出てこられて、お久しぶり、そして、あっやっぱりかっこいい。アンスネスさんって清潔感漂う爽やかな好男性ですよね。
えっ?!このテンポで!というはっとするような快速テンポで始まって、1拍目を飛ばしてピアノが入った瞬間からアンスネスさんのピアノ世界。アンスネスさんの水晶のようにきらきらとした、でも、決して派手やかでない落ち着いた音が、ラフマニノフの郷愁に満ちた音楽を飾ります。暗い中にさりげなくきらきらと光る想い出。少し早めのテンポなのに、音楽はすらりと流れつつ、とってもロマンティック。ロマンティックに大袈裟な身振りは要らないんですね。オーケストラも、特に低音の弦楽器やファゴットが暗闇に広がる霧のような雰囲気を醸し出します。BBCシンフォニーは、重めのほの暗い音色が得意のオーケストラなので、この曲の仄かな色彩感にぴったり。ビエロフラーヴェクさんも積極的に音を付けていきます。でもやっぱり、アンスネスさんのピアノ。どう言葉にしていいのか分からないのだけど、わたし、この人のピアノは初めて聴いてわたしの琴線を弾いたときから、恋人に対する気持ちのようなものがあるんです。恋人がわたしの目の前でラフマニノフのピアノ協奏曲を弾いている。。。なんてステキな現実。
わたしはこの曲は第1楽章が好きなんですけど、第2楽章もよく聴いてみるととても面白いのですね。第1楽章の主題がワルツになって出てきて、おお、ラフマニノフもしっかり構成考えてるな、なんて上から目線。思いが満ちてきたり引いたり、気持ちが潮のように高ぶったり和いだり、ピアノの音楽の上に漂うまま。抱かれるように安心して心を預けます。
アンスネスさんはもの凄いロマンティックなピアノ弾きではないでしょうか。ただ、ロマンティックといってもそれはデフォルメされたものではなく、もう気がつかないほどにさりげなく、でも確かに。ますます彼のことを好きになった夜でした。
アンコールはグリーグの叙情小曲集から。にぎやかな踊りの音楽。十八番。そういえば、まだ先だけど、アンスネスさん、リサイタルがあるんですね。もう待ち遠しいっ。

休憩のあとはブルックナーの交響曲第4番。ビエロフラーヴェクさんとBBCシンフォニーのブルックナーは何年か前に交響曲第5番のごつごつした手作り感大の巨大な音楽を聴いているので、およそどんな演奏になるのか想像はしていました。そしてその想像が音になりました。ビエロフラーヴェクさんは最近はやりの流麗な音楽をする人ではありません。指揮姿も決してかっこいいとは言えないし(でも好き)、一刀彫りのような勢いのあるフォルムの音楽をする人だと思います。だから、ブルックナーの幾分洗練さにかけた、ログハウスのような質感の音楽にぴったり。それはそれでとっても味わいの深い、滋味のある、田舎のけんちん汁のようなブルックナーになるのです。小手先の表現を嫌った、無骨な音楽。そしてそれをBBCシンフォニーの音が正しく支えます。このふたりの相性はぴったり。
今日のブルックナーは特に第4楽章が良かったです。もの凄くゆっくり、といってもめちゃくちゃ遅いわけではなく、普通なら少し早めのテンポで演奏する部分を前後に合わせてゆっくり演奏したのですが、それが、今まで聴いたことのない音楽を生み出していて、とても新鮮でステキに聞こえました。
わたしにとってこの曲は、この間聴いた、ハイティンクさんとロンドン・シンフォニーの圧倒的な名演が心に残ってるんですけど(つい最近CDで発売になりました!)、今日のビエロフラーヴェクさんのブルックナーも心に浸みる良い演奏でした。
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by zerbinetta | 2011-10-12 09:09 | BBCシンフォニー | Comments(0)