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イギリス田園風景 尾高/日フィル   

2015年12月12日 @サントリーホール

フィンジ:クラリネットと弦楽のための協奏曲
ヴォーン・ウィリアムズ:バス・テューバと管弦楽のための協奏曲
シューベルト:交響曲第8番

伊藤寛隆(クラリネット)
柳生和大(テューバ)
尾高忠明/日本フィルハーモニー交響楽団


金曜日の公演を土曜日に振り替えての日フィル。土曜日のお客さんは(マナーが)良くないと言われていたので戦々恐々としていたのだけど、今日はそんな感じでもなかったです。わたしが鈍感で気にしないだけかも知れないのだけど。
前半は、尾高さんお得意のイギリスもの(尾高さんはウェールズの劇場で活躍しておられた)。後半にシューベルトのハ長調の大交響曲。それにしても、前半の2曲、初めて聴く曲。ロンドンでも聴いたことなかった(1曲目は作曲家の名前さえも初耳)。

フィンジのクラリネット協奏曲は、戦後書かれた音楽だけど、イギリスの田園風景を彷彿させるような、さりげなくロマンティックで分かりやすい曲。柔らかな光りの彩度を落とした風景画のような世界。クラリネットが優しいメロディを奏でていくところに、弦楽合奏が空気のように世界を満たしていく。懐かしいような田舎の風景の映像の裏に流れていくような音楽。読響の主席の伊藤さんのクラリネットもオーケストラもその風景に溶け込んでいて、でもただそれだけ、なんだよね~。そつなくきれいなんだけど存在感の薄い人みたいな。

RVW(ヴォーン・ウィリアムズをイニシャルをとってこう略すんです)のテューバ協奏曲は、テューバ吹きには有名な曲(と言うのはテューバ吹きの友達に聞いて知っていました)。テューバの協奏曲なんて珍しいですしね。テューバの良さ、低音の重さに加えて軽やかさもあるんですね、を生かし切ったマニアックではあるけど名曲だと思いました。自在に吹く読響の柳生さんもここぞとばかり楽しそうで。チューバの音楽を存分に楽しませてくれました。不満があるとしたら、曲が15分ばかしで短かったこと。あっという間に終わってしまいました。
それにしても、この2曲で日フィルのソリストの魅力の一端が分かったし、尾高さんとイギリス音楽の相性の良さが確認されたのでした。

休憩のあとは打って変わってシューベルト。始まりのホルンのユニゾンは、魅力的な音で魅力的なテンポだったんだけど、流れるような流線型の音楽が、シューベルト特有の翳の部分を隠してしまった感じがしてちょっと物足りなかったです。同じ田園風景も感じさせる音楽だけど、イギリスの音楽とシューベルトの音楽の風景って違うと思うんですよ。陽光の気持ちの良いお散歩なのに、歩くことに夢中になってしまって、足元の小さな花や虫の死骸、木の陰に潜む鳥を見逃してしまって、豊かな語彙が感じられませんでした。ちょっと雑だったし、オーケストラの音にももう少し潤いが欲しかったです。日フィルってどちらかと言うとドライな音のするオーケストラだと思うけど、せっかく積極的な奏者が集まっているんだから、丸味のある音も身につければもっと良くなるのに惜しいなぁ。
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by zerbinetta | 2015-12-12 12:28 | 日本のオーケストラ | Comments(0)

シューベルトの翳り 志鷹美紗リサイタル   

2015年11月26日 @すみだトリフォニー小ホール

シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番
モーツァルト/リスト:「ドン・ジョヴァンニの回想」
シューベルト/リスト:「水面に歌う」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」

志鷹美紗(ピアノ)


広島在住のピアノスト、志鷹さんのリサイタルにひょんなことから伺いました。すみだトリフォニーの小ホールは初めて。

志鷹さんは、ほんわりしたかわいらしい人。ほんわりといえば、アリス・サラさんもそうなんだけど、アリスさんがエルメのマカロンとすると、志鷹さんは蒸し立てほかほかの酒まんじゅう(ん?広島だから焼きたてのもみじまんじゅう?)。ああ、何てたとえだ。ちなみに裸足ではありませんでした。経歴を見ると、コンクールで賞をとったりCDを出したり、リサイタルをしたりと経験のある人だけど、何だかちょっと緊張しているように見えました。わたしにそう見えただけで、いつも同じ感じなのかも知れませんけど。

わたしは、ピアノを弾けないのでピアノのことは分かりません。なので、感じたことだけ、素直な感想を。今日、一番いいなと感じたのは、シューベルト。第1楽章では、まだ少し音楽会が始まる堅さがあった感じだけど、小さな声で歌が聞こえ出した第2楽章から、本来の感じになってきたみたいで。まだ若い番号の作品で、かわいらしい明るい音楽なんですが、最後の作品たちに聞こえる、暗い淵から溢れてくるような死の予感を感じさせる演奏にびっくり。第1楽章の、左手のねっとりした暗闇や(第21番のソナタ!)、第3楽章の明るさの中に瞬間現れる彼岸。そんなシューベルトの心の裡をどきりと聞かせてくれた演奏でした。すてき。

志鷹さんの技術の確かさは、リストの編曲によるモーツァルトとシューベルトの演奏で証明されました。志鷹さんは決して派手なヴィルトゥオーゾではないと思うけど、音楽を聴かせるのには十分。ただ、少しペダルを使いすぎているのか、音が濁るというか少し曖昧になるのが気になりました。ピアノを知らないわたしが言っても説得力は全然ありませんが。それにしてもリストの編曲、というかもう作曲に近い?、はちゃめちゃだなぁ。なんか、リストが好きになりました。もっと、聴いてみたい。

最後の「熱情」は、第1楽章、躊躇いがちに始まって(ほんとにそんな感じでした)、音楽が急流のように流れ出すのを今か今かと待っていたんですけど、ずっと躊躇いがちな感じというか少し動いては止まってって、わたし、曲を勘違いしてた。。。迸るのは最後の楽章ですね。勘違いのせいでずっともやもやと聴いてしまった。悔しい。わたしの、ばか。

アンコールは、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」から「アリア」とショパンの練習曲の10−4。「アリア」を聴くと何だかキノコが食べたくなる、というのは置いといて、優しげなとてもステキな演奏でした。難曲で知られるショパンの練習曲は、弾き慣れているのでしょう、肩の力の抜けた余裕の演奏でした。
ささっと、お辞儀を済ませて、志鷹さん、ホールのロビーでファンの人と話をしたり、お客さんをお見送り。こんな感じもなんか微笑ましい。

志鷹さん、演奏を始める前、ピアノの前に座ってしばらく黙考するんですけど、何を思っているのかしら。音楽を歌っている風にも見えたんですけど、きっと秘密ですね。そうそう、プログラムの曲目紹介の文章、それぞれの曲で文体が違ってて、別々の人が書いたのか、同じ人が違う機会に書いたものを寄せ集めた感じでした。ちょっと惜しいなぁ。
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by zerbinetta | 2015-11-26 01:53 | 室内楽・リサイタル | Comments(0)

イン・C! オーケストラHAL第8回定期演奏会   

2014年9月14日 @ティアラこうとう

シベリウス:交響曲第3番
シューベルト:交響曲第8番

石毛保彦/オーケストラHAL


シンフォニー・イン・Cと言ったらわたしのようなバレエ・クラスタにはストラヴィンスキーのなんですが。今日はハ長調の交響曲を集めた音楽会。ハ長調というと、シャープもフラットもない学校の音楽の時間、一番初めに習う楽譜。何と言うか開放的で単純。なイメジがします。
ハ長調の交響曲というと、有名なのは、ストラヴィンスキーのの他にも、モーツァルトの「ジュピター」とかベートーヴェンの第1番とかショスティー7とかビゼーとかプロコ4とかって、だんだんクラヲタ度が上がっていく。。。で、今日演奏されるのは、シューベルトの「グレイト」となんと!シベリウスの第3番。ううう、シベリウスを持ってくるところがクラヲタ心を刺激するぅ。第7番じゃなくてより演奏機会の少ない第3番というのもね。

HALは前に聴いたことがあると思っていました。HALという名前の英語に何か引っかかりを感じたのを覚えていたし、石毛さんを聴きたかった、というのも覚えていました。でも、ちゃんと思い出してみると、聴きに行きたかったんだけど別に用事があって聴きに行けなかったんですね。今日が初めて。
石毛さんは前に聴いたことがあって良い指揮者だなって思ったんです。で、HALは石毛さんを音楽監督にしているので凄く聴いてみたかったんです。今日それがかないました。

ティアラこうとうにとことこやってくると、建物の前に小さなトラックが。楽器のペインティングとオーケストラHALのロゴ。このデザイン、確かフィルハーモニアのみたい。かっこいい。自前で楽器運搬用のトラック持っているのかしら。

今日は開演前コンサートがあって、金管合奏でスターウォーズ。実はこれがちょっとあれあれで、もう少ししっかり練習を積んでくればいいのにって思ってしまいました。オマケの開演前コンサートとは言え、オーケストラの第一印象になってしまいますからね。開演前コンサートって気楽にやっているとこ多いけど(プロのオーケストラでさえも!)、お客さんに聴かせる以上ちゃんと練習した方がいいと思います。楽器の人数も多かったので、指揮者を立てて演奏した方が絶対いいよ、とも思いました。下手じゃないのに、みんながばらばらで指揮者がいれば違ったものになったと思ったからです。もったいない。

そんなわけで、大丈夫かなぁと全く期待しないで聴き始めたシベリウスなんだけど、おや、意外と上手いなぁと。できて4年目くらいの若いオーケストラで、老舗のオーケストラと比べると弱いけど、とても音楽がこなれていてこれからが楽しみだと思えました。きっと、指揮者の石毛さんと良い関係で音楽を作っているんですね。石毛さんとのシベリウスは(あとで聴くシューベルトもそうだったんですけど)無理せず自然体で心地良い。前に聴いたとき、石毛さんいいって感じたのは正しかったんだ。わたしと石毛さんは相性がいい。第2楽章で、わたしの偏愛する対旋律がコントラバスに出てくるんだけど、もうそれが好きで好きでたまらなくてわたしの中ではブラームスの交響曲第1番の4楽章のチェロのと共に対旋律ベスト・ワンなんだけど、石毛さんはそこを聞こえるか聞こえないかくらいの弱音で弾かせて、えええっ?あのステキなメロディーは〜ってうそー聞こえないのぉって驚いちゃった。それでも、あんまり嫌じゃなかったのは、石毛さんの音楽に納得してたから?

シューベルトは、プログラムに始まりのホルンの序奏について、「昨今はピリオド楽器を使った演奏の影響からテンポの速い演奏も多いけど、昔ながら(フルトヴェングラーの頃?)のほんわりのんびりした演奏も良い(今、プログラムが手元にないので記憶を頼りに意訳)」みたいなことが書いてあって、果たしてその通り。始まりのホルンは、朝寝坊をした休日の朝に日が高くぽかぽかした野原で大きく伸びをした感じでした。朝寝坊の心地よさってたまらないでしょ。こういう演奏久しぶりに聴いたかも。流行りに即してないけど、たまにはいいよね。
シューベルトのこの曲って反復が多いし、旋律も同音反復が多くて、長いし、下手をすれば退屈になりがちなんだけど、石毛さんとHALの演奏は、緊張を強いられているわけではないのに、リラックスしながら最後まで飽きずに聴き通せました。なんか、わたしとシンクロナイズするんだよね。石毛さんの音楽の魅力を考えてたんだけど、妙に気が合うという他に言葉が浮かびませんでした。おいしいご飯のように無意識のうちに自然に食べちゃうみたいな。おかず的な派手やかさはないけど、さりげなく一番大事なもの。

アンコールには、シベリウスの劇音楽「テンペスト」より「妖精の踊り」。初めて聴く曲。シベリウスって知らないうちに結構いろんな曲書いているんですね。歌とかヴァイオリンとピアノの小品とか、劇付随音楽とか。「妖精の踊り」は、ムーミンに出てきそうでかわいらしくていい曲でした。こんな曲をアンコールに選ぶなんてセンスがいいなぁ。


♪♪
オーケストラHALの次の公演は、第9回定期演奏会が来年の2月22日、三鷹風のホールです。
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by zerbinetta | 2014-09-14 00:56 | アマチュア | Comments(0)

音楽の家族 テオフィルス室内管弦楽団第52回定期演奏会   

2014年5月18日 @かめありリリアホール

モーツァルト:バレエ音楽「レ・プティ・リアン」より
フランセ:十重奏、弦楽五重奏と木管五重奏のための(管弦楽版)
シューベルト:交響曲第2番

高畠浩/テオフィルス室内管弦楽団


夜の音楽会まで時間があるのでお昼の音楽会にも行ってきました。モーツァルトのクリスチャン・ネームを冠した(アマデウスはギリシア語でテオフィルス)オーケストラに興味があったし、室内管弦楽団というのにも興味がありました。古典をやれる団体は上手いに違いないというヘンケンもあるし。

5月なのに夏みたいなお天気。なぜか高砂から殺風景な道をとことこ歩いて40分ほどで亀有に。亀有は初めて。両さんで有名って知ってたから、小さな両さん像を見つけたときは大喜び。

モーツァルトの名前を頂いてるだけあって、音楽会にモーツァルトの曲を必ずやるみたいですね。と言っても古楽のオーケストラではないし、新しい作品も積極的に採り上げています。今日はフランセの音楽があるし。

そのモーツァルトの曲は、「レ・プティ・リアン」というバレエ曲。モーツァルト以外の作曲家も音楽に関与しているそうなんですが、今日はモーツァルトの作品を取り出して、他の作曲家のを2つ加えて10曲。なんというかぼよ〜〜んとほのぼのとした音楽。有名作曲家の知られていない作品だけあって(わたしも今回初めて知りました)、正直、無理して聴かなくてもいいかなって感じかな。初期のオペラ「バスティアンとバスティエンヌ」に雰囲気似てました。

フランセは20世紀のフランスの作曲家。これまた珍しい演目。フランセの名前も初めて聴きました。音楽は一聴して分かるようにプーランクの流れを汲むお洒落な音楽。ステキですね、このセンス。それにしても、こんな曲を見つけてきて音楽会で採り上げてしまうところがいいですね。団員のプレゼンで曲が決まると言うことなのでヲタ的な好きな人がいるのでしょう。アマチュアの良さですね。
結論から先に書くと、今日の音楽会の中でわたしは、この曲が一番オーケストラに合ってると感じました。このオーケストラ、弦楽器が少なくて、ヴァイオリンは第1、第2それぞれ5人。アマチュアの弦楽器奏者にプロのような音量を求めるのは酷なので、この人数で管楽器と合わせると弱いんですね。フランセの曲は元々が弦楽五重奏と管楽器のために書かれているので、オーケストラに編曲しても弦楽器少なくてもバランスが良いんですね。

シューベルトは、この間の第3交響曲に続いて、今日は第2。マイナー攻めです。プログラムに(団員の思い入れや文学的(?)書き方がユニークで簡素でありながらとても好感度高し)シューベルトの曲は、聴いている人にはかわいい曲に聞こえるのに、弾いてる方は心身共に苛酷と書いてありましたが、ほんとにそう!第2ヴァイオリンとヴィオラの細かい刻み、シューベルトは鬼。この曲をやりたい人と阻止したい第2ヴァイオリンとヴィオラの人たちの間に選曲闘争があったのかしら?でも、聴く方は、めったに演奏されないかわいらしいシューベルトが聴けて嬉しい。
とてもシューベルトらしい気の置けない居心地の良い演奏だったんですが、管楽器に比べて弦楽器が(音量的に)弱かったのが残念。とはいえ、オーケストラの持つ家族的な雰囲気は、シューベルトの音楽も友達の間でこんな風に演奏されたのかな、って思い起こさせてステキ。このオーケストラのシューベルト、もっと聴きたいな(ごめんね、第2ヴァイオリンの人)。あと、フランセももっと聴きたい、お近づきになりたいって思いました。音楽の視野が広がるのはいつも嬉しい。

指揮者の高畠さんは、ずうっとこのオーケストラを指導していて、またいくつものアマチュア・オーケストラを持っているのですね。音楽会のときだけ振るのではなくて、じっくりと一緒にオーケストラの音を作っていく姿勢は、とても素晴らしいことだと思います。オーケストラはものすごく上手いとは言えないけど(決して下手ではありません)、音楽の家族ってすごくいいなって思える音楽会でした。

アンコールには「ロザムンデ」からバレエの音楽。シューベルトってほんとにいいですねっ。


♪♪
テオフィルス室内管弦楽団の次の音楽会は、第53回定期演奏会が11月2日、トッパンホールです。モーツァルトとシベリウスとベートーヴェン。
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by zerbinetta | 2014-05-18 04:44 | アマチュア | Comments(0)

カルミナ中毒 オーケストラーダ第7回演奏会   

2014年5月4日 @すみだトリフォニー

シューベルト:交響曲第3番
オルフ:カルミナ・ブラーナ

馬原裕子(ソプラノ)、鈴木准(テナー)、吉川健一(バリトン)
久保田昌一/ロッソヴィーヴォ、東京少年少女合唱隊、オーケストラーダ


またまた「カルミナ・ブラーナ」ですよ〜。この間2回もバレエを観てきたばかりなのに。「カルミナ・ブラーナ」それほど好きではないのに。中毒ですかね〜〜。はは、たまたま重なった人生カルミナ週間だったのでしょう。
オーケストラーダは3年前に誕生した新しい社会人オーケストラ。ムーティさんのアシスタントをしたりしている久保田さんが音楽監督をしてらっしゃいます。オーケストラーダは「つながる」をキーワードに活動されていて、「社会とつながる」では、障害者施設の方々を音楽会に招待しているそうです。確かに、障害を持っておられる方を会場で多く見ました。あとユニークなのは、指揮者セミナーを開催していることですね。それから、チケット代の設定が音楽会にゆかりのある数字で、今回の1230円は「カルミナ・ブラーナ」の写本が書かれた1230年に由来してるとのことです。次は、1812円とか1905円とか1000円の交響曲(ベタすぎ)!さらに、音楽会で挟まれる(ゴミになる)チラシ廃止のために、チラシの代わりに希望する団体にはプログラムに音楽会情報を載せることもしています。アイディア盛りだくさん。求める音楽も高いようですね。

「カルミナ・ブラーナ」の前にシューベルトの交響曲第3番。またまたマニアックな選曲です。アマチュアはこれだから好き♡シューベルトの交響曲ってハ長調の大きいのと未完成とせいぜい第5番が演奏されるばかりで、若い番号の交響曲が演奏される機会ってめったにないもの。
明るくてかわいらしい曲です(シューベルトの若い番号の交響曲ってみんなかわいいかも)。第1楽章のポンと合いの手の入る旋律もカワイイし、第2楽章も女の子がおしゃべりしてるみたいでカワイイ。最終楽章の垢抜けない高校生がフォークダンス、合いの手入り、を踊るような音楽も楽しいし、やっぱりカワイイ。
演奏はどよ〜んとゆっくりした重い調子で始まりました。おおおと思っていると、主部に入って明るくかわいく。このオーケストラ、高いところを目指してるとあって上手いですね。ぽつりぽつりとオーケストラの中に核となる上手い人を配しているみたい。なかなかステキな気の置けないシューベルトでしたよ。ザッハトルテと言うよりホイリゲ系。

後半は、大オーケストラに合唱も加わって「カルミナ・ブラーナ」。うん。迫力がすごい。久保田さんの指揮は、最初の曲(と終曲)で節の終わりの音を長めに伸ばすところがわたしにはちょっと好みではなかったけど、テキパキと要所要所を締めて大編成のオーケストラと合唱をコントロールしきっててなかなかやるなって。対比をはっきりさせて音楽を分かりやすく聴かせてくれました。オーケストラを統率する実力がかなりありそう。若いオーケストラとは言え、創設時からの音楽監督なので気心も知れているのかも知れません。というか、みんなが久保田さんの作る音楽をリスペクトして指揮者に付いていきます!って感じかしら。
気になった点を挙げれば(重箱の隅をわざわざつついてごめんなさい)、はじめの曲で、クラリネットとか木管楽器の細かく刻まれる分散和音のテンポ感と全体のテンポ感にずれが感じられたこと、合唱はさすがにこの間、新国立劇場で聴いたのには及ばなかったことです(向こうはプロだし、新国の合唱って上手いので比較する方がおかしいのですが)。あっそれから、オーボエの人が上手いに違いないのを発見。トゥッティの中で音は聞こえなかったんだけど、吹き方(見た目)がプロみたい。あとで調べてみたら、音楽大学を出てオーボエを教えてらっしゃるセミプロの方みたい(情報が古かったので今は止められてるのかも知れません)。ほんと、見た目で上手い下手が分かるのよ〜。

独唱は、わたしは圧倒的に、新国での方々より今日の人たちの方が好みでした。特に、出番はほとんどないけど、鈴木さんが凄い良かった。ロンドンで聴いた、「カーリュー・リヴァー」の狂女の凄く良かったんだけど、パンクの狂女の衣装ではない、今日の素の彼は、むちゃかっこいい!(松潤さんに似てますよね?)ずうっと見つめてしまいました♡好きです(惚)。もちろんストレイトな歌いっぷりと張りのある声もとても良くて、これだけ聴けただけでも良かったです。
「カルミナ・ブラーナ」を聴くとどうしてもバレエを思い出してしまいますね。それほどインパクト強かったし、音楽が舞台を求めてる。でも、今日の演奏は、舞台は頭の中で再生して、しっかり音楽を楽しめました。べにかの連呼も聞こえたしね。

オーケストラーダの次の音楽会は10月25日、江東区文化センターです(曲目未定?)。
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by zerbinetta | 2014-05-04 23:49 | アマチュア | Comments(2)

軽やかな気分で海に行く プロースト交響楽団   

2013年6月2日 @すみだトリフォニー・ホール

シューベルト:交響曲第6番
イベール:交響組曲「寄港地」
ドビュッシー:交響詩「海」

大井剛史/プロースト交響楽団

ふんふんふわわんと鼻歌うたいながら足取り軽く、梅雨の晴れ間の心地よいお天気の中、海に出かけてきました。そんな感じです。

今日は、またアマチュア・オーケストラの音楽会。東京ってほんと、アマチュア・オーケストラ多いですね。わたしが、わりと日本にフィットしてるから情報が得られやすいのかも知れないけど、ロンドンなんかよりもよっぽど多そう。学生オーケストラの巣である大学の数も圧倒的に多いですしね。
団体によっては、無料であったり、無料のチケットをもらえたりするので貧乏なわたしはちょくちょく出かけてます。といより、生音好きだし、何より、アマチュアの演奏も独特の熱があって大好きなんです。
今日はプロースト交響楽団というところ。首都圏の大学オーケストラ出身の人たちが中心になって2003年に作られたオーケストラです。舞台を見ると若い人が多いなという印象です。

音楽会の始まりは、シューベルトの交響曲第6番から。じんわりと嬉しいプログラム。この曲、生で聴くの初めてです。ゆっくりした序奏があって、、、あれれ、オーケストラはとても良い音出してるんですけど、フレーズごとにおしまいのテンポがなんだかもったりしちゃって、丁寧に弾きすぎてるのかしら。それとも指揮の大井さんの癖?アレグロに入ってからはうきうきと軽やかないい演奏で、今日の空のように明るい、気持ちが華やぎます。小さなオーケストラで、このオーケストラは弦楽器の音色が柔らかでステキですね。プログラムに載せられていたシューベルトについての文章もシューベルトの音楽への愛情がこもっていて嬉しかったです。

2つめのイベールの「寄港地」もなかなか演奏されない曲です。吹奏楽の編曲版は聴いたことがあるのに、オリジナルのオーケストラのは初めて。いい曲なのに。大きなオーケストラだけど、木管楽器のエキゾティックなソロが大活躍。最後のバレンシアはカスタネットやたくさんの打楽器も入って盛り上がって終了。随所にきらきらときらめく音があって良い雰囲気。今日の中ではこの曲が一番良かったかな。

最後の「海」は、全体的には良かったけど、ところどころの小さな綻び、和音のバランスとか、音色感とか、音の出入りとか、が少し気になりました。精密に書かれた絵を観ているような音楽なので、そういう細かなところの積み重ねが気になっちゃうんですね。でも、最後はちゃんと盛り上がって(やっぱり、盛り上がる曲はちゃんと盛り上がって欲しいでしょ)、大団円。
アンコールには、フォーレの「ドリー」から静かな1曲。カスタードクリームのようなデザート。

プロースト交響楽団は、とても良い音のオーケストラだと思いました。ひとりひとりがしっかり音楽を知っている(たまに飛び出しちゃうけど)のも良いし、はまったときにはとても良いのです。ただ、少しむらがあって、ひとつの曲の中で良いときと悪いときがあるのがちょっと残念です。大井さんの指揮はとても分かりやすくて、音楽にメリハリを付けて(特にテンポで)、音楽の構造が掴みやすいように聴かせてくれます。シューベルトの交響曲なんかはソナタ形式が音でよく分かる演奏でした。奏者に無理させず、きちんと拍を振っていたのも良い感じ。プロのオーケストラでどんなふうに音楽を作るのか聴いてみたいです。千葉のオーケストラの常任指揮者なんですね。聴きに行かなきゃ。

ところで、トリフォニー・ホールでオーケストラ聴くの2度目なんですけど(どちらもアマオケ)、1階のわりと前の方で聴いてたんだけど、コントラファゴットの音がビーンと薄紙を唇で振るわせるように響いてきません?あれ、ホール独特の音だと思うんだけど。
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by zerbinetta | 2013-06-02 23:45 | アマチュア | Comments(0)

5番ホルンに注目! ビシュコフ、BBC交響楽団「英雄の生涯」   

8.8.2012 @royal albert hall

schubert: symphony no. 7
richard dubugnon: battlefield concerto
strauss: ein heldenleben

katia & marielle labèque (pf)
semyon bychkov / bbcso


つい数日前、BBC交響楽団が、ギュンター・ヴァント・コンダクティング・チェアーなるタイトルを創設して、その最初の栄誉にビシュコフさんがなられたというアナウンスメントがありました。BBC交響楽団とヴァントさん?って、って感じだったんだけど、ヴァントさん、昔、BBC交響楽団の主席客演指揮者だったのですね。どうやら、客演指揮者として功績のある人を称えるポストみたいです。ビシュコフさんはBBC交響楽団に正式なポストを持ったことないはずですけど(現在の主席客演指揮者はロバートソンさん)、確かに毎年のように客演してはステキな演奏を聴かせてくれてましたからね。奇しくも今日はそのお披露目。

シューベルトの「未完成」は、弱音を徹底的に強調しすぎてしすぎちゃったかしら、みたいな演奏でした。この曲って、クラシック界の超有名曲だし、名曲だけど、なぜかわたし、この曲のぞくっとする演奏に出会えないんです。いいなって感じる演奏には出会えるんだけど、やっと見つけた!と思える演奏がないの。どうしてでしょう?今日のこの演奏もそう。ちゃんとステキな演奏なのに、とうとう出会えた感がなくて寂しく見送る、そんな感じです。

2曲目は、ラベックさん姉妹を迎えての新しい協奏曲。イギリス初演です。2群のオーケストラと2台のピアノ、ラベックさん姉妹のために書かれた曲です。そしてその通り、おふたりの個性、これがもう正反対な感じで面白いんです、自由奔放のカティアさん、しっかりとペースを刻むマリエルさん、このおふたりの対照がなければ、こんなにも長く第一線でデュオを続けることはできなかったに違いありません。お互いの個性のぶつかり合いが音楽の化学反応を生みさらに自由に飛翔できるんですね。そんな感じを今日のピアノから凄く受けました。そういうふうに作曲されてるから。まさに彼女らのための音楽です。だからピアノ・パートはとても面白かった。でも、オーケストラ・パートはちょっといまいちでもったいない。これがもっと良く書かれていたら2台のピアノとオーケストラのための定番になったかもしれないのにって偉そうに思いました。ピアノのパートだけ耳を集中して聴いていました。
それにしても、ラベックさん姉妹、相変わらず年齢不詳。むちゃ色気のある美人姉妹だわ。ちなみに、マリエルさんは指揮者のビシュコフさんのパートナーなんですね♡美女と野獣??

最後は「英雄の生涯」。大きなオーケストラ。と、見てたら、5番ホルンにあれっ?フィルハーモニアのケイティさん?ゲスト・プリンシパルじゃなくて5番?プログラムを見たら、ケイティさんではなくてキャサリンさん。あれれ?ますます混乱するわたし。似てるけど違う人?でも吹き方ケイティさんだし。わたしの中ではやっぱりケイティさんだって確信したんですけど、あとで調べてみたら、ケイティってキャサリンの愛称なんですね。なぁんだ。と、全く本筋から遠いところで重箱の隅に残ってる栗きんとんのかけらをつついてるわたしですけど、5番ホルンをずっと見てると、意外と大活躍なんですね。ソロも多いし。
ビシュコフさんの「英雄の生涯」は流石と漢字で唸らせるような音楽。盤石ですね。BBCシンフォニーも上手いし、落ち着いて安心して聴ける演奏。わたしとしては、(わざと)ドキリとバランスの崩れる瞬間がある演奏が好きなんですけど、ビシュコフさんはそういう演奏をするタイプではないのですね。しっかりと完成度の高い、繰り返して聴いても崩れないタイプの演奏でした。
それにしても34歳でこの曲を作曲したシュトラウス。もうすでにたくさんの業績があって、引退さえするなんて(曲の中で)いいなぁ。もしわたしが同じような曲を作曲したら、シュトラウスの歳は優に超えてるのになんにも業績ないぞ。ってかふにゃふにゃな曲になりそう。実際、シュトラウスはこの曲を最後に、交響詩を書くのを止めて、オペラの世界に没頭していくのですね。もしかしたら交響詩作曲家としての自分を葬る作品だったのかもしれません。
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by zerbinetta | 2012-08-08 07:26 | BBCシンフォニー | Comments(0)

こんにゃくゼリーには気をつけて ピレシュ、ハイティンク、ロンドン交響楽団リハーサル   

10.06.2012 @barbican hall

(rehearsal)
purcell: chacony in g minor
schubert: symphony no. 9
mozart: piano concerto no. 20

maria joão pires (pf)
bernard haitink / lso


LSOのディスカヴァリー・デー、シューベルトで、午前中、ロンドン・シンフォニーのリハーサルがあったので行ってきました。ほんとは1日のプログラム(午後はLSOセント・リュークスでシューベルトについての講演と「鱒」の演奏)だったんですが、日曜日に早起きしたせいで眠く、よるも音楽会があったので、午後の部はスキップしてしまいました。

さて、朝10時のバービカン・センター、人が閑散としていて、なんだかいつもの場所じゃないみたい。ロンドン・シンフォニーのメンバーも私服で三々五々集まってきます。リハーサルの朝のこんな雰囲気好き。ハイティンクさんも私服でステージに出てきて、指揮台には椅子があったけど指揮するときはほとんど立ったまま指揮していました。元気なおじいさん。

1曲目のパーセルのシャコンヌは弦楽合奏のとってもきれいな曲。それにしても、当たり前ですが、ロンドン・シンフォニーはリハーサルでもロンドン・シンフォニー。もう上手い。上手すぎる。とろけるように音色がきれいで、もうこれ以上何を望むとこあるのって思うくらいだし、ゲネプロだからもうほとんど出来ているんだけど、ハイティンクさんは、途中止めて気になるところを繰り返させてました。オーケストラの方からもリーダーのシモヴィックさんをはじめとして何人かから意見が出て、お互いに納得のいく音楽作りをしていました。この曲を聴いただけでも今日来た甲斐があります。

2曲目は本番と順番が違ってシューベルトの交響曲第9番(とプログラムに書いてあるのでそう書きます。もちろんハ長調の大交響曲)。ホルンのユニゾンが始まった瞬間、えっ!っと思ったとたんこんにゃくゼリーを飲み込んで喉に詰まらせてうぐうぐびっくりした感じ。テンポが速くてレガートで、わたしの好みとは全然違った。ハイティンクさんはこの曲は、部分部分しかリハーサルしなかったので、全体の音楽がどうなってるのか分からないので、何とも言えませんが、どうなんだろう?序奏ではなく主部の一部(第3主題的に)としての扱い?ううむ。全体を聴いてみたくなりました(残念ながら本番は聴きに行かないのです)。
それにしても、ロンドン・シンフォニーのリハーサル、遅刻してくる人が何人かいて、ロンドンらしくてゆるいなぁって思いました(ロンドンは地下鉄がよく止まるので目的地に時間どおりに着けない、というのをどうやら普通のこととして思ってるフシがあるのですよ)。
そうそう、今日のオーボエの人、めちゃくちゃ上手くて、わたしは、シスモンディさんをロンドン・シンフォニーに呼ぶ会(CLYK)会長なんだけど、今日の人も正直、ロンドン・シンフォニーのスタイルに合ってるし、この人でもいいなか、と悔しいけど思いました。で、あとで調べてみると、なあんだ、フィルハーモニアの主席のコーウィーさんでした。それならロンドン・シンフォニーに横滑りはないかな。安心して(?)CLYKを続けることが出来ますね。

休憩があって最後は、ピレシュさんとモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。これは通しで演奏されました。これがもう至福。ピレシュさんのピアノが聞こえたとたんに心がメロメロ。ピレシュさんのピアノは端正で、音楽しか感じさせない。感情も情景も音符の中に、出てくる音の丸い粒の中にビー玉の模様のように閉じこめられていて、音だけが心の上に撥ねるの。本物の音楽を弾くピアニストのひとり。あんなに小さくて手も小さいだろうからハンディもあると思うんだけど、全くそんなことを感じさせない、ナチュラル系のお洋服のように飾らない自然な音楽。ロンドン・シンフォニーも柔らかな上質の音でピレシュさんをサポート。リハーサルでこれだけのものを聴かせてくれるんだから、本番ではさぞかし幸せなときが流れるんだろうな。

PS 本番を聴かれたMiklosさんのブログはこちら

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by zerbinetta | 2012-06-10 00:25 | ロンドン交響楽団 | Comments(4)

赤いハリネズミでシューベルティアーデ キアロスクーロ・カルテット   

26.05.2012 @the red hedgehog in highgate, london

mozart: adagio and fugue, k.546 quartet, k.428
schubert: quartet 'rosamunde', d.804

chiaroscuro quartet
alina ibragimova, pablo hernán benedi (vn)
emilie hörnlund (vl), claire thirion (vc)


赤いハリネズミをご存じだろうか?(なんだか偉そうな口調) ブラームスが通っていたというウィーンにあった居酒屋レストラン。同じ名前のサロンがロンドンにもあるのです。アリーナのウェブサイトをぼんやり覗いて、コンサート情報を見ていたら、なんと!ロンドンでキアロスクーロ・カルテットの音楽会が!場所は、赤いハリネズミ。調べてみるとどうやら家の近く。これは行かなければ。で、持っていたバレエのチケットはリターンに出して、チケット買ったのです。でも、不安は、赤いハリネズミの正体がちっとも分からなかったこと。最初は教会か何かだと思ったんです。教会での音楽会はよくあるから。でも違うっぽいしライヴハウスか何かかなと。若者ばっかりでどうしようとか、不良に絡まれて手籠めにされたらどうしようとか、そんな妄想を膨らませて出かけました。

ロンドンの赤いハリネズミ、外見は小劇場風。おずおずと入り口の扉を開けて入ってみると、うわわっ!なんと受付のところにアリーナ!彼女が受付をしてたわけじゃないんですけど、なにやら準備をしてたみたいです。いきなりヨロコビの大爆発。
会場は、普通の家のリビングのような部屋。椅子の他にもソファがあって、40人くらいでいっぱいになります。なんていう贅沢な空間。来ている人は近所の音楽好きと、カルテットのメンバーのお友達。とっても親密な雰囲気。主催者の人に聞くと、個人的にサロン・コンサートとかを催してるそう。100年200年前はみんなこんな風だったと。シューベルティアーデもきっとこんな感じだったんでしょうね、とわたし。そんなステキな雰囲気の中、大好きなアリーナのカルテットが聴ける最高の贅沢。お客さんが三々五々集まると同時にカルテットのメンバーも楽器を背負ってやってきます。皆さん私服。アリーナが一番早く来て準備してたってことはやっぱりこのカルテット、アリーナがリーダーなのかな。

着替えるのかなと思ったら、私服のまま演奏。こんなこともなんだかステキ。服装にも個性が出て、アリーナは黒の襟なしブラウスに黒のロング・スカート。紅一点じゃなかった白一点(?)のパブロさんはジーンズにシャツ。チェロのクレアさんが一番フォーマルっぽくて黒のパンツ・スーツ。不思議ちゃんなのが、ヴィオラのエミリーさんで、アースカラーの提灯みたいなスカート(ちょっと奇抜)、かワンピースに長いストール。森ガール系。

主宰のマダムの短いイントロがあっていよいよ音楽。アリーナが曲目を紹介して、初めはモーツァルトの「アダージョとフーガ」。今日の前半はモーツァルト2曲で、CDに入っている曲とは違うのがラッキー。CDの演奏でも感じたんだけど、キアロスクーロ・カルテットのモーツァルトはアグレッシヴ。わたし的にはもう少し柔らかさ、大人の余裕、みたいなのが欲しいんだけど、若気の至りみたいな青さが今のカルテットの魅力でもあるのかもしれませんね。でも、変に大人びて丸くなるより今は尖っていた方がずうっとステキになると、彼女らよりもずいぶん長生きしているわたしは思います。「アダージョとフーガ」はフーガの入りをがっつりとアクセントを付けて弾き出すのが激しく、おお、ここまでやるかって思いました。

2曲目のk.546のカルテットもモーツァルトにしては、ちょっぴり殺伐。それが彼らのスタイルだと思うけど、ぴーんと張り詰めた細い音で、かなり大胆に音楽に切り込んでいく感じ。もう少し(いい意味で)緩さがあるといいんだけどな。ピアノ(ピアニッシモ)の表現が、ぎりぎりのところまで音を絞っていて、今日の会場が小さいのでさらに弱音を意識したせいかもしれないけど、音にもう少し力が欲しいと思うときもありました。わたしは、モーツァルトは大好きだけど彼のカルテットは苦手で(というか、弦楽四重奏曲自体が苦手分野で、好きなのはハイドンとメンデルスゾーンのくらい。あとはマニアックなシマノフスキとかゴレツキとか)、そのせいもあるのかもしれないけど、ちょっとピンと来ないところもありました。わたしの好きなハイドンとか弾いて欲しいなぁ(メンバー・チェンジ前にハイドンを聴いているし、録音もされていたハズなんだけどメンバーが替わってお蔵入りになったのかな)。

今日、特にステキだったのは、休憩のあとの「ロザムンデ」カルテット。CDで発売されているから完成度も高いし、というかそれよりもわたしがシューベルト大好きだから!そして何よりもこの雰囲気。お家のリビングで30人あまりの寛いだお客さんと聴くシューベルトってまさにシューベルティアーデじゃないですか!しかも大好きなアリーナ。なんという至福。音楽を聴くというと、つい演奏ばかりに耳が行ってしまうけど、音楽を取り囲む全てのものが、音楽を作っているんだと思う。まわりの人は、今日初めて会う人で、一言二言会話した人ばかりだけど、お友達の家に招かれている音楽仲間という雰囲気があって、そして、シューベルトの音楽もそういうところで演奏されていたということも多分音楽の底の方にちゃんと潜んでいて。にっこりと弾くアリーナも可愛らしくって、シューベルトにも聴かせてあげたいなって思いました。今のキアロスクーロ・カルテットにはシューベルトが似合っているなって感じます。少し、ロマンティックよりな表現が、音楽を丸くして、鋭さと柔らかさがどちらかに傾きすぎることなく上手な案配に配合できるような気がするんです。

キアロスクーロ・カルテット、アリーナ中心のカルテットだけれども、音楽を支えているのはチェロのクレアさんだと思いました。彼女の弾き方はとっても安定していて、上の声部の人たちが自由に歌っても音楽が崩れることがなく、安心して自在に演奏することが出来るんだと思います。服装と同じように演奏もひとりひとりが個性的で、カルテットのまとまりよりもひとりひとりの自由な音楽を生かすような音楽作りがされてると思うのだけど、それをクレアさんが上手にさりげなくまとめているんだと思います。
休憩中、譜面台にのっていた楽譜を眺めたんだけど、アリーナの楽譜には鉛筆で○や●のしるしや音符や表情記号を囲んであったり書き込みがしてあったんだけど、クレアさんの楽譜はまっさら。性格もあるんだろうけど、クレアさんは楽譜に書かれたことを淡々と音にする雰囲気(ただ楽譜どおりに弾いているということではないけれども、無茶はしないというか)があって、面白いなって思いました。

本当にステキな音楽会でした。主宰のマダムさんにも感謝の気持ちを伝えて、まだ明かりの残る夕方の街に歩き出しました。もっとずっとロンドンにいられたら通っちゃうんだろうな。普段はそんな有名な人が来る音楽会ではないかもしれないけど、音楽を楽しむ雰囲気はとってもステキだし、今日のような「掘り出し物」の音楽会もあるしね。一見さんとしてではなく、仲間として参加したい集いです。
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by zerbinetta | 2012-05-26 23:20 | 室内楽・リサイタル | Comments(4)

幽玄の魔境の音たち 内田光子 シューベルトの最後の3つのピアノ・ソナタ   

23.04.2012 @royal festival hall

schubert: piano sonatas d.958, 959, 960

mitsuko uchida (pf)

内田光子さんの、シューベルト最後の3つのソナタ。同じ演目を去年の秋に聴いているので、ちょっとお疲れ気味のわたしは、今日はさぼっちゃおうかななんてことをちらりと考えたのですが、聴いて良かった、あまりにいろんなものを超越したシューベルトでした。そして、それが光子さんの音楽の完成型ではない、まださらなる高みに向かってもがいている音楽でした。基本的な設計は変わらないのだけど、音楽がさらに深みに、彼の国に近づいている印象です。最後の一線を越えるのは臨死体験になっちゃうのか、それとも、シューベルトと一緒に向こうに行っちゃうのか。聴くのも命がけ。シューベルトも凄い、光子さんも凄い。

光子さんはロンドンでは大人気。日本人だからということもなく、会場に日本人が溢れることはなくそれ以上に地元の人が多いです。そして、今日はロイヤル・フェスティヴァル・ホールが満員、ステージの後ろ側にパイプ椅子を出してお客さんを座らせていました。ここまで人を呼べるピアニストはロンドンでは光子さんの他にはキーシンさんくらい?

そう、秋に聴いたときは、D958のソナタなんて、まだこっち側に足をしっかり残してたと思うんですよ。でも今日は、この間と同じように、椅子に座るなり勢いよく弾き始めたのだけど(生命が迸ってる)、ふうっと力が抜けて命の灯火がゆらりと揺れる瞬間があるの。ぞっとしちゃった。弱音の表現はほんと消え入りそうで、足元からすうっと向こうの世界に連れ込まれる感じ。特に、虚無的な半音階の速いパッセージが聴かれるところなんて、向こうから足を捕まれて引っ張り込まれそうで。そして最後は、なんだかやけになって死に神と踊るよう。D958のソナタってもう少し健康的だと思ったのに、こんな風に演奏されてびっくり。正直、光子さんがシューベルトの最後のソナタにはまっていく世界観が怖くなりました。わたしは、まだあの世界をのぞき見したくない。もう少し、健やかに生きていたいから。

続けて演奏された、D959は対照的に、むしろこの世的。もちろんふらりとあちら側の世界も顔を出すのですが、まだ、生きる喜びが残っています。
ところで、今日の光子さんの演奏、音楽に没入しまくってて、外から冷静に音楽を観察する目がないみたい。それ故に、とんでもない世界が繰り広げられてる反面、ミスタッチも多く、ときどき荒れている感じもしました。これ、録音されて放送された演奏を聴くと顕著なんですが、でも、その録音、会場で聴いていた印象とは全然違って、会場では、ミスタッチはほとんど気にならず、むしろ、音楽の凄さに惹かれていった感じです。あとで、友達と凄いもの聴いてしまったと頷き合ったほど。なにしろ踏み越えてはいけない世界を覗いてしまったのですから。

やっぱり圧巻は、最後のD960。静かに始まるこの曲は、ステージに座っていたお客さんが落ち着くのを待って始められました。なんていう弱音のこの世のものならぬ(言葉どおりに)美しさ。そして、左手に染み出てくる虚無的な絶望。D958でも半音階の無機質なパッセージにそれを感じたのですが、この曲ではさらに黒いものがもくもくと広がって、命に覆い被さろうとするのです。
第2楽章には、諦観というかもうここには別離の音楽しかない。そして生への憧れ。光子さんは楽譜から本当に自由で、しみじみと語るように、シューベルトが楽譜に写し取ろうとした前の音を紡いでいく。個人的で普遍的な告白。涙が落ちて止まらない。
後半の2つの楽章は、踊るような音楽だけれども、ついに魂が肉体を離れて自由に踊っている感じ。魂ってほんとは自由でいたかったんだなぁ。肉体から解放して空に返してあげることは、わたしたちに最後に与えられた大切な仕事なんだなって思った。わたしも、まだまだ先だけど、いつかそのときが来たら、そのときまで大事にしてきた魂をつつがなく静かに解き放してあげよう。そうしてわたしは完成するのですね。
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by zerbinetta | 2012-04-23 09:03 | 室内楽・リサイタル | Comments(0)