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まさにベートーヴェンオケ フィデリオ、リハーサル P・ヤルヴィ/ドイツカンマーフィル   

2013年11月26日 @みなとみらいホール

ベートーヴェン:「フィデリオ」第1幕(リハーサル)

エミリー・マギー(レオノーレ)、ディミトリー・イヴァシュチェンコ(ロッコ)
ゴルダ・シュルツ(マルチェリーナ)、ユリアン・プレガルディエン(ジャッキーノ)
トム・フォックス(ピツァロ)、ヴォルフ・カーラー(語り)
パーヴォ・ヤルヴィ/東京音楽大学合唱団、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン


パーヴォさんこと、ヤルヴィ一家の長男、兄ビーとドイツ・カンマー・フィル・ブレーメンの「フィデリオ」のリハーサルに午後の仕事をすっ飛ばして、のこのこ出かけてきました。ヤルヴィ一家で今一番活躍している人だけど、残念ながら、聴くの今日が2度目。ロンドンには来なかったし(もしかして、わたし見過ごしてた?)、USで当時率いていたシンシナティ・シンフォニーとの音楽会を聴いたきりです。今旬の指揮者をやっと聴けてうれしい!

リハーサルなので、演奏のことについてはちょっとしか書かないけど、このオーケストラ、まさにベートーヴェン・オーケストラ。わたし好みのベートーヴェンの音が鳴っていました。そう言えば、ハーディングさんがベートーヴェンの序曲集で鮮烈CDデビュウしたのもこのオーケストラでしたね。あのときも感じた、クリスプでアグレッシヴな表現。兄ビーも古楽器的な音作りをして(トランペットは弁のないもの、ティンパニは小型の、弦楽器もヴィブラート控えめ、でもホルンは現代楽器(最近よく見かけるスタイルです))、ざくざくと切れ味の鋭い包丁でキャベツの玉を切り分けていく気持ちの良い感じ。ベートーヴェンって、ほんと、自分の言いたいことを口角泡飛ばして言いまくる以上の音を書くのね。フィデリオのアリアに付けたホルン3重奏の雄弁さったら。
もちろん、そのベートーヴェン・オケをてきぱきと切り盛りする兄ビーの棒さばき。序曲の重さと軽やかさの対比。オペラが始まると一転、モーツァルトの「魔笛」のような軽さ。この、ベートーヴェンのオペラが、モーツァルトのジング・シュピーレの直接的な子供ということがはっきり分かります。あとで、兄ビーさんが(質問に答えておっしゃっていたことですが)、まさにこれが彼が意図したこと。重い内容なので重くなりすぎないように音楽を作っていったのです。それに、最初の部分ってファミリー・コメディですものね。今回は、第1幕だけで第2幕は、どういう風になるのか分からないけど、ものすごく期待が持てます。歌手陣もとっても良さげ(リハーサルなので100%では歌ってないのですが)。本番聴ける人がうらやましい。
コンサート形式の「フィデリオ」は、イェンスさんによって書かれた「ロッコの物語」、4年後のロッコという新しい登場人物の語りに長いセリフの部分を置き換えた版。アーノンクールさんがかつて上演しています。4年後のロッコというベートーヴェンにはなかった新しい物語を重層することで、劇の進行が分かりやすくなっていると思います。「フィデリオ」のセリフって本来かなり長いらしいんですね。通常のオペラの上演ではかなりカットされているみたいです。

今日のリハーサルは、無料で50人限定。申し込み締め切りを延ばしていたので定員に達しなかったのかも知れないけど、40人くらいは来てました。平日の昼間だけど、もっと来るのかなって思ったけど、みんなあまり興味がないのかな(or仕事休めないのかな)。わたしは、リハーサル大好きなのでとても良い機会だったけどね。もうちょっと大きな規模(100〜200人)で公開してもいいと思うし、楽曲解説などを充実させて1日プログラムにするのもありだな、と思いました。それを企画してやるのは大変ですけどね。今回は、リハーサルの前に、楽団員による解説とリハーサル後に指揮者への短い質疑応答があって、コンパクトながらとても上手くオーガナイズされていたし、スタッフの方たちもとても丁寧に対応されていて良かったです。
そう、最初の楽団員さん(ヴィオラの方)の解説がとてもポイントをまとめていて分かりやすく、今日の聴き所もしっかり説明されてプレゼンテイションの仕方が素晴らしかったです。

兄ビーのリハーサルは、とてもリラックスした感じで、オーケストラとの関係が上手くいってて気の置けない雰囲気がありました。もちろんみんな真剣にやってるんだけど笑ったり楽しそう。まず、最初の全部通して、それからいくつかの箇所を練習していたんだけど、オーケストラの側からも、ここはこうやりたいって意見が出されて、一方的に音楽を押しつけるのではありませんでした。兄ビーっていつもこんなリハーサルをしているのかしら。良いボスだわ。ちなみにリハーサルはほぼ英語でした(ドイツ語が混じっていたかは声がくぐもって聞き取れなかった部分があるので分かりません)。

兄ビーも団員さんも、横浜のみなとみらいホールは家に帰ってきた感じとおっしゃっていた(何年か前にここでベートーヴェンの交響曲の全曲演奏会をしているのですね)、場所。本番は、きっと彼ららしい、フレッシュな力に満ちたステキな「フィデリオ」になるに違いありません。

聴きたかったなぁ。感動の代官の登場シーンとか聴きたかったもの。まぁ、最後のマルツェリーナへの仕打ちを聴かなくて良かったのは良かったんですが(このオペラ、わたしはいつもマルツェリーナに感情移入しちゃうので、いつも最後に宙ぶらりんの気持ちになっちゃうので)。チケットまだあるみたいですよ。聴きに行ける人はぜひ!
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by zerbinetta | 2013-11-26 09:36 | 海外オーケストラ | Comments(0)

ため息 グリモー、ネルソンス/バーミンガム市交響楽団   

2013年11月19日 @東京オペラシティ 大ホール

ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
ブラームス:交響曲第4番

エレーヌ・グリモー(ピアノ)
アンドリス・ネルソンス/バーミンガム市交響楽団


ネット友達のご厚意で招待券をいただいたので、身に余る音楽会を聴くことができました。

まずは、グリモーさんのことを書きますね。
わたしがグリモーさんのこと知ったのは、ケネディ・センターの音楽会に向かう車の中のラジオです。ちょうどブラームスのピアノ協奏曲第1番の2つの新しいCDが出たときで、ラジオの人がどちらもいいけど、グリモーさんという若いピアニストのを強力に推していたんです。早速CDを買って聴いたのが出逢い。実演は、それからしばらくして、10年くらい前なんですね、もう、バルトークの協奏曲で。それ以来、機会があれば聴くようにしていました。
ひとりの(特に若い)音楽家を聴き続けるのは、その音楽家の成長や変化が聴けるので、わたしにとってとっても嬉しいこと。の反面、わたし自身の聴き手としての成長を問われるような気がして気が抜けません。奏者とわたしの真剣勝負。といってもいつもわたしが打ちのめされるんですけど。

ブラームスのピアノ協奏曲は、ゆっくりしたテンポで始まりました。オーケストラの音が出る寸前に大きな靴音がしてびっくりしたのは、ネルソンスさんの踏み込む音?ネルソンスさんだから、速めのテンポで来るのかなぁと思ったけど、これはグリモーさんのテンポね。弦楽器の第2主題(?、いろんな旋律が次から次へとわき出すので本物の第2主題かどうか分からないけど)でふわりと音量を落として溜めるところため息みたい。ブラームスってため息のある音楽だったんだわ。ネルソンスさんのオーケストラはとても丁寧。でも、この曲の主役は、グリモーさん。自由闊達。かなりテンポをゆらして、ときどきオーケストラがついて行けなくなりそうになるリスクを厭わない自分の世界。でも、予定調和的じゃない緊張感がステキ。彼女の演奏ってこうだったっけ?オーケストラをコントロールしていたのはグリモーさん。だけど、そこに合わせてオーケストラの表情を作っていったネルソンスさんもただ者じゃないよね。流石、ブラームスが大好きと公言するグリモーさんの音楽は、前に聴いたときよりますます深みを増していってる。
それが如実に表れたのが、第2楽章。とっても哲学的。見えてきた景色は、生と死の境の溶けて滲んだ世界に立っている自分。生まれることと死んでいくことが無数に連なっている大きな大地。半分生きていて半分死にながら常に新しく生まれ変わっていく体みたい。静かな呼吸の中に、ひとつひとつ慈しむように音が足跡を残していく。ここには、ベートーヴェンの協奏曲第4番の第2楽章の問いかけや対話はない。あるがままの世界があるだけ。そのままつながるようにクラリネットの甘い旋律が聞こえてきて、でも、わたしはここははっとするように景色が変わる演奏が好きだけど、グリモーさんのもとてもよく分かる。ひとつながりの世界。この音楽があまりに深いので、ここで終わったら、ブルックナーの未完成の交響曲第9番みたいに生への別れの音楽になるって思った。
もちろん、最後の楽章もとってもいいんだけど。ブラームスのとても若い頃の作品なのに、今日の音楽は老練の作品に聞こえました。あとで聴いた交響曲第4番より老成した音楽。本当に素晴らしかった。こんな音楽を聴かせてくれたグリモーさんには、心からありがとうと言いたい。わたしも、彼女の音楽をいつもより少しだけ良く聴けた感じがして、ちょっとは成長できてるのかな、と嬉しかった。
グリモーさんのアンコールは、ラフマニノフの「音の絵」から。これもステキだったな。リサイタルも聴きたいなぁ。前にまっいいかと聴きに行かなかったのが悔やまれるぅ。友達がめちゃ感動して帰ってきたのに。

音楽会はグリモーさんの前に、ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」の序曲が演奏されました。ネルソンスさんらしい、緩急を付けた溌剌とした演奏。オーケストラは、ロンドンのオーケストラみたいな超一流とまでは行かないけど、ネルソンスさんを信頼して、とても献身的に良い音楽をしていると感じられました。オーケストラの音は弦楽器がそれぞれ厚めで、ロンドンのオーケストラにはない音色。素朴さというか、地方のオーケストラのローカルさみたいなものを感じました。それがとてもよく分かったのが、最後にアンコールで演奏されたエルガーの「朝の歌」。これこそ自分たちの音楽だと言うばかりの、もうこれしかないという音で、共感に満ちた音楽でした。次の機会にはぜひ、エルガーやイングランドの作曲家の作品を演奏して欲しいなって心から思いました。アンコールのとき、ネルソンスさんと日本語で挨拶したヴィオラの人との漫才(?)も楽しかったけど、ネルソンスさんが「そんなに長くないから心配しないで」と言ったとき「noooo! one mmore symphoniiiie please!!」って叫びたかったよ。

順番めちゃくちゃで書いてるけど、ブラームスの交響曲第4番は、良くも悪くもネルソンスさんの今が音楽に表れました。とても入念なステキなブラームスだったんだけど、成熟した音楽の中に、若い未熟さが混在して、そのコントラストが柔らかさとクリスピーさの食感を同時に楽しむお料理のように思えました。だから、ひとつのタッチで描かれたブラームスではなく、そこが評価の分かれるところだと思うんだけど、わたしにはそれがうんと面白くて、とても印象的でした。きっと、ベルリン・フィルとか老練なオーケストラが演ると、そんなところは中和して自然に音楽を作っていくのでしょうけど、バーミンガム市交響楽団はネルソンスさんの音楽をそのまま音に反映していて、それがわたしには好ましかったです。
ネルソンスさんはまだ若いし(30代半ば)、これからの成長がとても楽しみなんだけど、未来が垣間見えた感じがしました。ボストンというクリーミーな音を出す老練なオーケストラを得て、どんな音楽作りをしていくのか楽しみだし、きっと彼らのブラームスはとてもステキなものになるでしょう。もしかして今のネルソンスさんの試金石になるのは、今シーズンのフィルハーモニアとのブラームス・シリーズ(1回目はネルソンスさんご病気で振れなかったけど)でしょうね。フィルハーモニアって指揮者によって荒くもなるし、信じ難いくらいクリーミーな音も出しますから。ああ、聴きたいなぁ。

ネルソンスさんを聴くのは今回で3回目。バーミンガム市交響楽団は2回目です。あんまり、ネルソンスさんを聴いてこなかったわたしだけど(ロンドンでもそんなに聴く機会がなかったんだけどね)、これからがもの凄く楽しみな指揮者ですね。バーミンガムの人は残念がるでしょうが、ボストンでのご活躍が楽しみです。そして、バーミンガムはラトルさんやオラモさん、ネルソンスさんを見いだしたように、次の主席指揮者に誰を選ぶのか、もうワクワクです。CEOのマドックさんの目利きが確かなのかな。オーケストラは指揮者や演奏だけで評価されちゃいがちだけど、こういう裏方さんももの凄く重要ですね。良いオーケストラの大事な条件だと思います。
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by zerbinetta | 2013-11-19 00:40 | 海外オーケストラ | Comments(0)

クラヲタさん、バレエもぜひ! 新国立劇場バレエ バレエ・リュス   

2013年11月15日 @新国立劇場

バレエ・リュス ストラヴィンスキー・トリプル・ビル

新国立劇場バレエ団
前川依子、佐々木昌子、二階堂洋介、塩入功司(独唱)
クーン・カッセル/新国立劇場合唱団、東京フィルハーモニー交響楽団


昨日、セカンド・キャストのバレエ・リュスを観てから、悶々と。ファースト・キャストも観たいファースト・キャストも観たい。でも、持っていたチケットは昨日の1枚。安い席で観たいので朝からZ券ゲットに並ぼうかと考えていたけど、昨日が遅かったので早起きできるわけもなく。。。で、悶々。結局、チケットをポチって観に来てしまいました。良かった♡
ところで、今回のバレエ、ストラヴィンスキーのあまり演奏されない曲が演奏されるので、クラヲタさんなら注目度高いでしょう。ストラヴィン好き〜ならなおさら。バレエ・ファン層とクラヲタさん層ってあまり重なってないんだけど、都内のホールがクラヲタさんたちでいつも埋まってる現実を考えると、バレエ団の皆さんもお客さん確保のためにもっとクラヲタさんへのアピールを考えるべき。バレエ音楽にはそれだけで魅力的な作品がいくつもありますからね〜。それらはなかなか音楽会では演奏されないもの。なので、新国立劇場バレエ団さんには、チャイコフスキーの3大バレエ、ストラヴィンスキーの「火の鳥」「結婚」「アポロ」「プルチネルラ」、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」「シンデレラ」、プーランクの「牝鹿」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」、シチェドリンの「カルメン」、ハチャトリアンの「ガイーヌ」「スパルタクス」、ショスタコーヴィチ「明るい小川」、ヘンツェ「オンディーヌ」などなどを毎年どんどん上演して欲しいです。クラヲタさん的には、聴く機会の少ない音楽が聴けて(白鳥の湖だって音楽会で全曲が演奏される機会はほとんどないものね)、ついでにバレエが観れちゃうんだからお得感抜群。もしかして、その中からバレエにはまる人も出てくるかもだもの。わたしのように。クラヲタの皆さんバレエを観に行こう!それにね、新国立劇場バレエ団のピットには、東京フィルハーモニー交響楽団を中心に首都圏のオーケストラが入るのだけど、そのためか、いつも良い演奏をするんです。世界中のバレエ劇場を知ってる訳ではないけど、新国立劇場のバレエは世界でもトップ・レヴェルの音楽で支えられてると自信を持って言えます。

火の鳥
フォーキン(振り付け)
小野絢子(火の鳥)、山本隆之(イワン王子)
寺田亜沙子(王女)、マイレン・トレウバエフ(カスチェイ)、他


火の鳥の絢子さんは、とってもステキでした。メイクもエキゾチックに決まってて、これこれ、火の鳥って妖怪だからこうでなきゃって感じです。踊りも力強くて鳥でした。あまり柔らかく踊ってはいけないかもなんですね。絢子さんと唯さんの違いが面白かったです。同じ役でふたりを見比べるの初めて?これから観に来る楽しみが増えました。
「火の鳥」の弱点は、音楽が最後うんと盛り上がるのに、バレエはカスチェイをやっつけたあと、結婚式のシーンだけでドラマ的には盛り上がらないことです。王子の結婚式を思いっきり厳かに壮大にやると音楽に合うのだけど、動きのないシーンだからなぁ。ダンサーにそれだけの威厳と力が表現できていれば、と思ったんですが、これ、マリインスキーで観たときも全く同じ感想だったので、わたし進歩していないというか、バレエとしては難しいのですね。


アポロ
バランシン(振り付け)
福岡雄大(アポロ)
小野絢子(テレプシコール)、寺田亜沙子(カリオペ)、長田佳世(ポリヒムニア)、他


「アポロ」は雄大さんのタイトル・ロール、3人の女子に絢子さん、亜沙子さん、佳世さんです。ちょっとこぢんまりした感じがして、これは昨日の方が好きでした。そのせいか音楽もちょっと退屈な感じに聞こえました。


結婚
ニジンスカ(振り付け)
本島美和(花嫁)、小口邦明(花婿)
奥田花純、奥村康祐(友人)、他


こちらも昨日とは全然違う感想を持ちました。慣れてきた?そして、嬉しいことに好感度アップ。すっと滑らかなまとまりのあるのもいいかなぁと。でも、友達のふたりのソロは、ぐわんと前面に出て目立った方が良いと思います。君たちが影の主役なんだよ〜。美和さんの花嫁はとても美しくて凜とした雰囲気があってステキでした。

昨日今日と、2つのキャストで観られたことが幸せ幸せ。同じ演目でも、日によって、キャストによって感じ方も変わるし、何よりもステキなのを何回も観たい。ううむ、これだからバレエ通いが止められなくなっちゃうんだけど。。。
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by zerbinetta | 2013-11-16 13:57 | バレエ | Comments(0)

わたしの新国バレエ・シーズン今日開幕! バレエ・リュス ストラヴィンスキー   

2013年11月15日 @新国立劇場

バレエ・リュス ストラヴィンスキー・トリプル・ビル

新国立劇場バレエ団
前川依子、佐々木昌子、二階堂洋介、塩入功司(独唱)
クーン・カッセル/新国立劇場合唱団、東京フィルハーモニー交響楽団


わたしの新国立劇場バレエ、2日遅れで今日開幕です。開幕は、バレエ・リュスのトリプル・ビル、ストラヴィンスキーを3つです。「火の鳥」「アポロ」「結婚」。ストラヴィン好き〜さんなら、ぜひ聴きたい、観たいですよね!今日はセカンド・キャスト。とは言っても唯さん推しの日です(ファースト・キャストは絢子さん推し)。唯さんと絢子さん、新国立劇場バレエ団を背負って立つ若い看板娘ですからね〜。わたしはどちらかというと唯さん推しというか、絢子さんの方はまだしっかり観ていないの。

火の鳥
フォーキン(振り付け)
米沢唯(火の鳥)、菅野英男(イワン王子)
本島美和(王女)、古川和則(カスチェイ)、他


「火の鳥」はロイヤル・バレエで初めて観た懐かしい演目です(実際にはその前に「レ・シルフィード」が上演されましたが)。その頃はロイヤル・バレエの右も左も分からない状態で、音楽を聴きに行ったんだけど、バレエとしての「火の鳥」を楽しんだのは、マリインスキー劇場のを観たときからかな。そんなこんなが思い出されました。
「火の鳥」の音楽は、斬新な中に分かりやすさがあって、でも、踊りはきっと当時のバレエの殻を破りつつある感じかな。ロシアのフォークダンス風のステップやら、バレエ・リュスとストラヴィンスキーが火花を散らしあってこの後、「春の祭典」が生み出される芽となったことを今日はありありと感じました。多分、新国立バレエの群舞の人たちが、慣れないステップでちょっと戸惑っている風に感じたのが、初演当時の新しさに戸惑う人たちに重なったのかも知れません。でも、重要な作品ですから、100年に一度の衝撃なんて言わないで、「火の鳥」や「春の祭典」なんかはバレエ団のレパートリーとして数年に1度は上演して欲しいですね。ダンサーの基礎体力を維持するためにもね。
踊りとしては目立った役は群舞と火の鳥しかないんだけど、火の鳥の唯さんは、下半身(脚)がちょっと固いように見えました。それに反して上半身、腕がとても柔らかできれい。ただ、その動きのせいで鳥ではなくピチピチのお魚のように見えちゃいました。
そうそう、火の鳥って派手なメイクをするんですけど、日本人顔(ひらめ顔、しょうがないんですよね、西洋人と骨格が違うから)のせいか、メイクが妙に似合って、歌舞伎の隈取りみたいに違和感なくって、ほんとはもっと異界の鳥のような雰囲気になるはずなのに、かわいかった。表情はときどきぞっくとさせる魅力があるんだけど、ヒトの魅力なんですね。それが不思議な感じ。
音楽の演奏はなかなか。そりゃあ、音楽会のステージのようにはいかないけど、わたしには十分。最後、主題が倍の音価になって再現されるところ、短めにざくざくと刻んで、わたしの好きな1945年版のようで(そこまで短くはないけど)嬉しかったです。

アポロ
バランシン(振り付け)
コナー・ウォルシュ(アポロ)
本島美和(テレプシコール)、米沢唯(カリオペ)、奥田花純(ポリヒムニア)、他


「アポロ」は初めて観ます。音楽のタイトルは「ミューズを率いるアポロ」。音楽だけなら聴いたことがありました。弦楽合奏のためのクラシカルな音楽で、これはバレエの音楽だけどバレエ・リュスのために書かれた作品ではなくて、後にバレエ・リュスが上演しています。
今日はこれが一番感銘を受けました。ゲストで来られたヒューストン・バレエのプリンシパル、ウォルシュさんのアポロが、ギリシャ彫刻を見るように美しくて、眼福。だってだって、美しい彫刻があまっさえ動くんですよ〜。それもとろけるような優雅な動きで。
アポロに絡む女性3人もとても良かった。特に本島さんの美しさは。振り付けも、観たことはないくせに古代ギリシアの舞踏を観ているようで、と言うか人間の踊りと言うより、神の世界の踊りですね。初期のバロック・オペラのプロローグみたい。初めて観るので象徴的な意味が分かったかというと全然なんですけど、カリオペの吐くような仕草は(ドキッとした)芸術を生み出すことの苦しみ、もしくは止めどもなく出てきてしまう言葉。ウォルシュさんと本島さんのパ・ド・ドゥも静かな美しさに溢れていて、シンプルな舞台や衣装、高貴さを感じさせる動きと相まって、絵画的、無言歌なのかな。とても素晴らしい舞台でした。音楽も弦の厚みのある柔らかな音が良かったです。


結婚
ニジンスカ(振り付け)
湯川麻美子(花嫁)、福岡雄大(花婿)
奥田花純、奥村康祐(友人)、他


「結婚」は音楽が特殊で、ピアノ4台と打楽器、合唱と4人のソリストという超ユニーク編成、合唱版「春の祭典」みたいな感じでしょうか。そんな音楽、(それにしてもストラヴィンスキーは何を思ってこの編成?と言いながらむちゃはまってる)、に振り付けられたニジンスカの踊りは、これが90年も前に作られたとは思えない斬新さ。音楽と踊りの見事な一体ですよね。ただちょっと残念なのは、音楽が特殊なので、「春の祭典」ほど上演されないせいか、新しい振り付けがなかなか出てこないことです。1度だけ違う振りで観たことがありますが、むしろニジンスカの方が斬新に見えたくらい。
踊りは群舞が中心で、当の結婚をする男女も、その両親もほとんど踊らず、ソロで活躍するのは花嫁花婿の友人の男女。確か、バレエ団のサイトだったかな、今日の演目の宣伝に、新国立バレエの素晴らしい群舞をみたいな宣伝文句があったんだけど、確かにこのバレエ団の群舞ってきれいに揃っていてとってもステキ(世界でも第一級と言ってもいいと思う)なんだけど、今日の演目、「火の鳥」「結婚」に関してはちょっと違うなぁって。迫力不足というか、このバレエってきれいに揃うことよりも、オレがオレがと前に出てくるここの力強さが大事と思うの。その重ね合わせが群舞の迫力。古典バレエのきれいに揃う優雅で繊細な踊りとは違うと思うのね。
それから、結婚する男女、その両親がみんな同じように見えちゃったのが辛い。立ってるだけでお父さん、お母さんに見えるダンサーがまだ育ってないと言うことかな、そしてそう見えるような立ち方をしていないってことかも。全体的に、まだ、ひとりひとりの作品への理解度が不足しているように感じました。多分、みんな初めて踊る演目なのでしょうがないとは言えるんだけど。

ちょっと厳しいこと書いたけど、でも、わたし、このバレエ団大好きだから、もっともっと上に行って欲しいのね。将来的には、いろんなレパートリーを踊り切れるようになって欲しいし、舞台に立っているだけで目が釘付けになるようなキャラクター・ダンサーも育って欲しい。それから、違ったタイプの演目ごとにそれぞれを得意にするプリンシパルの層が厚くなればいいし、もっと公演数、演目を増やして欲しい。って欲しい欲しい病だわ、わたし。
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by zerbinetta | 2013-11-15 19:54 | バレエ | Comments(0)

小粒かな〜 オーケストラ・プロジェクト2013   

2013年11月13日 @東京オペラシティコンサートホール

金田潮兒:管弦楽の為の『音聲三態・Ⅲ』~尺八独奏部分を含む~
糀場富美子:「わだつみの波」管弦楽のために
小山和彦:ピアノ協奏曲第2番
土居克行:M.ソプラノと管弦楽のための R.Mリルケによる「三つの詩」

福田輝久(尺八)、及川浩治(ピアノ)、山下牧子(メゾソプラノ)
大井剛史/東京交響楽団


招待券のプレゼントに当選したので聴いてきました。オーケストラ・プロジェクト2013。現代音楽の音楽会です。実は、ワーグナー生誕200年、ルトスワフスキ生誕100年という宣伝文句だったので、彼らの曲が演奏されると思ったんだけど、全然違った。日本人の作曲家4人の作品。全部初演!

オーケストラは1990年からずっと担当している東京交響楽団。女子率の高いオーケストラです。指揮は大井さん。前に、アマチュアのプロースト交響楽団で聴いたことがありましたね。

最初の曲は、金田さんの「音聲三態・Ⅲ」。この曲は申し訳ないけど、わたしはダメでした。学校の先生が書いたみたいな感じでちっとも面白くない。途中で尺八が客席から現れるんだけど(そして舞台袖に出て行く)、尺八のメロディが、せっかく尺八を使ってるのに西洋のイディオムだし(音色だけが欲しかった?)、アクセントを効かした3つの分散和音の音がしつこいほど繰り返されて耳について、結局なんだったんだろう、耳に残るのはそれだけみたいな。それだけでいいの?いいはずないって感じ。

2番目の糀場さんの曲は、始まり、清とした美しさに心惹かれました。確かに魂が波に漂うような音楽。中間ではちょっと烈しい部分が「春の祭典」に大まかなニュアンスとして似た感じがあって、最後はすうっと静かに引いていくように終わるのだけど、最後の部分がもっとステキだったらと思いました。出だしがとても良かったので、あんな空気感を引き摺って終われば(もちろん、最後に言いたいことは始まりとは違うのでしょうけれども、音の響きがちょっとありきたりな感じがして、凜とした美しさの中に曲を閉じればもっと良かったのに)って思いました。でも、今日の4曲の中で一番を挙げるとしたら、全体的に小粒だったけど(コンクールの審査員かい?!)この曲でした。

休憩を挟んで3曲目は、小山さんのピアノ協奏曲第2番。ソリストの及川さんが、気合い入りまくりで、切れんばかりにネジ巻いた、ミニ四駆(とここまで書いてみて調べたらミニ四駆って電動だったんですね。知らなかった、仕切り直して)、思い切りネジを巻いた車が手を放したとたんに全速力で走り出した感じで音楽が、始まって、そのままハーフマラソンを100メートル走のテンションで走り抜けたような演奏。すごい。。。
曲は良くも悪くもレパートリーになることを指向して書かれた感じ。とっても分かりやすい。第1楽章はラフマニノフの協奏曲のつなぎの部分を抽出してつなぎ合わせた感じ。ラフマニノフそのもののロマンティックな叙情性はないけれども、ちょっとその香りを感じるような。プロコフィエフのような強靱な金属性を感じさせるところもあったけどでも、やっぱりラフマニノフだな。第2楽章はその色合いは薄くなって、第3楽章の即物的な感じはバーンスタインのピアノ曲?と勝手に自分の知ってる音楽に近似してるんだけど、この曲は、再演率高そうだな。っていうか普通に演奏されても良さそう。作曲者のもくろみ(わたしが勝手に想像だけど)は当たったみたい。

お終いは、土居さんの「3つの詩」。ここでちょっと残念だったのは、プログラムに歌詞の対訳がなかったこと。どんな内容を歌っているのか分からなかったので(一言要約はあったけど、歌曲の理解には不親切)ちょっと楽しめなかった。山下さんの歌はすごくいいし、音楽もとても力強く書かれているので、充実した音楽なのだけど残念。歌がちゃんと歌なのがいいですね。

大井さんと東京交響楽団の演奏は、新しい曲をきちんと演奏することに重きを置いていた感じです。ピアノ協奏曲みたいにソリストが弾けちゃってたのもあったけど(でもそれも良かった)、作曲された生の姿を色を付けないで聴かせるのは大事なことですものね。突っ込んだ解釈がない分物足りなくもあるけど、ヘンな演奏で作品をネガティヴに印象づけちゃうのはもっと悪いし。大井さん、にこやかでいい感じだな。今度はチャイコフスキーとか個性を出せるので聴いてみたいな。あっベートーヴェン・シリーズはニューフィルハーモニーオーケストラ千葉でやっているのでした。忘れないようにしなくちゃ。
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by zerbinetta | 2013-11-13 23:55 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

同じ釜の飯、いつまでも アマデウス・ソサイエティー管弦楽団 第41回演奏会   

2013年11月10日 @目黒パーシモンホール

ラヴェル:ラ・ヴァルス
トマジ:トロンボーン協奏曲
バルトーク:オーケストラのための協奏曲

清水真弓(トロンボーン)
川本貢司/アマデウス・ソサイエティー管弦楽団


都立大学前に都立大学がないの知ってるんだもんね。前に都立大学に通ってる友達に遊びに来てと言われて、都立大学前で降りていけばいいのね、と言われてびっくりしたもの。駅偽装?そう言えば、都立大学すらもはや存在しないのね。
都立大学の駅はほとんど来たことないんだけど、自由が丘は学生時代ちょくちょく行ってたのでなつかしーー。でも、残念、わたしの自由が丘の、伝説の紅茶屋さんももうないのね。あのお店、ほんと大好きだったなーー。

と、感傷に耽りつつ、ご招待されて(敬語の誤り!)聴きに来たアマデウス・ソサイエティー管弦楽団。清水さんのトロンボーンを聴けるのも魅力です。清水さんのことは、昔、彼女がリンツ・ブルックナー管弦楽団にいらっしゃったときのインタヴュウ記事を読んでいたので知っていました。現在は南西ドイツ放送交響楽団の主席。アマデウス・ソサイエティー管弦楽団の母体、慶應大学のオーケストラの出身なんですね。同じ釜の飯を食った人たち。こういうのって、音楽でつながってる、って羨ましい。

パーシモンホールは、座席数が1200の中ホールくらいのサイズの新しくて明るい気持ちの良いホール。室内オーケストラや室内楽にも向いていそう。椅子の背もたれがちょっとリクライニングになってて、座り心地もいいの。東京って各区にステキなホールがあるんですね。

まず最初は「ラ・ヴァルス」。この曲って難しいと思うんですね。背景で細かく動き回る木管楽器がクリアに聞こえてこないとごちゃごちゃして何やってるのか分からなくなるし。なんかわざとごちゃごちゃ聞こえるように書かれてる感じもするし。オーケストラの人たちはとても吹けてるし弾けてました。このオーケストラ、弦楽器が上手いですね。ただ、この曲では各楽器がもうちょっと自己主張して分離良く聞こえるといいと思いました。指揮者の川本さんがとっても表情豊かに踊るように、誘うように振ってるいるのに、恥ずかしがって壁の花になってる感じ。一緒に踊れればもっと良かったのに。場面ごとの変化がもっと付けば良かった。バレエ音楽としては最初、拒否されちゃったみたいですけど、バレエを観て、踊りや場面のイメジを頭に描けていれば、違った風になったかも知れませんね。

2曲目はトマジのトロンボーン協奏曲。トマジは南フランスの作曲家だそうです。聴くの初めて。なぜか、トロンボーン協奏曲をホルンやトランペット、各種木管楽器協奏曲よりたくさん聴いたことがあって、現代作曲家にとってトロンボーンは作曲しがいのある楽器なのかなぁと思ったり。今日のトマジの作品は、作曲家本人が「私はメロディストだ」とおっしゃってるとおり、今まで聴いた現代作曲家の重音とかマウスピース外すとか、エキセントリックな奏法満載のアクロバティックなのと違って、歌う音楽(といってもロマン派チックじゃないんですが)。トロンボーン本来の伸びやかな音楽が楽しめる作品でした。同じ釜の飯の清水さんのソロもとってもステキで、さすが、ヨーロッパの一流どころのオーケストラで主席を吹いている方だけある。終始安定していて、豊かな柔らかな音色で聴き惚れるなぁ。オーケストラとの音量のバランスもとっても良かったし。昔の仲間との共演で気の置けない感じなんじゃなかったかしら。

最後はオーケストラのための協奏曲。随分、難しい曲だと思うんだけど。どうしてどうしてちゃんとはまってます。この人たちの音楽への情熱って並々ならぬものがありますね。というか、学生時代に徹底的に鍛えられてそれをずうっと維持している感じ。オーケストラの音楽のまとまりの良さが、セカンド奏者の音を聴いて分かります。全体の中の役割がよく分かってる感じでとってもバランスがいいの。ちょっとドライなところもあったし、乱れた部分もあったし、指揮者からみるとおとなしいと思うところも感じられたし、最後はもっとはち切れて駆け抜けて欲しいなって思ったけど、良い演奏でした。

指揮者の川本さんは、数少ない、外国でオーケストラの主席指揮者をしているひとりですね。チェコのピルゼン・フィルハーモニック。終始にこやかで身体の表情豊かで、一緒に音楽やってると楽しくさせられるような指揮者さんです。これからの活躍、楽しみにしたいです。
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by zerbinetta | 2013-11-10 00:49 | アマチュア | Comments(0)

蛹のからを打ち破れ! ハーディング/新日フィル マーラー交響曲第7番   

2013年11月9日 @すみだトリフォニーオール

マーラー:交響曲第7番

ダニエル・ハーディング/新日本フィルハーモニー管弦楽団


ツイッターで昨日のハーディングさんと新日フィルのマーラー交響曲第7番の演奏が盛り上がっていたので、いても立ってもいられなくなって、チケット衝動買い。聴きに行ってきました。なんか、マーラー7祭りなんですね。同時にインバルさんと都響が同じ曲をやってるなんて。こんなにマイナーな曲なのに。ロンドンでやったら、ハーディングさんとロンドン・シンフォニーでもがらがらでしょう(6番をやったときがそうでした)。

ハーディングさんは、今まで聴いた感じだと、わたし的にはマーラーよりもブルックナーの人です。だからチケット取ってなかったんだけど(しかも高いし)、クック版の第10番はうんと良かったので10番寄りの7番はもしかして気が合うのかも知れないと思ったのも聴きに行く気になった理由です。ハーディングさんはロンドン・シンフォニーの首席客演指揮者だけど、今はロンドンで振るより日本で聴くチャンスの方が大きいんですね。

それにしても東京ってクラシック音楽の受容(需要の方がいい?)が凄いんですね。マーラーの7番でホールがいっぱいになってしまうなんて。こんなの世界中で東京だけじゃないですか。

ハーディングさんと新日フィルのマーラーの交響曲第7番は、確信を持って突き進んでいく演奏。始まりの序奏の部分から速めのテンポではっきりとしたアクセントで進んでいく。実は正直に言うと、第1楽章の途中まで、期待していたのと違ってちょっとがっかりしてたの。意外にオーケストラがダメで、弦楽器、特にヴァイオリンにパワーがないし、缶詰の金属味のような音がして、音色の美しさに欠けているなって思ったの。それに金管楽器が荒いし、ちょっと溜めるべきところをつるりとブドウが口から落ちてしまったように滑っちゃうところがあって、どこまでがハーディングさんの音楽なのかって分からないところがあって、もっと上手なオーケストラで思う存分振ったらハーディングさんの音楽は変わってくるのかなって考えてしまいました。オーケストラは誠実に音楽を演奏していましたよ。もちろん。ただ物足りないんです。もう少し自発的な積極性があればって思いましたもの。でも、聴いていくうちにハーディングさんの手の内が見えてきて2楽章は断然面白く聴けるようになってきました。

もう一度第1楽章に戻ってみると、序奏からそのままの勢いで主部に飛び込んでいく感じや、速めに突き進む第1主題に音楽の勢いを感じました。テンポを落としたのは第2主題の盛り上がるところで、でも、あまりロマンティックではない、むしろ、20世紀の感情よりも理論を優先させたような無機質の音楽を感じました。ハーディングさんはこの音楽を20世紀への序奏だとしっかり捉えているようです。わたしはこの曲はとても色彩豊かで艶やかだと思うんですけど、ハーディングさんはモノトーンで(オーケストラがそうだったからかな?)、ざくざくと切り分けるようなザッハリヒな感じがして、例えば、ベルクの3つの断片に近い感じに聞こえてきました。そしてときどき、アンサンブルが乱れそうになってドキリとするんですけど、多分、これわざとやってる。予定調和的ではない、何が起こるか分からない、綱渡りのような音楽をやろうとしている。
第2楽章は、不思議なアクセントを鋭く強調したりして抽象的な雰囲気を作りながら、第1楽章の勢いのままに行進曲を進めていく。夏の夜の涼やかな風も吹かず、全体的な雰囲気は奇妙で暗い兵士の行進。チェロの歌にほっとするときもあるのだけど全体的には、緊張をはらんだ展開。ハーディングさんはオーケストラにもっと壊れる寸前の音楽を要求しているように思えた。優等生にならないでここがもっと自在に突っ張った音楽をすることを。そう思えてくると俄然、音楽が面白く聞こえてくる。
20世紀初頭のマーラーたちの音楽って、19世紀のしがらみから解放され、調やリズムや音色が個々自立独立し始める胎動を持っていると思うんです。もちろん21世紀の今は、100年前とは違うけれど、ハーディングさんは、お行儀の良いオーケストラから、もっと個の粒立ちのはっきりした音楽を生み出そうと、マーラーの時代とパラレルなことをやろうとしていると確信しました。ハーディングさん本気(マジ)。このオーケストラを変えようとしてる。
第3楽章は、もっとキュリアスな表現が欲しかったけど、これはまだ無い物ねだりかなぁ。でも、オーケストラのハーディングさんの棒に付いていこうとする誠実さや意気込みは感じられたもの。全曲を通してそうだったけど、ティンパニが輪郭のはっきりした音で叩いていて良かったです。ハーディングさんはこの楽章をシンメカルな構成の曲の中心に据えてはいない感じ。次の第4楽章のセレナーデも、なんと!第1楽章から続く同じ空気感で作っていくのでびっくり。一気呵成の直線的な演奏。これは、音色の処理とかだいぶ違うけど、CDで聴いたアバドさんとベルリン・フィルの演奏に近いのかな。ギターとマンドリンの人はこの楽章が始まるときに出てきたんだけど(そうするのは珍しい)、マイクなしでわたしの聴いてた3階席まで音が届いてた。ホールが弱音まできっちり伝えるのね。
第5楽章も賑やかだけど、底抜けに明るくなることなく、やっぱり第1楽章から続く雰囲気で、ひとつの曲の中に閉じ込める。これが、ハーディングさんの解釈なのか、ほんとはもっと多彩な音色で各楽章の色を別々に際立たせたかったのか分からないけど(オーケストラは音色を弾き分けるところまでは成熟してませんでした)、でも、全曲の統一感は大事にしていたんだと思う。そしてそれをぶれずにもの凄く確信を持って成し遂げたので納得のいく演奏。
それと矛盾するようだけど、同時に、個々の表現は崩壊寸前までばらばらの方向に向かわせたかったんだと思う。キュビズムの絵のようにひとつの対象をいろんな方向から見つめてそれを同時にキャンバスに描いちゃうみたいな。描かれた絵は異形のデフォルメされたものだけど、筆のタッチがひとつなのできちんとひとりの人物像に見える感じ。

マーラーが新しい音楽を生み出そうと藻掻いたように、ハーディングさんもマーラーから、そして新日フィルの殻を破ろうと藻掻いてる。マーラーのはちゃめちゃな音楽はお行儀よく演ってもちっとも面白くないというか、音楽の本質を表現できないと思うんです。残念ながらそこが日本のオーケストラの弱いところ。演奏者自身からリスクを犯して大胆に仕掛けてこないし、出る杭になって打たれないようにみんなに合わせちゃう。ハーディングさんはそれではダメ、出る杭になって殻を破らないとと、オーケストラを叱咤激励して変えようとしている。ミュージック・パートナーがどんな職責を持っているのか知らないけど、ハーディングさんには、単にいくつかの音楽会を振りに来るのではなくて、オーケストラとの関わりを深く持ってオーケストラを育てていく意気込みが感じられてとても嬉しかった。ちっちゃな巨人ハーディングさん(若手指揮者の中ではネゼ=セガンさんとともにちびっ子です)。惚れ直してしまったじゃない。

もうひとつ、書いておきたいのは、プログラムの曲目解説が、特に前段の部分が、良かったです。プログラムの曲目解説って、ありきたりの作曲経緯や音楽の構成とかそういうものからそろそろ解放されてもいいと最近よく思っているんですね。どこの曲目解説にも同じようなものが書かれちゃうし、なんならウィキペディア見れば書いてあるし、もっと読ませる文章がいいと思うんです。主観的でいいから、今日なぜこの曲をとか、聴き所、聴き方の例とか、思い入れタップリの文章の方が面白いでしょ。それじゃ初心者に優しくないと言われるかも知れないけど、百科事典的に作曲の経緯とか知ってても音楽が親しくなるようには思えないしね。

こんな、何かが生まれつつある音楽会を聴くのはいいなぁ。来春のブラームスも聴きに来ちゃおうかしら。
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by zerbinetta | 2013-11-09 01:18 | 日本のオーケストラ | Comments(2)

カルフォルニア・ロールなベートーヴェン、もしくはたらこスパゲティー・モーツァルト   

今や世界は(といいつつ主に欧米)、日本食ブーム。少し大きな都市なら、日本食レストランはたいていあるし、「ワタシ、ニホンショクダイスキデース」と言う外国人で溢れてる。でも、たいていは地元の嗜好に合わせたなんちゃって日本食。日本で食べるのとほとんど同じのを食べられるのはスタッフが全員日本人っていう高級店にほぼ限られちゃう。多分、反対も真。日本で食べられている外国料理は、たいていは日本人の舌に合わせてる。お客さんのほとんどは日本人だし、どんなにがんばっても全部本国と同じ材料を常に手に入れるのは難しいから。
音楽、特に集団のオーケストラとか、言葉が肝になる歌手とかも同じだと思うの。日本人が演奏する、西ヨーロッパのクラシック音楽ってヨーロッパの人が聴いたら、なんちゃってクラシック。酷いこと言ってるような気がするけど、
外国のオーケストラが演奏する武満徹の音楽って、どこかしっくり来ないよね、日本的な曖昧さがなくなってるみたいな。なんて、無意識に言っちゃったりときどき聞くよね。ということは、日本のオーケストラが演奏するベートーヴェンは、ドイツの人からみるとどこかしっくり来ないに違いない。武満の方がよっぽど国際的な作曲家だから、況んやローカルなベートーヴェンをや、だよね。食べてるもの違うし。

でも、だから、日本のオーケストラで本物(?)のクラシック音楽は聴けない、なんて言ってるのではないのよ。
だって、その国でなんちゃって外国料理が好まれてるのには理由があるはずだし、本物の外国料理が好きって胸を張って言える人はほとんどいないんじゃない。っていうか、本物に親しんでる人ってごくわずかだというか、本物って知らない人が大多数。音楽も同じ。いったいどれくらいの日本人が、「本物」のベートーヴェンを知っているのでしょう?ベートーヴェンの国に住んで日常的に地元のオーケストラの演奏を聴いているのならいざ知らず、いくらフルトヴェングラーのCDでベートーヴェンに精通していても、決して「本物」が分かるとは言えないもの。CDには音しか入ってないんだから。日本で本国から来るのオーケストラでベートーヴェンを聴きまくっていても、それは「本物」を本当に知ることにはきっとならない。日本でもウォーカーズのショートブレッドは買って食べることができるでしょうけど、それは、イギリスでそれを食べることとは感覚が全然違う。これはもうどうしようもない。

っていうか、「本物」ってあるの?
わたしは、カルフォルニア・ロールが大好きだけど、これって江戸前寿司ではないけれども、外国が生んだお寿司の傑作だと思うんです。そういう意味では「本物」を超えた(言い過ぎw)というか「本物」だと思うの。
外国でだって、文化の違う環境でだって、本物以上にステキな音楽は、注意深く大胆に、意識を持ってなされれば生み出すことができるはず。そういう音楽を日本のオーケストラに期待したいのです。
日本人の好みに合った和のテイストの入ったベートーヴェンがあってもいいと思うんです。そんなことを言うと、権威のあるクラシック音楽ファンからは白い目で見られそうだけど、日本のオーケストラの多くはそういうものを目指していった方が良いんじゃないかなって思います。そしてそれが、カルフォルニア・ロールが世界を席巻して、さらにUSから日本に入ってきてお寿司屋さんのメニュウに定着したように、日本風のベートーヴェンがいつか本国でも評価されれば嬉しいなって思うんです。だって、ベートーヴェンの音楽は、時代を超えて国境を越えて生きてるんだもの。
大事なことだから繰り返して言うけど、日本のオーケストラ(の多く)は和のテイストを生かした音楽を目指してみるのがいいんじゃないって、今のわたしは思います。

(音楽の「本物」問題はわたしの中で揺れてるのであっさり意見が変わるかも知れないけど・・・)
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by zerbinetta | 2013-11-05 23:43 | 随想 | Comments(1)