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ついにわたしも日本人。年末第九 都民交響楽団特別演奏会   

2014年12月23日 @東京文化会館

ワーグナー:歌劇「リエンチ」序曲
ベートーヴェン:交響曲第9番

清水知子(ソプラノ)、管有美子(アルト)
井上了史(テノール)、伊藤純(バス)
末廣誠/新都民合唱団(安部純)、都民交響楽団


今年最後の音楽会は、なんと年末第九。ああ、わたしも日本人になったんだなぁ。と深い感慨。たまたまなんですけどね。都民交響楽団の特別演奏会。今年は第九でした。都民交響楽団は、年2回の無料(往復はがきで抽選)の定期演奏会の他に、年末に有料の特別演奏会をやっているのです。

第九の前に「リエンチ」の序曲。始まりのトランペットのソロのロングトーン、緊張のあまりというか神経質に音色を取り過ぎて失敗しちゃうことがままあるんだけど、緊張しながら聴き始めたら、すうっとトランペットの音が伸びてきて良かった♥ひと安心。やっぱりこのオーケストラの良い点は抜群の安定感ですね。「リエンチ」序曲は、ワーグナーっぽさとワーグナーっぽくなさが混じり合っていて好きなんだけど、演奏にもう少しその対比があればいいなって思いました。ワーグナーっぽくないところをもう少し賑やかにしてよりワーグナーっぽくなくなれば面白いのにってね。

第九は、堂々とした小細工なしの正攻法の演奏。第3楽章前半の素晴らしかったこと!!やっぱりこのオーケストラの美質は、大船に乗った気持ちで聴ける安定感だわ。一朝一夕で生まれるものではなく、きっと、長く常任指揮者をやられていて、その任を降りた今も深い関係が続いている末廣さんとの信頼関係から作られてきたものなのでしょう。お互いに相手を知り尽くした関係にありながら、倦怠期の夫婦のようにはならずに常に新鮮な音楽が生み出されているのもステキ。ちゃんと予定調和的にならない緊張感がちょうど良い具合にあって。もちろん、プロの上手いオーケストラなら凄さというかもっと深い音楽的な充実があるのかもしれないけど(慣れから来るだれがあることもあるけど)、音楽に対する特別感というか思いがストレイトに伝わってくるのは嬉しいです。ベートーヴェンの音楽って特に第九は全ての人を巻き込む、ドラクロワの旗を持った自由の女神の絵のイメジがあるから、ルーティーンじゃなくて音楽を演奏するのが特別なことであるアマチュアの心根にピッタリなのかもしれませんね。
合唱もとても良かったです。わたしもなんか歌いたくなっちゃった。全世界よ、わたしのキスを受けなさーーい!
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by zerbinetta | 2014-12-23 01:03 | アマチュア | Comments(0)

さらなる深みへ アリーナ・イブラギモヴァ バッハ無伴奏   

2014年12月21日 @王子ホール

バッハ:無伴奏ヴァイオリン ソナタ1番、パルティータ1番、ソナタ2番
バッハ:無伴奏ヴァイオリン パルティータ2番、ソナタ3番、パルティータ3番

アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)


今年のわたしの音楽会のクライマックスと言っていいでしょう。クリスマスに聴く、アリーナのバッハ無伴奏。最高にステキなクリスマスプレゼントになりました♥全6曲を3曲ずつ、2回の音楽会を1日のうちにやります。ものすごい体力、集中力。聴いてる方も大変ですから。思い起こせば、リゲティの協奏曲を聴いて、ファンになるぅ〜、追っかける〜と決めてから初めての音楽会。ロンドンの歴史的な病院と小さな教会でやった音楽会が、今日と同じ、バッハの無伴奏を2回の音楽会で1日でやるというもの(今日と違うのは1回目と2回目の会場を近所の2カ所に分けたこと)。すぐ前に、CDに記録された演奏と同じ、風が囁くようなステキな演奏でした。そして、それから、何回かバッハの無伴奏のいくつかを聴いてきたんですけど、CDのとはまるで違う演奏へと音楽はどんどん深化してきたのでした。そして今日、数年ぶりに彼女のバッハ無伴奏を全曲聴くことができる幸せ。前回聴いた前半3曲からどれほど深化しているのか、6曲をどう弾くのかものすごく楽しみにしていました。そして、予想以上、期待以上の凄いものを聴いて心が震えています。

音楽会は、ソナタとパルティータをかわりばんこに番号順に。なので、最初の音楽会は、地味な3曲、後半では、パルティータ2番のシャコンヌやソナタ3番のフーガと大物揃い。そして軽めのパルティータ3番で音楽会が閉じられます。なんかバランス悪い感じもするんだけど、これで最初から最後まで聴かせてしまう彼女の凄さ。一応2つの音楽会なんだけど、多くの方が一連の音楽会として両方聴きに来られていたようです。

まず、驚いたのは、アリーナ上手くなってる!!もともと上手い人に失礼な言い方だけど、わたしは、最初にアリーナを聴いたとき、凄い音楽の人だとは思ったけど、名手だとは思わなかったんです。上手い人なら、例えばヒラリーの完璧さの方がずっと上(もちろんヒラリーは上手いだけの人ではありません)だと思っていました。初めてバッハの無伴奏を聴いたときも、ソナタ第2番のアンダンテの下の刻みのリズムがときどき乱れて弾きづらそうでしたし。でも、今日は真っ先に、無伴奏ソナタ2番のアンダンテ!と叫びました。なんという進化。初めて聴いたときから彼女がどんどん素晴らしくなってきたのは聴いてきましたが、ここまで技術的に進化してきたなんて。音楽が深くなる過程は、何人か聴いてきたけど(もちろんアリーナも)、目に見えて(耳に聞こえて)上手くなる、それも凄く、のを聴いたのは初めて。驚愕。どんなときも余裕があって、それに、彼女の代名詞とわたしが勝手に思っていた、弓の毛切れが今日は1回もなかったのもびっくり。毛切れが演奏に影響することはないと思うのだけど、余計な力が入らなくなったから、なんて素人の想像ですけど。

技術的な冴えはもちろん音楽に生きてきます。今日聴いてもうひとつびっくりしたのは、バスの扱い。通奏低音的なリズムの刻み方、バスのような音色の作り方が、素晴らしすぎて、1艇のヴァイオリンで通奏低音と旋律を同時に弾き分ける神業。こんなの聴くの初めて。多分、共演していたアカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージックとの共同作業の成果でしょう(このコンビで来年か再来年来日にしますね)。そうとしか思えない、バロックの通奏低音ヴァイオリン。これがあったので、舞曲を集めたパルティータのゆっくりとした曲やもちろんソナタ第2番のアンダンテの演奏が、生き生きとしてきて、地味な曲なのに体がリズムに反応するようなステキな音楽になっていました。凄い。
それに、もう入り組んだ対位法的な複数の旋律それぞれを独立して自由に振る舞う生き物のように弾くんです。なんかひとりではなく何人かで合奏してるみたいに。聴いててそれぞれの声部がちゃんとそれぞれ歌われてるのが分かるんです。もちろん1艇のヴァイオリンでいつもいっぺんにたくさんの音を弾くことはできないから、ある旋律線は、きっかけだけで実際の音は途切れ途切れになってたりするんだけど、それがちゃんとつながってひとつの歌になって聞こえるんですね。アリーナはそれを実に自然にさりげなくやってのけるんです。わざとらしさや苦し紛れのところがちっともなくて、余裕があって丁寧で繊細。4声のフーガの実にステキだったこと。

そしてもうひとつ大きな変化は、音楽が大きくなってCDの頃のwhisper(囁き)からvoice(声)になっていたこと。この変化は、彼女の無伴奏を何回か聴いてきて予想はしてたんだけど(最後に聴いた2年前にその変化にびっくりしたから)、全6曲を通して聴くとその凄さがさらに分かるの。もちろん、囁くような演奏の方が好みという人もいるでしょう。でも、シャコンヌやソナタ第3番の大きなフーガの演奏を聴いていると、アリーナの深化がバッハの音楽への探求と共にあって、バッハの音楽の深みへわたしたちを巻き込んでくれることに嬉しい涙が出るんです。もちろん声高に叫ぶわけではない。でも以前よりよりバッハの言葉が聞こえるんです。静かな声で語りかけてくるみたい。バッハにとって音楽は言葉。ロゴスです。神と共にある言葉。そしてアリーナは、言葉を伝える巫女でしょうか。ひとりステージに立つアリーナの元に音楽の神さまが舞い降りてきたみたい。そこには、アリーナもヴァイオリンも、ない。音楽だけが在る。

この素晴らしい演奏。バッハの模範的な演奏。とは言わない。今の最高の演奏だけれども、それは終わった瞬間から過去のもの。もっと高く、もっと深いバッハが彼女には見えてくるはず。彼女自身、これを模範だと思っていないに違いない。だからこそ、わたしは追いかけても彼女のバッハを聴き続けなければいけないんです。CDの演奏なんてどんなに良くてもその通過点の記録に過ぎないんですから。でも、芸術家が身を削って生み出していく音楽ってそういうものでしょ。

それにしても、アリーナ、たくさん来日してくれますね。アリーナ、日本が好きなのかしら。それに日本のマネジメント会社さんの努力にも心からの感謝しなければいけないでしょう。
次の来日は、モーツァルトの協奏曲(名古屋は確かベルクの?)とティベルギアンさんとのモーツァルトのソナタ全曲シリーズですね。もう楽しみでたまらない。
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by zerbinetta | 2014-12-21 01:20 | 室内楽・リサイタル | Comments(2)

新国立劇場もクリスマス気分 新国バレエ「シンデレラ」   

2014年12月20日 @新国立劇場

シンデレラ

セルゲイ・プロコフィエフ(音楽)
フレデリック・アシュトン(振付)

米沢唯(シンデレラ)、菅野英男(王子)
古川和則、高橋一輝(義姉)
堀口純(仙女)、奥村康祐(道化)
柴山紗帆、飯野萌子、五月女遥、細田千晶(四季の精)
新国立劇場バレエ団

マーティン・イェーツ/東京フィルハーモニー交響楽団


ふふふ。スターダンサーズさんがマチネだったので、ハシゴしちゃった。ソワレの新国、「シンデレラ」2回目。
実は百合ヶ丘から初台って電車1本ですううっと来られるのかと思ったら、線が違うのね。びっくり。というか東京の地理、いまだに分からなすぎ。時間はあったからいいけど。

2度目の新国バレエのシンデレラ、キャスト違い。バレエってダンサーによって振りは同じでもずいぶん表現が違うので、いろんなキャストで観たいのよね。特に新国バレエは、ふたりの看板娘がお互いに競い合って(?)、さらにステキなバレリーナが何人かいるので(男子がんばれーー)、ふたりは見較べておきたい。と思っちゃうのです。
今日は、唯さんの回。全体的な印象は、この間と同じ。まんが的な表現に親しみを感じます。日本人の血なんだな〜。そんなにマンガとかアニメとか見ないわたしでも体に染みついてるのね〜。あっ。多分誰も誤解していないと思うけど、念のため言っておくと、まんが的というのはすごくポジティヴな評価ですよ。自分たちの表現を、もともと西洋の芸術のバレエで自然にできるんですから。借り物ではないってことだものね。

唯さんのシンデレラは、少し意志の強い少女。今は、継母や(出てこないけど)、義姉たちに苛められてるけどいつか幸せになろうと思ってる。上を向いてて薄幸感うすめ。ポジティヴ。で、その前向きさは、2幕で輝く。自然な流れでパーティーにつながって王子を射止める。対照的だったふたりのシンデレラ、わたしの好みでは、だから、1幕が絢子さん、2幕が唯さんって感じかな。

今回もソロで踊る方、群舞で踊る方、皆さんとてもよく踊られていました。これだけ質の高い公演を続けられるバレエ団を身近に持ってることを誇りに思ってます。次のステップには、ぜひ海外での招待公演を実現させて欲しい。でも、その前に、国内でも地方でたくさん公演をして欲しいです。何しろ国立なんですから。東京の人たちばかりに良いもの見せても足りないでしょ。将来はいくつかの都市で定期公演を持てるように、バレエ文化の裾野を全国に広めるのもバレエ団の責務じゃないかしらね。

音楽のこと。イェーツさんと東フィルの皆さんはいつものことながらしっかりと仕事をしていました。前回よりも良かったのは何回か公演を続けることによってこなれてきたのでしょう。音楽がいい加減なことも多い海外の一流バレエ団と違って音楽の演奏が素晴らしいのは、もう声を枯らして宣伝しても良いことよ。そして、イェーツさんをせっかく呼べるんだから、今度は彼の編曲の「マノン」をぜひやって欲しいわ。新国バレエで「マノン」ぜひ観たい。

あ、ひとつだけ残念だったこと、ナポレオンがらみの下ネタがもうほんと気がつかないくらいにさらりと流しちゃったのwここはもうどどっと大人を笑わかさなきゃ。
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by zerbinetta | 2014-12-20 23:58 | バレエ | Comments(0)

クリスマスはやっぱりくるみ スターダンサーズバレエ団   

2014年12月20日 @テアトロ・ジーリオ・ショウワ

くるみ割り人形

チャイコフスキー(音楽)
鈴木稔(演出/振付)
ディック・バード(美術、衣装)

林ゆりえ(クララ)、吉瀬智弘(王子)
鴻巣明史(ドロッセルマイヤー)、その他
スターダンサーズ・バレエ団

田中良和/ゆりがおか児童合唱団、テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ


ああ、困った。この記事を書き始めて、キャスト表を見てるんだけど、肝腎の演出/振付が誰なのか分からない。オーケストラがどこなのかも分からない。うろ覚えで、総監督の小山久美さんの版だったと記憶してたんだけど。。。新国立バレエ団もそうだから、バレエの公演で無料で貰えるキャスト表に一番大切な(とも言える)誰の版の作品が記載されないのは、日本のバレエの悪癖なんだろうか?だって、バレエ観に行く人は振付が誰なのかは大事よね。同じ作品でも全然違ってくるもの。バレエに限らず、演劇でもそうだと思うんだけど。特に、この公演を紹介するとき、真っ先に書きたいのはユニークでとても良かった演出だもの。もしわたしの思いが伝われば、スターダンサーズさんも新国さんもぜひキャスト表には舞台に関わった人の名前を敬意を表して記載して欲しいです。お願いします。
で、なんとかウェブサイトを探して(ちょっと見つかりにくいところにあった)、振付不明にならないで済んだ。。。

クリスマスが近づいてきて、あああ「くるみ」が観た〜いと思ってて、DVDを観て我慢してたんだけど、スターダンサーズさんの公演を見つけてどうかなぁと迷っていたら親切にもとてもいいよと背中を押してくれる方がいて、ほんとに良かった。「くるみ」の世界がひとつ広がりました。

くるみ割り人形は、今までオーソドックスな演出のを観てきたので、今日の鈴木版は新鮮。お話を大きく逸脱したものではないので、オーソドックスが好きな人、慣れた人にも楽しめるのもいい。舞台の設定を、お金持ちの一家のクリスマス・パーティーから、クリスマス市を訪れた普通の家族にして親しみやすくしてる。広場で上演されていた人形劇からクララが不思議の世界に入って、人形と一緒にネズミを倒してお菓子の国に行くのはほぼ物語り通り。最後後ろ髪を引かれつつも現実世界に戻ってお終い。
野暮と分かっていながら、演出のことについて少しだけ小言を言うと、群衆、ソーセージ屋さんとか町の人とかひとりひとりの性格付けがちょっと足りない。微に入り細に穿って舞台に出てくるひとりひとりに徹底的に人物像を与えるロイヤル・バレエに親しんでいたからか、ひとりひとりの人を群衆で片付けちゃうのは物足りないしもったいないと思いました。それから、舞台上で見せる人形劇がちまちまして観づらかった。これは、人形に扮するダンサーでできなかったのかな。そのシーンで子供たちが劇を観ているんだけど、周りの人たちが何だか舞台上で手持ち無沙汰で立っている感じに見えたのも残念。ひとりひとりを際立たせてさらに舞台全体をまとめ上げるような踊りにはできなかったのかな。それから、最後の場面で、人形の世界から現実に戻る逡巡をしているクララが、残り僅かな音楽で現実に戻れるか心配しちゃった。ところが、ここで物語に合わせて音楽を足したのは、ちょっとがっかり。だって、チャイコフスキーのこの音楽は、もう最高の出来映えで、何も引かず何も足さないのが一番だと思うんだもの。確かにこの場面は子供からちょっぴり大人になる大事な場面だけど、どうにか、チャイコフスキーの書いた音楽だけど上手く現実世界に戻ることはできなかったのかと思いました。

と、小言は書いたけど、それでもとってもステキな舞台だと思います。1幕の終わりのキラキラとした雪のシーンとかステキな場面もいくつもあるし。できれば、少しずつ改良して完成度を高めながら長く定番の舞台になればいいな。心からそう思う。

初めてのテアトロ・ジーリオ・ショウワは、とても観やすい劇場でした。上の階の後ろの方だったけど、劇場自体がそんなに大きくないし舞台からも遠すぎないです。そして、ジーリオ・ショウワのオーケストラ。若い(昭和音大の卒業生のキャリア支援のためでもあるんですね)オーケストラが、変に擦れることなくフレッシュで真剣な演奏をしてるんですね。今まで聴いた(バレエの)「くるみ」の演奏で一番良かったかも。いや、かもじゃない、良かった。てきとーに演奏してるプロよりよっぽどいい。

ダンサーさんは、初めて観る人たちなので、よく分からないのだけど、不満は全然ありませんでした。ドロッセルマイヤーをもっと活躍させろーって思ったくらい。あっこれ、ダンサーじゃなくて役柄でした。主役のおふたりは、いろんな演目でおふたりで主役を務めている看板ダンサーなんですね。舞台を引っ張る踊りをしていたと思います。さすがです。他の演目でも観てみたいかな。

やっぱり、「くるみ」の音楽を聴いてバレエを観ると幸せな気持ちになりますね〜。クリスマスには、毎年「くるみ」が観たくなる体になっちゃってるんだな〜。
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by zerbinetta | 2014-12-20 01:10 | バレエ | Comments(0)

ふふふ♥少女まんがの世界 新国バレエ「シンデレラ」   

2014年12月14日 @新国立劇場

シンデレラ

セルゲイ・プロコフィエフ(音楽)
フレデリック・アシュトン(振付)

小野絢子(シンデレラ)、福岡雄大(王子)
山本隆之、野崎哲也(義姉)
本島美和(仙女)、八幡顕光(道化)
丸尾孝子、堀口純、奥田花純、寺田亜沙子(四季の精)
新国立劇場バレエ団

マーティン・イェーツ/東京フィルハーモニー交響楽団


実を言うとプロコフィエフの「シンデレラ」はあまり好きではありません。というのは、童話のお話の軽さに対してプロコフィエフ独特の腹黒さが釣り合ってないと感じるからです。なんか、裏のあるような、表面は明るく振る舞ってるのにお腹の底では陰謀が渦巻いてるみたいな。でもバレエはコミカルで楽しい。そのギャップがね〜〜。と言いつつ、なぜかチケットが2枚。やっぱり好きなのかな?

アシュトンの振付は、本場のロイヤル・バレエでも観ています(この作品は確かロイヤル・バレエのために振り付けられてます)。わたし的には定番。安心して観てられます。さて、新国ではどうでしょう?

ぱっと閃いた印象では少女漫画から飛び出してきたイメジ(良い意味で)。とても日本人的。ちょっとした仕草とか顔の表情がまんがっぽいんですね。ロンドンでコミカルなシーンを日本人がやったとき(例えば、「マノン」の娼婦の小競り合いbyヒカルさんとユフィさん)、ふふふ漫画チックって思って、感覚がなんかピタリと合って嬉しかったんだけど、それが全体に広がってる感じ。こんなとこにも日本の文化なんだわ。日本の文化というと大袈裟に侘び寂とか禅とか構えちゃうけど、もっといろんなものが自然に浸みて身についてるのね。お醤油染みみたいに。もともと西洋の芸術であるバレエにもこうして知らず知らずのうちに日本の風味がついてて楽しめるのってステキなことじゃない?

絢子さんのタイトルロールはほんとに素晴らしかったけど、特に1幕の薄幸の少女の表情が豊かでかわいらしかったです。2幕ではとたんに舞踏会の主役に躍りでて肉食系。演出のせいだけどリアリズムの面からいえば(ってリアルな世界じゃないのにね)ちょっと疑問。だって、ずっと日陰者にされてた少女がいきなり宮殿の舞踏会に行ったら壁の花になるのがせいぜいじゃない。わたしだったら、絶対ダメ、おろおろする。っていうくらいの変わりようなんですよ。絢子さんがむちゃくちゃ上手に演じ分けてるってことなんですけど。あと、髪の毛の色が変わったのもいいのかなって。舞踏会にはカツラを付けるのかもしれないけど。
福岡さんの王子、はもうちょっと王子キャラがあるといいのだけど、あっわたしの王子キャラってキラキラ軽薄だ、絢子さんとのパートナーリングは安定していて良かったです。

一番目立つ、意地悪義姉のおふたりのコミカルな演技は、もっとはっちゃけても良かったかな。やり過ぎくらいでちょうど良いので。
仙女の本島さんは、わたし、本島さんのファンになっちゃってるんだけど、もう少し強さがあるといいなって思います。きれいすぎるんだもん。(なんかいつもアクの強いフェアリー・ゴッド・マザーばかり観てきたからかな?)
四季の精では、夏の堀口さんと冬の精の寺田さんが良かったな。

でも、やっぱり、みんな良かったんですよ〜。楽しめました。というか、こういうのは楽しまなくちゃデスね。それだけのものを提供して下さってると思うんですよ〜。
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by zerbinetta | 2014-12-14 10:10 | バレエ | Comments(0)

わりともやもや感 大野和士/都響   

2014年12月8日 @東京文化会館

バルトーク:弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽
シュミット:交響曲第4番

大野和士/東京都交響楽団


来シーズンから都響の音楽監督になる大野さんのプレお披露目?曲目で選んじゃいましたよ。弦打チェと滅多に演奏されない(初めて聴きます)シュミットの交響曲なんだもん。聴かずにはおれないでしょう。

弦打チェレスタのための音楽は、上の方の席で聴きました。大野さんの演奏は、バルトーク特有の灰汁が少なくて都会的。ハンガリーの言葉の持つ訛りのようなものがなくスマートな普遍的な音楽になっていました。全員が日本人で演奏するのですから、そしてお客さんもほとんどが日本人、そういうアプローチは必然でしょう。速い楽章でのフォーク・ソングっぽさが希薄で、わたしは今日の演奏は遅い楽章(1楽章と3楽章)の表現の方が好きだったんだけど、スッキリとしたさらりと透明な感じの音楽でした。中学生の頃、ゲンダイ音楽だと思っていた曲も、今こうして聴くとつるりと美しい音楽。ただちょっと疑問に思ったのが、(特に速い楽章で)アンサンブルに乱れがあったと感じたこと。あと音楽を丁寧に作りすぎて、勢いが余り感じられなかったことでした。上の遠くで聴いていたせいもあるかもしれないけど、音楽があまり届いてきませんでした。そうだとすると、日本のオーケストラも世界の一流レヴェルに肩を並べられるくらいって思ってたけど、実はまだまだなんですね。残念だけど。一流のオーケストラはどのホールのどこでも響かせる上手さをもっていますから。でも、日本を代表するオーケストラのひとつ。大野さんとの新時代でステップアップしていって欲しいです。

休憩のあとは、下に降りてわりとかぶりつきで聴きました(結構空いてた)。シュミットの交響曲は大好きなのでとっても楽しみにしていました。この機会を逃すと、もう聴く機会はこなささそうと思うくらい滅多に演奏されないので、耳に神経を集中させて、力んで聴いてしまいました。それがきっと間違いのもと。シュミットの曲って鋭く聴く音楽じゃないです。何と言うか、不健康で、馥郁として熟れきってる、というか食べたらお腹壊すかもというくらい熟成の進んだ、言葉を換えると腐りかかった音楽だと思うんですね。特にこの4番は。始まりとお終いの孤独のトランペットのソロだって、ぴーんと張り詰めた鋭い孤独感ではなくて、霧の中の曖昧な諦めに近い孤独の感情だと思うんです。今日の演奏では、(ソロは確かに難しいし緊張するんですけど)空気が凍っていた感じがしました。もう少し柔らかく吹いてくれたならば、って思いました。でも、トランペットだけではなく、全体に、多分大野さんの表現もそうだと思うのですが、遅れてきたロマンティシズムというか取り残されたロマン派というより、20世紀の初めに芽生えた進歩的な雰囲気の方に振れていたと思います。そういう意味で、模糊とした音楽を思い描いていたわたしには、ちょっと違うと感じられたのでした。もちろん、そうではない、クリアカットでさらさらした音楽として捉えることもできるのかもしれません。バルトークとの流れの中でこの曲をプログラミングした意図がそこにあるのかもしれませんから。大野さんと都響のはそういう演奏です。だからこそ、今日の演奏を高く評価する人もいるに違いありません。でも、わたしには、なんかもやもやが残る演奏会でした。心に残ってるものを洗って詰め替えたいみたいな。

でも、大野さんと都響の新しい時代には期待が持てそうです。大野さん都響をびしびし鍛えてくれそうだし。新しい都響、楽しみにしましょう。
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by zerbinetta | 2014-12-08 13:12 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

スルメと若者 第5回音楽大学オーケストラフェスティバル 4日目   

2014年12月7日 @東京芸術劇場

ファンファーレ
服部伶香:suppression ~child town fanfare~
東京音楽大学

島崎智徳:quiet lights
東邦音楽大学

ブラームス:交響曲第4番

田中良和/東邦音楽大学管弦楽団

シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

川瀬賢太郎/東京音楽大学シンフォニーオーケストラ


さあ、いよいよ音楽大学オーケストラバトル最終日。これで準決勝に進む4校が決まるわけです(ウソ)。
今日のファンファーレは、ユニーク系のタイトル。服部さんの思わせぶりな解説の「子供の街」が面白かったけど、表したい内容にはちょっと足りてないかな。音楽の中に謎(暗喩)を喚起する要素が少なかった、というか、難しいこと考えないで音だけそのままでいいんじゃないかなぁ。ガチャガチャして楽しい作品だったけど。

今日のプログラムも重量。最初が、東邦音楽大学でブラームス。桐朋学園とは漢字違いですね。東邦音大は、女性のコンサートマスターをコンサートミストレスなんて変な英語で表記してなかったのでポイント高いです。
田中さんは初めて聴くんだけど、お名前は前から知っていました。それがどうしてかよく分からないんだけど、もしかして、日本の合唱曲たくさん指揮して録音してましたっけ?
そんな田中さんの指揮、始まってみるとあれれれ?って感じでした。何と言うか力が抜けていて、やる気みたいなものが感じられない。僕しらないもん、ってオーケストラに勝手にやらせてると感じたのです。この間聴いた、尾高さんの、思いっきりやれー、俺が責任とる!、とは正反対。責任逃れって、ちょっとむかつきながら聴いてました。ところが、音楽が進むにつれて、また、あれれれ?どうしてか分からないけど、音楽がいい。音楽に自然と引き込まれていくんです。田中さんはその中心には、いない。と言うか見えない。自分を消して音楽だけがある。でも確かに、オーケストラは見えない田中さんの重力の下、演奏してるんですね。ブラックホール?それが田中マジックなのかな。田中さんの音楽をオーケストラは奏でているんだけど、でもそれは、オーケストラの音楽と一緒。オーケストラ自身が有機体となって自律的に演奏してるみたい。噛めば噛むほど後を引くスルメのような音楽でした。後に引く演奏だったので、休憩のあともう1曲聴くなんて大変。ブラームスの精神的な密度って尋常じゃないもん。

大取は、東京音大で「英雄の生涯」。指揮は、ぜひ一度聴いてみたかった30歳(多分)、若手のホープ、川瀬さん。現在、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者でもあります。舞台に出てきた川瀬さんは、シャツのボタンを外してるような(実際そうしていたわけではありませんが)ちょっと昔の不良っぽい(ツッパリ、死語だけど)ところがあって、古色蒼然なクラシック音楽会に風穴を開けちゃる、みたいなナナメに世の中を見ている、若さゆえの自信に溢れていてちょっといい感じ。と、音楽に関係ないことばかり書いてきたけど、音楽もまさしくそれ。川瀬さん、田中さんとは対照的にぐいぐいと引っ張る。先頭切って学生オーケストラと走りまくり。若い音楽。若さゆえの過剰。若者たちが火花を散らして、一緒になって音楽をがんがん鳴らしてる。若者ってときとしてとんでもないことを成し遂げてしまうけど、そんな一期一会の音楽。あとで興奮して俺凄かったぜーと言い合ってることでしょう。指揮者もオーケストラも今しかできない音楽。最後には引退までしちゃう自著伝のような音楽だけど、この曲を書いたシュトラウスは弱冠34歳。若者の熱は正しい!

それにしても音楽大学オーケストラフェスティバル、それぞれの大学のオーケストラや、指揮者の音楽が堪能できて本当にステキな体験でした。プログラムの解説も各大学の先生や学生さんが書いていて、それも個性があって面白かったです。バトルと思っていたけど、全員に一等賞を差し上げたい。現実には、この中から将来演奏家として活躍できる人はごく一部でしょう。でも、一瞬でも輝いた時があって音楽でつながっているなんて、なんてステキな大きな財産なんでしょう。音楽って素晴らしい。そして、音楽とは違う世界にいたわたしにはかなり羨ましい!皆さんに幸あれ!!
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by zerbinetta | 2014-12-07 23:28 | アマチュア | Comments(0)

ホルンとはズルイ 第5回音楽大学オーケストラフェスティバル 3日目   

2014年12月6日 @東京芸術劇場

柏木恒希:fanfare
桐朋学園オーケストラ

松尾賢志郎:ファンファーレ
国立音楽大学オーケストラ

ブルックナー:交響曲第7番

高関健/国立音楽大学オーケストラ

サンサーンス:ホルンと管弦楽のための演奏会用小品
ブラームス:交響曲第1番

ラデク・パボラーク(ホルン)/桐朋学園オーケストラ


音大オーケストラバトル、3日目は会場を池袋に移して桐朋学園と国立音大の戦い。
ファンファーレは、両者、ファンファーレという曲名(英語と日本語の違いはあるけど)。わたし的には、いわゆるファンファーレっぽいシンプルな柏木さんのが好みかな。

それにしても音楽会の前半が、ブルックナーの交響曲とは。。。超重量級のプログラムだわん。初めて見る高関さんもちびっ子。指揮台より先に音楽会が始まる前に会場でお見かけしたんだけど、声が、、、バリトンの凄く良い声。惚れちゃう。
ツイッターでフォローしてるんだけど、高関さんは楽譜マニア。できる限り自筆譜や異稿に当たってとても良く研究されてらっしゃる。というのが何となく分かる演奏でした。と言っても、神経質ではないんです。丁寧に楽譜を追って、内声とか絡み合う旋律をふんわりと浮かび上がらせて、ブルックナーの音楽を立体的に描くんですね。ひとつひとつの音符を温かく見つめている目。全ての音に神経が通ってる。でも、オーケストラを強制的にドライヴして自分の音楽を押しつけてるのではないんです。多分、練習の中でとても丁寧に音楽を説明して、理解しながら自発的に弾けるまでに持っていく。国立のオーケストラもとっても上手くて、ただ、でもまだ到達点ではなくて伸びしろが十分あるし、もっとこうしたらいいというのも聞こえる。彼らの音楽会もこのあと同じ曲を含むプログラムで予定されているから、それまでにもう少し完成度を上げていくんでしょう。っていうか、ブルックナーのこの曲って、多分、生涯をかけて求めたい高みなのでしょう。高関さんの演奏、本当に良かったな。プロのオーケストラでもじっくり聴いてみたいです。

後半は、ホルンの神さま、バボラークさんの吹き振りでサンサーンス。おおお!いきなりの反則技。バボラークさんの一吹きで会場の世界が変わった感じ。オーケストラもバボラークさんの魔法にかけられて上手に付けてるんだけど、それ以上にバボラークさん。世界の全てがバボラークさん。これにはやられた。今日のオーケストラバトル、桐朋学園の反則勝ちだよ。ホルンの吹き振りって初めて聴いたけど、まあもう言葉が出ない。完璧なテクニックに多彩な音色。金管楽器の輝かしい、でもちょっとふっくらしたばりばりと鳴る音に、木管楽器のようなフェルトのような柔らかな音。もうこのまま、バボちゃんのリサイタルでいいよぉ。ソリスト・アンコールにメシアンの「恒星の呼び声」やってーって思ったけど、もちろんやらず。一応(?!)オーケストラが主役ですものね。
後半の後半は、指揮者バボちゃんでブラームスの交響曲。2楽章のソロとか、4楽章でホルン吹いてくれないかなぁと念じつつ、さすがにそんなことはないです。指揮者としては、技術的には、残念ながらホルニストのレヴェルには達していないんだけど(ホルンなら間違いなく世界のトップ・レヴェル)、それでもオーソドックスに真っ直ぐ攻めてくるブラームスには好感。というか、学生を音楽の渦に引き込んでくる手腕はさすがカリスマ。そして、オーケストラも上手い。さすが、有名音楽家を多数輩出している桐朋学園って感じでした。

終わってみれば良くも悪くもバボラークさんに持って行かれちゃった音楽会でしたけど、ふたつの大学ともとっても上手くて良い音楽を聴かせてくれたので、満足度高かったです。はああ、疲れた(メイン曲2曲は結構キツイ)。
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by zerbinetta | 2014-12-06 22:26 | アマチュア | Comments(0)