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ジュビリー? ヌニェス、キッシュ、ロホ パゴダの王子   

02.06.2012 @royal opera house

the prince of pagodas

benjamin britten (music)
kenneth macmillan (choreography)
barry wordsworth / oroh

marianela nuñez (princess rose), tamara rojo (princess épine)
nehemiah kish (the prince), alastair marriott (the emperor)
alexander campbell (the fool)
bennet gartside (king of north), valeri hristov (king of east)
steven mcrae (king of west), ricardo cervera (king of south), etc.


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(最後のシーン)

ダイアモンド・ジュビリーです。実はわたしよく分かってないんだけど、女王さまのお誕生日?戴冠うん十周年?で、世間様ではいろいろな行事が予定されてるみたいですよ。なので連休です。ロイヤル・バレエの「パゴダの王子」もジュビリーに合わせたとか合わせなかったとか。開演前のピアノのところにちっちゃな国旗がさしてありました(演奏が始まったらなくなっていましたけどね)。
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「パゴダの王子」が上演されるのは10数年ぶりだそうです。今日はその初日です。マクミランの振り付けた最後のフル・レングスのバレエ。噂によると、微妙だってことだったんですが。。。でも、音楽が始まってびっくり。ブリテンの音楽ステキじゃない!シンプルで、楽器が重ならないのは演奏がとっても難しいと思うのだけど、音楽だけでCDにしてもらいたいと思う音楽。さすがブリテン。わたし的には彼のオペラよりいいなぁ。

お話は単純で(たくさんの象徴や隠喩を含んでるみたいですが)、皇帝が、ふたりの娘に領土を分かつとき、性格の悪い姉のエピーヌ姫には小さい方、優しいローズ姫には大きい方をあげようとしたら、エピーヌが怒ってローズ姫の婚約者の王子をサンショウウオに変える。そしていろいろあって(4人の求婚者がエピーヌの元に来るもローズに魅了されてまたまたエピーヌ怒るとか、ローズが黄泉の国に下るとか)、結局最後は、ローズのキスでサンショウウオの魔法は解けて二人も国もめでたくハッピー・エンド。
ってかいつまんじゃうと他愛のない話ですが、踊りがとってもステキなんです。とってもきれい。特にローズ姫のソロはうっとり。

今日のキャストは、もちろん初日なのでファースト・キャスト。ローズ姫にネラ(マリアネラさん)。エピーヌ姫にはタマちゃん。王子にキッシュさん。性格的な踊りの多い皇帝にマリオットさん。物語をリードしてぴょんぴょん跳び回る道化にはキャンベルさん。そして4人の王にはガートサイドさん、フリストフさん、マクレーさん、セルヴェラさんの豪華メンバー。

皇帝は、死にそうでよれよれな役なんですが(さらにエピーヌに王座を奪われてへろへろ)、コミカルな踊り、特に足のステップがとってもステキ。マリオットさんは、本当に足腰大丈夫かしらっていうくらいの迫真の演技。ユーモアもあってきりりと舞台を締めます。最後、まわりの反対を押し切ってお踊り出すところもきちんと演技して面白いし、勢いに乗ってくるくる回っちゃうのも、もう演技と言うより、皇帝そのもの。こういうキャラクターの作り方をみているとやっぱり演劇の国のロイヤル・バレエはさすがだなぁって思います。

道化のキャンベルさんは得意のジャンプ系を危なげなく披露して安定感のある踊り。舞台をリードする役だけど、ここにプリンシパルじゃなくてソロイストをもってくるのは何か理由があるのかしら(キャンベルさんが良くなかったという意味では間違ってもありません!)。で、4人の王のひとり、西の王にマクレーさんを配して、って素人考えだと逆じゃないかなって思うんですけど。マクレーさんは、役作りが堂に入っていて、シニカルな王が上手いこと上手いこと。踊りも4人の中では一歩抜き出ていました。(実は、メイクが濃いので最初、マクレーさんと分からなくて、顔つきはステパネクさんかなぁって思っていたのはナイショです)
他の王様の皆さんもそれぞれの性格を上手に表現していて、面白かったです。フリストフさんが鏡を持って踊った東の王のゆっくりとした踊りが一番難しそう。フリストフさんかなり神経を使って踊っていたふう。

キッシュさんの王子は、意外と良かったんだけど、もっと良かったのはサンショウウオになってから。キッシュさんって体柔らかいんですね〜。サンショウウオらしいにゅるにゅるした感じで、わたし一番のサンショウウオ。実はわたしサンショウウオ好きなんですよ〜。サンショウウオ捕りに行ったことあるくらい。あっもちろん、ちゃんと池に逃がしてあげましたよ。
ネラは、満を持してというか、もうさすが。ゆったりとした踊りでのバランスなんてどうしてこんなに美しくピッタリ止まるんだろうって鳥肌が立つくらい。バレエのことを何も知らないわたしでも、凄すぎて見入ってしまう。それに、音楽に合わせた、寂しさを秘めた感情表現がとっても上手くって、わたしがネラ大好きなのは抜きにしても、素晴らしすぎ。本当にネラを観てきて良かった。わたしが、ここで、ネラを見つけてずっと観てこれたことが、運命的な出逢いのように思えて、嬉しくて嬉しくてたまりません。それに、最近は、ネラとキッシュさんのパートナーがとってもステキでこのふたりの踊るシルエットがものすごくきれいなんです。ネラはキッシュさんと組むことでさらに輝きそうだし、ロイヤル・バレエはキッシュさんを採って大正解だったんじゃないかしら。まだ若いしまだまだ勉強することもたくさんあるとは思うけど、このおふたりの未来はとっても輝いてる。

とネラを褒めたことをひっくり返すように、強烈な力でオーラを放って舞台に君臨していたのがタマちゃん。むちゃ恐いエピーヌ。それがもうタマちゃんにはまっちゃって。タマちゃんってずばずばものを言うし、きつい人というイメジがあるのだけど、まさにそんなタマちゃんにぴたりの役。踊りはもちろん見事だけど、ネラのオーラを跳ね返すほどのオーラはやっぱすごすぎ。タマちゃんが出てきて一瞬でこの舞台はタマちゃんのものだなって思ったもの。今シーズンを最後にロイヤル・バレエを離れてイングリッシュ・ナショナル・バレエの芸術監督になるので(踊るのはまだ止めないみたいですが)、もしかするとこれがタマちゃん、ロイヤルでの最後の全幕もの。そんな特別な思いもあるのかもしれません。

それにしても、今日は凄いものを観ました。このキャストでもう1度観るので、もう今からわくわくです。これは絶対観ておかなければならない舞台。それを観られたことはなんて幸福なんでしょう。

マリオットさん、ネラ、キッシュさん、タマちゃん、キャンベルさん
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4人の王様、ガートサイドさん、フリストフさん、マクレーさん、セルヴェラさん
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タマちゃん
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ネラとキッシュさん
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by zerbinetta | 2012-06-02 22:11 | バレエ | Comments(0)

闇は栄光の光りを際だたせる アンドリュー・デイヴィス、BBC交響楽団   

23.03.2012 @barbican hall

hugh wood: violin concerto no. 2
tippett: a child of our time

anthony marwood (vn)
nicole cabell (sp), laren cargill (ms),
john mark ainsley (tn), matthew rose (bs)
sir andrew davis / bbcsc, bbcso


今日はエルガーの「ゲロンティアスの夢」を聴くんだぁと勇んで行ったら違う曲でした。ぎゃぽん。メインはティペットの「我らの時代の子」。ティペットはイギリスの作曲家なのに、あまり演奏されません。今まで聴いたのは、「コルレリの主題による協奏的幻想曲」とバレエの伴奏の2回だけ。とっても分かりやすいステキな音楽を書く人なのに演奏されるのが少ないなんて。今日の結論。もっとティペットを! と思ったら、来シーズンBBCシンフォニーはティペットを集中的に採り上げるんですね。

マーウッドさんをソリストに迎えてのウッドさんのヴァイオリン協奏曲第2番は、2009年に初演されていて、今日がロンドン初演。アレグロとかラルゲットとかの速度表示がなされているように、古典的な作品。聴いているときは、聴きやすいしなかなか良いなって思ったんですが、聴いたあとは印象がすうっと抜けてあまり覚えてないんです。わたしの中にすうっと入ってきて、すうっと出て行った音楽。音楽会で遭遇するのはステキだけど、積極的に聴きたいとは思わないなぁ。そういう通りがかりに見えるきれいな風景みたいな音楽。
ヴァイオリンのマーウッドさんは、プロフィールを見るとイギリスの中堅どころのヴァイオリニスト。ソロで活躍すると同時に室内楽奏者としても大活躍で、つい先日解散したフロレスタン・トリオの一員だったんですね。必要十分の上手さだったんですけど、例えばベートーヴェンの協奏曲のようなわたしが知ってる曲で、聴いてみたいです。

ティペットの「我ら時代の子」は、何となく子供のためのカンターターって勝手に思っていたら、そうではなく深刻な内容の作品だったんですね。戦争に反対する受難曲のようなオラトリオで、でもスコアのタイトル・ペイジに t.s. eliot の詩の一部、「the darkness declares the glory of light」という言葉が引用されていて、希望を固く信じる作品でもあります。大きな合唱とオーケストラのための音楽で、ティペットらしい分かりやすい音楽だけれども、とっても力強い充実した作品でした。途中、合唱がどこかで聴いたことのあるメロディを歌い出してドキリ。黒人霊歌が何曲か引用されているんですね。こういう引用もティペットの音楽を親しみやすくしている要因のひとつ。合唱もオーケストラもソリストもみんな高いレヴェルでまとまっていて文句なし。素晴らしい音楽と演奏でした。指揮者のアンドリュー・デイヴィスさんも相変わらずにこやかで、でも演奏後は流石にちょっと疲れて頬がこけた感じ。全身全霊で音楽を演奏したんですもの。
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by zerbinetta | 2012-03-23 20:37 | BBCシンフォニー | Comments(1)

最強のバーママ サラ・チャン、ゲルギー、ロンドン響 ショスタコーヴィチ、ヴァイオリン協奏曲   

23.02.2012 @barbican hall

britten: four sea interludes from peter grimes
shostakovich: violin concerto no. 1
tchaikovsky: symphony no. 6

sarah chang (vn)
valery gerviev / lso


サラちゃん、じゃなかったサラ・チャンさんのヴァイオリンって意外と聴いたことがなかったんでした。ロンドンで聴いたのは、何年か前のリサイタル。そのときは度肝を抜く、金のしゃちほこ風ドレスでした。彼女のツイッターを読むと、衣装道楽っぽいところがあって、今回、ショスタコーヴィチの曲にぴったりのドレスを買ったと書いていたのでどんなドレスなのかワクワクしていました。そしてまたまた度肝を抜かされました。きらきらと輝くメタリック・グリーンのドレス!黄金虫もびっくりです。いや〜、わたし、タコのヴァイオリン協奏曲ってぶつぶつとくらい音楽だと思っていましたが、、、ド派手なドレスですか。そうですか。
演奏は一言で言うと、場末のバーにやってきたくたびれた中年サラリーマンの男たちが、ぶつぶつと愚痴を吐くのを、ド派手なバーのママが、一喝、ぴしりとうっちゃって横綱相撲、最後はみんなで踊り狂う、という音楽でした。サラちゃんは、ときおり足を蹴り上げたり、お相撲の朝青龍さんみたいな怖い顔(どや顔とっかって言うの?)でフィニッシュを決めたり、音楽にのめり込んでくると、もう恐ろしいくらいに自分の世界に没入。もう少し静かに(雑音ではなく見た目)弾いてくれればと思うもののこれが彼女のスタイルなのよね〜。珍しくゲルギーもたじたじで、なんだか彼女の音楽に必死に付けているみたいでした。彼女、派手だし、アグレッシヴな演奏スタイルに惑わされてしまうけど、実は、とても深く音楽を捉えていて、非常に真面目、非常に正統派。マズアさんに私淑していて、彼の許可が下りるまでブラームスの協奏曲を録音しなかったというエピソードがあるくらい、根は真面目。せっかくの音楽会なので、ずっと演奏を観ながら聴いていたけれども、目をつむって聴けば全く違ったものが聞こえてくるかも知れない演奏ですね。まあ、でもサラ上手いわ。始まりは、韓国風の情念(わたしの勝手なイメジかなぁ)のこもった演奏で、泣きの入ったヴィブラートはわたしにはちょっと過多だったけど、最後の楽章のスピーディーではっちゃけた狂気の踊りはサラの本領発揮。興奮のるつぼで音楽は終わったのでした。

音楽会は、タコの協奏曲の前に、ブリテンの「4つの海の間奏曲」、これほんとにロンドンでは頻繁に演奏されますね、がありました。ちょっと聞き飽きてしまったこの曲は、ううん、音楽会のつかみには良かったけど、可もなく不可もなしって感じかな(偉そうに!)。ゲルギーがこのオペラを振るかどうかは知らないけれど、ゲルギーだったらオペラで聴きたいな。狂気が立ち現れる間奏曲をどう演奏するのか、興味あるじゃない。

音楽会のお終いは、「悲愴」交響曲。去年からのゲルギーとロンドン・シンフォニーのチャイコフスキー交響曲サイクルの最後を飾ります。前半の録音を兼ねていた、初期3曲は、堂々とした体躯の男らしいというか、情に溺れないがっしりとしたチャイコフスキーの名演(好みの良し悪しはありますが)を聴かせてくれたけれども、今シーズンの後半の第4番、そして特に第5番では、未来の演奏を模索している部分が多く見受けられたので、今日の第6番はどうなるんでしょうとワクワクドキドキしていました。そしてそれは、ゲルギーの王道を行く堂々とした音楽にヨロコビへと変わりました。
基本的には速めのテンポを基調として、ゆったりと落とすところではゆっくりと歌わせる、分かりやすい効果的なメリハリの効いた演奏。ここまで分かりやすくしなくてもという部分は一部あったのですが、それは将来音楽が成熟していけば変わってくるのでしょうね。もう何回も演奏して自家薬籠中の音楽だと思うけど、まだ深化し続けてるゲルギーの探求心には素直に敬服します。第1楽章の第2主題に入るところで大きく絶妙な間をとったのも息を飲む効果。それにピアニッシモの吸い込まれそうな美しさ。相変わらずクラリネットの上手いこと(今日はトップがマリナーさんでした。がもうひとりの主席の人、小クラリネットの主席の人も上手い上手い)。やっぱりこの曲、上手いオーケストラで聴くと至福です。なんだかとっても贅沢な時間が流れます。参りました。文句の付けようもありません。
最後は「悲愴」らしく、悲しく音楽は終わるのですが、この音楽、悲しいけれども絶望ではないのですね。絶望ではないということは希望があるということです。そんな音楽をチャイコフスキーは書いたと思いましたし、ゲルギーの演奏はそれを確信に変えてくれました。芸術作品に、死へと至らしめる絶望に終わる作品はあるのだろうか、いえそれを生み出すことはできるのだろうか、ふと、考えさせられました。
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by zerbinetta | 2012-02-23 09:57 | ロンドン交響楽団 | Comments(2)

郷愁の想い、アンコールで泣かせるなんて ギルバート、ニューヨーク・フィル   

17.02.2012 @barbican hall

adès: polaris
berlioz: les nuits d'été
stravinsky: symphony in three movements
raval: daphnis et chloé, suite no. 2

joyce didonato (ms)
alan gilbert / nyp


というわけで、今日はアランさんとニューヨーク・フィルハーモニック。チケット持ってたから仕方なくこっちに来ちゃったみたいな酷い書かれ方しちゃって(昨日)、割を食った感じですが、結論を書きましょう、むちゃ感激しました。ロンドンってこうして泣く泣く行く音楽会を選ばなきゃいけないのが辛いですね。評判を聞くと昨日のニューヨーク・フィルを聞き逃したのもとっても残念だったようですし。

3回のニューヨーク・フィルの音楽会のうち、チケットを取ったのは今日だけ。明日のラン・ランさんとのは安いチケットがなかったのよね〜。残念。でも、今日はディドナートさんの歌が聴きたかったのさ。
始まりはアデスさん。会場に着くとわたしの座った席のすぐそばに金管楽器の人がいて、2階席と3階席の左右にチューバを除く金管楽器を配置しているのね。うるさいかなってちょっと心配だったけど、上手な金管楽器ってちっともうるさく聞こえないんですね。がんがん吹きまくる曲ではなかったですが、それでもフォルテはあったのに柔らかくてステキ。そうそう、今は、譜面台の前にモニターが付いてて(最初音を加工とかするコンピューターかなって思っちゃいました)、指揮者が映るんですね。余裕で合わせられちゃう。そういえば、ロイヤル・オペラ・ハウスもステージの歌手から下を向かなくても見えるように客席に何台かモニターが付いていますね。
曲は、バービカン・センターやニューヨーク・フィルハーモニック、などによる委嘱で、MTTとニュー・ワールド・シンフォニーによって去年初演された「ポラリス」。オーケストラの中の人のきらきらと点滅する細かい音符と途中から加わる客席からの金管楽器のコラール風の長い音符の対比が軸となる、きれい系分かりやすい系の音楽。ところが最後の最後になってそれが裏切られて、なんだかきょとんとする中終わったのでした。なんだか作曲家にしてやられたり。でも良い曲でしたよ。アデスさんは分かりやすさと分かりづらさが微妙な案配に混ぜ合わされた曲を書く人だなぁ。イギリス出身の作曲家も最後ステージに呼び出されて拍手を受けてました。

2曲目にベルリオーズの「夏の夜」。これはもう、ディドナートさんの独擅場。素晴らしい声に素晴らしい歌です。ディドナートさんは、ロイヤル・オペラのシンデレラで聴いているのだけど、シンデレラ・ストーリーで王子さまのハートを射止めて豪華に着飾った姿がとっても印象的で、そのままのゴージャスな雰囲気での登場です。彼女、遠目に見ても華がありますね。そういえば彼女、グラミー賞とったばかりだし、メトでの「魔法の島」でも絶賛されてたし、ほんと今、飛ぶ鳥を落とす勢いですね。わたしは彼女のメゾなんだけど軽くて、クリーミーで、つやつやと伸ばしたベシャメル・ソースのような声が大好きで、もううっとり。そして、それに合わせて、ニューヨーク・フィルがなんてステキに柔らかい音で音楽を弾いたのでしょう。ニューヨーク・フィルというと冷たい尖った音というイメジがあったけど、そしてそれが好きだったけど、アランさんが音楽監督になってから、ヨーロッパ風の柔らかな音でも弾けるように変えてきてるんでしょうね。一昨年に聴いたときも、ハイドンでおやと思ったんだけど、今回さらに磨きがかかっていたように思いました。団員の交代も進んでいるようですし、変化途上のニューヨーク・フィルですね。

でも、前からいたメンバーに会えるのは懐かしくて嬉しいです。ホルンのメイヤーズさんはもう引退かしらと思っていたのに、相変わらず大健在で素晴らしい音を聞かせてくれたし、コンサートマスターのだるまさんやステープルさん、アランさんのお母様のタベさん、ヴィオラのトップ3人組、チェロのブレイさんのお顔を見かけて嬉しかったです。新しい団員には、韓国人(中国人)の方が目立ちましたね。中国人は前から多かったけど、韓国人の進出が目立ってきてるのかな。ロンドンでも韓国の若者多く見かけるし。日本はこのまま世界からすぼんで消えていってしまうのでしょうか、心配です。

後半は、ストラヴィンスキーの3楽章の交響曲。これがきびきびして良い演奏でした。今日はオーケストラ的にはこれが一番良かったかな。ニューヨーク・フィルの鋭い音色もやっぱり健在で。アランさんってリズム感がとっても良くってオーケストラを自在にびしびしと決めさせるところに美点があると思うんだけど、こういう曲でその良さが最大限に発揮されると思うんですよね。そういえば、10年前に初めてアランさんを聴いたときもそう思ったのでした。2000年の2月の日記を引用しますね。

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でもね、ほんとにびっくりしたのは若い指揮者さんのアラン・ギルバートさんなの。彼は日本人顔?中国人顔のアメリカ人で、多分アジア人の血が入ってるんだと思う、まだ、20代か30の前半なの。ステージ・ビルを読んでもまだそんなに大きなオーケストラで振ったことはないみたいだし。でも、この人めちゃくちゃすごかったの。ラフマニノフさんのシンフォニック・ダンスを振ったのだけど、これがリズムがすかっと切れてて決めるところが完璧に決まるの。ナショナル・シンフォニーはパーカッション・セクションが上手でリズム感のいいオーケストラだと思うんだけど、こんなにびしっとリズムが決まるのって初めて。もうそれだけで快感なの。ほら、歌舞伎で決めのポーズがぴたっと決まる感覚。かといってリズム感重視のいけいけ音楽じゃなくって、粘るところでは思いっきり粘ってるの。粘ってても、縦の線は完璧に合わせてくるから停滞しないで音楽がきちんと流れるのね。音も濁らないし、そうそう、どんなに強奏しても音が濁らないの。耳がものすごくいいんだと思う。ご本人が弦楽器を勉強してたからか、弦楽器の弾かせ方もうまいのよ。
びしびしと決めまくるのだけど、ただ音を鳴らしてるって感じじゃなくって、自分のやりたいこと、表現したいことをしっかり持ってるから音楽が聞こえてくるの。自分のしたいことをきちんと持ってる人ってすてき。それにそれを実現する技術を身につけてるってなんてすてきなことなんでしょう。もうとにかく快感。彼、これから絶対伸びる指揮者さんだと思う。ちょっと注目。日本でもNHKシンフォニーや東京シンフォニー、札幌シンフォニーに客演してるみたいね。やっぱ、アジアにゆかりのある人なのかしら。
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お終いは「ダフニスとクロエ」の第2組曲。アランさんの演奏は結構抑えた感じで、わたしとしてはもう少し熱っぽく解放して欲しかったのだけど、きれいだし、これはこれで良いのかも知れませんね。全曲が聴きたくなっちゃいました。

そして今日はアンコール。シャブリエの「狂詩曲スペイン」が賑やかに演奏されたのでした。肩の凝らない演奏で、楽しげで思いっきり開放的。なんだか音楽会の最後にぴったりの音楽で、楽しい気分で音楽会を後にできる。
と、思ったらなんともう1曲。ホルンのメイヤーズさん、トランペットのふたり、トロンボーンとチューバの方がいきなり立ち上がって空いたスペースに集まったかと思うとブラス5重奏で陽気なジャズ。これが良かった!ノリのいい音楽で、これぞアメリカンって感じ。彼らの根っこにある音楽。しかもむちゃくちゃ上手くて、メイヤーズさんのホルンには舌を巻くばかり、というか唖然。動き回りながら演奏したのに(特にメイヤーズさんが巨体を揺すってユーモラス)全員が全く完璧な演奏。いや〜〜楽しかったぁ。そして、わたしは何故か大泣き。USに住んでいたときの楽しいことばかりが思い出されて(もちろん美しい部分の想い出だけが抽出されているのは理解しているのだけど、それでも幸せなときでした)、もの凄く郷愁の念に揺り動かされてどうすることもできなかった。血の音楽なんだなぁ。わたし、アメリカ人になりたいのかなあ。
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by zerbinetta | 2012-02-17 07:52 | 海外オーケストラ | Comments(2)

英国の空気の中で ディーリアス生誕150年音楽会 アンドリュー・デイヴィス、フィルハーモニア   

29.01.2012 @royal festival hall

vaughan williams: the lark ascending
delius: cello concerto; brigg fair
elgar: enigma variations

zsolt-tihamér visontay (vn)
julian lloyd webber (vc)
sir andrew davis


150年前の今日、ディーリアスが生まれました。ということを今しがた知りました。ディーリアスはイギリスの国民的作曲家のひとり。とはいえ、めちゃマイナー。わたしが知ってるのは「村のロミオとジュリエット」と「春初めてのカッコウの声を聞いて」だけです。イギリスでもディーリアスがめちゃ人気っていうことは決してなく、やっぱりエルガーが人気なんですがね。ディーリアスの曲を音楽会で聴くのは今日が初めてです。オール英国ものでディーリアスのお誕生日音楽会。

最初は、フィルハーモニアのコンサートマスター(フィルハーモニアはロンドンのオーケストラでは唯一(?)、リーダーではなくコンサートマスターと言ってます)、ヴィソンタイさんを独奏に迎えてのヴォーン・ウィリアムスの「揚げひばり」。とても静かで透き通った音が心に染みわたるような演奏でした。フィルハーモニアのオーケストラも上手いけど、ヴィソンタイさんも線は細いけど凄く上手い。ソロを聴くのは初めてだけど(オーケストラの中でのソロは聴いたことありますけど)、こんな上手い人だったとは。やっぱり一流のオーケストラのコンサートマスターってほんと上手いです。ソリスト・レヴェル。
それにしても、わたしは、イギリスの牧歌的な田舎の風景の中に彷徨い出たよう。音楽は世界共通語とか時代を超えたものとか言われるけど、多分それは半分はウソ。作曲家が時代やまわりの空気を纏っていないなんて絶対にあり得ないし、特に自分の出自を意識した時代の音楽はそれが色濃くあると思うのよね。わたしは日本人だから外国人だけど、イギリスの空気の中でイギリスの音楽を聴くというのはやっぱり格別な経験なんです。少なくともわたしはそういう感受性を持ってる。(一応。音楽は地域限定語とか時代に囚われてると言ったら、それも半分はウソ)
確か、小学生の頃、いえもしかしたら中学生の頃、春のぽかぽかした太陽に暖められた原っぱに寝ころんで、よく高い空で鳴いているヒバリをぼんやり眺めていました。そんな想い出がイギリスの原っぱの風景と重なって思い出されて、今日のわたしは柄にも合わずちょっぴりメランコリック。

ディーリアスのチェロ協奏曲は、単一の楽章の音楽。まるで、さっきの「揚げひばり」の続きみたいな雰囲気。そうめちゃくちゃ牧歌的。独奏がテクニックをひけらかせることもなく、聴く人を煽ることもなくひたすら内証的で、ひとり、原っぱで物思いにふけってる。なので、ソリストのウェバーさんの評価をするのは難しいけど(とてもステキに弾いていました)、髪型が少し傘の開いたキノコ、マッシュルームカット?って感想はそこかい。実はわたし、この人名前がよく似てるので「オペラ座の怪人」の人だと勘違いしていたんですよ。そちらの方は、実のお兄さんだったんですね。

休憩のあとは「ブリッグの定期市」。市場なので少し賑やかな部分もあるんだけどやっぱり基調は牧歌。草の匂いがわたしに染み込んでく〜。ディーリアスは作品も少ないし演奏される曲も少ないので、なかなか聴けないのですが、今日こうしてお誕生日に2曲聴けたのはロンドン冥利。あとはいつか「村のロミオとジュリエット」を観てみたいな。

最後は「エニグマ変奏曲」で盛り上がり。この演奏、叙情的なゆっくり目のテンポの場所では、遅めに演奏して、盛り上がるところでは、野原で抑えられていたスミスさんのティンパニが大爆発で(胡桃のようなもので叩いたりもしてました)、とてもステキな演奏。素直に感動。と同時に、こういう第2の国歌的な音楽がある国の人がうらやましいって思った(実際には第2の国歌はこの曲ではなくて同じ作曲者の「威風堂々」なんでしょうけど)。それが、外国人まで感動させられるのだからなおさら。江戸時代に日本には国家という意識がなかったし、明治に入ってからは西欧の模倣、戦後は芸術音楽が人々から離れていってしまったので、日本に第2の国歌的な芸術音楽が生まれる隙はなかったんですけどね。

そういえば今日のフィルハーモニア、久しぶりにチェロが6人全員女性なんてのもあったりして。フル編成になってから男性がふたり入って男子禁制ではなくなったんだけど。数年前、プリンシパルの人が女性だったときは(たまたまでしょうが)、パートが全員女性なんてこともあったりして、しばらく見なかったのでほんと、久しぶりでした。
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by zerbinetta | 2012-01-29 01:55 | フィルハーモニア | Comments(2)

ロンドンプライド再び サー・アントニー、ロンドン交響楽団   

10.01.2012 @barbican hall

adès: dances from 'powder her face'
walton: viola concerto
elgar: symphony no. 1

antoine tamestit (va)
sir antonio pappano / lso


ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督、パッパーノさんがナイトの叙勲をされたのは去年の暮れ。オペラ・ハウスではもう、マイスタージンガーを振ってるけど、オーケストラ・コンサートでのお目見えは今日が初です。パッパーノさん、毎年この時期、ロンドン・シンフォニーを振ってるんですね。今日は3世代にわたるイギリスの作曲家の音楽会。最後のエルガーの交響曲なんて、イギリスの意気だから、まるでサーのお披露目の音楽会のようになったけど、もちろん偶然。プログラムはとっくの昔から決まっていましたしね。

パッパーノさんが出てくると会場は大きな拍手。お客さんも叙勲を祝福します。始まりの曲は、トーマス・アディスさんのオペラ「彼女の顔に白粉を塗れ」からダンス・ミュージック。ポップな曲を抜き出しているので、現代的な音使いをしているものの聴きやすい音楽。そういえば、わたし、このオペラ観たのでした。結構どぎついオペラだったけど、今日は物語なしの音楽だけだったし、ポップな部分だけだったので素直に楽しめました。オペラの方はとっても小さなオーケストラを使っていたのだけど、こちらの組曲版は大きなオーケストラなんですね。賑やかだけど、もともとが小編成なせいか見通しの良いすっきりとして響きでした。

ウォルトンのヴィオラ協奏曲は珍しい曲。初めて聴きます。ヴィオラ業界の人にとっては有名曲なのかな(ヴォーン・ウィリアムスのチューバ協奏曲みたいに)。ヴィオラを弾くのは、フランスの若いヴィオリスト、タメスティさん。この人も以前、BBCの若手育成プログラムに選ばれていたんですね。
この曲、ウォルトンって交響曲くらいしか知らなかったけど、乾ききった感じではなくて、しっとりとロマンティックな部分もあってとってもいい曲です。早速お気に入り楽曲のフォルダーに。そして、ヴィオラの音が♡ ヴァイオリンのような派手さはないけれども、人肌の温もりがあって、どんな楽句も出しゃばりすぎずに控えめに、でも味わい深い音が、音楽にぴったりと寄り添うの。タメスティさんもそんな風にしっとりと楽器を歌わせていました。豊かな音がすばらしい。ヴィオラのソロって聴く機会少ないけど、タメスティさん来たらまた聴きたいな。

最後のエルガーの交響曲第1番は、もうなんて言っていいか、オーケストラの音楽を聴く喜びに満たされていました。ロンドン・シンフォニーの柔らかで艶やかな響き、それを引き出したパッパーノさん。なんだか相思相愛。ゲルギーのあとはパッパーノさんがロンドン・シンフォニーの主席指揮者になったりして。
でもね、始まりはあれあれって思ったんですよ。低音の弦楽器で始まるところはなんだか不安をあおるような感じでこんな曲だっけか?って思って。そして、行進曲風に出てくるこの曲のテーマ主題。チェロとコントラバスの刻みが、田舎の小学校の足踏みオルガンの音色のように古風で渋くて、そして、わざとよたよた。主題の方も自信なさげで、トランペットが入って盛り上がるところも一時的で(そう書かれている)、それがおややと思ったの。これがパッパーノさんの音楽だってことが分かったのは最後になってから。なんてステキなパッパーノさんの音楽設計。
その最初に感じた違和感は、もうすぐに解消されて、とにかく音楽を堪能。どんなに音楽が激しくなったりスター・ウォーズっぽくなったりしても、クリーミーな音でホール全体が木肌の柔らかさで響いてる感じ。バービカン・ホールとロンドン・シンフォニーならではの響き。
初めて気がついたんだけど、繰り返し出てくる最初のテーマの主題、決して変奏されないんですね。若干の音の長さの変化や、伴奏は大きく変わるんだけど、主題自体は変わらない。そして最後は高らかに奏されて、なんだか頑固な英国紳士の心意気を見た感じ。保守的で律儀で伝統を大事にするんだけど、同時に新しいものを生み出していく(民主主義も産業革命もニュートンもダーウィンもイギリス生まれ)英国人のプライド。最初は控えめにためらいがちだったけれども最後には自信と栄光を持って歌われるプライド。かっこよすぎ。
パッパーノさんは押しつけがましくそんなドラマを描いたのではありません。オペラ指揮者の自然の技でしょう。だからこそものすごく説得力があったし、ものすごくかっこよかった。イギリス人の心意気にやられてしまった感じ。わたしもデイムにはなれないけど、かっこいいプライドは身につけたいな。せっかくロンドンにいるんだし、見習うところは見習わないと。。。少し高かったけどロンドンプライドは、今冷蔵庫に冷えてる。フィッシュ・アンド・チップスで飲もう。(って全然方向性がずれてる気が。。。)
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by zerbinetta | 2012-01-10 09:55 | ロンドン交響楽団 | Comments(4)

ムーミンはいなかったけどトロールはたくさんいたよ オラモ、BBCSO シベリウス他   

28.10.2011 @barbican hall

bax: tintagel
saariaho: leino songs
sibelius: luonnotar, symphony no. 3

anu komsi (sp)
sakari oramo / bbcso


今シーズンのBBCシンフォニーの目玉のひとつは、シベリウスの交響曲全曲演奏でしょう。シベリウスの交響曲全曲演奏は1昨年のシーズンにロンドン・フィルがオスモ・ヴァンスカさんでやっているのですけど、BBCシンフォニーのは、ひとりの指揮者ではなく、6人の指揮者によるシーズンを通しての音楽会です。今日がその第1段。なんと!意表を突いて一番マイナーな第3番から。わたしは大好きなんですけどね。イギリスはシベリウスを高く評価した外国のひとつなので、こうしてシベリウス頻度が高いのが、シベリウス好きのわたしにはとっても嬉しい。そういえば、オラモさん、プロムスでも交響曲第6番のしみじみと良い演奏を聴かせてくれたので期待してたのです。

始まりはバックス。フィンランドの作曲家だと思ってたら、イギリスの作曲家でした。音楽会が終わるまで気づかないでいて、ばかね〜わたし、今日はフィンランド特集って独り合点してました。ってよく考えたら、この人の音楽、オラモさん、プロムスでも聴かせてくれたんだった。。。すっかり忘れてた。「ティンタジェル」は交響詩。解説を読んでいないので、どんなことを音楽にしているのか分からないけど、なんだか海の香りがしました。とても聞きやすくて、ちょっとかっこよくて、吹奏楽っぽくて(前に聴いたバックスの音楽もそんなこと思ったっけ)、知らなかったステキな曲を教えてもらって嬉しい気持ちです。つかみOK!

でも今日の刮目は(使い方合ってる?)、サーリアホさんの「レイノ歌曲集」。これがもうステキなのなんの。サーリアホさんの音楽はこの間バレエでさんざん聴いてたし、前にも何曲か聴いたことあるんだけど、この4曲からなるちいさな歌曲集は、とっても親しみやすくて、透明できれいでとってもステキ。そしてこれを歌った、アヌ・コムシさんがまたきらきらな透明な水晶のような声でステキなの。こんな紋切り型の言葉使いたくないけれども、もの凄い透明度で底の砂や水草やお魚まで見える北の国の湖のようなきれいさ。そして、フィンランド人の彼女にとって自分の言葉。それに、この曲、彼女のために書かれているのですね。だから、わたしには言葉は分からないけれども、彼女の言葉と音楽と意味が自然に結びついているのが、とても強く感じられました。音符だけを歌ってるんではなくて、言葉の持つ意味が込められているように感じられたんです。

休憩のあとの、シベリウスの歌曲「ルオンノタール」。この曲もとってもステキでした。交響曲第2番を思わせるな旋律があって、夜の月明かりに暗く銀色に光る波頭のよう。それはもうきらきらときれいで、でも、なんだか哀しい。空や星や月の誕生を歌った神話の物語なんですね。真っ暗な世界にわたしも浸れていたような気がします。お客さんもたくさんの拍手をコムシさんに贈っていました。

最後は交響曲第3番。わたし、この曲ってちっちゃくてさりげなくて、秘やかに咲く花のようと思っているのですね。大曲交響曲第2番と孤高の苦渋に満ちた交響曲第4番に挟まれて、ほのやかな光に満ちていて心が安らぐ。という曲だと思ってたんだけど、オラモさんの演奏は、雄大で少し重々しいものでした。わたしの好きとは違うと思ったんだけど、音楽の雄弁さに心が揺れて、最後はどっしりと感動しちゃいました。オラモさんの演奏にはフィンランドの森の空気をしっかり感じました。BBCシンフォニーもオラモさんに相応して、深い森の静けさ、愉しい不気味さを音にしていました。BBCシンフォニーの音はもともと地味(あっこっちの漢字の方がいいかも。滋味)で派手やかさはないので(色彩感がないということではなく、それぞれの色にいぶし銀色が混ざっていて、いぶし銀色がオーケストラの基調のトーンとなっている感じ)、それがオラモさんの音作りにぴたりと合うのです(わたしはもう少し軽いのが好きなのですが)。
フィンランドの森はムーミンの森。でも、ムーミンはいなかったけど、ムーミンの仲間のトロール(妖精)たちはそこここにいました。風が木木を揺らしたり、遠くに山が見えたり、葉がずっと覆い被ってお日さまを曇らせたり、そんな森の中をわたしは音楽に誘われてずうっと歩いていたような気がします。ときには駈けてみたり、立ち止まったり、歌ったり、完爾としたり、泣いたり。音楽はわたしの記憶も呼び覚まします。それは、現実だったり、お話の中の世界だったり、心は妖精と一緒に自由に飛び回ります。そんな音楽でした、オラモさんの音楽は。

大きな風が木々を吹き抜けるように、会場からは大きな拍手。BBCシンフォニーの音楽会は、暗黙の了解みたいのがあって、どんな良い演奏でも指揮者を呼び出すのは2回(あれっ?3回だったかな)というのがいつもですが、今日は1回多く呼び出されました。お客さんが少し変わったのかな。北欧の人多かったのかな。でも、BBCシンフォニーの音楽会は、おいしいお米を食べてるようで本物のごちそうを食べた幸福がいつもあるようです。
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by zerbinetta | 2011-10-28 09:29 | BBCシンフォニー | Comments(0)

東洋の真っ赤なルビー   

16.08.2011 @royal albert hall

copland: fanfare for the common man
bax: symphony no. 2
barber: adagio for strings
bartók: piano concerto no. 2
prokofiev: symphony no. 4

yuja wang (pf)
andrew litton / rpo


それにしても7時始まりで、終わったの10時過ぎの音楽会って。しかも休憩2回。オペラじゃないんだから。。。わたしは最近、軟弱者なので長くてコスト・パフォーマンスのいい音楽会より短くさくっと終わる音楽会が好きです。おなか空くし早く帰りた〜いって。でも今日は、大好きなユジャ(・ワンさん)だし、いつもにこにこ顔のアンドリューさんだからいいのです。って出てきた指揮者、別人? にこにこ顔のアンドリューさんじゃない! あれれ〜変更になったのかなってあわててプログラムを開けてみたら、アンドリュー・リットンさんだった。デイヴィスさんじゃない。アンドリュー違いでした。いつも間違えるのよね。で、気を取り直して。

始まりはコープランドの普通の市民のためのファンファーレから。交響曲第3番のイメジが強くて、おお違う違うと思いつつ聴いていたけど、やっぱかっこいいわ、このファンファーレ。ただ少し、オーケストラにすかっと抜けるパワーが不足しているように思えました。これは今日の音楽会を通じてずうっと感じたことです。
2番目は初めて聴く、珍しいバックスの交響曲第2番。マデトーヤみたいな北欧風の感じがしたので、北欧の作曲家なのかなって思って、休憩時間にプログラムを読んだら、イギリス、ロンドン生まれの作曲家でした。ふ〜む、この親近性、だからイギリスではシベリウスの音楽が受け入れられたのか、なんて思ってみたり。でも、本人はアイルランドに共感を感じていたみたいで、それは音楽から十分伝わってきました(って言うか、北欧とアイルランドの区別がついていないんですけど、冷たい空気感が一緒のような気がします)。ちなみに今飲んでるサイダーは、スウェーデンの梨のサイダーです。おいしい。って関係ないけど。それにしても、この作曲家女たらしなんですね。不倫とかして奥さん3人もいて。でも音楽は別物。清楚な感じのヒースの上を流れる風のような。そして音色の響きが吹奏楽的なところが多いんです。ちょっと不思議な感じでしたね。ここで休憩、その1。

第2部の始まりは、バーバーの弦楽合奏のためのアダージョ。悲しみを湛えた音楽。追悼曲というわけではないと思うけど、確かケネディ大統領のお葬式のとき使われたのよね。演奏も静かにしんみりと。でもわたし的にはもう少し力があってもいいと感じました。少し弱ってる感じ。
次はいよいよピアノ協奏曲。第2部の始まりからあったピアノの蓋が、会場からのうおぉぉというかけ声と共に開けられ(プロムスならではの習慣です)、リーダーが音合わせしようとラの鍵盤を叩くと会場からブラヴォーと拍手(これもまたプロムスの習慣です)。そして、大好きなユジャ登場。話題のミニスカートかなと期待もしたんだけど、真っ赤なロング・ドレス。東洋の真っ赤なルビー(?)。そしてユジャ、なんだかこんがり焼けてます。スイスの山で焼いてきたのかな。そうそう、ユジャの漢字表記、羽佳ってとってもきれいな名前ですね。実はピアノに関しては先日聴いたブニアティシヴィリさんの音が耳にまだこびり付いているのだけど、彼女のピアノを速さと重みを兼ね備えた馬のような走りだとすると、ユジャのそれは、速さに特化したチータのようなしなやかな、アスリートみたいな走り。まさに名前の通り羽が生えてるみたい。
初めて聴く曲だと思うけど、始まってびっくり。ラヴェルのト長調みたい。っていうか、ラヴェルとペトルーシュカを合わせて2で割った感じ。バルトークもこんな可愛らしい音楽書くのねってはじけた第1楽章。面白かったのは第2楽章のピアノとティンパニの対話。第3楽章では大太鼓(とティンパニ)との対話。ピアノの扱いが打楽器的で、噂によるとこの曲、ものすごい難曲らしいんだけど、ユジャが弾くとそうは聞こえないところが凄い。余裕で弾いちゃいます。ただユジャは譜面を観ながら。なので、手堅くまとめているというか、この音楽に対する突っこみがまだ足りないと感じました。特に第1楽章がおとなしくて物足りなかったです。第2楽章からは徐々にエンジンがかかってきた感じでしたが。オーケストラの方もなんだか消極的に丸く収めようという感じで、もっと丁々発止のやりとりがあってもいいのではないかと思いました。やっぱり難しい曲なので怖いのでしょうかね。ユジャはきっと、弾き込んでいくことでもっともっと良くなっていくでしょう。またいつかユジャのピアノでこの曲を聴いてみたいです。できたら、今バルトークに取り組んでるサロネンさんとフィルハーモニアとかで。
アンコールを期待したのですが、お客さんは大きな拍手を送っていましたがアンコールはなし。ちょっと残念。

第3部はプロコフィエフの交響曲第4番。プロコフィエフの中ではゆるい音楽だと思うのだけど(シンデレラのシーンを彷彿させるような音楽が出てきます)、演奏もゆるかった。なんだかリズムが決まらないんですね。そうするとプロコフィエフの音楽がとたんにつまらなくなる。オーケストラのリズム感が悪いのか、リットンさんが縦の線をあまり気にしない人なのか、輪郭のはっきりしないぼんやりした音楽になってしまいました。わたし的にはちょっと残念な演奏でした。まあ、ユジャを聴けたから良しとしよっ。
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by zerbinetta | 2011-08-16 06:01 | ロイヤル・フィルハーモニック | Comments(2)

とほほ。どきどきしたぁ〜   

01.07.2011 @royal opera house

britten: peter grimes

ben heppner (peter grimes), amanda roocroft (ellen orford),
catherine wyn-rogers (auntie), jane henschel (mrs sedley),
stephen richardson (hobson), metthew best (swallow),
roderick williams (ned keene), alan oke (bob boles), etc.

willy decker (dir)
andrew davis / oroh


またまたブリテンのオペラ。今日はロイヤル・オペラ・ハウスで出世作ピーター・グライムズです。やっぱりイギリスにいる間にブリテンは観ておかないとねっ。
先日のENOでの夏の夜の夢はとても良かったのだけど、今日はもう始まる前から不安。だって。タイトル・ロールがベン・ヘプナーさん。この人、上手いんだかダメ(下手ではない)なんだか、始まってみないとよく分からないの。10年くらい前、初めて聴いたメトでのトリスタンはもうよれよれで(最後まで歌ったけど)、なんだかなぁって思ったのが最初です。それ以来何回か聴きましたが、いまいちわたしの中で評価の定まらない人というか、彼が出てくると今日は大丈夫かなってどきどきしてしまいます。で、結論から書くと、最後まで歌いきりました。ただ、途中高音が出ずかなりよれよれだったです(何とか持ち直したけど)。最後、普通に拍手をもらっていましたが、わたしの後ろの席にいた人はブーを叫んでいました。いやあれは、あれはよれよれのピーターが歌う歌だから役作りだよ、と言ってあげたら嫌なやつでしょうか。

そんなこんなで、歌手陣は可もなくという感じで、イタリア・オペラじゃないので強力な歌い手がいる必要もないのですが、初めて観るオペラなので普通に楽しめたけど(初めてのものには興味がわく)、歌からはぐっとくるものはありませんでした。

オペラは初めてだったけど、音楽は4つの間奏曲を音楽会で何回も聴いているので、親しみを持てます。そのオーケストラだけの部分(もうひとつパッサカリアがあります)は、やっぱりステキでした。へぇ〜こういうふうに使われてるんだって発見もあったし。ただ、全体としては、先日聴いた夏の夜の夢の方が音楽的に充実してますね。ピーター・グライムズはブリテンにとって2作目のオペラなので仕方がないのですけど。

お話は嫌なお話です。ピーターが子供を虐待する嫌なやつということになっているのだけど、わたしにはピーターが悪人と言うより、町の人たちの集団が一番悪者に見えました。むしろピーターはその犠牲者なのではないかと。「社会がより残忍になれば、人もまたより残忍になる」というブリテン本人の言葉がまさに象徴していると思います。個ではない社会の集団の危うさ恐さには、最近のネットを通しての意見の形成を見て思うところがあったので、ぐさりとくるところがありました。わたしとしては、オペラには現実ではなく夢を求めているところがあるので、こういうじゃりじゃりとしたオペラは苦手ではあるのですが、目をそらしてはならない、観ることができて良かったとは思えるオペラでした。
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by zerbinetta | 2011-07-01 07:09 | オペラ | Comments(0)

学校の怪談   

25.06.2011 @london coliseum

britten: a midsummer night’s dream

iestyn davies (oberon), anna christy (tytania),
jamie manton (puck), tamara gura (hermia),
kate valentine (helena), willard white (bottom), etc.

christopher alden (dir)
leo hussain / eno choir & orchestra


またまた、夏の夜の夢です。夢ばかり。寝過ぎ?
でもやっぱ、イギリスにいたらイギリス音楽ですよね。ブリテンのオペラは是非観たいと思っていました。そしてわたしは、作品を全部読んだことないくせにシェイクスピア好きを勝手にほざいてる。ただね、このオペラはDVDで持っていて、ちょっと音楽がよく分からないなって思っていたのと、コリセウムの雰囲気があまり好きでないので躊躇していたの。でも、ブログ仲間のかんとくさんが絶賛していたので、背中を押されました。観てほんと良かった。実はまだよく分からないことだらけなんですけど、良さの分かる舞台でした。かんとくさん、ありがとう。

もともとシェイクスピアの原作もかなり変わってます。妖精の世界と、恋人たちと、村の素人劇団のどう見ても関係なさそうな人たちが絡むんですけど、まああらすじもそうなんですけど、もっと分からないのが素人劇団の演ずる劇中劇。これに戸惑っちゃうんですね。そういえばわたし、ずうっと前にシェイクスピアの映画のDVDを集めようと画策したことがあって、アリー・マクビールのキャリスタ・フロックハートさんが出ているDVDを第1弾として買ったんですけど、それっきりになってしまいました。。。第2弾の予定はデカプリオさんが出ていたロミオとジュリエットだったんですけど。。。その映画版でも、なんだかよく分からなかったのです。それがオペラ。どうなることでしょう。

さて、舞台は学校。おおお、と思ったけど、プログラムにその理由がいろいろ書いてあるけれども、それはさておいて、秀逸だとわたしが感じたのは、現代において、一番妖精がいそうな場所って学校ではないかって気がついたから。だって、妖精のいた森は、近所からなくなってしまったし、妖精を見ることができる、心が純粋で多感な時代って、大人ではなく、子供時代なんですもの。ましてや、寄宿舎生活をしていたら絶対妖精見たはずだもの。
だから、この舞台設定は、納得できたしとってもステキでした。でもね、たった1回しか観ていなくて、まだまだよく分からないことだらけのわたしが言うのもなんだけど(でもね、オペラの演出ってどんなお客さんを想定してするのだろう? 一度しか観ない一期一会のお客さん? それとも何回も観て理解を深めたいお客さん?)、妖精の世界と恋人たちの世界の境界がよく分からなかったんです。どちらの学校の生徒さんっぽいし(妖精の王様と王女様は先生?)。なので、わたしには、逢魔が時のように此方と彼方の世界が曖昧に感じられました。これが、シェイクスピアの3つの世界を対立させ、干渉させ、平行させる劇のユニークなコンセプトを暈かしているように感じたのです。
そしてもうひとつ、わたしが疑問符をつけたのは、パックの性格。パックって、早とちりで、どこか抜けてて、すぱしっこくて、ちょっぴり悪で、でもどこか憎めない陽性の妖精だと思っていたのですが、この演出では、なんか暗くて弱いいじめられっ子的な立場。明るいからっとした舞台を思い描いていただけにちょっとすれ違ってしまって残念。何回も観ると分かるようになるのかなぁ。そう、何回か観たくなる舞台ではありました。

音楽はさすがブリテン。始まりの妖精の音楽は、弦楽器のグリッサンドがホラーというかお化けの音楽っぽいんだけど、必ず長和音に解決してて、おどろおどろしさを消して妖精の世界に入るという見事なさじ加減。CDでぼんやりと聞いていたときには気がつかなかった、音楽の魅力に気がつかされました。CDで聴いててときはなんて取っつきにくい分かりづらい音楽なんでしょうって思っていたんですね。こうして、生で、舞台を観ながら聴くと、音楽が魅力的に響いてきます。歌は話すように歌われます。ドビュッシーのペレアスとメリザンドほどではないけれども、言葉の音楽。最近こういうオペラ、とても好きです。劇のテンポが保たれるのが、お芝居を観ていて好ましいんです。

レオ・フセインさんとイングリッシュ・ナショナル・オペラのオーケストラはとっても丁寧に音楽を描いていました。オペラはロイヤル・オペラばかり観ているのだけど、イングリッシュ・ナショナル・オペラはそれに比べてマイナー感はつきまとうんだけど、実は、ロイヤル・オペラに引けをとらない水準にあるんですね。劇場があまり好みではないという弱点はあるんですけど(それに、一番安い席はロイヤル・オペラの方が安い)、このオペラ・ハウス、年に何回かは目の覚めるような話題作を演るので、やっぱり毎年来てしまいます。
歌手の人たちも、小粒だけれども決して不満の出るものではなかったです。印象に残ったのはタイタニアを歌ったクリスティさん、そしてボトムを歌ったホワイトさん。ホワイトさん、2歩3歩頭抜けていて、主役とは言えないのに、彼が出てくるところは完全に彼が主役になってました。

夏至の夜は不思議気分でいいですね。わたしはどんな夢を見るんだろう。妖精が幸せを運んできてくれますように。

学校と出演者たち
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ひとり浮いてるボトムのホワイトさん。真ん中のチェックのスカートの女性はタイタニアのクリスティさん
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by zerbinetta | 2011-06-25 07:50 | オペラ | Comments(4)