タグ:シベリウス ( 40 ) タグの人気記事   

魚は魚屋   

britten: four sea interludes from peter grimes
sibelius: symphony no. 6
john adams: doctor atomic symphony
john adams / lso @barbican hall


わたしはいつも言ってるとおり(あっこのブログで言うのは初めてかな?)、お魚は魚屋さんで買うのがいいの。チーズはチーズ屋さんワインはワイン屋さん。何でもありのスーパーマーケットはあまり好きじゃないのね。お店の人と話をしながら、プロの意見を聞いて一番いいのを買うのが好きなんです。指揮者も、職業指揮者が確立してる今だから、専門の指揮者の演奏が好きなんです。今まで、ヴァイオリニストから指揮者もやるようになったり、歌手兼指揮者やピアニスト兼指揮者を聴いたことあるけど、もちろんとっても上手くいく人もいるけど(始めっから指揮者志望だったけどまずピアニストになった人とか)、上手くいかない人もいる。というわけで、兼業の人を初めて聴くのはとっても懐疑的なんです。今日のジョン・アダムスさんもあまり期待はしてなくて、なんでチケット取ってたんだろう? シベリウス聴きたかったから? ってな感じでした。そしてしかも間が悪いことに、明日は朝から電車で2時間ほど行った町で会議があるので朝早起きをしなきゃいけないんです。もうほとんど音楽会気分じゃないですね。

音楽会はブリテンの「ピーター・グライムズからの4つの海の間奏曲」とシベリウスの交響曲第6番、そして自身のドクター・アトミック交響曲です。ブリテンとシベリウスの作品は、ああ、アダムスさんってここに音楽の故郷があるんだな〜って感じさせられて、面白かったです。このふたつの音楽から、アダムスさんの音楽との親近性が聞こえてきて、アダムスさんがこの音楽を好きなのがよく分かるし、アダムスさんの書いてきた音楽がなんとなく少し近くなったような気がします。演奏は。。。ううん、ロンドン・シンフォニー上手いっ。正直指揮者の音楽と言うより、指揮者を先回りしたオーケストラの音楽といった感じでした。指揮者は振ってるんだけど、音楽はオーケストラが自主的に奏していたかな。

休憩の後のドクター・アトミック交響曲は、さすがに自分の作品だけに、こちらはしっかり音楽をドライヴしていました。でも、演奏の前にアダムスさんの解説があったんだよね。それが、長かった。。。普通の精神状態なら別にたいした長さじゃないんだけど、明日5時起きって考えちゃうと、とにかく早く家に帰りたかったので、解説には早く終わってくれ〜〜って心の中で叫んでいました。誤解のないようにちゃんと書いておくと、アダムスさんの解説はもちろんつまらないものじゃなくって、とても興味深いお話だったんです。わたしが悪いんです。
ドクター・アトミックのオペラは去年観ているので、音楽を聴くのは2回目ですが、本人がおっしゃっていたようにこの曲はオペラの抜粋ではなくて、交響曲として書き換えられているので、オペラのあらすじを彷彿させるものではありません。独立の音楽として成り立っているものです。最初45分の作品として発表されたんですが、25分の作品として凝縮されています。最後はオッペンハイマーの苦悩のアリアがトランペットで歌われるんだけど、オペラはこのオッペンハイマーの苦悩(オペラでは第1幕の終わりにある印象的なシーン)が中心なんだなって再認識させられました。
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終演後のアダムスさん。ちょっとお疲れ気味
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by zerbinetta | 2010-03-07 08:34 | ロンドン交響楽団 | Comments(0)

満たされることの寂しさ   

sibelius: tapiola, cantique and devotion, symphony nos.6 & 7
kristina blaumane (vc), osmo vänskä / lpo @royal festival hall


うんとステキな小説を読んでいて、挟むしおりが本のお終いのペイジに近づいてきた時って、ああもう終わっちゃうの〜、もっとこの世界に浸っていたい〜って悲しくなるよね。お話がいつまでも続けばいいのに。どうして終わっちゃうんだろう、最後はどうなってしまうの。って。今日のわたしの気持ちもそんな感じでした。いよいよヴァンスカさんとロンドン・フィルによるシベリウス・チクルスも最後。今までの音楽会があまりにもステキすぎたので終わりにしたくない。シベリウスもハイドン並みに交響曲100曲くらい書いてくれればよかったのに。最終回を飾る今日の曲目は、わたしがシベリウスの音楽でフィンランデアをのぞいて最初に聴いた、そして大好きになった交響曲第6番と彼が完成させた最後の交響曲、第7番。思い入れありまくりです。これで冷静でいられましょうか。

音楽会の始まりは、タピオラです。最後の2つの交響曲と同じ時期に書かれたシベリウスの交響詩の最高傑作(だそうです。実はあまりよく知らない)。いえでも、初めて生で聴くんですけど(CDでは数回聴いたことがあると思います)、確かに充実した音楽。シベリウス後期の簡素として無駄のない音楽だと思いました。もっとちゃんと聴きたいなぁ。CDが手元にあればいいんだけど。2曲目はチェロの独奏を含んだ小品2つ。これはもう抒情的な佳曲でした。暖炉の傍でゆっくり音楽を聴いて、みたいな感じ。チェロを弾いたのはラトヴィア出身のクリスティナ・ブラウマンさん。しっとりとした音で静かにステキに弾いたのだけど、プロフィールを見たら、あれっこの人、実はロンドン・フィルの主席チェリストじゃない。ロンドン・フィル以外にもいろんなところで活躍してるのね。
さて、ここで休憩。2曲の交響曲は休憩後です。

第6番は清楚な空気感から始まりました。これがもう本当に大好きなんです。すうっと心が静まって透明になっていく感じ。ヴァンスカさんはフレーズを大事にして音楽を進めていきます。特にフレーズの終わり方がとっても上手い。わたしとこの曲との出逢いはカラヤンのCDだったので他の演奏はほとんど速く感じるのですが、さらさらとわき出す源流のような音楽もいいなと最近思っています。ヴァンスカさんのはまさにそうですね。第1楽章の真ん中らへんで木管楽器の速いパッセージの上に高い弦楽器が弾けるようなリズムで被るところがあるんですけど、ここがカラヤンのように木管楽器が控えめでとっても好きなタイプ。実はここフェチなの。快速テンポで、なんかすぐに終わってしまって後ろ髪を引かれる思い。曲がそういうふうにできてるのでしょうがないのですが、もっともっと長く聴いていたい。儚さよりも悠久のときを感じたい。そんなわたしの哀しみを映したかのような第2楽章。影法師がだんだん長くうすくなっていく寂しさが心の中にも陰をさすような一日の終わりを告げるダンス。静かな終末。そんな音楽を一方で感じつつ、ヴァンスカさんの演奏はリズムが溌剌としていて極めてダイナミックで熱っぽい。わたしとしては静かなシベリウスが好みだけれども、ヴァンスカさんの揺るぎないシベリウスの解釈もステキ。リズムの扱い方が上手いので最後の楽章のティンパニなんてずれが強調されてかっこいい。シベリウスって割と保守的に見えたのに、結構アヴァンギャルドなのね。これは音楽会を通してずうっと感じていました。だひとつだけ残念だったのは、ホールの響きがヴァンスカさんの音楽を受け入れるに足りなかったこと。ヴァンスカさんは時折弱音を強調した音楽をしたのだけど、響きが足りなくなってちょっとささくれて感じられました。特にそれは今日の第6番や第7番で強く感じました。このふたつの音楽が教会の響きを模したところがあるからでしょうか。

最後の交響曲はもう何も言うことありません。純粋な音楽の結晶。静かなひんやりとした音楽だと今まで思ってたけど、ヴァンスカさんの手にかかると、中に熱い魂がこもってる。それは動きのあるリズの切れで表現されていました。あのトロンボーンの賛美歌はなんて心を動かされるんでしょう。霧の中で居場所を見つけた安心感。何度聴いても涙が出ます。それにしてもこの第7番は短い作品だけど、本当に充実していて、聴いたあとは大きな音楽を聴いたような充実感が残りました。そして終わってしまう寂しさと。心が満たされているのに、二度と戻ることのできない記憶へと過ぎていってしまう。いつまでも終わらないで欲しい、耳を閉じ目を閉じたいと何度願ったことか。そんな想いに共感したように、ヴァンスカさんはアンコールを弾いてくれました。悲しきワルツ。美しくもの悲しいワルツはなんて今の心境にぴったりなんでしょう。心憎いばかりの選曲。そして演奏もうんとステキ。

今回のヴァンスカさんとロンドン・フィルハーモニックによるシベリウス・チクルス。第3番や第4番、もしかすると第6番も、のような滅多に演奏されない交響強も聴けて、ほんとに幸せだった。それにこうして通して聴くことによって、シベリウスについてたくさんの新しい発見もあった。そして二度と聴くことのできないヴァンスカさんの共感と湧き出すような音楽の生命に満ちた演奏の記憶は、これからずうっとわたしの記憶に留まるでしょう。音楽を聴くことは、そこに生まれた感動がわたしの心に堆積してわたしを豊かにしてくれることだと思います。透明な涙はきっとカオールのような味がするんだろうな。
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by zerbinetta | 2010-02-05 07:34 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

あまりにも名演   

sibelius: luonnotar, symphony nos.4 & 5
helena juntunen (sp), osmo vänskä / lpo @royal festival hall


前回の交響曲第2番と第3番の音楽会があまりにもステキだったので、今日はそれを超えるのは難しいだろうな、ハードル高すぎるって思ってました。なのに、しっかり超えてきたよ〜〜。大感動。曲が前回のよりも深いから、ってのを差し置いてもやっぱり凄すぎた。
始まりは「ルオンノタール」という歌曲。かもの卵が割れて天や月や星ができる不思議に透明感のあるカレワラのお話です。10分くらいの単独曲。歌は前回と同じ、ソプラノのユントゥネンさん。やっぱりステキ。声が好きなんだからどうしようもない。そして声と音楽が幸せなマリアージュ。歌声は天に昇りお星様になりました
歌曲のあとは交響曲第4番。シベリウス好きにはたまらない曲と同時に暗くてとても取っつきにくい音楽。メロディが出てこないっぽいというか(実際には細かな旋律がたくさんあるんだけど)、盛り上がらないというか(たくさんの小爆発はあるんですけどね)、やっぱり親しみにくい。苦渋の音楽。これロマン派の音楽のようにメロディを期待したらダメだと思うんですよ。シベリウスは、和音や音色や強弱やリズムを旋律と同等に扱ってる感じ。調性的ではあるけれどもものすごい現代的。ヴァンスカさんの演奏はまさにその通りなのです。切れ切れの要素を丁寧に実に巧みに音楽の中にはめ込んでいく。音の移り変わりに身を預けるしかない。沈んだ心を持って暗い森の中を歩いているような音楽的風景。そう、シベリウスの音楽って風景のようなものを感じます。直接感情を表現するのではなく、わたしの外に空気を創っていくような。風景に心が共鳴して感動するのです。最後は森の中で妖精たちが盛んに飛び回っている感じ。フィンランドの森の中には今もムーミンやミーたちが住んでいるのかしら。多分それは信じられるもうひとつの世界なんだと思います。わたしにはものすごい演奏に感じられました。多分多くのお客さんもそう思っていたに違いない。休憩前にもかかわらず指揮者を呼び戻す拍手が多かったです。

休憩の後! まだ音楽会は続くのです。交響曲第5番。第4番とは対照的に素直に盛り上がるしポジティヴに感動的です。それにしてもあの第4番のあとに聴くのかぁ。かなり大変。というのはオーケストラも同じだったらしく、最初のホルンに小さなとちり。それからしばらくわたしにもオーケストラにもどことなく集中を欠くような感じが見受けられて、ああ大丈夫かな〜なんて思ったんですが。第1楽章の真ん中の思いっきり粘る箇所でヴァンスカさんがオーケストラにエネルギーをため込んでいって、果敢にアチェレランド。オーケストラを煽る煽る。トランペットとかに冷静さが残っててふふっ。全員で暴走したらそれはそれで楽しそうだけど、音が荒れないのは良かった。ここで完全に吹っ切れた。最初の涙がぽろり。あとはもう熱い音楽。ヴァンスカさんってリズムの取り方がとってもいいんですよね。シベリウスの音楽の中にこんなに舞曲の要素があったなんて。舞曲は音楽の根っこだからね〜。シベリウスの音楽で良く聞かれる弦楽器の速いパッセージの囁き。これが対向配置で振り分けられたヴァイオリンで森のあちこちから聞こえてくる葉っぱの揺れる音、妖精のささやく声のようにとっても魅力的に聞こえるんです。それに、フレージングの上手さ、一瞬のびっくりするような間の取り方、強弱の付け方、音の速さ、もう全部とことん決まってる。そして最後の感動に向かって音楽を追い立てる、絶妙な手綱さばき。最後は一直線にエネルギーを解放するかと思ったら、じらすじらす。ああここでいくと思ったらじらされて、またエネルギーをため込んで今度こそと思ったらまたじらされて。熱いものが身体の中にどんどん蓄積していって。ついに最後の最後、オーケストラのトゥッティの和音の強打の間の焦らされて緊迫した休符。ヴァンスカさんが指揮簿を振り下ろして次の音を引き出すまでの息を飲む緊張感とエネルギーのさらなる蓄積。これが数回繰り返されて最後はティンパニの強打を伴ってついに閃光のようなオルガズム。これ、ほんとに凄かったです。いっちゃった。涙ぼろぼろでした。

今日の音楽会はいつものBBCラジオ3によって録音されました。放送は2月15日午後7時から(グリニッジ時)だと思います。オンデマンドでそのあと1週間聴くことができるんじゃないかしら。交響曲第4番は弱音の表現が多かったのでマイクでどう捉えられているのか心配ですけど。
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by zerbinetta | 2010-02-03 07:29 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

涙を固めたら透明できらきらした水晶になるのかな   

sibelius: orchestral songs, symphony nos.3 & 2
helena juntunen (sp), osmo vanska / lpo @royal festival hall


ヴァンスカさんとロンドン・フィルによるシベリウス・チクルス第2夜。今日はオーケストラ付き歌曲と交響曲第2番と3番。交響曲はほぼ順番通り演奏していくのですが、今日だけは3番が最初で2番がトリ。でも、これは曲の性質を考えたら納得の順番ですね。今日の交響曲はシベリウスの交響曲の中ではメロディアスです。さて、どんな演奏になるんですよう。
幕開けはいきなり交響曲第3番。シベリウスの交響曲の中では一番マイナーだと思うのだけど、実はわたし、すご〜〜く好きなのです。教会旋法の得も言われぬ清廉さ、穏やかさ。ヴァンスカさんの演奏は頭にしっかりアクセントを付けた低弦の跳ねるような旋律で始まりました。楽しい気持ちになるんですよね。結構リズミックでわくわくするし。そして最後は突然のアーメン。もうなんかこうステキステキ。第2楽章は対照的に秘やかで雨の日の風景もしくは過去への憧れ。実はここがものすごく好きなんです。普段はあまり過去なんて思い返さないけど、わたしにも何か憧れがあるのかな。わたしが持っていたであろう手の届かないものへ。どうしても涙が溢れてしまう。第3楽章はいつものシベリウスらしさが出て少し取っつきにくいけどでも、どうしてこの曲、人気がないんでしょう。清楚で静かすぎるのかな。地味というより滋味に溢れてるのにな。心が涙に洗われて浄化されていく。
ヴァンスカさんの演奏は憎らしいほどツボにはまってほんとにステキ。音楽が生きてる。静寂の表現がとても良かった。シベリウスの音楽は直接的に心に言葉(ロゴス)を生むものではないけれども世界を満たす。というか音楽そのものが世界。ヴァンスカさんは世界を創り、わたしを誘いました。シベリウスの世界に漂うってなんて気持ちの良いことなんでしょう。ロンドン・フィルも前回にも増してシベリウスらしい透明でひんやりとした音を出していました。金管楽器も荒れてなかったしね。

交響曲のあとはオーケストラ付きの歌曲です。シベリウスってピアノ伴奏のを含めるとたくさん歌曲を書いてるんですね。7曲の独立した歌曲が歌われたけれど、最初の「秋の夕べ」がいきなりどよんと暗い感じでびっくりしちゃった。
「初めてのキス」も短いけど「トリスタンとイゾルデ」っぽい感じで良かったな。歌ったのはフィンランドの若いソプラノ、ヘレナ・ユントゥネンさんです。もちろん全く名前を知りませんでした。でも第一声を聴いたとたん好きだって思いました。この声の凛とした透明感、好き。ついついこういう音色って北欧のって形容したくなるけど、でもやっぱりなんか森と湖の北国を感じさせるのです。まだ30代前半の若い人。プロフィールを見るとヴァンスカさんやサロネンさんなどフィンランド系の指揮者に重用されてるみたい。オペラはまだフィンランド国内での活躍が主みたいですが、これからはもっと世界に活躍の場を広げていくんじゃないかしら。彼女の歌うイゾルデ聴きたいなぁ。ワグナー歌いではなさそうなので、ちょっとタフかもしれないけど、彼女の声、わたしが本で読んだトリスタンとイズーの物語のイズー(イゾルデ)にぴったりだと思うのよね。しっかり見守っていかなくちゃ。

最後はいよいよ交響曲第2番。これはもう堂々とした演奏でした。小細工をすることもなく音楽があるべき姿で自然に立ち現れる感じ。完全にシベリウスの世界に浸りきれる。交響曲第1番ではまだそれぞれの小さな細胞の扱いがバラバラだったけれども、ここでは小さな細胞がそれぞれ生命を持ちながら大きな構造の中に取り込まれているように感じる。そしてそこから大きな感情が生み出されてる。若さゆえの生をコントロールできる大きな意志の力が働いてるように思える。やっぱりここでも静寂の表現がステキ。割とステージに近い席で聴いてたのに耳を澄まさないと聞こえないくらい。そして最後は自然に感情が沸き立ってくる。こんな演奏を聴かされるとしばらくは他の演奏は聴けないや。第2楽章の終わりでふと感じたんだけど、もうこの曲で形式の溶解が始まってる。シベリウスの交響曲の成熟って、形式の溶解と音楽の蒸留だと思うんです(今日の演奏を聴いて言葉にしてみた)。第6番での第1楽章と第2楽章の境界の曖昧さ、第7番での単一楽章への有機化、不純物を含まない透明な音楽。その間にある第4番と第5番はどんな演奏になるのでしょう。次回が待ち遠しいです。
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by zerbinetta | 2010-01-30 10:14 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

佳曲   

sibelius: the wood nymph, six humoresques for violin and orchestra,
symphony no.1
henning kraggerud (vn), osmo vanska / lpo @royal festival hall


友達にバカだと言われた音楽会シリーズの1日目。ヴァンスカさんとロンドン・フィルハーモニックによるシベリウス・チクルスの第1夜。4回にわたって7曲の交響曲がほぼ順番に、シベリウスの割と有名でない曲と共に演奏されます。今日は「森の精」「6つのフモレスク」「交響曲第1番」です。このシベリウス・チクルス、とても楽しみにしてたんです。シベリウス大好きだし、でも有名な曲以外ほとんど演奏されませんよね、イギリスは本国以外でシベリウスを受容している最大の国なので、こういう機会があるのが嬉しい、そして、ヴァンスカさんがいいのですよ。ヴァンスカさんの去年のベートーヴェン、とっても良かったですからね〜。得意のシベリウスと言ったら尚更でしょう。
始まりの曲は「森の精」。初めて聴く曲です。作品15番だから最初期の作品。シベリウスは楽譜を出版せずにお蔵入りにさせたのを何年か前にヴァンスカさんが採り上げて演奏したのがこの曲の再発見だそうです。チャイコフスキーっぽさも残るけど、シベリウスらしい透明感に満たされたきれいな音楽。デモーニッシュな引力はないけど、聴いていて心地のよい音楽。シベリウスって佳曲というかこういうしみじみと聴ける音楽が多いですね。2番目に演奏された「6つのフモレスク」もそう。ヴァイオリンを弾いたヘニング・クラッゲルードさんは、初めて聴く方ですけど、ノルウェイ出身の30代後半の人。聴いた印象は一言で言うと怖ろしく正確に弾く人。こう書くと褒めているんだか貶してるんだか分からなさそうだけど、実はとっても凄いことだと思うんですね。音程、リズム、アーテキュレイション、音量、求められる音色に至るまで全てに正確。テクニックをひけらかせるわけではないけど、基礎的なテクニックが凄いんだと思います。そして、正確に弾くことは決して音楽をつまらないものにするんじゃないということをきちんと証明して見せてくれました。きっと彼が正確な音の上にさりげなくささやかな彼の調味料を加えていたからですね。彼のシベリウスの協奏曲とか聴いてみたいなぁ。

休憩の後はいよいよ、交響曲第1番。実はわたし、ヴァンスカさんのシベリウスってほとんど聴いたことがなかったのですよ。録音では交響曲第5番の初稿とヴァイオリン協奏曲の初稿くらい。なんかマニアックな選曲ですね〜。なので、ヴァンスカさんがシベリウスに対してどんなアプローチをしてくるのか分かりませんでした。最初のクラリネットのソロは、指揮をせず奏者任せ。とてもゆっくりとしたテンポで始まりました。鳥肌立った。どっしりと腰を据えた雄大なシベリウスが来るのかなと思ったら、主部に入っていきなり快速テンポ。かなりアグレッシヴ。トランペットなどの金管楽器にかなり鋭い音を要求していて、演奏がちょっと荒くなったのは残念。シベリウス独特の細かなフレーズをそれぞれ独立の細胞のように演奏していて、めまぐるしく雰囲気が変わります。シベリウスを好きになれるかって、このシベリウス特有の短いフレーズの集合を受け入れられるかだと思うんですね。後期になるほど顕著になってくると思うんだけど、長く歌うような旋律があまり出てこない。ヴァンスカさんはシベリウスをほんとに愛しているんでしょう、ヴァンスカさんのそれぞれのフレーズ群の扱い方にはとても感心しました。対照的にたっぷり歌うところはゆったりと抒情的に歌い込んでいきます。これって、嵐。雷や怒濤の海の嵐ではなくて、空を雲が走り天気が目まぐるしく変わるような。イギリスのお天気みたい。シベリウスがイギリス人に人気なのもこんな郷土の雰囲気に似ているからなのかもしれませんね。それにしても激しいシベリウスだったなぁ。若い音楽。シベリウスにも若い疾風怒濤のときがあったということをあらためて感じさせられました。
そして、この際だった激しさを演出した演奏は、今日の音楽会がシベリウスの交響曲を第1番からほぼ順番に第7番まで採り上げるチクルスの演奏会だからだったせいも加味されているのかもしれません。シベリウスのそれぞれの時代の音楽をきちんと描き分けて聴かせるということが意識されていたようにも思えます。音楽の演奏の仕方って同じ指揮者、同じ演奏者、でも、会場や、お客さん、当日のプログラムなど、いろんな要因で変わってくるものだと思います(実際フルトヴェングラーがそんな発言を書き残していますよね)。これは残念ながら録音されたものを聴いているだけでは分かることのできない、音楽が生まれる瞬間に立ち会える音楽会ならではのこと。だからこそ音楽会に行ってしまうのです。次回の音楽会、次の交響曲をどんなアプローチで演奏してくるのかとっても楽しみです。

あっ今日はフルートのトップが普段見慣れない若くてきれいな女の人でした。ゲスト・プリンシパルにローラ・ルーカス(laura lucas)さん(ウェブ・サイトあり)。彼女、クラシックのフルートも吹くと同時にジャズ・シンガー(プロフェッショナル)でもあるんですね。ポピュラー音楽を演奏するクラシック奏者は今では珍しくもないけれども、違うパートというのは凄い凄い。
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by zerbinetta | 2010-01-27 04:52 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

やっぱりクリビー   

grieg: lyric suite
james macmillan: epiclesis
sibelius: lemminkainen suite
ole edvard antonsen (tp), kristjan jarvi / lso @barbican hall


チューブのモーゲートの駅を出ると至近距離からばんばんと火薬の音。なになにって思って見上げると花火。こんなビルの谷間でも打ち上げるのね〜。しばし見とれてからバービカン・センターに。今日はチケットをただでアップ・グレイドしてくれるという嬉しいメイルをいただいてたので、クリビーが近くで見れるいい席に。今日は人が入っていなかったので2階席と3階席は閉めたんですね。ううむ、このプログラムでは仕方ないか。地味〜。しかしながらわたしは期待してたんですよ。だって指揮がクリビー(クリスティアン・ヤルヴィ)。ヤルビー一家の次男坊。やんちゃ気味。昨シーズン、彼の指揮には感激したんですから。ノリノリで踊る指揮者。クラシックの音楽をポピュラーのノリで指揮する男。でも今日は曲がしっとり系のような。

始まりはグリーグの抒情組曲。初めて聴く曲のハズなのにどこかで聴いたことあるような。あっそうか、ピアノ曲をオーケストラに編曲したのね。最初誰かがオーケストレイションしたんだけど、グリーグはそれには不満で、自分で編曲したそう。初期のドビュッシーを思わせるような雰囲気。時代もやや被ってるのね。クリビーはノリ控えめでしっとりと演奏したんだけど、わたしはやっぱりこの曲はピアノの方がいいなぁ。グリーグってヴァイオリン・ソナタとか歌曲とか、ピアノ曲にとってもステキなのが多くて、そういう小品は小品のままそっとしておいて欲しいって思うのね。

今日の音楽会の圧巻は休憩前のマクミランさんのトランペット協奏曲「エピクレシス」。エピクレシスは宗教的な言葉で説明するのややこしいから興味があったら自分で調べてね。とか言っても知らなくても全然OKなのでした。わたしも知らなかったし。音楽はわくわくしながら指揮者とソリストの出を待つ間にふわりと始まりました。チェロが静かに和音を弾き始めて、あれ?何が始まったんだろうって一瞬焦った。とそうこうしてるうちに指揮者とソリストが舞台袖から静かに入ってきて、音楽が動き出す。マクミランさんは今年50歳なんですね。で、LSOではマクミランさんの作品がたくさん演奏されます。前回はLSO St.Luke'sでニキをソリストに迎えてでした。なので彼の音楽については予備知識あり、余裕を持って聴けました。マクミランさんは、ロマンティックな作風ではないのですが、結構調性的なので聴きやすいです。素直に盛り上がったりするので頭を使うよりも身体で感じる感じ。で、さりげなくスコットランドの歌が入ってたりして。というのを遺憾なく発揮した曲です。トランペットも難しそうではあるけれども、クセナキスのトロンボーンみたいな無理をさせることなく、通常の奏法なので吹いてるのは楽しんではないかしら。全曲は切れ目なく演奏されるんですが、ゆっくりした部分の終わりでちらりとスコットランドの歌が聞こえたような気がするのはとってもステキ。でそのまま終わるかと思いきや、打楽器ばんばんで異様に盛り上がるダンス・ミュージック。舞台両脇にさらに2本のソロ・トランペットが入って、これは三位一体を表すそう。三位一体のエクスタシーということらしいです。爽快感満点。クリビーはここで得意のダンス指揮を披露するのかと思いきや丁寧に拍をとっていました。オーケストラも演奏しなれない曲ですからね。ダンスしちゃったら合わないよきっと。で、このまま盛り上がって終わると思いきや、最後はソロ・トランペットが、3つの音を繰り返し吹きながら静かにステージを去ってお終い。いい曲でした。わたし、マクミランさんの音楽、結構好きかも。拍手に応えて作曲者もステージに上がりました。この曲、クリビーに合ってるかも。演奏もステキでしたよ。

最後はシベリウスのレンミンカイネン組曲。その中の1曲、トゥオネラの白鳥が有名です。なので静かな音楽とばかり思っていました。でも、後半の2曲はずいぶんと盛り上がるのですね(トゥオネラの白鳥は2番目に演奏されました)。交響曲のような構成です。クリビー今度こそ、ダンシング。ノリノリで指揮してましたよ。それでこそクリビー。クリビーのノリ大好きです。ぜひぜひ、クラシカルな音楽も聴いてみたい。わたしがクリビーの指揮で聴いてみたい曲リスト。
ベートーヴェンの交響曲、特に第7番
シューマンの交響曲第1番
ワグナーの「ジークフリートのラインへの旅」、マイスタージンガー前奏曲
チャイコフスキーのピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲
シベリウスの交響曲第3番
外山雄三のラプソディ (すみません。これは見てみたいかな)
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by zerbinetta | 2009-11-01 08:41 | ロンドン交響楽団 | Comments(0)

自由奔放   

berlioz: overture, le carnaval romain
sibelius: violin concerto
rachmaninov: symphonic dances
nicola benedetti (vn), hugh wolff / po @royal festival hall


わたしは若いヴァイオリン弾きを聴くのが大好きです。ヒラリーの世代が「若い」から大人の音楽家へと成長していくと同時にまた若い才能が芽生えてきて、それらを見つけて応援するのが嬉しいんです。この前聴いたアリーナもそのひとりだけど、今日聴くニキもその期待をしてました。実は直前まで気がつかないでいたんですが。指揮者のウォルフさんは、優しそうなおじさま。年よりずいぶん若く見える感じ。音楽もお姿に相似して優しい作り。安心して心地よく聴いてられます。反対に言えばうわっとびっくりするような快感がないのですが。それぞれのスタイルですからそれは望みすぎでしょう。
で、今日の音楽会のびっくりはニキです! 出だしからしっとりした感じで普段のシベリウスとは違うと思ったんですが、彼女の演奏、まさに自由奔放。シベリウスの協奏曲って清楚の極みだと思うんだけど、彼女の演奏はそんな思いこみをあっさり裏切って、独特のニュアンス、歌い方で弾かれていく。彼女の血筋のイタリア系の朗らかさと言ったらよいかしら。大御所のムターさんもデフォルメしていくタイプだけど、彼女のような精緻に計算されたデフォルメではなくて、若者が自分の感性の趣くまま弾きまくる感じ。それでむちゃくちゃな演奏かというと、そう感じる人もいるかもしれないけど、わたしにはかえって心地よい。音楽的には幼いところがあるかもしれない。これから成長していくにつれて、シベリウスの音楽の本質とは異にするやりすぎは取り除かれていくかもしれない。でも、今の彼女の演奏は今の彼女にしかできない彼女の真実があるし、それはもうすごくとっても大事なこと。ストレイトにそれが伝わってくる。それにしても、彼女にこんな演奏を許してしまう指導者ってなんてステキなんでしょう。小さくまとめようとせず、良いところを思いっきり解放する。それに十分に応える彼女の素直さ。また、新しい才能に出逢った嬉しさでいっぱい。あとで調べてみると、彼女の先生、アリーナと同じなんですね(後に変わってるけど)。ロンドンの同じ学校。ううむ。そして彼女を有名にしたのはBBCの若手音楽家のコンクールだけれども、セミファイナルの時にヴァイオリンの顎当てが取れちゃって3回も弾き直すというトラブルにもかかわらず通過、ファイナルでは滅多に弾かれないシマノフスキの協奏曲!(その様子は画像悪いけどここにあります) シマノフスキ好きのわたしはますます親近感です。あっそういえばアリーナの新しいCDもシマノフスキのアルバムだったわ。ますますこれからのふたりが楽しみ、目が離せません。
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by zerbinetta | 2009-04-30 19:47 | フィルハーモニア | Comments(0)

フィルハーモニアって外国のオケ?   

faure: pelleas et melisande suite
maazel: farewells-symphonic movement
sibelius: symphony no.2
lorin maazel / philharmonia o @royal festival hall


よく分からないけど、マゼールさんの50周年記念音楽会シリーズです。なんの50周年かしら?フィルハーモニアとの共演?なので、マゼールさんの曲が聴けます。マゼールさんやりたい放題。
フィルハーモニアはロンドン・シンフォニーと共にロンドンで一番上手いオーケストラだと思うけど、なぜか人気がないの。グレのときみたく会場がいっぱいになることもあるけど、この間の抒情交響曲のときや今回みたいにがらがらのときもある。今回はオーケストラの後ろ側の席や2階席は閉めていました。日本に行ったらチケット争奪戦になりそうなのに。
今日の目的は実はヴァイオリンのジュリア(ドイツ語読みはユリアなのかしら)・フィッシャーさん。以前から注目してるヴァイオリン4人娘のひとり。4人娘とは、もう二人は出てきましたね、この間のヒラリーとリサ。そしてサラ(・チャン)と今回のユリア。親しみを込めてファーストネームで呼んでます。ユリアを初めて聴いたのは6年前。花が香るような色気を湛えたとてもステキな演奏でした。その後の成長が楽しみで、とっても楽しみにしてたのですが、なんと体調不良のためキャンセル。うわ〜〜ん。がっかりですぅ。でも、こればかりはしょうがない。来シーズン大好きなシマノフスキの協奏曲を弾くのでそれを楽しみにしましょう。
というわけで、マゼールさんのヴァイオリンとオーケストラの作品は急遽、オーケストラのためのフェアウエルという曲に差し替えになったのでした。音楽会はフォーレのペリアスとメリザンドから。実はこの曲、どうも苦手なんです。美しいけど、綿菓子のようにつかみどころがなくて。。わたし、癒し系みたいの駄目なんですよ。なのでぼんやり聴いてました。それにしてもマゼールさん、なぜにこの曲を持ってきたのでしょうか。好きなのかな? 2曲目がマゼールさんの曲で、作曲家マゼールを聴くのは初めてです。マゼールさん、さすがに指揮者として多忙なのでそんなに作品は多くないのです。マゼールさん70歳の記念に10年前ウィーンフィルの委嘱で書かれたこの曲は作品14。宇宙人が出てくるテレビドラマの音楽っぽい感じで、しっかり書けてるとは思うけど何度も聴きたいなと思うほどの音楽ではなさそうです。良くも悪くも今の時代を直接的に反映している音楽かもしれません。もし誰かがこの曲に価値を見いだして作曲者以外から再評価され演奏されるようになれば、また感じが違うのでしょうけど。わたしは作曲された音楽は、例えそれがある演奏家を頭に置いて作曲されたとしても特定の演奏家の手を離れて、様々な解釈がなされて初めて真価が分かると思っているのです。
今日の最後はシベリウスの交響曲第2番。シベリウスの交響曲の中では一番人気があると思うんですけど、音楽会で聴くのは多分初めて。忘れてるだけかもしれないけど。でも、シベリウスの作品ってヴァイオリン協奏曲をのぞくとあまり演奏されないんですよね。本国の他ではイギリスとUSがシベリウスの音楽を受容している国だと思うけど、なぜか大陸では受けないみたいなんですよ。交響曲で聴いたのは、クレルヴォ(なぜ入ってる!)と第1番、7番だけ。もしかすると第5番も聴いたことあるかもしれないけど。なのでシベリウス好きのわたしとしては楽しみだったんですよ。マゼールさんはシベリウスを得意としてるみたいですしね。さて、その演奏、やたらに雄大でした。もともとこの曲、雄大だけどなんかそれ以上に雄大。出だしは普通のテンポだったんだけど、ホルンの和音を奏でるところをたっぷり取って、停滞感を感じさせずにゆったりと歌わせるのはステキ。後期の交響曲と違って外に向かって開放的な音楽なのでこういうのもいい。マゼールさんなりのシベリウスは北欧の、というのとはちょっと違うと思うけどシベリウスの音楽って地域性の枠の中だけで捉えられると本質を誤っちゃう気がするし、なによりもマゼールさんの音楽に説得力のある魅力があったから。それにしてもシベリウスってコントラバスをここぞというときにしか使ってないんですね。低音の支えを外すことによって凛とした清涼感を出してるのかな。ちょっとした発見でした。
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by zerbinetta | 2009-04-02 04:07 | フィルハーモニア | Comments(2)

森と共にある孤独感   

britten: peter grims - four sea interludes
sibelius: violin concerto
elgar: enigma variation
lisa batiashvili (vn), martyn brabbins / lpo @royal festival hall


テルミカーノフさんの指揮が聴きたかったんですよ。厳しい音楽をされる方なので。でも残念なことに、指揮者が替わってしまいました。ブラビンスさんはイギリスの指揮者だそうです。BBCスコティッシュオーケストラで副指揮者をされていて来シーズンからはベルギーのオーケストラの第1客演指揮者になるようです。彼の音楽は一言で言うと中庸。人の良さが表れているのかとても誠実に音楽を奏でます。尖ったところや驚きが好きなわたしにはちょっと物足りないんですけど、でも、ブリテンやエルガーのイギリスものの音楽は流石です。お客さんもとても喜んでいました。こういうのがイギリスの音楽なのかもしれません。リサをソリストに迎えたシベリウスの協奏曲は、リサさんに寄り添った音楽作りがなされてました。リサのシベリウスを聴くのはこれが2回目。前回はドホナーニさん指揮のフィルハーモニア・オーケストラでUSで聴きました。このときはカデンツァの途中で弦が切れたんですよね。リサはまだ20代のヴァイオリニスト。でも、知らない間に結婚してお子さんもいらっしゃるらしい。月日が経つのは早いなぁ。でも、以前と変わらず若々しくてきれいでした。リサの音楽の特徴はおおらかさ。シベリウスの冒頭も緊張した細い線のような音ではなくゆったりと歌うように弾いていきます。シベリウスのこの音楽からここまで歌を引きだしたのはすごいことじゃないかしら。シベリウスは歌うような音楽を書く人ではなかったので。全体的にゆったりとしたテンポで、冷たいシベリウスではないけれども、これもとてもステキなシベリウスです。緑の森の中を独りで散歩しているような感じ。その孤独感がたまらなくいいのです。孤独といっても寂しい孤独ではなくって、自然の中にとけ込んでいくような豊かな孤独です。その孤独感の表出という点で、5年前の演奏よりもずいぶんと成熟したような気がします。演奏会のあと、サインをいただきつつ(ふふっ、あまり並んでなかったからちゃっかりね)一言二言お話ししました。ワシントンDCでの音楽会のこと、覚えておられましたよ。

参考までに前に聴いた2003年の音楽会の感想を載せておきましょう。
「2つ目は、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。そりゃもう大好きなのよ。この間もレーピンさんの演奏ですてきなの聴いたばかりだし。今日のソリストは、リサ(エリザベス・バティアシュヴィリさんだけど、プログラムもリサ・バティアシュヴィリさんになっていたので、お話ししたこともあるし、愛称のリサと呼ぶことにします)。仲良し好みの美人さん。日本音楽財団から貸与されてるヴァイオリンを弾いていて、今度、来年の初めに日本に行くみたい。春のリサイタルのときは、歌のある人だなって印象で、同年代のヴァイオリニスト、ヒラリーやサラとはまた違った個性の持ち主だなって感じてました。どんなシベリウスを弾くのかうんと楽しみ。そよそよと静かにオーケストラが揺れるのにのって彼女が歌い出したヴァイオリンはとっても大らか。ともするとここは神経質なまでの緊張感で弾かれる弱音(ムターさんのときはほんとにどきどきするような息を飲むくらいの鋭利な音だった)を、たっぷりと息をした歌い回しで弾き始めたのにはびっくり。でも、それがすごくすてき。そのあともゆっくりとしたテンポで大らかに歌っていたけど、彼女のヴァイオリンを聴いていると、音楽の向こうにシベリウスや彼女が見ている風景が目に浮かぶよう。ドホナーニさんとフィルハーモニアのオーケストラも実に上手く彼女をサポートしていて、とってもすてき。で、ハプニングは、長いヴァイオリンのカデンツァのお終いの近くで起こったの。リサが、突然弾くのを止めたの。そして小さな声でドホナーニさんに何か言ったのだけど、あれっ?どうしたんだろう?失敗したのかなって思ったら、ばしっと弦が切れて、あっと思った。彼女は袖に引っ込んで、その間ドホナーニさんはオーケストラの人と何か少し小声で話しながら待っていたのだけど、会場も静かに待っていました。この会場の雰囲気はまさしく彼女が作ったもので、みんなが音楽に集中していくの。決して緊張を強いる演奏をしているのではないのだけど、彼女の音楽に対する気持ちがそうさせるのね。びっくりする出来事なのにわたしたちは心静かにしていることができたの。彼女が戻ってきて、ドホナーニさんがオーケストラに指示して、カデンツァが終わったところから曲を再開して、大丈夫かな、彼女集中力切れてないかなって心配したけど、さすが。わたしの耳には全く問題なく聞こえる。1楽章が終わって、そこで、ドホナーニさんはリサに耳打ちして、楽器の音を合わせるようにさせたのだけど、わたしはこれを見てドホナーニさんに感動したわ。わたしの耳には感じ取れなかったけど、多分、リサのテンションは弦が切れたせいで変わっていたのだと思うし、それをさりげなく音合わせで間をとることによって戻したと思うの。若い音楽家をそうやってサポートする百戦錬磨の指揮者。ドホナーニさん大好き。第2楽章も第3楽章もやっぱりゆっくり目のテンポでたっぷり歌って、でもそれが、弛緩した歌ではなくて、北国の大らかな大地の香りがするの。リサはほんとにこの音楽をよく知ってるし好きなんだなって思えた。あとで見たら、リサは16歳の史上最年少でシベリウス・コンクールで入賞してるのね。彼女は2位だったけど、その年の3位にはズナイダーさんがなってる。なんかすっご~い。ここまで大らかに歌いきったシベリウスは、ちょっと異形だと思うけど、わたしにはとってもすてきで、今まで聴いたシベリウスの中でも最もすてきなひとつとなりました。」
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by zerbinetta | 2009-01-21 06:47 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

交響曲第189番!   

sibelius: symphony no.7
sibelius: violin concerto
leif segerstam: symphony no.189
sibelius: finlandia
elina vahala (vn), leif segerstam / london schools symphony orchestra @barbican hall


今までで一番交響曲をたくさん書いた人、誰だか知ってる? ハ〜イドン。ブーーーっ。ええっ、じゃあミヤコフスキーだったけ?ホヴァネス?ブーーブーー。答えはセーゲルスタムさんなのです。指揮者として有名な。2001年の時点では63曲だったのに、この数年の間に100曲以上も書いてしまって、2008年の時点で205曲だそうです。うひょ〜〜。さて、その彼の今日は交響曲第189番。初演です。わたしの聴いた交響曲の中で最大の番号。ものすご〜〜く楽しみにしてました。だって189番ですよ。こんな大きな番号自慢できるじゃないですか。
音楽会はなんとシベリウスの交響曲第7番から始まりました。シベリウスの最後の交響曲にして清楚な精神性の高い音楽。演奏時間は短いけどプログラムの最後に持ってきても動じない崇高な音楽。休憩後(メイン曲)に奏されるセーゲルスタムさんの交響曲と釣り合うのかって心配になっちゃいます。LSSOはその名の通り学生のオーケストラ。高校生から大学生くらいの若者(多分全員ではないかもしれないけど多くは音楽家を目指していると思われます)の集まりです。若いエキスをたっぷり吸っちゃおうじゃないの。最近の若い人は技術的にはしっかりしているから破綻はないと思うけど、音楽の高さについて行けるのかなと思ったりもしましたが杞憂でした。セーゲルスタムさんの薫陶を受けたオーケストラはまさしく(多分すでに独自の音色を持ってるプロのオーケストラよりも)シベリウスの音を出していました。セーゲルスタムさんはゆっくりとした偉大なテンポで本物のシベリウスの音楽を鳴らしていたし、それに必死について行くオーケストラの姿勢には感動しました。セーゲルスタムさんは決してオーケストラに無理をさせず、若いオーケストラの良いところだけを上手に引き出していたと思います。その姿と相まってまさにフィンランドの森から降りてきた巨人。というか大きな魔法使い。お互いの共感はどんな演奏にも負けない奇跡的な音楽を生み出していました。それに演奏を聴いている会場の熱さ(家族や友達、身内関係が多かった)も音楽会にステキに作用してました。協奏曲のヴァイオリンを弾いたヴァハラさん(? なんて読むんでしょう。全部のaの上にアクサンあり)は、パンフレットの写真では10代かなぁって思ってましたが、20代半ばくらいのステキな女の人でした。何カ所か無意識に鳴ってしまった音があったけど、技術的にはお上手でこの難しい協奏曲を見事に弾ききりました。音もわたしのシベリウス好みの澄み切った凛とした音色で音楽にぴったり。ヴァイオリニストも指揮者もオーケストラも同じものを見つめてる。これほどまでに気持ちが直接伝わる演奏は若さゆえの特権だと思うし、この音楽会の経験は確実に彼らの礎のひとつになるんじゃないかしら。
そして休憩のあとはいよいよ交響曲第189番。音合わせのあと会場がざわざわしているうちに、オーケストラの後ろの方で音が。れれれ、指揮者なしで始まったのです。セッションごと、パートごとに音楽が奏でられる。フルートの人が立って合図をしたりして。200曲以上も交響曲を書く人だから、手抜きかななんて思っていたけど(たくさん作品を書く人は1作品あたりにかける時間が必然的に短くなるでしょ。どうしても作品を熟す時間が十分じゃないって思ってしまう。200曲の交響曲というのはそれほど莫大な数なんです)、どうしてどうしてきっちりと手の込んだ作品でした。現代音楽の常でメロディはないんだけど随所にきれいな透き通った響きが鳴って、紋切り型の言葉を使えば、フィンランドの森の透明な響きみたいな。ただ欲を言えば、限定的な偶然性によっていても作品全体を見通すひとつの構造が欲しかったかな。20分程度の作品だけど、音の美しい移ろいは感じられたけど、構成的な必然性が感じられなくて凡長に聞こえてしまった。と小言を言いつつ、初演という特別な機会を与えられた若いオーケストラにとっては得難い経験になるでしょう。最後のフィンランディアはセーゲルスタムさんらしい巨大なエネルギーの固まりのような演奏。セーゲルスタムさんがこの曲を演ると短いこの曲が壮大な大交響詩に聞こえるので不思議。今回の音楽会は熱い感動という意味では今シーズン一番の沸点の高いものになるでしょう。青春っていいね。わたしも音楽に打ち込むような熱い青春を送ってみたかったな。うらやましよ〜。
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by zerbinetta | 2009-01-07 21:10 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)