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さよならロンドン ファウスト/ケラス/メルニコフ ピアノトリオ   

29.10.2012 @wigmore hall

haydn: piano trio in D hxv24
dvořák: piano trio in f minor

isabelle faust (vn)
jean-guihen queyras (vc)
alexander melnikov (pf)


今日、日本行きの飛行機に片道切符で乗ります。ロンドンの生活もお終い。でもその前にひとつやることが。ってまた音楽会?ロンドン生活最後の音楽会は、ウィグモア・ホールでランチ・タイム・コンサート。ヴァイオリンのイザベル・ファウストさん、チェロのケラスさん、ピアノのメルニコフさんのピアノ・トリオ。これを聴くためにホテルは、ヒースロー・エクスプレスの駅のそばに取ったんです。いつもはチューブでちんたら空港に行くのにね(ヒースロー・エクスプレスは15分で空港まで行くので音楽会が終わってからで間に合うのです)。と珍しく準備万端だったのに音楽会のチケットはのんびりしてて気がついたときは、がーん、すでに売り切れ。せっかくの完璧な計画がーーーとお間抜けさ加減に呆れる。でもそこがロンドンの良いところ、何とかリターンの席を後ろの方の隅っこに取れたのでした。

午前中にはコヴェントガーデンに行ってきて、何とか音楽会に滑り込んだもの(間に合わないかと思いました。はーはー)、この音楽会のことを書く資格はわたしにはありません。気合い入れて聴くつもりだったのにぼんやりしちゃって。もうこれで最後なんだなぁ〜って思うと集中しなくちゃと思うのにとろーんと。とっても耳にも体にも心地よい音楽でね。それに後ろの方でステージもよく見えなかったから。ハイドンのもドヴォルジャークのも実はよく知らなくて(CDではずうっと昔に聴いたことあるはず)、ほとんど初めて聴くようなものなので、音を追うのに精一杯。演奏は本当に心地よく、3人のアウト・スタンディングなソリストが、身勝手にぶつかり合うことなく、すうっと自然にひとつになって音楽を作っていくのだけど、それでいて、個々の主張はちゃんとあるような熟成されたトリオ。長く組んでいるのかしら。3人が相手の音楽にそれぞれ奉仕しているのね。きっと一緒に弾いてて楽しいんだろうな。ちゃんと聴けなくて残念。ごめんなさい。

音楽会が終わると、急いで出てきて、ホテルに預けた荷物をころころ引きずって、予定通り電車に乗って空港へ。様々な思い出の残るロンドン。正直言って、あまり好きな町ではなかったけど音楽会だけはべらぼうに安かったのでたくさん聴けて幸せ貧乏。でも、心は少しは豊かになれたでしょうか。音楽の聴き方が少しは上手になれたでしょうか。今日の音楽会のように、ただぼんやりとうっとり時間を過ごしただけでちっとも変わっていないような気もするけど、大事な大事な出会いもあったことは事実。もう2度と来ることはないだろう、音楽会的には濃密な時間。その宝箱に静かにふたを閉めて熟成を待とうと思います。ワインが時を経ておいしく熟していくように、わたしのロンドンの音楽もわたしの中で馥郁と熟成してわたしの体になりますように、と願いを込めて、ロンドン音楽会日記を閉じることにします。

というわけで、ロンドンで聴いた全ての音楽会を綴った -ロンドン音楽会日記- はこれでお終いです。miu'z journal*2を続けるかどうかはまだ決めていません。とりあえずは、のらりのたりと音楽について書いていこうかなとゆるく思っています。でもあまり期待しないで下さいね(そんな人いないか)。
今まで、どうもありがとうございました。わたしもとっても楽しかったです。

さようなら。わたしの竪琴。
さようなら。
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by zerbinetta | 2012-10-29 23:51 | 室内楽・リサイタル | Comments(4)

ブリテン・シンフォニアお誕生日コンサート アリーナも出るよ   

27.10.2012 @barbican hall

purcell: hear my prayer, o load
nico muhly: looking forward
bach: concerto for two violins in d minor
britten: les illuminaties
james macmillan: one
prokofiev: symphony no. 1
pekka kuusisto: omg hbd
bach: keyboard concerto no. 5
moondog / macgregor: sidewalk dances

bitten sinfonia, britten sinfonia voices with many guests


ブリテン・シンフォニアの二十歳のお誕生日音楽会。オーケストラに関係の深いゲストの人たちをたくさん迎えて盛りだくさんの音楽会。アリーナやクラシック、ジャズ・ヴァイオリニストのクーシストさん、テナーのパドモアさん、作曲家のニコ・マーリーさん、ピアノのマグレガーさんなどなど。幅広い音楽性のゲストが集まったところは、ブリテン・シンフォニアの面目躍如。

ブリテン・シンフォニア・ヴォイシスの合唱でパーセルの「主よ、わたしの祈りを聞いてください」から始まって、あれれ楽器が入ってるよって思ったら、そのまま重なってマーリーさんの「looking forward」期待とか希望って感じの意味でしょうか。シームレスにそのままパーセルの音楽につながって、ロイヤル・バレエで初演された「マシーナ」でもそうだったけど、バロック音楽との相性の良さを感じました。美しい曲。マーリーさん、オーケストラでチェンバロ弾いてました。髪型で浮いてたけど。

その次はわたしのお目あてのアリーナの弾くバッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲。もちろんアリーナひとりで2挺のヴァイオリンをアクロバット弾きするのではなく、もうひとりはクーシストさんが担当。アリーナが弾き振りです。といいつつ、アリーナが弾き振りすると、去年のAAM(アカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージック)のときもそうだったのだけど、どこか引っ込み思案で、前に出てぐいぐいと音楽を引っ張る感じじゃなくて、遠慮気味にアインザッツを揃える感じになるんです。というわけで、音楽はどちらかというと(前面に出てるわけではないけど)手練手管の鬼才、クーシストさんが若干リードする感じになりました。アリーナはまだ、オーケストラをリードするよりも、指揮者のいるオーケストラと競奏する方が持ち味が出るんじゃないかなって思いました。でも、控えめながらも肩肘の張らないステキなバッハでしたよ。(あとでプログラムを見たら、アリーナの弾き振りではなくて、振りなしでした。確か事前アナウンスでは弾き振りになってたんだけど。。。うっかりしてました)

というわけで、アリーナを聴きに来たわたしにとってはあとは付録のつもりだったんだけど、わたし的には今日はパドモアさんが歌った、ブリテンの「レ・イルミナティ」が圧巻でした。パドモアさんはほんとにもう大好きな歌歌いだし、ブリテンの音楽がとってもシンプルで素晴らしいの。短い歌曲が9曲続くのだけど、どれも詩情があって、それにパドモアさんの声がのってきて、見事な夕焼け色の世界。これを聴いただけでも十分幸せだな〜。この曲のとき、アリーナは一番前の隅っこの方の席で聴いてました。パドモアさんの出番が終わった次の曲では、アリーナの隣にパドモアさんが入らして、一言二言言葉を交わして音楽を聴いていました。そうそう、全然関係ないけど、この間のアリーナのソロ音楽会に引き続いて、チアロスキュロス・カルテットのセカンド・ヴァイオリンの男の子が聴きに来ていました。彼もアリーナの追っかけ?

マクミランさんの音楽は、何回か聴いたけど、スコットランドのローカル作曲家のイメジです。ローカルだけど国際的だから流行のグローカルだと思ってググってみたら、グローカルって国際的だけどローカルな活動のことなんですね。マクミランさんは反対。ローカルなものを強く根に持ちながら、国際的な普遍的なセンスを持ち合わせている。静かでシンプルな音楽はいつもそう。

さらに(今日は盛りだくさん)、プロコフィエフの古典交響曲。古典と言いつつこの曲ちっとも古典じゃないと思うんですね。結構プロコフィエフらしいとげがいっぱい刺さってる。指揮者のいない、ブリテン・シンフォニーの演奏は、指揮者のリードする個性がないゆえ中立的で、プロコフィエフのとげが丸くなってしまった感じがしました。古典的な演奏も以前はいいと思ったけど今日はシャープな現代的な演奏を聴きたいと思ってしまったのでちょっと物足りなかったです。意外とOAEなんかが昔の楽器、昔のアーティキュレイションで演ったら面白いかなぁ。20世紀の作品だけど。ここでやっと休憩。

休憩後はいきなり雰囲気変わって(何が始まるのかと思ったよ)、クーシストさんのソロで、なんて言うのでしょう、現代音楽とポピュラー音楽のクロス・オーヴァー。エレクトリック・ヴァイオリンを足下にあるたくさんのペダルで音を加工しながら(多分半分即興で)音楽を作っていくんだけど、正直あんまりよく分かりませんでした。結構長かったぁ。

そして、いよいよマグレガーさん登場。マグレガーさんは音楽会シリーズを持ってたくらいブリテン・シンフォニアと親密な関係。この人もクラシックとポピュラーの間を自由に飛び回る音楽家。超かっこいい女性。最初は弾き振りでバッハの協奏曲BWV1056。彼女のバッハ、評判いいので楽しみでした。そして楽しみ通り。バッハの持つかちかちとした矩形が角が取れて丸みが帯びた感じで、幾何学的なピアノの音がとんとんと心を打つ。智と情のとっても絶妙のバランス。

最後は、ムーンドッグ。アメリカのジャズの音楽をマグレガーさんが編曲したそうですけど、ジャズに疎いので原曲はちっとも知らず。でも最初っから親しみやすいのでとっても楽しめました。マグレガーさんはここでは弾き振りと、ピアノが入らない曲では指揮台に立って指揮をしました。黒のパンツスーツ姿のマグレガーさんがかっこよくて超ステキ。指揮姿のマグレガーさんもっと観たいと思いました。ドラムスとか、サックスとかゲストの音楽家がたくさん入って賑やかにお誕生日をお祝い。それにしても今日の玉手箱をひっくり返したような音楽会。ブリテン・シンフォニアの柔軟性をしっかり堪能できたわ。

ブリテン・シンフォニアのお誕生日なのに肝心のブリテン・シンフォニアについて書かなかったので最後に。このオーケストラ、多分全然有名じゃないけど無茶上手いです。古楽から(古楽器を積極的に使うオーケストラじゃないけど)、現代物、さらにはクラシックの外側の音楽まで、幅広い適応性で、どれでも一流のレヴェルでこなすし、指揮者を立てない団体なので自律的なアンサンブルも完璧。全体がひとつの生命のように演奏します。レパートリーもユニークだし、もっと知られてもいいなぁ(と言いつつわたしも聴いたの2回目)。
何はともあれお誕生日おめでとうございます。これからのさらなる発展を願って。30年後、50周年のお誕生日でお会いしましょう(ってわたし、いくつになってるんだ)。
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by zerbinetta | 2012-10-27 22:54 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)

平田桃子さんのタイタニア バーミンガム・ロイヤル・バレエ   

27.10.2012 @sadler's welles

birmingham royal ballet: autumn celebration

the grand tour
noël coward (music)
joe layton (choreography)

faster
matthew hindson (music)
david bintley (choreography)

the dream
felix mendelssohn (music)
frederick ashton (choreography)

césar morales (oberon)
momoko hirata (titania)
mathias dingman (puck)
jonathan caguioa (bottom)

dominic grier / royal ballet sinfonia, birmingham cathedral choir



桃が大好きです。日本の水蜜桃をジュルッと食べるのが3度の飯より大好きなんだけど、ヨーロッパでは、平たい桃がジュルッとはいかないけれど味が似てておいしいです。平たい桃が出る季節にはちょこちょこ買ってきて毎日食べます。love。って何書いてるんでしょう。今日はバーミンガム・ロイヤル・バレエのロンドン公演で平田桃子さんがタイタニアを踊るので観に行ってきました。(平たい桃つながり)
今、引っ越しのためフラットを開けたのでホテル暮らしです。ちょっとした理由があってヒースローまですぐ行けるヒースロー・エクスプレスのターミナル、パディントンの近く。普段、空港に行くのに安い地下鉄しか使わないからこの駅は初心者。この駅、ふたつの駅がくっついたみたいで複雑で、しかもいつものごとく週末の地下鉄の運休があって、どこで乗っていいのか右往左往。そんなことで、会場のサドラーズ・ウェイルズには遅刻。雨にも降られて、散々。最初の演目は外のモニターで観ることに。

というわけで、2つ目から。今日は、桃ちゃん(っていつからこんなに馴れ馴れしいんだ!)のタイタニア一筋なので、ほかに何があるのかどんな演目なのか知りませんでした。でも、「ファスター」は観たとたんに訳が分かる作品。ロンドン・オリンピックを記念して作られた作品なんですね。たくさんのダンサーたちが運動選手の走る姿や競技している姿を躍りで表したものです。軽快な音楽に、速いステップだったりスロウモーションだったり、ちょっと挫折のドラマとかもあって、でも、全体に明るくきびきびとしてエネルギーに溢れていて観ていてすかっとする感じ。

「ドリーム」は同じ作品をロイヤル・バレエでも観ています。シェイクスピアの原作が好きだし(バレエの台本は原作の錯綜とした物語をすっきりと整理してるのでもっと好き)、メンデルスゾーンの音楽が大好きなので好きな作品。
バーミンガムの演出は、振り付けは同じなんだけどロイヤルに比べて演劇色が薄くなってます。だからコミカルなシーンでの笑いはロイヤルより少ないかな。踊りが一緒なので、演技の部分が弱いなって感じてしまいました(振り付けが違うと全体が変わるのでそういうふうには感じなくなるのでしょう)。
桃子さんは、先日バーミンガムで観た「白鳥」ではパ・ド・トロワを踊っていたのだけど今日は主役。スペインのコッレラ・バレエにプリンシパルとして出られて、今年またバーミンガムに戻ってこられたソロイストの人。プリンシパルに上がる候補の一人かしら。とても切れがあってでも柔らかくてステキでした。この人は脇でよりも主役で水を得る人。プリンシパルになって欲しいです。
どういうわけか、日本のバレエ・ファンの方の中には、謙虚すぎるのか(皮肉)「日本人は、外国人に比べて云々、体型が」って言う人いるんですけど(オペラ・ハウスで近所に座った日本人の会話を何回か盗み聞きしました)、全然そうじゃないです。手足長いし、顔ちっちゃいし、上手いし、ダメだったら第一、一流のバレエ団で踊れないでしょう。そんな甘いものじゃないです。と、柄にもないことを書き出したのは、桃子さん、ダンサーの中では若干お顔が大きい(でもわたしたちに混ざるとちっちゃい)ので、もしかして役を選ぶかもしれないな、とは思いました。でもきっと、上手さや演技で克服していくんだろうな。タマちゃんやマクレーさんの好例あるしね(失礼)。でも桃子さんのマノンやオーロラ、シンデレラとか観たい。絶対かわいらしいに違いないっ。

モラレスさんのオベロンもディングマンさんのパックも良かったんですけど、あれ、なんかちょっと違和感?と思ったのは、後で友達が指摘して気がついたのだけど、パックが大きいんですね。オベロンよりも大柄。役としてはパックは小僧という感じなのでアンバランスなのが違和感につながったんですね。でも、ディングマンさんはピョンピョン跳ね回る役を大きな体をものともせずピョンピョン跳ねてました。モラレスさんもステキなオベロンで、ソロや桃子さんとのパ・ド・ドゥでステキな踊りを見せてくれました。
でもやっぱり今日は、桃子さんだわ〜。桃子さんかわいらしかったもの。キャラに合ってる。もっと桃子さんも観たいな〜と思っても今回が最後のロンドン・バレエでした。

桃子さんとモラレスさん(右)、ディングマンさん(左)
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by zerbinetta | 2012-10-27 02:40 | バレエ | Comments(2)

ショスタコーヴィチ交響曲第16番!! スクロヴァチェフスキ、ロンドン・フィル   

26.10.2012 @royal festival hall

brahms: piano concerto no. 1
bruckner/skowaczewski: adagio from string quintet
shostakovich: symphony no. 1

garrick ohlsson (pf)
stanisław skowaczewski: / lpo


うっかり舌をかんでしまいそうなお名前の元気老人、スクロヴァチェフスキさんとロンドン・フィルの音楽会。10年くらい前に聴いたときにすでにおじいさんだったけど、今日もおじいさんでした。90歳?でも、さすがに指揮台からぴょこんと飛び降りて喝采を受けるのはないけど、矍鑠としていて、指揮台に安全バーもなし。もちろん立って指揮ですよ〜。お元気〜。

音楽会はいきなりブラームスの大作交響曲のようなピアノ協奏曲第1番。ピアノはギャリック・オールソンさん。わたし的にはオールソンさんといったら、ブゾーニのピアノ協奏曲のCDで弾いてる人、なんだけど。聴くのはUSで以来だからずいぶん久しぶり。アメリカを拠点に活躍してる人は、ヨーロッパに時々しか来ないし、反対もまたしかり。大陸の人でイギリスに滅多に来ない人もいるしね。

ぎゅーんと凝縮したエネルギーで始まる音楽は、作曲者の年齢に似合わない枯れた色合いがあるのだけど、でも若いエネルギーに溢れていて、御年90歳のスクロヴァチェフスキさんは、歳に似合わないフレッシュなエネルギーが音楽から立ち上ってきて、勢いのあるバネが弾けるような始まり。オーケストラの重心がちょっと高いのが玉に瑕だけど、グレイ・スケールの渋い色彩はブラームスのもの。オールソンさんのピアノは、体育会系の重いヴィルトゥオーゾという印象だったけど(だってブゾーニの協奏曲)、派手ではないけど安定した音楽がステキでした。どっしりと落ち着いた感じが良い感じ。第2楽章が特にステキでした。でも、なんだかこのお二人の音楽、時間を超越しているようで、決して激遅の演奏ではないけど、時間(長さ)の感覚が薄くなっていく感じ。

次のブルックナーのアダージョでは、ますます時間が歪んでいつ果てるともしれない音楽。わたしはこの曲の原曲、弦楽5重奏曲を知らないけど(と偉そうに言いつつCDを持ってたり)、弦楽オーケストラで奏でられる悠久の時間。指揮のスクロヴァチェフスキさん自身の編曲なので、細部まで自分のものとしてご存知なのでしょう、音楽と一体になった、でも、没入系ではなくてどこか客観視して透徹な目で楽譜を体現しているような演奏でした。交響曲のアダージョのように重たい感じはなくて、透き通ったブルックナー、幽けき豊穣という正反対の意味の言葉を重ねたような音楽でした。

どういうわけかお終いに持ってこられたタコの交響曲第1番。わたし的にはこの曲が、発表当時、現代のモーツァルトと評されたように、若い溌剌として、諧謔的でもあり、軽いノリの音楽と思ってました。だから、音楽会の最初に来る音楽かなーーって感じで、最後をこの曲で締めるのはちょっと違うなーって。そんなふうに思ったのです。
ところが聴いてみるとこれが、あれれ、確かに聞こえてくる音楽はわたしの知ってる交響曲第1番の曲なんですけど、でも、聴いたことのない音楽のように聞こえて。諧謔味が若い素直なそれじゃなくて、老獪な、そうそう、交響曲第15番の第1楽章のような、何もかも知った後のような老獪な諧謔。レントとか全体に時間軸が引き延ばされたような重さ、でも決して遅いテンポのだるい演奏とは違う、不思議な感覚は、交響曲第15番に近い、というか、これ、交響曲第16番?彼(か)の曲の次に来るような音楽。交響曲第1番を聴いていながら、最晩年の幻の傑作、第16番を聴いた感じ。

今日の音楽会は曲目からして早めに終わるだろうと予想して、風邪引きのわたしにはいいかなと思っていたのに、終わってみたら10時近く。決してゆっくりした演奏ではなかったと思うんだけど、わたしの時間どこに行ってしまったのだろう?不思議な音楽会でした。終わってからスクロヴァチェフスキさんのサイン会もあったようで、なんだかとことんお元気なおじいさんだな。末永く指揮者界の長老としてステキな音楽を聴かせて欲しいです。
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by zerbinetta | 2012-10-26 00:09 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

深化したアリーナに驚愕 イブラギモヴァ バッハ無伴奏   

24.10.2012 @wigmore hall

js bach: sonata no. 1, partita no. 1, sonata no. 2, partita no. 2

alina ibragimova (vn)


アリーナのウィグモア・ホールでの音楽会。コセヴィッチさんとのブラームスのソナタ全曲。彼女のブラームスにはめっちゃ期待していたわたしは、もう胸トキメキまくりだったんだけど、がびーん、チケットが一般販売されたときにはソールド・アウト。アリーナのリサイタル、ウィグモア・ホールでは最もチケットが取りづらい音楽会のひとつなんです。完全に諦めていながら、こまめにウィグモア・ホールのサイトを見ていたら、リターン・チケットが出たではないですかっ!有無を言わさず、瞬間的にポチッ。で、詳細を見てみるとバッハの無伴奏とある。あれれ?と思いつつ説明を読んだら、コセヴィッチさんがキャンセルになってアリーナひとりでの音楽会になったそう。おやと思ってアリーナのウェブ・サイトを見ると、インドから始まるツアー全てがアリーナの単独音楽会になってる。そうか、曲目変更でリターンが出たのね。ラッキー!アリーナのブラームスがどうしても聴きたくて、ノーリッジでの音楽会のチケットも買ってたんだけど、こちらももちろんバッハになったので、ウィグモア・ホールのチケットも取れたので、風邪がちっとも良くならなくて満身創痍のわたしは、ノーリッジの方は泣く泣くキャンセル。さすがに片道3時間もかけて風邪ひきの中出かけるのは辛いものね。ウィグモアが取れて良かった♬

アリーナのバッハ無伴奏、前にも聴いたことがあったので、実はほんとはブラームスが良かったななんて、バッハになった故にチケットを取れたわたしが何言ってんだって感じですけど、でも、聴き始めたとたんなんて幸せなんだって。そして、彼女のCDもよく聴いているんですけど、全く違った演奏。深化してる。激しく深化してる。
実は彼女のバッハの深化は、2年前に垣間見ている、いえ垣間聴いてるのです。ただそのときは、ベリオやバルトークの無伴奏とのプログラムで、バッハはシャコンヌだけだったので、プログラム全体からの俯瞰でそういう演奏になったのかなと思ったんです。でも、今日聴いてそうではないことが分かりました。

プログラムは、この間の師のテツラフさんが、2番と3番のソナタとパルティータだったのに対して、1番と2番のソナタとパルティータ。師弟対決はちょびっと曲をずらしてなされました。有名な第3番の方ではなくて第1番の方を採り上げるのがアリーナらしい。

アリーナのバッハは、CDを録音した頃は、気負いのない自然体のさらさらと清々しい気持ちの良い演奏でした。等身大のすてきなバッハ。でも今日の演奏は、もっと大きな深いバッハ。音楽から、深遠な世界が溢れてくるようで、ウィグモア・ホールが宇宙に開いてくる感じ。でもね、圧倒されるような畏怖を感じるような重しのある音楽ではなくて、アリーナの特徴の自然体の気持ちの良さは健在。アリーナは決して音楽を偉大に表現しようとしているのではないと思うんです。そんな外面的な表現意欲は皆無で、アリーナの成長が、自然に必然的に、音楽の大きさをもたらしていると感じます。等身大が大きくなった。だから、引き込まれるように音楽のうねりを感じるのだけど、それは強風ではなくて、やはりさらさらと心をくすぐるのです。それは、以前のバッハが窓いっぱいに見える、風にそよぐ木々の葉っぱだったのに対して、今日のは世界一面の樹々の葉っぱ。もしくは、宇宙(そら)にまたたく星々の光り。小声で、でも明瞭に囁くような声が耳から聞こえてくるバッハから、静かな声が直接体にしみ通ってきて心を揺らしてくるバッハ。

そして、ライヴ。アリーナは失敗を恐れず果敢に攻めてきます。速いところは眩い光りを持って、ゆっくりとしたところではかみしめるように神経を研ぎ澄ませて。音楽の陰に隠れてしまうけど、なんという技術の冴え。ドキリとするような音楽なのに、音に一点の曇りもなく、完璧に弾きこなしてしまう凄まじさ。ノン・ヴィブラートなのにしっとりとして伸びやかな音。細かいパッセージの正確な燦めき。複雑に絡み合う旋律線がクリアに聞こえて、1艇のヴァイオリンで織りなされる小宇宙。アリーナの体が仄かに火照って、音楽が熱を帯びてくる。絶好調のアリーナの会心の演奏。すごすぎ。ドキドキしながら聴き始めたアンダンテは完璧だったし、シャコンヌの充実ぶりは息をのむばかり。こんな演奏に出会えてわたしはなんて幸せ者だろう。音楽を聴いた後のわたしは、きっと新しくされていて、以前のわたしではない。
アンコールには、パルティータ第3番からガボット。待ってました!って感じ。そんな客席に応えてつむじ風のような、さっと吹き抜けるようなテンポの速い快演。アリーナのしてやったりの笑顔。お客さん大拍手。最高の音楽会でした。

音楽会の後はサイン会。家にあったCDはすでに引っ越しの段ボール箱の中なので、プログラムにサインしてもらおうかとも思ったのだけど、アマゾンがちょうど品切れでまだ買ってなかった、最新のメンデルスゾーンの協奏曲をウィグモア・ホールの売店で買って、サインしてもらいました。「今日のバッハとっても良かったです。前のCDのも良かったけど、今日のは全然違った。ほんとに素晴らしい」って言ったら、にやりとして「でしょう」って。もう、金メダルを取ったアスリートみたいな笑み。
CDって難しいですね。演奏が固定されちゃってそれが彼女(彼)の演奏だってなっちゃう。音楽家って日々深化してるのに。特にアリーナみたいな若い音楽家は。今のアリーナはCDのアリーナとは全然違うし、是非またいつか、バッハの無伴奏を録音してほしい。ほんとは、わたしがアリーナの音楽会を追っかけしなきゃなんですけどね〜。うん、いつか、必ず、またアリーナのバッハ、聴いてやる。10年後、20年後、そして30年後。人生の楽しみっ♡
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by zerbinetta | 2012-10-24 22:51 | 室内楽・リサイタル | Comments(2)

おしゃれ! 「オポジッツ・アトラクト」 バーミンガム・ロイヤル・バレエ   

24.10.2012 @sadler's welles

birmingham royal ballet: opposites attract

take five
the dave brubeck quartet (misic)
david bintley (choreography)

lyric pieces
edvard grieg (music)
jessica lang (choreography)

grosse fuge
ludwig van beethoven (music)
hans van manen (choreography)

koren kessels / royal ballet sinfonia


長引く風邪が全く抜けずにへろへろ、引っ越しの荷造りも佳境を迎えてるというか、ずいぶんやばくなってきてるのに、サドラーズ・ウェルズにバレエを観に行ってきました。バーミンガム・ロイヤル・バレエのロンドン公演。月初めにバーミンガムで観て以来、はまっています。今日はモダンダンス系のトリプル・ビル。

珍しく少し早めに席に着いてたら、オーケストラ・ボックスは椅子が取り払われていて、ううむ、今日は録音なのね、そういえば、前にここでギエムさんを観たときも録音だったかと思ったんだけど、ピアノはあるし、ドラムセットもある。人もいて、なにやらだべっていて、と思ってたら、ジャズの音楽が始まっていた。まだ開演前。粋。ライヴハウスに来たみたい。
「テイク・ファイヴ」は、もちろん同名のジャズの名曲を含めた6曲に振り付けられたバレエ。音楽と同じように、むちゃおしゃれでうきうきするような踊り。ビントレーさんの振り付け作品って、あとは「ペンギンカフェ」くらいしか観たことないけど、とってもおしゃれ。きっと本人もおしゃれでステキな人なんでしょうね。心を軽くして、素直に楽しむのがいいよね。ダンサーさんたちだって弾けて楽しそうだし。それにしても、このセンス、ステキだなぁ。おしゃれな会話が聞こえてきそう。わたしも混じっておしゃべりしたいい。

「抒情小品」は、グリーグの同名のピアノ曲(集)からの音楽に振り付けられたもの。しっとりと叙情的なのから、フォーク・ソングっぽい舞曲まで。黒い蛇腹のような小道具が、屏風のように仕切りになったり、扇子のようになったり、ステージに変化を付ける演出がなかなか上手い。踊りも、コンテンポラリーな作品だけど、古典をリスペクトしていて動きに優雅さを伴った美しさがあって好き。いわゆる(偏見含む)ダンスではなくバレエな作品。

お終いはベートーヴェンの晩年のちょっといっちゃてる大作、「大フーガ」に振り付けられた作品。それにしても、バレエって何にでも振り付けられるのね、っていうか、振付家の人のイマジネイションの豊かさに嫉妬。観ていて当たり前のように納得できるもの。音楽と踊りが違和感なくて。物語を表現してるのではないけれども、美しい音楽を背景に持つ動きの情景というか、動く絵を観ているみたいで、音楽をじゃましないでむしろ、想像力の翼を広げてくれる感じかな。

こういうのを観ると、芸術監督のビントレーさんの好みが分かりますね。ロイヤル・バレエではあまりかからないタイプの作品。そして、大きな劇場よりも中くらいな劇場が似合うインティメイトな作品。なんか去り際で悔しいけど、バーミンガム・ロイヤル・バレエがますます好きになりました。
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by zerbinetta | 2012-10-24 00:08 | バレエ | Comments(0)

日本の皆さんどうでしたか? ヤノウスキー、キッシュ「白鳥の湖」   

23.10.2012 @royal opera house

tchaikovsky: swan lake

zenaida yanowsky (odette/odile)
nehemiah kish (siegfried)
gary avis (rothbart)
alastair marriott (the tutor)
helen crawford, yuhui choe, alexander campbell (pas de trois)
meghan grace hinkis, elizabeth harrod, emma maguire, sabina westcombe (cygnets)
hikaru kobayashi, itziar mendizabal (two swans), etc.

anthony dowell (production),
marius petipa, lev ivanov (choreography),
boris gruzin / orchestra of the roh
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ロイヤル・バレエもこれで見納め。しつこいと思われつつも、やっぱり観ておきたい「白鳥の湖」です。今日の回はゼナイダさんとキッシュさんのペア。長身ペアです。そして今日は、ライヴ・シネマ。ヴィデオ・カメラが入って、イギリス国内はもとより、ヨーロッパそして日本の映画館にも(さすがに日本は時差があるので、生中継ではなく時間差ライヴですが)配信されます。ロイヤル・オペラ・ハウスの世界戦略。というわけで、わたしも世界にデビュウするため頭を盛って文金高島田に。って張り切ってたんだけど、ちっとも治らない風邪に断念(もう1週間も薬飲み続けてるのに〜)。よれよれごほごほで出かけていきました。ってか、いつものように隅っこの席なのでカメラに映らないし。

ロイヤル・バレエの「白鳥の湖」が始まったとき、この繰り返し上演される名作古典の舞台に、いつまで酔っぱらいを出して笑いをとるのか、みたいな評が出たけど、わたしは(もう何年も観ているわけではないけど(でも10回は観た))その酔っぱらいがとっても大好きで、これを観て、ああ「白鳥」に帰ってきたんだ〜って思っちゃうんです。酔っぱらいはふたり出てくるのだけど、王子の家庭教師のマリオットさんの酔っぱらいが大好き♡子供たちとの絡みもいいし、ふらふらと踊るユーモアが好き(「くるみ」に出てくるおじいさんとかも!)。この役はもう絶対、マリオットさんなの。味があって上手い!

もうひとりの酔っぱらいは、王子の友達のひとり。今シーズンは今日も含めて平野さんのをたくさん観てる。平野さんの酔っぱらいは、表情が日本の漫画チックで、異国に住んでる日本人のわたしは、分かるぅ〜〜って共感しちゃうのよね。日本人の演技って、ユーモアのあるシーンでは特に、うんうんこれってピタリと来るのよね。日本のドラマや漫画のようで。「マノン」のユフィさんとひかるさんの娼婦の喧嘩とか、ユフィさんのシンデレラやリーズとか、平野さんの「夢」とか。漫画チックの表情は、こっちの人にはどう映るか分からないけど、いいんじゃない。反対に、日本でやったらくどいと思うかも。いつも観ている感じだからね。

そして今日はなんと!3人目の酔っぱらい登場。第1幕で村娘(お城に仕えてる女の人?)のひとり、わたし注目のオリヴィアさんがワインの一気飲み。酔っぱらっていました。初めて観るよ、あんな演技。さすがオリヴィアさん。いつもなにげに楽しいことしてくれます。だからロイヤル・バレエは後ろの人ひとりひとりに目が離せません。
今日は、そのオリヴィアさんを始め、みんなノリノリで踊っていた感じ。カメラが入って世界に中継されるからかなぁ。得した感じ。
パ・ド・トロワは初日と同じ、ユフィさん、クロウフォードさん、キャンベルさん、ナポリ・ダンスもモレラさんとセルヴェラさんの最強ペア、王妃はマクゴリアンさんとファースト・キャストです。盤石。

さて、今日は陰の主役、もとい、もうひとりの主役のことを書かざるや。と、力んじゃうけど、ギャリーさん、本当にこの人の存在感が凄い。完全に舞台を仕切っちゃう。ロイヤル・バレエの宝。ステージの上にいるだけで、どこにいても視線を奪っちゃうんです。悪魔のフクロウの姿もいいけど、やっぱりわたしは、第3幕のロットバルト。舞台の真ん中に立つ訳じゃないけど、完璧に舞台をコントロールしている姿はあの場のロットバルトそのもの。小姓に指示を出したり、お后にワインを勧めて懐柔したり、オディールに耳打ちしたり、オデットが外に現れるやいなや全員に魔法をかけて眠らせたり、それはみんな振り付けされていることだけど、ギャリーさんが演じると現世の世界になっちゃう。ちょっとした目の動き、手の動き、身体の動きから滲み出てくる表現力の大きさ、細やかさったら。この人、いつも完璧に役になりきってるというか役そのもの。やっぱり最高のロットバルトだわ〜。友達によると、ギャリーさんってほんとはとってもジェントルマンの良い人なんだそうですよ〜〜。エスコートされたいっ♡

やっと主役のおふたり。キッシュさんは、わたしの好きなダンサーのひとり。素のキッシュさんめちゃかっこいいし。踊ったときのシルエットがとってもきれい。まだ発展途上だけど、ロイヤル・バレエには珍しい背の高い正統派王子系男性ダンサー。そう、今日は長身ペアです。
キッシュさんは丁寧に踊る一方、冒険が足りないというかドキリとする瞬間があまりないのがいつもちょっと物足りない。もうちょっとやんちゃでもいいんじゃないかな。でも、やっぱり王子はステキ。ゼナイダさんをしっかりサポートしているのもポイント高し。加えて自己主張してがんがん踊るようになったら凄く良くなるんじゃないかしら。
ゼナイダさんは、文句なしに素晴らしかった。怪我で休んでいた時期も長くて、わたし、ゼナイダさんをきちんと観てなくて、「アリス」のハートの女王のはっちゃけたコミカルな演技の印象が強くて、悲しい踊り踊れるのかしら?なんて思ってたんだけど、夏に観た「田園のひと月」の柔らかな踊りでぱっと印象が変わって、「白鳥」はどうかなって楽しみにしていたんです。それがとっても良くって。うっとり。背が高いからとっても踊りが大きくてきれいなんです。しかもとっても繊細。いわゆるロシアの「白鳥」のイメジにピッタリなのは、ゼナイダさんがロシアのバレリーナと同じような体つきだからかしら。ゼナイダさんのオディール、とってもいい。
オディールの方は、意外にも魔性の印象が薄く、良い人のように見えました。オディール自身も王子が好きで、下心なく愛しているみたい。にやっと含み笑いするのもかわいらしかったり。

ゼナイダさんとキッシュさんの「白鳥」はハッピー・エンドなんだろうな。例え、死ぬことになっても結ばれる方が大きいんだな、悲しみよりも愛の強さが勝って、涙のあとは不思議とにこやかになれる「白鳥」でした。

今回、5組の「白鳥」を観てそれぞれとってもステキで、欲張って観に行った甲斐ありました。実はこれでロイヤル・バレエ見納めになります。ものすごく寂し〜。でも、短い間だったけど本当に幸せな時をロイヤル・バレエと過ごせました。わたしは地元第一主義なので、きっと行く先で新しい喜びを発見すると思うけど、ロイヤル・バレエは元地元ということでこれからもしっかり応援していこうと思います。せっかく名前を覚えた若い人が育っていくのも楽しみに見続けたいしね。
毎回、わたしを幸せでいっぱいにしてくれたロイヤル・バレエの皆さんにありがとうを百万遍言いたい。love
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にこやかなゼナイダさん
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今回の「白鳥」ではこの4人で踊ることの多い4羽の白鳥
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メンディザバルさんとひかるさん
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やっぱり凄味のあるギャリーさん。お約束のブーを盛大に浴びて喜んでます
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ゼナイダさんとキッシュさん、ゼナイダさんずうっと柔らかな笑顔
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by zerbinetta | 2012-10-23 16:41 | バレエ | Comments(0)

大人の、ブルックナー抜きのブルックナー8  ドホナーニ/フィルハーモニア   

18.10.2012 @royal festival hall

mozart: piano concerto no. 27
bruckner: symphony no. 8

martin helmchen (pf)
christoph von dohonányi / po


風邪が、、、抜けん。ごほごほと咳が止まらないまま音楽会へ。今日は咳との闘いだわ。ブルックナー長いし。
まずは、お久しぶり!ヘルムヒェンさんのモーツァルトの変ロ長調のピアノ協奏曲第27番。極限までにシンプルで透明、命を育む水のような音楽。それもとびきりの銘水。
30歳(もしかして31歳?)のヘルムヒェンさんは、数年前に観たときより大人になって、落ち着いた物腰の柔らかな雰囲気の中に風格のようなものが芽生えてきてステキ。ヘルムヒェンさんのピアノは、がんがん叩く系ではなくて、風貌から予想されるように、とっても軽やかに転がるビー玉。もうそれがモーツァルトにピッタリで、余計な装飾のない音楽が、純化した魂をひゅるんと空に解き放ってくれる感じ。音遊びがとっても愉しくって、モーツァルトはもう人の肉体を捨てて、音の世界で子供のように遊んでいるみたい。シンプルで混ざり気のなさが反対に人の感情の全てを含んだ美しさになって聞こえてくる。ドホナーニさんのオーケストラもそんなピアノの音遊びの庭を作るように背景となって蒸溜された音楽の世界を作ってる。心が洗われるようなモーツァルト。良かったぁ。

後半のブルックナー交響曲第8番。この曲は、ネゼ=セガンさんとロンドンフィルとの演奏をここで聴いて、それが圧倒的に心に残っているんだけど、実はわたし、ドホナーニさんの演奏はちっとも期待していませんでした。ドホナーニさんとフィルハーモニアのブルックナーは、ずいぶん前に交響曲第4番を聴いたことがあって、あまりに無機質な演奏に混乱したからなんです。

では、今日はどうだったでしょう。
懐疑的な気持ちで聴き始めたのに、おややと思ううちにずんずん引き込まれてしまいました。まず、オーケストラがめちゃめちゃ上手い。これがいつものフィルハーモニアかと思うような上手さ。いつものように透明だけれども、柔らかく暖かみを持ったクリーミーな音。極上の生クリームをきめ細かく泡立てたような。金管楽器の明るく、突き抜けたような爽やかな音がステキです。前回のフィルハーモニアが、勢いに任せた荒さがあったのにそれは全て影を潜めて、絹のような肌触りの、成熟した大人の音楽。これだけの音を引き出せるドホナーニさんのなんて凄いこと。今までもドホナーニさんとフィルハーモニアの演奏は聴いてきたけど、今日がずば抜けて最良。どうしちゃったんでしょう。神がかってた。

音楽は、いわゆるブルックナー的というのを完全に廃したステキな演奏。流麗で冷めていて、柔らかな液体がすーっと流れていくよう。ブルックナーみたいな構造のぎこちなさがなくて、シームレスに音楽が流れて、ブロックのまとまりが消えて、一筆ですらっと書いた草書のよう。
流れるような音楽は、でも都会的で人工的というのともちょっと違う、優しさ、温かさもあって、以前第4番で感じたような荒涼とした無機質感がないのは、この曲が第4番のような自然を強く感じさせる曲ではないから、という理由だけではなく、もっと本質的なのは、ドホナーニさんの演奏がこの音楽に合っているからではないかと思うのです。テンポは、第2楽章のスケルツォが速めだったことを除けば、ゆっくりしていて、アダージョはじっくりと時間をかけた、でも全然腹にもたれないすっきりした演奏でした。
多分、こんなするすると流れる演奏をブルヲタの皆さんは認めないんだろうな。ブルヲタの彼とデエトして、うっとりと聴いてたわたしは、これは正しいブルックナーじゃないとか、ブルックナーは女には分からない、とか言われて(経験あり)、喧嘩して別れるんだろうな。踏み絵のようなブルックナー。こんな演奏を肯定できる柔らかなブルヲタさんなら仲良くした〜い♡
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by zerbinetta | 2012-10-18 22:52 | フィルハーモニア | Comments(0)

王子さま♡♡ マルケス、マクレー「白鳥の湖」   

17.10.2012 @royal opera house

tchaikovsky: swan lake

roberta marquez (odette/odile)
steven macrae (siegfried)
bennet gartside (rothbart)
philip mosley (the tutor)
elizabeth harrod, emma maguire, valentino zucchetti (pas de trois)
meghan grace hinkis, elizabeth harrod, emma maguire, sabina westcombe (cygnets)
tara bhavnani, natalie harrison (two swans), etc.

anthony dowell (production),
marius petipa, lev ivanov (choreography),
boris gruzin / orchestra of the roh
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(最後の場面)

えーーーまたまた「白鳥」です。もうなんてしつこいのでしょう。今日のマチネは、もともと茜さんがキャスティングされてて、イェイと思ったんですが、残念なことに怪我で降板。去年の幻のオーロラ・デビュウに続いて、大役の抜擢での降板、残念すぎます。しっかりと怪我を治して次のチャンスをものにして欲しいです(冬の「くるみ」は踊るようです)。

マルケスさんは、う〜んちょっとぉって声がよく聞かれるダンサーさんですが、わたしは好きです。って言うかわたしが観た中で、ジュリエットやマノンはむちゃ良かったし。彼女、マクミランの演劇的な少女役がとっても良いのですね。で、一方今回の「白鳥」のような演目は、あまり良くない評判を聞いていたのでわたしも不安がありました。役には向き不向きがあるし、マルケスさんの少女性は、冷ややかに悲しみを湛えた高貴なオデットや蠱惑的に王子を誘惑するオディールには幼すぎるんじゃないかって思ったんです(マノンでも蠱惑的な少女を演じるけど、かなり雰囲気が違うので)。それにこの役は背のちっちゃい人には不利な気がして。わたしにとってオデットは近寄りがたい雰囲気を持つ美の悲しみなのです。

王子の方はばっちり、マクレーさん♡文句なしにステキです。マクレーさんって観るごとに上手くなっていってる気が。いえ、気のせいでなくて実際に。ほんとに素晴らしいです。ちょっと背が低いのが玉に瑕だけど、わたしもちびっ子なので、理想の王子さま♡踊りも勢いがあって、溌剌としていて、高いしきれい。ジャンプのたびに、わたしの心臓もジャンプ〜〜ときめくーーー。安全よりリスクをとって、勢いと冷静な表現のバランスがとってもいいのよね。「白鳥」なんかは男性ダンサーは控え目に映るはずなのに、マクレーさんには存在感があって、勢いがあるのに、勢いに走らないのがステキなの。今、ロイヤルの男性陣の中では一番好きーー。キッシュさんも好きだけど、キッシュさんはちょっと慎重に踊ってる感じ。

マルケスさんは、(不安半分期待半分で観てたせいか)思ったよりずっと良かったーー。ちゃんと丁寧に踊ってたし。かわいらしいオデットもいいじゃない。マルケスさんって、前から思っていたけど、回されるのが凄く上手い。女性が男性ダンサーにくるくる回されるところが、コマを回すように自然で速いの。そして、「白鳥」には出てこないけど、フィッシュ・ジャンプもとっても上手くて、男性ダンサーを引き立たせる術が上手いような気がする。バレエって男性が陰になって女性を立てるところがあるけど、マルケスさんって男性を立てるところがある感じ。かといって、慎ましやかに3歩下がって三つ指を突いてる感じじゃなくて、男性をコントロールしている魔性の女。ああ、だからマノンが良かったのね。
という風で、今日の「白鳥」はマクレーさんの「白鳥」でした。

あっ今日は、マクレー夫人のリズが第1幕のパ・ド・トロワ、第2幕の4羽の白鳥と活躍してましたね。パ・ド・トロワはぴょんぴょんジャンプが続く大変な役だけど、優雅に踊っていました。エリザベスさんも上に上がってマクレーさんとふたりで踊れる日が来るといいなぁ。恋敵(勝ち目全然なし、ってかもうご結婚されてるし)だけど応援しちゃいます。

今日は(多分、というのは今シーズンがデビュウなんだけど、もうすでに踊ってるかもしれないから)、ガートサイドさんがロットバルト・デビュウ。若々しいロットバルトでした。ガートサイドさんは、将来のプリンシパル・キャラクターが(わたしに)嘱望されていて、これを機にキャラクター・アーティストの道を究めて将来のロイヤル・バレエを担っていく人になればいいなって、思ってるんです。さすがに、今日はまだ、ギャリーさんみたいな役に突き抜けた感じはなかったけど(比べるのは10年早い?)、彼の演技好きだから、これからの伸びに期待しましょう。デビュウおめでとう!

マルケスさんとマクレーさん
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ナタリーさんとタラさん
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ガートサイドさん、まだ悪味が薄くて軽くてかわいい感じ。いつかギャリーさんの凄味が出てきますように
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マルケスさんとマクレーさん
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マルケスさん、右腕にサポーター付けてるけど怪我しているのかしら?写真を観て気づいたくらいだから、大事ではなさそうだけど、早く良くなりますように
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by zerbinetta | 2012-10-17 14:25 | バレエ | Comments(4)

無表情ペアでお口直し ラム、ペネファーザー「白鳥の湖」   

15.10.2012 @royal opera house

tchaikovsky: swan lake

sarah lamb (odette/odile)
rupert pennefather (siegfried)
christopher saunders (rothbart)
jonathan howells (the tutor)
francesca hayward, emma maguire, james hay (pas de trois)
meghan grace hinkis, leanne cope, emma maguire, leticia stock (cygnets)
olivia cowley, melissa hamilton (two swans), etc.

anthony dowell (production),
marius petipa, lev ivanov (choreography),
boris gruzin / orchestra of the roh

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今日も「白鳥の湖」。しつこいって?へへっ。しつこいです。今日の主役はセイラ・ラムさんとペネファーザーさんの無表情ペア。えっ失礼って?だって、ラムさんってクール・ビューティーで近寄りがたい雰囲気があるので(本人はそんな人じゃないみたいですよ)、何となく冷たいって感じちゃうのです。なので、わたしは、ラムさんは古典のお姫さまより、コンテンポラリーが好きなんですが、オデットならクール・ビューティーもありかな、とか、最近、ラムさんの踊りやっぱりきれいと思うようになったので、これは観たかったんです。お相手のペネファーザーさんは、あれなんですけど(以下自粛)。

今日の「白鳥」はすうっと冷ややかな水が満ちてくるような清涼感を感じってほ〜っとしました。これがロイヤル・バレエのスタイルなのよね〜。前回の「白鳥」で異質のものを強烈に見せつけられたので、自分の家に帰ってきたような居心地の良さ。お口直しというか、フランス料理のムニュでのメインのあとのシャーベットのようなリフレッシュしたような感覚。もちろん、どちらが良いかではなく、違ってステキなんです。
ラムさんの踊りはとってもきれい。正確でお手本のよう。なので、人間味が希薄に感じられるところがあって、その点が好みの分かれるところだと思うけど、オデットは儚げでとっても良かったです。オディールの方は、もう少し崩した方がいいかなっても思うんだけど、でも、なんだかきれいな絵を観ているような、美しさを抽出したみたいなところがあって、彼岸の世界にいるみたい。人間界の外にある白鳥の湖にピッタリですね。
王子のペネファーザーさんは、王子面してかっこいいのに。やっぱ、無表情。この人、ちゃんと踊れる人なのに、なんか体温が低いというか、淡泊というか、希薄なのよね。「田園の一月」の家庭教師は良かったのにな。ムラがあるのかしら。淡泊なので、ラムさんとの化学反応がないんです。お互いに独立して踊ってる感じで、彼が仕掛けないから、ラムさんの踊りが、ラムさんのリズムですうっと流れちゃうんです。第2幕のアダージョは、お互いの会話があって、相手に合わせて言葉を交わすようにリズムに溜めが入ればもっと感情が入れられていいのにと思っちゃいました。うっとりしようと思ったのに、ささっと先に行っちゃうみたいな。愛し合ってくれよーー、魔法が解けないよぉ。

でも、今日はラムさんの踊りにうっとりしたので良しとします。うん。

ラムさん
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2羽の白鳥を踊った大好きなオリヴィアさんも花束をもらってたけど、今日が2羽デビュウ?オリヴィアさんは、でも、やっぱり、後ろの方で面白いことをする役の方がらしくていいなぁ(勝手に決めてる)。わたしが彼女を認識したのが、「くるみ割り人形」のおばあさん役で、おしりを掻いたり、若い男の子にちょっかいをかけたり、そんな振り付けにない演技が面白いの。でも、マクレガーさんの激しい踊りもびしびし踊る人なんだけどね。
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2羽の白鳥のメリッサさんとオリヴィアさん
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ラムさんとペネファーザーさん
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by zerbinetta | 2012-10-15 23:56 | バレエ | Comments(2)