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愛の大暴走 アントネッロのモンティヴェルディ「ポッペアの戴冠」   

2013年9月3日 @川口リリア音楽ホール

モンテヴェルディ:ポッペアの戴冠

彌勤忠史(演出)

和泉万里子(ポッペア)、彌勤忠史(ネローネ)
澤村翔子(オッターヴィア、運命の神)、酒井崇(オットーネ)
末吉朋子(ドゥルジッラ、美徳の神)、和田ひでき(セネカ)
赤地佳怜(アモーレ)、他
濱田芳通/アントネッロ


愛って正義も運命を良識も何もかも踏み倒して暴走していく、それでこそ愛。まわりの人を殺したり追放したり不幸にして真実の愛へと暴走していく暴君ネロ(ネローネ)。愛の果実は、部下の妻、ポッペア。オペラは、ネローネとポッペアのW不倫の本気の愛を朗らかに讃えます。愛最高。愛が一番。あらすじを読むと昼ドラ真っ青のどろどろとしたお話なのに、実際、普通の演出では笑いの要素はあってもシリアスな感じになるのに、これをロッシーニばりの喜劇に翻案。音楽も自由度を生かして現代的な要素も採り入れながら、はちゃめちゃに楽しくビートを刻み、ロック魂。字幕もそれに合う言葉を使って訳してたし(コメディ・ドラマを観ている言葉遣い)(バーズマンさんのミュージカル版「ラ・ボエーム」が同じように字幕を1950年若者言葉に直して成功)、たまに出てくる笑いを取る日本語のセリフも粋。それが今日の「ポッペアの戴冠」の印象でした。

バロック以前の音楽の専門集団、アントネッロが3回にわたって繰り広げるのは、オペラの創始者(事実はモンティヴェルディの前にオペラを書いた人はいるので、彼の「オルフェオ」は史上3番目のオペラということになるのですが)モンティヴェルディの3つのオペラ、「オルフェオ」「ウリッセの帰還」「ポッペアの戴冠」。今日はその1回目、「ポッペアの戴冠」です。
わたし、モンティヴェルディを偏愛しているので、この公演の情報を知ったときは狂喜乱舞。すぐにチケットを買って心待ちにしていました。特に「ポッペアの戴冠」は、まだ1度も観たことがなかったので期待度大です。モンティヴェルディのオペラはオペラ史の上でも重要だし、オペラ史上最高傑作のひとつでもあるのに、なかなか演奏されないんですね。現代のオーケストラではなく、バロック・オーケストラが必要なせいもあると思うのですが(確かレスピーギが現代オーケストラ用に編曲していますね)、バロック・オペラをなかったことにしている感といったら。バロック・オペラを主に上演する小さな劇場(昔のオーケストラは音量が小さいので)がどこか(地方がいいな)に欲しいですね(この状況は海外でも似てはいますが)。

川口には初めて来ました。意外と近いのにびっくり。埼玉ってもっと遠いと思ってた。リリア音楽ホールは中規模のホールで、バロックの楽器を演奏するのに適したサイズ。オーケストラピットはなくて、オーケストラはステージの上で演奏。その後ろに台が誂えてあって、そことオーケストラの前でオペラが演じられます。ステージ後ろの上のパイプオルガンのあるバルコニーが神さまの世界。オペラ・ハウスのステージをフルに使うのとは違うので、セットの変更とか演出上の制約はあるけど、歌とオーケストラが一体となって聞こえるし、シンプルな演出なのでかえって良いのです。オーケストラを挟んで後ろと前に分けたことによって、場の違いや奥行きも十分感じられましたしね。

まず、喜劇ということについて書きましょう。
確かに、リブレットを丁寧に蒸留して不純物を取り除いて抽出すると、このオペラ、愛のドラマになる。最後の2重唱なんてほんとに美しい愛の賛歌。そして、夫も妻も理を唱える哲学者も愛の邪魔者。なので、わたしたち誰もが知る(史実はそうだとも言い切れないとしても)暴君ネロとポッペアの良識や理性の困難を乗り越える愛の物語として語られるのに他意はないと思うの。まあポッペアの側には女の打算(皇后になるという)も見え隠れしているので、単純な男と狡猾な女の影絵も見ることになるのですが。物語の暗い部分、ネローネを諫めることにより、死に追いやられる哲学者セネカ、恋敵、ポッペアを殺そうとする企みがばれて島流しに遭う皇后(元妻)をさらりと流して、喜劇の隅に配置するというのは秀逸な演出。それらの人のお付きの人たちが狂言回しに上手くはまっているのが良いの。
それにね、今の時代、真実の愛って滑稽でもあると思うのよ。周りも見ずに自分を失って愛に溺れるって、本人たちは真面目でも端から見れば可笑しくない?真実の愛=不義の愛、陰惨な陰謀と悲劇をからっと笑い飛ばして見せるのは、道徳離れした物語への強烈なカリカチュアでもあると思うのよね。
そしてそれは、神々の世界でも同じ。最初のプロローグで、この物語の本質が決定された演出も分かりやすいし良かったです。神さまなんてそんなもの。だって人間の写しなんですから。(ワグナーの「指輪」も内容通りに音楽をもっと軽くおちゃらけたものにしたら良かったのに)愛の神アモーレの傲慢ぷりったら。運命も美徳も愛にかなわないって。愛のまま、愛欲の思うとおりに生きる世界、ムフフ、ちょっと見てみたい、やってみたいような気もするけど、どんなカオスになるのでしょう。だからこそ笑い飛ばすしかない。
喜劇にするために、設定を極道の世界にしています。ネローネはやくざの組長、オッターヴィアは極道の妻、ポッペアは愛人から正妻にのし上がるホステス、というように。それが、モンテヴェルディのオペラの世界観をとても分かりやすくわたしたちに伝えている感じがして成功していました。

歌手は男声陣が良かったです。ネローネのカウンター・テナーの彌勤さん、演出もかねて大忙し、がものすごく安定していてカウンター・テナーでこんなにふくよかに自然に歌えるのかって驚くほどだし、セネカの和田さん、オットーネの酒井さんもとても良かったです。
女声では、ポッペアの和泉さんがすごく良かったです。アモーレの赤地さんも良かったけど、いいときと悪いときの差があったかな。でも、全体的にとても良くまとまっていたので歌手に不満はありません。
濱田さんのアントネッロもすごく良くて、特に即興的なところや、深い打楽器のビート感(アントネッロの十八番(?))は、古い音楽を聴いているというより、今のわたしたちの音楽の感覚に近いものを聴いた感じです。休憩後の第2幕の始まりは、打楽器(タンバリン)2台のセッションがロックのノリでびっくりしました。見慣れない昔の楽器(ガンバとかシターとか角笛みたいなコルネットとか)を含むオーケストラは今のオーケストラとは全く違うけど、博物館的な音楽ではなく、現代感覚溢れる乗りのいい音楽を演るのがこの楽団なんですね。日本で古楽を聴く層がどんな人なのか分からないけど、クラシックになじみのない若者にかえってアピールできそうな音楽です。ぜひそんな人たちにも聞いてもらいたい。

ほんとに素晴らしかった音楽会だったんですが、一点だけお小言。ホールの関係で1回の休憩を含めて3時間に収めるために省略が少しあったのが残念でした。10時までしか使えないホールもなんだかなぁって思うし、そんなホールを借りちゃうのもなんだかなぁって感じです。音楽会が終わってロビーに出たとたん、施設の閉館時間ですから早く出て下さいと言われるのはせっかくの楽しいオペラのあとにちょっと無粋でした。

次回は12月に「オルフェオ」。今度は短いので大丈夫でしょう。モンテヴェルディの最初の「オペラ」、牧歌的でのんびりした音楽(でもそれがステキ)をアントネッロがどんなアプローチでやってくるのか、今からすご〜く楽しみです。バロック聴いたことのない人もぜひ。
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by zerbinetta | 2013-09-03 09:53 | オペラ | Comments(2)

なんでや〜〜   

handel: semele
danielle de niese (semele), jaël azzaretti (iris), vivica genaux (juno/ino),
stephen wallace (athamas), richard croft (jupiter), peter rose (cadmus/somnus),
claire debono (cupid), sébastien droy (apollo)
christophe rousset / les talens lyriques, théậtre des champs-élysées choir
@barbican hall


なんと今日の開演時刻は6時半です。ヘンデルの長いオラトリオ(?)、セメレです。これ、オペラのようでオペラじゃないんですね。本来劇なしです。プログラムにはオラトリオと書いてありましたが、本物のオラトリオでもないんです。キリスト教音楽ではないので。でも、コヴェント・ガーデンで初演された際には新聞にオラトリオの様式でと書かれてあったみたいです。と、まずは珍しく蘊蓄から。
あらすじはグーグルで検索するか、こちらを見てね。と、無責任。だってあらすじ書くの苦手なんだもん。セメレの妹のイノー(セメレの婚約者アサマスが好き)とジュピターの妻ジュノー(ジュピターとセメレがいい仲になったのでセメレに復讐を企む)を同じ人(ヴィヴィカ・ジェノーさん、名前繋がりかな?)が歌ったので、あらすじを覚えていなかったわたしはちょっと戸惑ってしまいました。だってイノーとジュノーは性格付けが正反対なんだもん。でも後であらすじを読んだら納得。ジュノーはイノーに化けるのね。この人、細っこいのにとっても良く声が出ていて上手かった。ジュノーを歌ってるときは顔が怖かったけど、美人。アリアの後に一際大きな拍手をもらっていました。テナーのクロフトさんはUSにいたときよく聴きました。華のある人ではないけれども堅実な歌で、とっても重要な脇役を歌うオペラ・ハウスに掛け替えのない人です。ご兄弟、兄だったか弟だったかは忘れちゃったけど、も歌手で、バリトンです。やっぱりクロフトさん、上手かったです。むちゃ好印象。それから、ソムナスを歌ったバスのピーター・ローズさんもとってもステキでした。笑いをとる演技もすてきっ。そうなんです。今回はセミ・ステージ形式で歌手がオーケストラの前で簡単な演技をします。コンサート形式の曲とは言え、ちょっとしたお芝居があると分かりやすいし楽しめます。アポロのセバスティアン・ドロイさんは最後ちょこっと出てきただけだったけどちょっと好み。他の歌手たちも全く不足なくとおっても楽しめました。音楽も最初の序曲とガボットはちょっぴり退屈で早く劇が始まらないかなぁって思ったけど、それからはもう素晴らしい。さすがヘンデル。最初にティンパニが出てくるところなんかは(ジュピター(雷神)が出てくるのね)、もうティンパニの連打がステキすぎてわくわく、のりのり。ロックな感じ。

って、忘れてるわけじゃないよ。タイトル・ロールのダニエレ・デ・ニース(ドゥ・ニースという記載も見られるけど、フランス系の人じゃないし、本人もデ・ニースと発音してるのでデ・ニースと書きます)さん、なんともかわいくてとっても良かった。といいつつ手放しで褒めるんじゃないけど、だって、第1幕はちょっと声の輪郭が柔らかくぼやけて聞こえてもう一歩かなぁって思ったから。2幕、3幕と進むにつれてすごく良くなりました。彼女、まだ今年で30歳なんですね。19歳の時、メトのフィガロの結婚でバルバリーナを歌ってデビューしてるんですけど(とプロファイルに書いてあった)、なんと!その公演、わたし観たんです。ちょい役だったけど、とってもかわいい人だなぁって思ったんです。その彼女が大きくなって帰ってきました(って思ってたより大柄なんですね。華奢な方ってイメジがありました。二の腕立派だったです)。30代は歌手として脂がのって充実していく時期だと思うので、これからも世界中のオペラ・ハウスで彼女の活躍が期待できそうです(もう活躍してるけど)。
歌以上に彼女の類い希な美質は、その表情の豊かさ、かわいらしさ。ほんと、彼女、自分がどうしたら一番良く見えるのか、魅せ方を知ってる。それが演技にも出ていて、例えばジュノーにそそのかされて鏡を見ながらわたしって美人かもって歌うアリアはとおってもかわいらしくてステキでした。そのあとジュピターを拒否してぷんぷんしたような表情も彼女の表情は素晴らしくって、もうずうっと彼女に見とれてました。

それにしてもこのオラトリオ、最後、セメレは彼女に懇願されて本来の雷神の姿になったジュピターの雷に打たれて死んでしまうんだけど(セメレの最後のアリアはとっても悲しい静かな歌です)、いきなりハッピー・エンドになって終わるんですね。セメレの灰からフェニックスが生まれる、なんてアポロが出てきて歌い出し、イノーはアサマスは結ばれて、ってなんでや〜〜さっきまで悲劇じゃなかったんかい。っていきなり関西弁。まぁ、当時の人たちは純粋な悲劇を嫌っていたそうなんですが。突然の変わりようでびっくり。でも、ステキな夜でした。

ローズさん、ドロイさん、アザレッティさん
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デボーノさん、デ・ニースさん、ジェノーさん、クロフトさん
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デ・ニースさんとジェノーさん
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by zerbinetta | 2010-07-08 21:12 | 海外オーケストラ | Comments(0)

雰囲気の勝利   

monteverdi: vespro della beata vergine
choir of st paul's cathedral
his majestys sagbutts and cornetts
cecilia osmond, rebecca outram (sp), mark wilde (tn)
andrew carwood (cond) @st paul's cathedral



今日はヨーロッパの夏の始まりの日。日本では立夏に当たるんでしょうか。夏至だけど。で、やっとこさ夏らしい暖かい日(暑くはないんです、まだ)。お天気もぴーかん。そんな今日は毎年この時期にロンドンのシティで行われるシティ・オヴ・ロンドン・フェスティヴァル。聖ポール大聖堂で行われたモンテヴェルディのヴェスプロを聴いてきました。なんてったって、今年はヴェスプロ出版400年年。

聖ポール大聖堂は、なんと世界で2番目に大きな教会だそうです(わたしにはフィレンツェのドォーモの方が大きく感じられるけど。まわりの景色のせい? 世界で一番はローマだそうです)。確かに壮大な教会です。ドームの天井の絵には圧倒されます。でも、その大きさに似合わない、編成の小ささ。合唱は必要最低限ではなく、各パートを複数で歌ってるんですが、それでもこの大きな教会に比べると少ない人数。これでちゃんと後ろの方の席まで聞こえるのかしらってちょっと心配になりました。でも教会ってわんわんと良く響くんですね。声はずいぶんと響いてました。オーケストラの方は音の指向性の関係かそんなに反響していませんでしたが。
今日のチケットを取ったときの演奏者の案内は、his majestys sagbutts and cornetts となっていたのですが(バロック期のコルネットとトロンボーン(の前身)の演奏グループです。ガーディナーさんのヴェスプロの演奏でも金管楽器を担当しています)、もちろんそれだけでは演奏できないので、弦楽器群(どこの団体かはプログラムにも書いておらず不明)、聖ポール大聖堂の合唱団(高音パートは女性ではなく少年合唱団が歌っていました)、ソプラノ独唱にオズモンドさん、アウトラムさん、テナーの独唱にウィルデさんがクレジットされています。でも、出番は少ないけどhis majestys sagbutts and cornetts はめっちゃ上手かったです。特にコルネットの超絶ハイトーンはステキでした。

音楽は至ってシンプルなヴァージョン。グレゴリオ聖歌もなく、器楽のソナタ等も挿入もありません。演奏は、実はよく分かりませんでした。合唱の高声に少年合唱はちょっと物足りないかな。確かに少年合唱でもしっくり来る曲(ソナタ・ソプラ・サンクタ・マリアなど)もあるんですが、大人の女性の方が表現に奥行きがあると思います。よく分からなかったのは、教会堂に音が反響しすぎて(ものすごい残響でした)、音楽の詳細がつかみづらかったからです。でも、教会はやっぱり雰囲気ありますね。特に日がまだ高いうちから始まって日が落ちてくるまでの時刻になっていたので、外から来る光りのグラディエイションがうんとステキでした。雰囲気だけで演奏好感度20%アップです。
教会で聴く音楽はコンサート−・ホールやCDで聴く音楽とまるで違って聞こえます。教会で録音されたCDでも、マイクで直接音を拾ったりしているので、教会の中で聴くのとは全然響きが違います。それに気づいたら、ヴェスプロって当時はどういう風に聞こえていたのだろうって思い至りました。楽譜には、公爵の礼拝堂ないし宮廷の広間にあうように、と書かれてるそうですが、実際にはどんな教会で演奏されたんだろう。教会によって響きは違うし、当時の演奏を忠実に再現することは不可能だけど、当時人々が耳にしたように音楽を聴いてみたいと強く思ったのでした。
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by zerbinetta | 2010-06-22 08:37 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)

だ〜い好き   

monteverdi: vespers
robert howarth / choir of the enlightenment, oae @royal festival hall


わたしの一番大好きな曲は、実はいつも今聴いている音楽が一番って思っちゃうので上手に決められないんだけど、でも、聞かれたら答えちゃうのはモンテヴェルディの「ヴェスプロ(聖母マリアの夕べの祈り)」なんです。無人島に持っていきたい1枚もこれ。とは言え無人島にはあまり行きたくないんですが。だって想像するに、お店もないわけだし、日がな一日食料探ししてなきゃいけなくって、バナナ以外の果物がたくさんなってて、磯にはアワビやサザエ、ムール貝やカメノテにウニなんかがわんさかいて、鯛やヒラメが簡単に釣れるようだったらいいんだけど、そんな都合よく行くわけないしね。とか脱線。で、モンテヴェルディなんてなかなか演ってくれないので、ヴェスプロがあったら迷わずチケット取っちゃう。今まで同じ演奏で3回しか聴いたことないんです。だからOAEで演るのを見つけたとき狂喜乱舞してチケット取りましたよ。なんか今年はヴェスプロの当たり年みたいで、シティ・オブ・ロンドンでもHMSCが聖ポール寺院で演るのはチケット取っちゃったし、プロムスでガーディナーさんがモンテヴェルディ合唱団と演るのもチケット取る予定。1年に3回違う演奏で聴けるなんてむちゃ幸せ。特に教会で演るのは響きがとっても楽しみ。ってふと気がついたら今年ってヴェスプロ出版からちょうど400年じゃないですか。マーラーやショパンばっかりやってるんじゃないデスよ。シューマンもよろしく。

モンテヴェルディの時代の音楽は、近代の音楽のように完全に楽譜に書かれているわけではないので(作曲家と演奏者は不可分な関係にあったので、わざわざ細かく書かなくても正しく演奏できたんです)、リアライズする人によって違った音楽になります。今回のリアライゼイションは指揮とオルガンで大忙しだった(両手がふさがってるときは頭で指揮してました)ロバート・ハワースさんで、特徴は小編成、ハイピッチ。現在よりも半音くらい高いピッチです。曲によっては移調しているそうです。歌は最低10人でできるんだけど、今回は20人。少人数だけど合唱パートで各パートを複数で歌えるので厚みがあって良かったです(実はわたしは、この華やかな曲は大編成の方が好みです)。伴奏は控え目。ときどき聞いたことのない装飾が聞かれたので面白かったです。ニグラ・スムは独唱とキタローネ1本でした。

始まりはオルガンが聴いたことのないメロディを弾き始めてびっくりしました。違う曲が始まったのかなと。もちろんそのあと、例のゴンザーガ公のファンファーレが始まってほっ。これが好きなのよね。そこからはぐいぐいヴェスプロの世界。うっとり。歌のソロはCDのようにソリストを揃えているわけではないので、ソリスティックではいけれども十分でした。わたしの心は400年前のヴェネチアに飛んでいったみたい。ヴェネチアはカラフルで大好きな町です。モンテヴェルディの音楽も、ルネッサンスとモノディ(モンテヴェルディ自身も創始者のひとり)の激しい混合体。音楽史上最も大きな分水嶺で新旧両方で極めたモンテヴェルディはもっと評価されても良いと思うんですが(ってかわたしはモンテヴェルディこそ音楽史的に最大の作曲家だと思ってる)、なかなか一般には聞かれないのは近代の派手なオーケストラじゃないから? でも今日は小さなクィーン・エリザベス・ホールとは言えチケットは完売。満員でした。

アヴェ・マリス・ステラのあとに聴き慣れないアヴェ・マリアやマグニフィカトのあとにヴァイオリンのソナタが挿入されたり、いくつかわたしの知らない音楽が挿入されていました。そして、最後はグレゴリオ聖歌の応唱で静かに、本当に静かに音楽を閉じてとってもステキなときを過ごしました。やっぱりこの曲大好きです。わたしの一番。
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by zerbinetta | 2010-04-27 09:07 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

それは残念だったけど   

handel: tamerlano
sara mingardo (andronico), kurt streit (bajazet), christianne stotijn (tamerlano),
christine schäfer (asteria), renata pokupić (irene), vito priante (leone),
graham vick (director), ron howell (choreography),
ivor bolton / OAE @royal opera house


久しぶりのオペラ〜〜。実は、今日のオペラにはドミンゴさんがクレジットされてたんです。でも、残念。体調不良で手術されたんですよね。降板になってしまいました。チケット代は通常料金より高い設定だったので、その分払い戻し。ロイヤル・オペラは出演者や演目によって値段設定が変わるんです。メトやワシントン・ナショナル・オペラなんかは誰が出ても同一料金だったんですけどね。ドミンゴさんはもう旬を過ぎたとか、もはや声は衰えてるとかいろいろ言われてるけど、わたしは大好きなんです。何しろワシントン・オペラの監督として切り盛りしてくれてたんですから。US時代、ドミンゴさんは何回も聴きました。指揮するのもね(これが意外とちゃんとしてるの)。なので親しみもあるんです。ドミンゴさんはさすがにオーラがあるというか、自分が歌うだけじゃなくってまわりの人を歌わせる雰囲気があるんですよね。ドミンゴさんと共演した歌手では、イドメネオでイリアを歌った若い頃のネトレブコさんやワルキューレのジークリンデを歌ったカンペ(anja kampe)さんがドミンゴさんにぐいぐい引っ張られて歌っていたのを印象深く覚えてる。今日の公演はキャリアはあるけど若い人が多かった(ロイヤル・オペラ・デビューが4人)ので、ドミンゴさんとどんな化学反応が起きるか楽しみにしてたの。なので、ドミンゴさんの降板はちょっと残念。でも、うんとうんとステキな公演でした。あらすじはこちらで(下の方)。

実はわたし、ヘンデルってあまりよく知らないから、長い(全部で3時間半以上)し退屈するんじゃないかなって心配してました。第1幕は、レシタティーヴォが多くて、オーケストラ・ピットには古楽器オーケストラのOAEが入っていたこともあって音量も小さめで、話の内容もまぁまぁな感じだったので、確かにちょっぴり退屈かも、なんて思ったりもしたんですが、お話が進むにつれて、俄然緊張感が出てきて、音楽も大きなアリアが多くなって特に第3幕はとってもドキドキしながら見入ってしまいました。終わってみるとめちゃ充実したオペラ。むちゃ良かったです。ほんと第3幕は、アステリアとバヤゼットの2重唱から始まって、毒杯を持って対峙するシーン、怒れるタメルラーノのアリア、死にゆくバヤゼットのアリア、最後の4重唱と聴き所満載。まぁ、多分当時の観客が悲劇よりもハッピー・エンドを好んだためか、ちょっとタメルラーノ改心速いよ、というか悲劇の中にお話を終わらて感が残ったんですが、でも、そこはさすがヘンデル、最後の4重唱ではアンドロニコとの結婚が許されて、一応ハッピー・エンドの当事者のひとりでもあるアステリアがステージに出ていなかったのは、このオペラが単なるハッピー・エンドじゃないぞ、と主張してるみたいで良かったです。

舞台は非常にシンプル。白と黒を基調にして、舞台装置としては大きな球体を踏みつけた足が舞台の中央につり下がっているのみ。囚われの象徴ですよね。幕が開いたとき、絵に切り取ったように出演者が動かずにいて、序曲が終わって再生が始まったかのように動き出すのもステキ。歌手以外には、登場人物の心理描写をしたり、群衆として背景にあったり、名もなき小姓となったり、マイムをする役者が十数人出演していました。この役者達は、動きを最小限に抑えたもので、歌手をじゃますることなくオペラの進行に重要な役を担っていました。カーテンコールのときにも全員が出てきて拍手を受けてました。白黒の色遣いはとっても効果的。白は、純粋、無垢の象徴でしょうか、バヤゼットとアステリアの父娘の色です。黒は背景。なのでニュートラル。また、個を消した色でもあります。高貴な色は銀と金。これは単独で使われることはなく、黒い服の上にどちらかの色が刺繍という形で入ってきます。これを着るのはアンドロニコとイレーネ、そして最後のタメルラーノです。さらにこの白黒の世界に緑や赤が闖入します。これらのヴィヴィットな色はタメルラーノの邪な心だったり、黒い感情だったり。

歌手は皆さんとっても良かったです。今日ドミンゴさんが歌うはずだったバヤゼット(実は主役)を歌ったストレイトさんは、もともとダブル・キャストだったので全然問題なしというか、むしろ凄く良かったです。タイトル・ロールのストーティンさんとアンドロニコのミンガルドさんのメゾのコンビは、どちらも声がソフトで全体の中にとけ込む感じだったので、もうちょっと前に出てこないかなぁと始め思っていたのですが、お終いの方の緊迫したアリアはとっても良かったです。シェーファーさんは期待通り。レオーネを歌ったプリアンテさんは出番が少なくもったいなかったのですが、とっても良い声のバスでした。イレーネのポクピッチさんも出番が少なかったですが、象の上でアリアを歌ったとき、大きな拍手をもらってました。この中ではストレイトさんとシェーファーさんがベテランで、他の4人はまだ若いのでこれからがとっても楽しみです。それにしても全員、演技が上手いです。そして表情がとっても細やか。
ボルトンさんの指揮するOAEはとっても充実していました。ほぼ弦楽器のみ、通奏低音にチェンバロは入るのですが、管楽器はオーボエと2本のフルートが数カ所参加するだけ。しっとりとした弦楽器は、とても豊かな音楽を奏でていました。バロック・オペラの古楽の響きって大好きです。
ドミンゴさんは残念だったけど、本当にステキなオペラを観ることができて幸せです。
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シェーファーさんとミンガルドさん、後ろはポクピッチさんとプリアンテさん
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うさ耳のストーティンさんとストレイトさん
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指揮者のボルトンさん
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by zerbinetta | 2010-03-05 09:16 | オペラ | Comments(4)

のんびり宮廷人   

purcell: dido and aeneas
lucy crowe (belinda), sarah connolly (dido), lucas meachem (aeneas), sara fulgoni (sorceress)
handel: acis and galatea
danielle de niese / mara galeazzi (galantea), charles workman / rupert pennefather (acis)
wayne mcgregor (dir) / christopher hogwood / OAE @royal opera


こちらに住み始めてからは初めて、通算2回目のロイヤルオペラです。ロイヤルオペラ、雰囲気が好きです。コヴェントガーデンに立つ建物はガラスを多く採り入れた近代的なものなんですけど、トイレの重厚さや中の雰囲気はシックで落ち着いてます。実際外観は20年ほど前の改築、客席等は19世紀の半ばに造られたもののようですね。メトのように巨大ではないけど(客席数でメトの半分強)、ヨーロッパのオペラハウスという感じです。どこの座席からも比較的ステージが近いというのもいい感じ。但し、高いっ!わたしのロンドンでの音楽会のチケット代は10ポンド以下が基準で、外国のオーケストラなんかで高い席しか残ってなかったのは30ポンドもしかたなし(今シーズンは途中参加だったので、来シーズンは早めに安い席を取ります、高くても15ポンド)って感じなのですが、オペラやバレエは安い席は会員にさっさと売れちゃってなかなか取れないんです。当日券という奥の手があるのですが、仕事をしてるので朝並ぶのはできないし(最初に観たときは、ソールドアウトの日の公演を当日券の最後の一枚の立ち見でお安く観ました)。あっ今回はマイナーな演目だったせいか30ポンドの席ですけどね。
なんて前置きはここまでにして、オペラ。イギリスの偉大な作曲家ヘンリ・パーセルとヘンデル(ドイツ生まれですが後年イギリスに帰化)のバロックオペラです。モンテヴェルディは別にしてバロックオペラを観るのは今回が初めて。わくわくです。指揮は古楽のスペシャリスト、ホグウッドさん、なんとオケピにはOAEです。うれしいびっくり。
音楽はパーセルの方が聴き応えがあるかな。話がシリアスですし。歌手の中では日本人のeri nakamuraさんに注目してしまいました。身びいき。今回は小さな役でしたが(魔法使いの手下その1、でも出番はしっかりたくさん)、この方、既にロイヤルオペラで、ネトレブコさんの代役でカプレッティとモンテッキの主役を歌ってらっしゃるんですね。大好評だったそうです。日本では今をときめく森麻季さんもワシントンオペラでネトレブコさんの代役で主役デビューを飾ってるんですね(聴きました)。ネトレブコさんの代役ー>主役デビュー、スターの座。日本人歌手の出世コースかもしれません。eriさんは現在、若手音楽家養成プログラムの一員ですが、近い将来注目される歌手になるんじゃないかと期待しています。今回の役でもそれが感じられましたよ。
ヘンデルの方は牧歌劇。のんびりとしたほんわかさは土曜の午後にぴったり。昔の宮廷人になった気分で楽しみます。歌手と同じ役をバレリーナが踊るという一粒で2度おいしいスタイル。歌手もステージで演技するのですが、バレーは心模様?とか現代的なことを考えつつも、いいえ、そんなこと考えるのは野暮。歌とバレエを一緒に楽しんじゃえってことでしょう。難しいことは抜き抜き。最後殺された恋人もあっさりよみがえって、ほのぼの感最高潮。最近好調らしいデ・ニースさんを聴きに行ったのですが、なんだかみんな美男美女で良かったな。
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by zerbinetta | 2009-04-11 01:19 | オペラ | Comments(0)

本家本元(?)   

bach: st matthew passion
sibylla rubens (sp), marie-claude chappuis (ms), johannes chum (tn),
maximillian schmitt (tn), thomas quasthoff (bs), yorck felix speer (bs),
klaus hager (bs) / riccardo chailly / st thomas' boys choir, tolzer boys choir,
gewandhaus orchestra leipzig @barbican hall


もうすぐイースター。ということは今週は受難週。と言うわけでマタイです。やっぱり受難週にはバッハのマタイ受難曲がふさわしい。なぁんてね、今回はたまたま。ペンデレツキのルカ受難曲でもいいし、ペルトのヨハネ受難曲でもいい。でもやっぱりマタイは特別かな。わたしみたいなあまり音楽を知らない素人にもじ〜んと染みわたってくるから。生で聴けるのもステキ。マタイの地元(?)、ゲヴァントハウス・オーケストラと聖トマス教会少年合唱団、その他、指揮はシャイーさんです。
バービカンセンターには時間ぎりぎりで着いたわけではないけど、なぜかホールの入り口が込んでて席に着いたのはぎりぎり。すでにオーケストラの人が出てきてます。目の見えない方が席を迷ってらして、開演前にちゃんと席に着けたか心配で、最初の方はちょっともやもやした気持ちで聴いてました。わたしがチケットを見てあげれば良かった思いつつも、わたしじゃ役に立たないだろうなって気もするし、ホールの人がもっとちゃんと対応するべきなのだろうけど。心臓に直接響いてくるような低弦、アーノンクールさんのアナリーゼによるとかなり低い音を使ってるんですね、を伴う始まりからから音楽の引力を感じます。2重合唱、2重オーケストラも音だけではなく視覚的に迫ってきます。実は古楽器の演奏が好きなので現代楽器によるマタイはどうかなぁ〜なんて心配していたのですが、バッハの音楽の力は楽器を選ばないところがあるので全く問題なしでした。シャイーさんの演奏は奇をてらったところもなく、現代楽器だからといって重厚にすることもなく、音楽の流れに誠実に任せているっていう感じでした。歌手ではエヴァンゲリストのチュムさんが光ってました。クァストホフさんももちろん良かったんだけど、出番が少なかったのが残念。合唱やオーケストラはもうなんというか本家本元なので何もしなくても歴史に蓄積されてきたものが自然に生きてる、老舗の技みたいな。うわーっと激しく感動するんじゃなくてしみじみとじんわり感動する。これを受難週に教会で聴いたら眼前に受難の物語が広がるようで胸を締め付けられるでしょう。ホールで、しかもキリスト教とは訣別したわたしですら涙ぐむものがあるのですから。しばらくの間マタイが頭の中でずうっと鳴っていました。
今日の演奏者がどのくらい反映されるか分からないのですけれども(ソプラノを歌う予定だったランズハマーさんが病気のためキャンセルになってる)、シャイーさんとゲヴァントハウスはこのあとマタイを録音する予定だそうです。
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by zerbinetta | 2009-04-05 05:22 | 海外オーケストラ | Comments(2)

またまた復活、ヘンデルだけど   

handel: la resurrezione
camilla tilling, kate royal, sonia prina, toby spence, lorenzo regazzo,
emmanuelle haim / le concert d'astree @barbican hall


アイムさんとコンセール・ダストレによるヘンデルの復活。楽しみにしてました。だって、このコンビによるヘンデルのカンタータ集のCDがとっても良かったんですもの。バッハの陰に隠れてしまってなかなか正当に評価されないヘンデルだけど、わたしは好きなんですよ。雰囲気明るいしメロディきれいだし。それに地元の作曲家!ヘンデルはイギリスに帰化してロンドンに住んでます。
コンセール・ダストレは古楽のオーケストラ。アイムさんは指揮とチェンバロを受け持ちます(この曲にはチェンバロが2台使われていてアイムさんが担当したのはルシフェルに伴う方。役によってチェンバロを使い分けてます)。古楽器って音合わせが大変なんですね。チェンバロは開演前と休憩中にチューニングしてたし、弦楽器の音合わせもコンサートマスターが音を取って各セクションを回りながらひとりひとり音を合わせるように丁寧にしていました。
さて、アイムさんの第一印象は、いいなぁ髪がふさふさ〜でした。あっわたし、髪の毛に難点があるので。スカートをはいていて女性らしいなぁって。女性指揮者ってときどき男装の麗人みたいな言われ方がされて、指揮者の世界ってまだまだ男性社会じゃない。そんな中で女性らしさを表に出していたのはちょっとステキ。古楽のオーケストラで弾き振りというのも女性スタイルで違和感を感じさせなかった理由かもしれません。
復活はヘンデル23歳くらいの作品。わたしの大好きな愛の狂乱を思い出させるような、明るい音楽で始まる。宮崎駿さんの映画、天空の城ラピュタで、パズーが朝、屋根の上にのぼってトランペットを吹くシーンを思い出させるの。アイムさんの指揮はとってもはきはきとして音楽が躍動する感じ。鋭いアクセントを付けるとかじゃなくて、音楽が柔らかいのもステキ。それにしてもアイムさんと彼女が作ったオーケストラの音楽ってよろこびに溢れていて、とっても好き。歌手では天使を歌ったティリングさんがお目当て(マーラーの交響曲第4番のCDでステキな歌を聴いているので)だったんだけど、ルシフェルを歌ったレガッゾさんが声量もあってどっしりと安定していて良かった〜。幸せな気持ちをたくさんもらえた音楽会でした。
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by zerbinetta | 2009-03-31 07:52 | 海外オーケストラ | Comments(0)