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うわっ!ステキなチェロ! ソル・ガベッタ、エルガー チェロ協奏曲   

12.10.2012 @royal festival hall

prokofiev: symphony no. 1
elgar: cello concerto
sibelius: symphony no. 2

sol gabetta (vc)
vassily sinaisky / lpo


何故音楽会に行くのか?そこにチケットの山があるからだ。と、登山家のように言い訳してるんだけど、今日の音楽会、チケットがあって、どうしてチケットを買っていたのか、分かりません。数合わせに買ったのかしら?まあいいや、わたしは登山家、チケットの山を崩さなければ。というわけで、なんだかよく分からないまま、マスタークラスのlso聖ルカからサウスバンク・センターへ移動です。

今日の指揮者のシナイスキーさん、全く知らない人です。いつもならワクワクしながら聴くんですけど、今日は風邪ひいたみたいで、ちょっともったり気分。で聴き始めたら、やっぱり、う〜ん、プロコフィエフの交響曲第1番、いいところもあるのだけど、何だか全体的にもっさりしてる。軽めなのか、重厚なのか、古典風なのかアヴァンギャルドなのか、いろいろはっきりしない感じ。どれかひとつに突き進んでくれれば分かりやすいのに。オーケストラは上手かったです。

2曲目のエルガーのチェロ協奏曲は、雨の日の哀しい気持ちにさせられる、ダウナーな、しみじみと良い曲なんですけど、今まで知らなかったチェロのガベッタさんがめっちゃ良かった!深い味わいの高級感溢れる木目のような肌触りの音色で、最初の一音からぐさりと刺さりました。チェロの表板の艶やかに磨き上げられた渋みのある琥珀色の音が滋味に溢れた音楽と重なり合ってもうそれはステキな時間。彼女のチェロの音色はステキだし、テクニックもあるし、音量も豊かで、ガベッタさんに一目惚れ、じゃない、一耳惚れ。お姿もとっても美人なんですけどね。でも、それ以上に彼女の音楽。琥珀の中に閉じこめられた虫の化石を掌にとって、過去の時間に思いをはせるような、とても大切な小さな心の箱の温かさを感じる音楽。しなやかにしっとりと歌うチェロは完全にわたしのツボ。うっとりと、1音も漏らすまいと聞き耳を立てて聞き惚れました。最近聴いたチェロ弾きの若手の中では、わたし的にピカイチ。今日の音楽会来て良かった!アンコールには、ラトヴィアの作曲家、ヴァスクス(peteris vasks)さんの無伴奏の曲を弾いてくれました。これは、エルガーの協奏曲とは対照的に、寒々とした孤独感のある細い繊細な音で、彼女の音楽性の幅広さを示していました。そして、彼女の歌付き(ハミング)。艶めかしさがあってどきり。
音楽会終了後、サイン会があったので空いてたので(ほぼ一番乗り、ロンドンでサイン会に長蛇の列ができるのはあまりありません。できても日本ほどではなさそうです)、ちゃっかりプログラムにサインしてもらいました。CDは会場でも売られていましたが、アマゾンで買う方が安いのでそちらで。グリモーさんと組んだCD、注文しました♬
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休憩のあとはシベリウスの交響曲第2番。最初に戻ってこれも何だかよく分からないように感じました。シベリウスって短い旋律や旋律ともいえない動機が点描的に編み込まれて音楽になってると思うんだけど、近くで観た点描画のように転々がつながらないので全体像がよく分からない、と思ったんです。寄せては返す波のように最後は盛り上がるので良いのですけど、わたし的には全体的な流が欲しかったです。オーケストラは冷たいトーンで良く鳴っていたんですけどね。

というわけで、わたしとしてはぼんやりした感想なんですけど、風邪ひいて頭ぼんやりだし、少し遠くで聴いていたせいもあるかなって思います。でも、何回も言う!ソル・ガベッタさんは素晴らしいチェリストです!
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by zerbinetta | 2012-10-12 22:36 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

祝!初プロム! でもわたしは音楽会を観に行くんだなぁ   

9.8.2012 @royal albert hall

sibelius: symphony no. 6
delius: cynara
grieg: piano concerto
per nørgård: symphony no. 7
sibelius: symphony no. 3

roderick williams (br)
steven osborne (pf)
john strorgårds / bbc philharmonic


BBCプロムスは、もともとの名前を、なんとかこんたか(確か人の名前)プロムナード・コンサートと言うんだけど(詳しくは各自ググってね)、それは、あらゆる人に安く、気軽にクラシック音楽を聴いてもらいたいからということで始まったそうです。プロムナードは、散歩の意味で、最初は自由に出入りできたり、サンドウィッチを食べながら聴ける音楽会だったようですね。BBCプロムスと名前が変わった今は、演奏の途中で出入りしたりそぞろ歩いたりサンドウィッチを食べるのはできないけど、プラスチックのコップに入ったワインやビールを飲みながら聴くのはOKだし、5ポンドの立ち見の席(ステージの前の一番良い場所と上のギャラリー)はシーズンチケット以外は当日券のみで、誰でも気ままに(とはいえ人気の公演はかなり前から並ばなければいけないんですが)聴ける雰囲気は残ってます。そしてその立ち見の席で聴くことをプロミングと言って、立ち見の席に熱心に通うファンをプロマーと呼ぶんです(プロムに通っても席で聴いてる人はプロマーとは言わない)。わたしは、軟弱者で、当日券に並んだり、音楽会の間ずうっと立って聴いてるなんて、芸当できないから、今までプロムしたことなかったんです。でも、これじゃいかん、一生の思い出に(大袈裟)プロムしようということで、人気がなさそうで空いていそうな(ぎりぎりに行っても入れる&後ろの方で座って聴ける)音楽会を選んでみたのでした。今まで見た感じ、今年はオリンピックのせいかいつもより空いているような気がしたし、国内のオーケストラは空いてる傾向にある気がしたので、今日のBBCフィルハーモニックのシベリウス・プログラムにやってきたのでした。シベリウスはイギリスでは人気だけど、今日のプログラムはマイナーな交響曲第3番と6番なので、真ん中にグリーグのピアノ協奏曲が入るとしてもきっと空いてるでしょう。わたし的には、交響曲第3番と6番はシベリウスの交響曲の中で1、2を争う大好きな曲なので、よくぞ2曲いっぺんにというヨロコビのツボです。でも、こんなマイナーなプログラムでも、ロンドンに来てからシベリウスの交響曲全曲演奏会が2回もあったので、聴くのは第3番は3回目、第6番は5回目です!

いやあずいぶんと前置きが長くなってしまいましたが、のこのこと開演時間ぎりぎりにやってきたわたしも、途中下の通路で音出しをしていたオーケストラの人にすれ違ったり、雰囲気を楽しみながらアリーナへ。もちろん前の方で聴いてやろうという気は端からなく、後ろの方の隙間にちょこんと腰を下ろしました。久しぶりの体育座り。
ぼんやりと天上を見上げていると、清楚なヴァイオリンの響きが聞こえてきて。ああ、大好きな交響曲第6番。でも、今日は耳を澄まして聴くというより、天上にある丸いマッシュルームのようなオブジェを見ながら、音の世界に遊んだという感じです。この曲、作曲家の吉松隆さんもおっしゃっていましたが、わたしも宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い描いてしまうんですね。だからつい上を見上げてしまう。星は出てないけど。演奏はとてもステキでした。雰囲気が良かったし、宙の彼方の構成の光りのような白い冷たい光りが降り注ぐ感じ。初めて聴くBBCフィルハーモニックも堅実に上手くてびっくり。マンチェスターのオーケストラなんですね。イギリスの地方オケも侮れないなぁ。

と、聴いていたのはここまで。今度は寝っ転がって(わたしの他にも寝ころんでた人いたんですよぉ〜)、聴いてるうちにうつらうつら。それにしても突然歌が聞こえてきたときにはびっくり。歌付きの曲だったんですね。ステージが見えないのでステージで何が起こってるのか分からないのです。これはディリアスの「サイナラ」という曲でした。ひと聴きしてディリアスと分かる音楽。
ここでわたしの記憶はぷっつり。グリーグのピアノ協奏曲は、全く覚えていません。うわ〜寝ちゃった。駄目ですね、横になると。とたんにリラックスしちゃう。

休憩のあとは、デンマークの作曲家、ノルガルドさんと発音するのでしょうか、交響曲第7番。デニッシュ放送交響楽団の本拠地のホールのこけら落としのために作曲された曲です。と、こんなことは、聴かなくてもプログラムを見れば書けるのですが、はい、ちゃんと聴いてませんでした。何だかよく分からない曲だなぁ〜とぼんやり。今日のプロム、わたしのやる気のなさが思いっきり反映してますね。アリーナは前に立って気合いを入れて聴いてると違うのでしょうが(たいていそうしてる)、わたしみたいに後ろの方でやる気なさげに座ってるという時点で負けです。まあ、わたしの場合立っていてもちびっ子なので前が見えないから、どちらにせよ負けなんですが。

最後のシベリウスの交響曲第3番は大好きなので、体育座りに座り直して聴きました。ストルゴーズさんのシベリウスは、一切奇を衒わずにそのまま、素直に音楽を作った感じ。そこが物足りないと感じることもあるけど、すうっと音がしみこんでくる。音に棘がないから、引っかからないんですね。わたしが透明になって音がわたしの中を流れゆく感じです。それは、交響曲第3番と6番に共通した特徴でもあると思うんです。

初めてのプロミング、いろんなことを感じました。一番は、わたしは音楽会を観に行くんだな〜ってこと。わたしにとって音楽は聴くだけのものではないということを再認識しました。ステージにいるイケメンくんを探したり、演奏している姿を観るのがわたしの音楽にとって切っても切り離せない、うんと大切なものなんだと分かりました。わたしがちゃんと音楽を聴くには耳だけでは足りないんです。鼻をつまんだらどんなおいしいお料理も味が分からないのと一緒でしょうか。
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by zerbinetta | 2012-08-09 07:57 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

積み木崩しのシベリウス ヴェデルニコフ、BBC交響楽団   

10.05.2012 @barbican hall

shostakovich: the bolt, suite
kalevi aho: trombone concerto
sibelius: symphony no. 1

jörgen van rijen (tb)
alexander vedernikov / bbcso


BBCシンフォニーのシベリウス交響曲全曲演奏シリーズ、今日が最終回。第1番です。指揮者は何故かウマが合うヴェデルニコフさん(ゾンビ)。楽しみ〜〜。

タコのボルトの組曲は管楽器のソロが大活躍する音楽。ポルカやタンゴなんて楽しげな音楽も混じっていて、この組曲版は、もともとのバレエの物語など関係なく、音楽としてあっけらかんと楽しめるのがいい。それにしても、BBCシンフォニーの管楽器の皆さんほんとに上手かった。アクロバティックなソロを難なく吹いて、スリリングな音楽を楽しませてくれます。オーケストラの質量のある音色がぽんぽん跳ねるのも愉しい。拍手のとき、フルートのムカイさんが立たされたけど、この曲は彼女がソロを吹いていたんですかね。とても良かった。

アホさんのトロンボーン協奏曲は去年の作品でイギリス初演。トロンボーンはロイヤル・コンセルトヘボウの主席、フォン・ライエンさん。アホさんってこの間、打楽器協奏曲の新作を聴いたばかりだから、最近アホさんづいてるんですかね〜。ついうっかりアホやねん、と言ってしまいそうです。アホさんは、ずいぶん前に交響曲第9番という実質トロンボーン協奏曲を聴いたことがあるのだけど、正直言って今日のトロンボーン協奏曲は、それに比べてつまらなかった。重音なんかの技巧的な要求も高いのだけど(しかも高音をかぶせていた)、トロンボーンらしい、グリッサンドやスラーや各種ミュートや、そういうものを引き出してるとは言えなかったし。前の交響曲第9番の方がトロンボーンらしさを上手く引きだしていた感じ。今日の音楽はわたしには退屈でした。トロンボーンのフォン・ライエンさんは、完璧に吹きこなしていました。ちょっとかっこいい。プチ・ヴィジュアル系。

シベリウスの交響曲は、なんかちょっと変な感じ。ヴェデルニコフさんはいつもわたしのツボなのになぁと戸惑いながらおろおろ聴き始めました。何かが違う?なんだろう?
シベリウスの音楽って、息の長い旋律が歌われるよりも、小さな積み木のような音がたくさん組み合わさって出来てると思うんです。それは、後期の音楽になるほど顕著だけれども、この初期の作品(チャイコフスキーっぽいとも言われます)からもその萌芽を聞き取ることが出来ます。ところが、ヴェルデニコフさん、その積み木を上手く組み上げることが出来ずに、積み木と積み木の間に小さな隙間を作ってしまったので(決して音と音の間に隙間を空けて演奏しているというわけではありません。もっと感覚的なもの)、積み木が大きな構造にならないのです。その分、細かな構造が見えてきて面白いのですが、最初のうちは戸惑いました。でも、もともとわたしとヴェデルニコフさんの相性はいいので、そしてそれはえこひいきにもつながるのですが、慣れてくるとこれも面白いな、と。BBCシンフォニーは質感のある落ち着いて輝く銅色の金属のような色彩の音で、シベリウスのどこか明るいのに薄暗いひんやりとしてるのに情熱の熱さが迸る音で弾いてるし、わたしは、いいねボタンを押しました。わたしの評価甘過ぎかなぁ。でもいいの。わたしは楽しんでるから。

そうそう、今日はチェロに見慣れない日本人が。あとで調べたらロイヤル・フィルハーモニックで弾いてらっしゃるハナオカさん。ただの客演かしら?それとも入団へのトライアル?
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by zerbinetta | 2012-05-10 09:07 | BBCシンフォニー | Comments(0)

音遊びをする人たち シベリウス、ブニアティシヴィリ、カラビッツ、BBC交響楽団   

24.02.2012 @barbican hall

sibelius: symphony no. 4
prokofiev: piano concerto no. 1
stravinsky: petrushka

khatia buniatishvili (pf)
kirill karabits / bbcso


BBCシンフォニーによるシベリウスの交響曲シリーズ、今日は第4番。重暗い感じの音楽なので、BBCシンフォニーの音色にぴったりだと思っていました。なので、とっても楽しみにしていた音楽会です。それにしてもこの曲が前プロとは。。。
指揮者のカラビッツさんは名前だけ聞いたことがある人。わたしは行かなかったけど一昨年(?)、ロンドン・フィルに客演しているはずだし、現在はボーンマス・シンフォニーの主席指揮者。35歳、ユロフスキさんやネゼ=セガンさん、ハーディングさんと同世代ですね。

その苦汁のようなシベリウスは、予想どおり、曲の重暗さがオーケストラの音色に合っていてにやり。曲とオーケストラの絶妙なマリアージュ。この音のシベリウスは良い! カラビッツさんは、ゆっくり目のテンポで、丁寧にシベリウスの音世界を築き上げていきます。オーケストラをとても良く鳴らして、もともと音量のあるBBCシンフォニーだけれども、すっきりと解き放たれたようにオーケストラが鳴って実に気持ちがよいのです。暗いけれども澄み切って透明な音楽。シベリウスの音楽って不思議な魅力がありますよね。特にこの交響曲第4番って、シベリウスの作法を突き詰めた感じがあって、旋律がとっても断片的で短くて、それが囁き合うようにそこここから聞こえてきて、彼が、流れるような旋律を紡いで音楽の物語を作っているのではないことが分かります。シベリウスは抒情よりも抒景的な音楽を書いてる。それは外の世界の景色の記述でもあるし、心の景色の記述でもあります。とっても客観的な音楽。交響曲第4番も暗い色合いだけど、悲しい音楽ではちっともなく、暗い森の音楽。森の中の音を、耳に聞こえたとおり、心に聞こえたとおり、音遊びのように音楽にしているよう。自然に対する畏怖の念を含めて。カラビッツさんとBBCシンフォニーは、そんなシベリウスの音楽を余すことなく正確に音にしました。とってもステキな演奏だったと思います。カラビッツさんとBBCシンフォニー、どちらにとっても充実した演奏だったのではないかしら。この客演がもう少し早くあったら、カラビッツさんが次の主席指揮者に選ばれてたかも知れないなんて思うほどに。もちろん、オラモさんもとっても素晴らしいので、甲乙付けがたいんですけどね。

今日のもうひとつの楽しみは、最近めきめきと頭角を現していると言うか、話題に上るブニアティシヴィリさんのピアノ。美人だから。いいえ、音楽もとっても良いのです。今まで2回(あれ?3回かな)、聴きましたが、曲と彼女の音楽がぴたりとはまったときの演奏はもの凄いんです。前に聴いたとき、リストとプロコフィエフのソナタがもうとんでもなく良かったので、今日のプロコフィエフの協奏曲はとっても楽しみでした。第1番の協奏曲は何故かあまり演奏されないし、初めて聴く彼女の協奏曲です。今日は背中の大きく空いたセクシーなドレス。美人さんだけに何を着ても映えるんだと思うんだけど、セクシー光線にくらくら。あわあわしているうちに音楽が始まって終わってしまったそんな感じ。正直に言うと、よく分からなかったんです。最初のリズムの繰り返しモチーフが、繰り返されるごとに力なく減衰していくようで、あれれちょっと大丈夫と思ったのが始まり(ここ、1回1回は減衰するけど、繰り返している間は緊張を維持ですよね。そうじゃないと音楽が推進しない)。ブニアティシヴィリさんは、ちゃんと弾けてたと思うし、力強いタッチはプロコフィエフの音楽だったけれども、ちょっとちぐはぐな感じ。わたしの脳みそがセクシー光線に当てられてヘンになっちゃってたせいかもしれないけど。
終わって、拍手を受けているとき、なんだか緊張が解けてよし!やった!という解放された表情をしていたので、もしかするとかなり緊張していたのかも知れませんね。ちょっとだけという指の仕草で、始めたアンコール。プロコフィエフの第7ソナタのフィナーレだったけど、これがもうたたみかけるようなアグレッシヴな音楽で素晴らしかった。この曲はリサイタルでも弾いてるし自信があるんでしょうね。掛け値なしに良かった。この人は、まだまだ演奏回数を積み重ねて良くなっていく人かも知れません。協奏曲も何回も演奏を重ねて良くなっていくのではないかしら。

お終いは、ペトルーシュカ。やっぱり、カラビッツさん、鳴らす鳴らす。ストラヴィンスキーが書いた、複雑な音たちを、どの音もちゃんと独立して聞こえてくるのだけど、楽譜を見透かすように精緻なバランスで演奏するのではなくって、他より大きな音を出せば聞こえる原理で、音を重ねていくの。こういうやり方をしたのは、ロストロポーヴィッチさんとかがいたんだけど、カラビッツさんもその系譜。だけど、うるさくならずにちゃんと全部聞こえるのが秀逸。オーケストラもみんなで気持ちよく音遊びしてなんだか嬉しそう。若くて溌剌とした音楽だし、音浴びして気持ちいい〜。カラビッツさん、ただ者ではないわ。これから要注目デスね。こういう人こそ日本のオーケストラに招聘して、じっくり音楽を育てていけばいいのに。
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by zerbinetta | 2012-02-24 06:23 | BBCシンフォニー | Comments(0)

無窮の青天 クルターク、シベリウス サラステ、BBC交響楽団   

16.12.2011 @barbican hall

bartók: dance suite
kurtág: ... concertante ...
siberius: symphony no. 6, 7

hiromi kikuchi (vn)
ken hakii (va)
jukka-pekka saraste /bbcso


BBCシンフォニーのシベリウス交響曲全曲演奏シリーズ、今日が第2回目、第6番と第7番というわたしの一番大好きなふたつです。指揮者はサラステさん。一昨年のシーズンに、ロンドン・フィルがヴァンスカさんと同じくシベリウスの交響曲全曲演奏シリーズをやっていますが、BBCシンフォニーのは、回ごとに指揮者を変えています。それにしても、シベリウスはイギリスでは人気ですね。ラッキーなことに、ロンドンに住んで3年の間に、大好きな交響曲第6番を聴くのは今日で4回目です。今日は2階席までお客さんがいっぱい入っていました。

始まりは、バルトークの舞曲組曲。千秋先輩がフランスの指揮者コンクールで振った課題曲のひとつですね。初めて聴きましたが、変拍子がすごくて、指揮者大変そう。とはいえ、サラステさんはもうヴェテランなので余裕というか、緩急を自在に付けてぐいぐいと音楽を動かしていました。フォーク・ソングのメロディがベースにあるので、バルトークの音楽にしては聞きやすいしのりのり。とはいえ、変拍子のタイミングはかなりスリリングですけどね。BBCシンフォニーは現代曲慣れしてるので余裕で弾いていましたが。今日は、千秋先輩大変だったなぁと変な感慨をいだきながら聴いていました。

2曲目に演奏されたクルタークの「コンチェルタンテ」が圧巻だったんです。クルタークもハンガリー出身の作曲家。2002年から3年に書かれた、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏曲です。今日ソリストを務めたのが日本人のカップル(あっ実際ご夫婦です)キクチ・ヒロミさんとハキイ・ケンさん。キクチさんはソロで、ハキイさんはロイヤル・コンセルトヘボウのヴィオラの主席としてもご活躍中です。
クルターク自体あまり聴かないし、この曲も初めて聴くのだけど(イギリス初演)、全く分かりやすい音楽ではないのに、音楽の力強さに涙が出るほど感動してしまいました。音楽もいいけど、演奏もとっても良かったんです。特にソリストのおふたり。指揮者を挟んで左右に並んだんですが、弾き出すときのアイ・コンタクトの豊富さ。相手がすぐ弾き始めないのにアイ・コンタクトするのは、音楽を確認しているかのようです。そして、プログラム・ノートによると、クルタークと長年仕事をされてるキクチさん(彼女に献呈された曲もあります)、クルタークの音楽を隅から隅まで知り尽くしている感じで、まさに演奏者としてこの曲の魅力を最大限に表現していたと思います。彼女のヴァイオリン歌う歌う。もちろん、口ずさめるようなメロディが出てくるわけではないんですが、ロングトーンや無機的な音の羅列の中にも叙情的な歌があって、とってもしっとりと人の感情に訴えかけるものがあるのです。最後の方で使われた、胴のない楽器。エレクトリック・ヴァイオリンでしょうか。スピーカーは用意してあったけど、ヴァイオリンには線がつながってなくて(コードレスで信号を飛ばすの?)、仕組みはよく分からないのだけど、聴いた感じでは音を電気的に増幅していなくて、楽器から出てくるそのままの音が聞こえていたと思います。でも、それがとても音楽に合っているよう思えたので、きっとそう書かれているのでしょうね。印象的な音楽でした。サラステさんとBBCシンフォニーのバックもふたりのソリストをしっかりサポートしてとっても良かった。新しい作品が、最高の演奏者を得て演奏されること、作品の力を示す上でもとっても大事なことですね。わたしはこの曲がとっても気に入りましたが、それは今日の演奏者たちの力によるところも大きいと思います。
あっそうそう、キクチさんとハキイさんのご夫婦、芸術家というより、なんだか街の商店街でお店をやっているような感じの方たちでした。

休憩のあとはシベリウスがふたつ。
交響曲第6番はわたしが一番大好きなシベリウスの交響曲です。なので演奏に対する思い入れもハンパ無くあります。最初に聴いたのがカラヤンの指揮のものだったので、それがわたしのデフォルト。本当は、そんな自分の中の音楽(でもそれは自分で作ったものではなくて、与えられたイメジ)と比べちゃうのは良くないと知りつつも、なかなか無垢で音楽を聴くことってできない。といった感じで聴き始めました。サラステさんの演奏は、この曲は、快速テンポ(というかカラヤンの演奏がむしろかなりゆっくりなテンポ)で、結構緩急を付けたり。そして、BBCシンフォニーの音色が硬質なので、凛とした感じ。わたしのとはちょっと違うと思いつつも、音楽の中に引き込まれていきました。サラステさんは結構熱を帯びた音楽をするし、BBCシンフォニーの面々もそれに応えて自発的にアグレッシヴなフレージングで入ってくるのだけど、オーケストラの音色が澄んで冷たいので、音楽が熱くならずに、冷たい白色の光りをまばゆいばかりに発するよう。30分間一度も緩むことなく聴き通すことができました。とってもステキな演奏。

そしてさらに素晴らしかったのが第7番。第6番との間をどうとるのかなって興味津々で見ていたら、拍手のあと指揮者はいったん退場。オーケストラのメンバーも数人退場して(第7番の方が編成が小さいので)、軽い音合わせのあと仕切り直しての始まり。第6番と第7番って性格が似ているところもあるし、第7番は単一楽章なので、続けて演奏するのもありかなって思っていたので、どうするか興味あったんです。
この曲ではサラステさんは少し遅めのテンポ。音楽が緊張を高めながら少しずつ盛り上がっていって、トロンボーンのソロにふっと解決するところは、あまりの感動に涙。音楽も演奏もお互いに高め合って素晴らしい化学反応を生み出していました。白く冷たく発光する音楽。なんだか宇宙の果てから光りのメッセージが届いてくるようで、精神の高みにわたしも引っ張り上げられるような、なんだか永遠の謎の答えを見せてもらえたみたいな、完全な結末。のように会場では感じられて、しみじみと感慨に浸ってました。オーケストラの人たちからも、そんな雰囲気が見えてきて、チェロの主席のモンクスさんはパートの人たちに振り向いて握り拳で称えていました。魔法から解き放されたのはずいぶんとあと。地下鉄の駅を出て自分の家に歩き出したときでしょうか。ふっと冷たい空気にやっと我に返りました。これでシリウスが輝いていたら最高だったんだけどな。

サラステさんかっこよかった。実はかなり好きかも。なんかオーケストラとも上手くいっていそうで(以前に主席客演指揮者だったのですね)、BBCシンフォニーの次期主席指揮者のダーク・ホースなのではないかとふと勘ぐってしまいました。
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by zerbinetta | 2011-12-16 22:33 | BBCシンフォニー | Comments(2)

ムーミンはいなかったけどトロールはたくさんいたよ オラモ、BBCSO シベリウス他   

28.10.2011 @barbican hall

bax: tintagel
saariaho: leino songs
sibelius: luonnotar, symphony no. 3

anu komsi (sp)
sakari oramo / bbcso


今シーズンのBBCシンフォニーの目玉のひとつは、シベリウスの交響曲全曲演奏でしょう。シベリウスの交響曲全曲演奏は1昨年のシーズンにロンドン・フィルがオスモ・ヴァンスカさんでやっているのですけど、BBCシンフォニーのは、ひとりの指揮者ではなく、6人の指揮者によるシーズンを通しての音楽会です。今日がその第1段。なんと!意表を突いて一番マイナーな第3番から。わたしは大好きなんですけどね。イギリスはシベリウスを高く評価した外国のひとつなので、こうしてシベリウス頻度が高いのが、シベリウス好きのわたしにはとっても嬉しい。そういえば、オラモさん、プロムスでも交響曲第6番のしみじみと良い演奏を聴かせてくれたので期待してたのです。

始まりはバックス。フィンランドの作曲家だと思ってたら、イギリスの作曲家でした。音楽会が終わるまで気づかないでいて、ばかね〜わたし、今日はフィンランド特集って独り合点してました。ってよく考えたら、この人の音楽、オラモさん、プロムスでも聴かせてくれたんだった。。。すっかり忘れてた。「ティンタジェル」は交響詩。解説を読んでいないので、どんなことを音楽にしているのか分からないけど、なんだか海の香りがしました。とても聞きやすくて、ちょっとかっこよくて、吹奏楽っぽくて(前に聴いたバックスの音楽もそんなこと思ったっけ)、知らなかったステキな曲を教えてもらって嬉しい気持ちです。つかみOK!

でも今日の刮目は(使い方合ってる?)、サーリアホさんの「レイノ歌曲集」。これがもうステキなのなんの。サーリアホさんの音楽はこの間バレエでさんざん聴いてたし、前にも何曲か聴いたことあるんだけど、この4曲からなるちいさな歌曲集は、とっても親しみやすくて、透明できれいでとってもステキ。そしてこれを歌った、アヌ・コムシさんがまたきらきらな透明な水晶のような声でステキなの。こんな紋切り型の言葉使いたくないけれども、もの凄い透明度で底の砂や水草やお魚まで見える北の国の湖のようなきれいさ。そして、フィンランド人の彼女にとって自分の言葉。それに、この曲、彼女のために書かれているのですね。だから、わたしには言葉は分からないけれども、彼女の言葉と音楽と意味が自然に結びついているのが、とても強く感じられました。音符だけを歌ってるんではなくて、言葉の持つ意味が込められているように感じられたんです。

休憩のあとの、シベリウスの歌曲「ルオンノタール」。この曲もとってもステキでした。交響曲第2番を思わせるな旋律があって、夜の月明かりに暗く銀色に光る波頭のよう。それはもうきらきらときれいで、でも、なんだか哀しい。空や星や月の誕生を歌った神話の物語なんですね。真っ暗な世界にわたしも浸れていたような気がします。お客さんもたくさんの拍手をコムシさんに贈っていました。

最後は交響曲第3番。わたし、この曲ってちっちゃくてさりげなくて、秘やかに咲く花のようと思っているのですね。大曲交響曲第2番と孤高の苦渋に満ちた交響曲第4番に挟まれて、ほのやかな光に満ちていて心が安らぐ。という曲だと思ってたんだけど、オラモさんの演奏は、雄大で少し重々しいものでした。わたしの好きとは違うと思ったんだけど、音楽の雄弁さに心が揺れて、最後はどっしりと感動しちゃいました。オラモさんの演奏にはフィンランドの森の空気をしっかり感じました。BBCシンフォニーもオラモさんに相応して、深い森の静けさ、愉しい不気味さを音にしていました。BBCシンフォニーの音はもともと地味(あっこっちの漢字の方がいいかも。滋味)で派手やかさはないので(色彩感がないということではなく、それぞれの色にいぶし銀色が混ざっていて、いぶし銀色がオーケストラの基調のトーンとなっている感じ)、それがオラモさんの音作りにぴたりと合うのです(わたしはもう少し軽いのが好きなのですが)。
フィンランドの森はムーミンの森。でも、ムーミンはいなかったけど、ムーミンの仲間のトロール(妖精)たちはそこここにいました。風が木木を揺らしたり、遠くに山が見えたり、葉がずっと覆い被ってお日さまを曇らせたり、そんな森の中をわたしは音楽に誘われてずうっと歩いていたような気がします。ときには駈けてみたり、立ち止まったり、歌ったり、完爾としたり、泣いたり。音楽はわたしの記憶も呼び覚まします。それは、現実だったり、お話の中の世界だったり、心は妖精と一緒に自由に飛び回ります。そんな音楽でした、オラモさんの音楽は。

大きな風が木々を吹き抜けるように、会場からは大きな拍手。BBCシンフォニーの音楽会は、暗黙の了解みたいのがあって、どんな良い演奏でも指揮者を呼び出すのは2回(あれっ?3回だったかな)というのがいつもですが、今日は1回多く呼び出されました。お客さんが少し変わったのかな。北欧の人多かったのかな。でも、BBCシンフォニーの音楽会は、おいしいお米を食べてるようで本物のごちそうを食べた幸福がいつもあるようです。
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by zerbinetta | 2011-10-28 09:29 | BBCシンフォニー | Comments(0)

このオーケストラ好きっ   

08.08.2011 @royal albert hall

sibelius: symphony no. 6
grieg: piano concerto
nielsen: symphony no. 4 'inextinguishable'

alice sara ott (pf)
sakari oramo / royal stockholm philharmonic orchestra


シベ超というかシベリウスの交響曲第6番、超大スキなんです。そして、2台ティンパニの乱れ打ちが超かっこいいニールセンの交響曲第4番がカップリングされてるとあれば、誰でも聴きに行きますよねっ。というわけで、夜はロイヤル・アルバート・ホールに出かけてきました。巷では暴動が始まった日ですね。全然知らなかったけど。(警察の要請である地下鉄の駅が閉鎖されているというアナウンスはありました)

いきなり冒頭からシベリウス。大好きの始まりです。振り返ってみるとわたし、あまり北欧のオーケストラを生で聴いたことがないのでした。スウェーデンのオーケストラはずうっと前にも聴いたことがあるハズなのですが、それがどこのオーケストラだったのか覚えていなくて、ヤンソンスさんの指揮でクレーメルさんとのグラスのヴァイオリン協奏曲がやたらかっこよかったとか、マーラーの交響曲第1番でピッコロ最強とか、そんなことしか覚えていないのです。ってか調べてみたら、これ、オスロ・フィルハーモニーでした。お隣のノルウェーですね。スカンディナヴィア3国が分かっていないわたし。恥だけど、消すのめんどくさいのでそのままにしておこう。ニルスはどこを旅したんだっけ?

ベタなステレオタイプの感想だけど、このスウェーデンのオーケストラ、北の国の澄んだ空気のような音がします。ヴィブラート控えめで、響きがシンプルで清廉。指揮者のオラモさんが弱音を強調したせいか、ところどころ最弱音で音が枯れることがあったけど、鏡のような湖の面のような透明な音。まさにわたしの大好きなシベリウス。森と湖と星と夜の音楽。そこでは生命さえも不純物を含まない。わたしはこの曲を聴くと、銀河鉄道の夜を思い出すのだけど、確か作曲家の吉松隆さんも同じことをおっしゃってるのを目にしてびっくりしたことがある。あの物語の透明感がシベリウスの音楽に流れていると思うんです。ハープの音色がガラスみたいでこれにもびっくり。オーケストラ全体でシベリウスの音色を作っています。わたし自身も透明な炭酸水になってしまう感じ。

2曲目はグリーグのピアノ協奏曲。ピアニストは裸足のピアニスト、アリス・サラ・オットさん。実は、これ、とっても心配してたんですね〜。わたしが前に2回、彼女のピアノを聴いた感じでは、彼女、大きな協奏曲向きじゃない印象なんです。パワーが足りない。今日の会場は、響きはいいけど大きなロイヤル・アルバート・ホールだし、グリーグのピアノ協奏曲といえば出だしからピアノが大見得を切る音楽。CDではチャイコフスキーの協奏曲も出しているようだけど、実際に会場と録音で聴くのでは聞こえ方が違うし、どうなるんだろうと。そして、その心配は見事に当たっちゃいました。アリスさん、ずいぶんがんばって弾いていたんです。でも、音量はあっても音にパワーがない。特に左手の速い動きは消えてしまう。
アリスさんは、若いし、とても良い音楽を持ってる人だと思うんですよ。ただ、大きな音楽向きではない。協奏曲では、彼女の良さが消えちゃうと思うんです。小さなホールでのリサイタルや室内楽こそが彼女の持っている繊細な美を表現できるのではないでしょうか。CDセールスのことを考えないで、彼女のまわりの人が、彼女の音楽の方向をちゃんと考えて欲しいです。バックのオーケストラは相変わらず良い音出していました。オラモさんもなんと!協奏曲なのに暗譜(普段暗譜の指揮者でも協奏曲は楽譜を見る人が多いんです)。アンコールには、リストのラ・カンパネルラ。これも会場の大きさを意識し過ぎちゃっていたかもしれません。ああ、でもアリスさんのクリームがとろけるような笑顔、今日もステキでした。

休憩のあとはニールセンの交響曲「消し難きもの」。2台のティンパニの乱れ打ちがもうゾクゾクする一見派手やかな音楽だけど、オラモさんとオーケストラはストイックに演奏していました。わたし的には一番目立っていたのが、第2ヴァイオリンのトップの人。この人がパートをぐいぐい引っ張っていたので、音楽が立体的で面白くなっていました。このオーケストラ、実は超一流というにはまだまだという感じではあるのです。十分に上手いのだけどまだそこまでではない。中堅どころという感じ。でも、自分たちの音を良く知っていて、その特徴を生かして誠実に堅実に音楽しているという感じで、とっても好感が持てました。正直、このオーケストラ好きって思いました。指揮者のオラモさんの音楽の方向ともぴたりと一致しているし、今日演奏した北欧の音楽もまさに音楽がそのものであるようにとても気持ちよく聴けました。シベリウスもニールセンもとっても印象深い名演でした。

と、ふと気がついたのですが、今日演奏された3曲はどれもスカンディナヴィアの音楽だけど、自分たちの国、スウェーデンの音楽が入ってない!というようなことをオラモさんがおっしゃってアンコールにはアルフヴェーンの「山の王」から「羊飼いの娘の踊り」。スケルツォ風の音楽で、なんだかオーケストラの人たちも自分の家に帰ってきたかのように弾いていました。トリオの前に盛大な拍手が起こりましたが、わたしも終わったと思っちゃった。それもご愛敬。とっても良い音楽会でした。

アリスさんのとろけるような笑顔
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オラモさんとオーケストラ、指揮者の右手に見える頭の禿げた人がパワフル第2ヴァイオリンのリーダー
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by zerbinetta | 2011-08-08 20:33 | 海外オーケストラ | Comments(0)

サンタクロースの弟子は本物の妖精   

06.03.2011 @royal festival hall

glinka: overture, ruslan and ludmila
tchaikovsky: violin concerto
sibelius: symphony no. 5

valeriy sokolov (vn)
susanna mälkki / po


人はなぜ音楽会に出かけるのか? そこにチケットがあるからだ。というのが今日のわたしの場合。久しぶりの音楽会のない日曜日、家でゆっくりしようって思って、念のためチケット置き場を見てみたら、ありゃ、今日のチケットが。えええ?なんで取ったんだろう?

それにしてもずいぶん久しぶりのフィルハーモニア。フィルハーモニアは透明すぎてわたしの中では優先順位が低くなったのです。
今日のリーダーはゲストの、ハヴェロンさん。BBCシンフォニーのリーダーの方です。一昨日いなかったと思ったらこちらに来ていたのですね。音合わせが終わって、指揮者を待ってたら、えっ!あれっ? かわいくてきれいな女の人。すらっと細身で、ずいぶん若く見える。あとで調べたら、わたしよりひとつ上。えええ〜、見えな〜いっ。

始まりはルスランとリュドミラの序曲。目の覚める快速テンポ。びっくりしたのは久しぶりのフィルハーモニア、こんなに上手かったっけ? そして、ティンパニの音に再会して、懐かしさが込み上げてきてちょっとうるうる。やっぱりスミスさんのティンパニは特別よ。でもそれにしてももっとびっくりしたのは、指揮者のマルッキさんのきびきびとした音楽作り。可愛らしい、と言ったら失礼かも知れないけど、姿からは想像できない、わたしは家に帰って調べるまで30代前半って思ってたので、堂々とした音楽。指揮もとっても分かりやすい。またまた目の覚めるような才能の発見。

2曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、人気曲のハズなのに、多分ロンドンでは初めて、7年間いたUS時代でも1回くらいしか聴いたことがない、不思議な曲。なぜでしょう? 実は不人気? ヴァイオリンを弾くのは、堂々とした青年。ワレリー・ソコロフさん。中堅どころの人かなと思ったら、家に帰ってこれまた調べたら、えっ! アリーナのひとつ下の24歳。ううむ。年齢って分からない。でも、この人、実に上手い。そしてステキな音楽をする。甘く切ないが代名詞のチャイコフスキーの協奏曲を、第1楽章は全く溜めを作らずにさっくり流すの。この間のゲルギーのマーラーみたい。名前が同じワレリーだからかな。いや関係ないけど。そうしたことで、音楽の端正なフォームが見えてきたし、チャイコフスキーが持ってる拍節感、リズム感というのも上手く聞き取ることができたように思います。とってもスマート。
第2楽章も、すらすらと流れる感じ。で、3楽章はゆっくりとした部分と速い部分にものすごい対比をつけて、これでもかと言うほどにテンポを動かしてくる。でもそれも、ロマンティックのためというより構成感をはっきりさせるため。予想外だったけどステキなチャイコフスキーでした。そして、オーケストラの伴奏がとっても上手いの。チャイコフスキーの協奏曲は、独奏を立てつつもオーケストラも独自に大活躍するように上手く書かれてるんだけど、それがもうほんとに良くって、マルッキさんも、丁寧に大事な音を強調させたり、表情を付けたり、見事。第3楽章も目まぐるしくテンポを変える独奏にばっちり伴奏を付けて、いや〜ほんとに上手い。実は今日の音楽会で一番感動した演奏でした。

休憩の後はシベリウスの交響曲第5番。ところで、マルッキさんは、サンタクロース、セーゲルスタムさんの弟子。その音楽もセーゲルスタムさんの薫陶の香りがしました。ゆっくりとした歩みでものすごく雄大。深い森と嶮しい山が目の前に広がるようです。音楽はもうこれでもかと言うくらい、我慢に我慢を重ねてゆっくりした足取りで展開されました。第1楽章の真ん中で森の力がとうとう解放されて、賑やかな踊りの音楽に転じるところでも、まだ我慢。わたしはここは、うって変わったように軽やかな音楽になるのが好きなのだけど、マルッキさんはまだムチを入れないんですね。最後の最後コーダでやっとエネルギーを解放して、ああ、こんなやり方もあるのかって納得。
第2楽章からも基本姿勢は変わらず、この音楽を本当に雄大に、わたしには過ぎるくらいだったけど、演奏していきました。指揮棒を使わない彼女の指揮は、的確でとっても見やすく、アイコンタクトも多用してオーケストラを引っ張っていきました。それにしても心憎いばかりにエネルギーを溜めていきますね。最後はひとつひとつの音の間にドキリとするような間をとって緊張を保ったままお終い。なんか凄くって感心してしまった。というか、マルッキさんに真底めろめろ。わたしはあなたについて行きたい。サンタクロースは魔法を使える本物の妖精を育てたのね。今は、アンサンブル・アンテルコンテンポレンの指揮者なんですね。タングルウッドやボストンでも振ってるみたいなのでレヴァインさんが辞めたあとのボストンなんかどう?
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by zerbinetta | 2011-03-06 10:21 | フィルハーモニア | Comments(2)

  

siberius: finlandia
beethoven: piano concerto no. 5
siberius: lemminkaäinen
hélène grimaud (pf), esa-pekka salonen / po @royal festival hall



サロネンさん指揮のフィルハーモニアの音楽会。お国もののシベリウスの2曲を挟んで真ん中にベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。ピアニストはグリモーさんです。実は、最初はブラームスの協奏曲第1番が予定されていたのです。サロネンさんのブラームスは去年聴いて、おやっなかなかいいと思ったので、大好きな曲だし期待していたのですが、ベートーヴェンに変更になってしまいました。でも、グリモーさんのブラームスは前に聴いているし、ベートーヴェンはCDは持ってるけど、生ではあまり聴いたことがないのでこれはこれで嬉しい。でも、ちょっと心配なのは、曲目変更の理由が病後回復のため。今年前半、ご病気で音楽会をずっとキャンセルしていて、夏に復帰したのだけど、ブラームスを弾く準備はまだできていないということかしら。さてそのベートーヴェン、CDでは我らがユロフスキさんとロンドンではないけれど録音が出ています。わたしも持っているのだけど、ユロフスキさんは古楽的なアプローチをしているので、今日サロネンさんがどういうアプローチをしてくるのか興味津々でした。
サロネンさんとフィルハーモニアの演奏はピアニストに寄り添うものだったと思います。ただ、フィルハーモニアって音色に色がなくって淡泊というか、特徴がないように聞こえるときがあって、美しく音が鳴ってるのに心の奥まで届かない感じがすることがあるのです。このベートーヴェンはそんな感じ。グリモーさんのピアノは、わたしがおっかなびっくり聴いてるせいもあるのか、とっても安全運転な感じがして、音楽をさらっているように聞こえました。ところどころ、とってもドキリとするステキな表現もあったんですけど、いつもの漢らしさがあまり聴かれなかったのが残念です。お休みのときは状態をゆっくりと円を描くように揺らすいつもの癖は健在でしたが、呻くような歌うようなセクシーな声は聞こえませんでした。まだ、病気によるブランクから完全には戻っていないのかもしれません。ぜひぜひ以前みたいな強靱なピアノが戻ってきますように。ロンドンでは今シーズンまだ何回か彼女の演奏を聴けるので、また彼女のセクシーな歌声が聞けるのを心待ちにしています。

サロネンさんのお国もののシベリウスは佳演。始まりのフィンランディアでは、粘りけたっぷり。むちゃ熱くなってサロネンさんもこんな演奏をするのね。トリスタンも熱かったけど、サロネンさんのこと少し考え改めなきゃ。そうそう、この曲では、やっぱりティンパニのスミスさんばかりに聞き耳を立ててました。スミスさんのティンパニ、やっぱりステキ〜〜〜。スミスさんのティンパニを聴くために、マゼールさんとのマーラーのチケットもっと取ろうかしら。一応、第7番は取ったんだけど(一番活躍するよね)。ティンパニ聴くためにオーケストラのチケット取るのもヘンかな〜〜。ヲタ〜〜。

レミンカイネンは、トゥオネラの白鳥を含む4つの交響詩からなる組曲。4つ演奏すると交響曲のようにも聴ける。サロネンさんの演奏は、作曲家の初期の音楽の良いところを上手に抽出して聴かせてくれました。全く隙がないし、それに美しい。シベリウスの音楽って、って考えながら聴いていたら、そうだ! 風なんだって思いました。透明で不定型ででも心地良い音楽。さわさわとゆっくり吹いたり、ごーごーと荒れたり、すーーっと走ったり、くるくると回ったり。短い旋律の断片がそんな風のように表情を変える。そして、草を揺らしてさーっと音を立てたり、かさかさと枯れ葉を揺らしたり、山を地鳴りのように鳴らしたり、風鈴の音を立てたり。サロネンさんは風を率いる魔法使い。こういう音楽はフィルハーモニアは得意だな。良いものを聴きました。
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by zerbinetta | 2010-09-30 06:06 | フィルハーモニア | Comments(2)

ふわふわ髪の毛の世代   

sibelius: king kristian II suite
grieg: piano concerto
lindberg: chorale
sibelius: symphony no. 7
simon trpčeski (pf), robin ticciati / lso @barbican hall


どうしてこの音楽会のチケットを買っていたのかすうっかり忘れていたのですが、多分、トルプチェスキさんが弾くのと、シベリウスの交響曲第7番が演奏されるからではないかしら。そして今日はふふふちょっぴり特別な日でもあったのです。とかいって決してたいしたことないのだけど、誕生日だったんですね。お誕生日プレゼント。

指揮者は全く知らない人。名前から想像するに外国人さんだと思っていたらロンドン生まれ。イタリア系なんですけどね。そしてなんと若い!!1983年生まれの27歳(?)。わたしより一回り以上若い。わたしも歳をとったものよのう。この人からどんな音楽が生まれるのでしょう。って思いつつ耳を澄ませたら、それはそれはステキな音楽が。「クリスチャン王2世」は初めて聴く音楽だけど、シベリウスらしい清楚で美しい音楽。そして初期の作品の特徴でもあるチャイコフスキーばりの叙情性も。ロビン・ティチアーティさん音がふんわりと切れるところの無音の音楽性がものすごくステキで、特にゆっくりと抒情的な最初のふたつの楽章はとっても良かったです。ロンドン・シンフォニーもステキな音色で弾いていたし。ただちょこっと心残りだったのは速い楽章での盛り上げ方がちょっと足りないというかまだ完全にはコントロールできてないかなって思いました。でもでも、これは大発掘ですよ。この若さなら、毎日毎日どんどん変化していくでしょう。これからがとおっても期待できます。そういえば、わたしはまだ聴いたことないけど、巷で評判のドゥダメルさん、このふたりはふわふわ頭が共通ね。指揮界の若手はふわふわがトレンド。ヴィオラだけではありません。

トルプチェスキさんのピアノはグリーグの協奏曲。トルプチェスキさんはなぜか最初に聴いたときから相性がいいのです。言葉で上手く説明できないんだけど、この人の音楽とやたらとウマがあって、恋人じゃないんだけど、ひとりでにずうっと一緒にいてしまうみたいな、そんな惹かれ方。この人のピアノにはわたしを惹き付ける何かがあるんでしょう。今日のグリーグはゆっくり目のテンポでこれでもかというほど抒情的。音楽を豊かに歌わせます。オーケストラも魅力的にそれをサポート。ティチアーティさんもやはりただ者ではありません。それにしてもトルプチェスキさんって貫禄あるというか、なんか堂々としてるというか、これでまだ30代になったばかりっていうのが信じられません。素で観るとやっぱり若いって分かるんだけどね。カーテンコールのときはひとりまたひとりとふたりの女性が花束を手渡していました。挨拶のキス。今日は彼と同郷のマケドニアの人が多かったみたいです。音楽会のあとのサイン会でもたくさんの人がキスの挨拶を交わしていました。キス不足のわたしはうらやましかった。あ〜キスしたいよ〜〜。
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休憩の後はマグヌス・リンドベルイのコラール。この曲を聴くのは2回目なのでどんな曲なのか覚えているんだけど、今日の演奏はちょっとアンサンブルにしまりがないなって思いました。どうしてかみんなおどおどしてる感じ。リハーサル不足かなぁ。
お終いのシベリウスはステキでした。ただわたしはこの曲のうんとステキな演奏を何回か聴いているので評価は厳しくなってしまいます。確かにきちんとまとまってるし、よくこなれた演奏をしていると思うのだけど、もうひとつそこから踏み込んだ何かが欲しい。心を動かすものが欲しい。この音楽は無駄を一切削り取って極限までシンプルで清廉な美しさを称えてるけれども、美しく演奏しただけでは足りないんだと思います。ただ、削り取る作業って20代の若者には荷が重すぎるんだと思うんです。彼らの年代はわたしもそうだったけど、何もかも詰め込みたい、ありとあらゆることを表現したいと思い込む季節だと思うんです。それは正しい。でもそれではシベリウスの最後の交響曲は表現しきれないと思うんですね。もちろんそれは時と経験によってしか解決できないでしょう。そして、ティチアーティさんはそれができる人だと思います。それを楽しみに待ちたい。と、偉そうにまた無駄に歳をとってしまったわたしからのメッセージでした。
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by zerbinetta | 2010-03-25 09:31 | ロンドン交響楽団 | Comments(2)